転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

106 / 131
また、なんとも味気ない題名。


106 情報と方針

翌日 マルタ島鎮守府 会議室

 

 

ステファノスを加えて次の『クレタ島奪還作戦』の打ち合わせをしていた面々の顔は…不安しかなかった。

無論、その原因がステファノスの所属元であるギリシャ軍の事であり、既にわかっていた事ではあるが、ステファノスが持ってきた資料がそれをますます助長させた。

 

 

「まあ、兎に角だ……ウチらが独自に偵察・情報を収集する必要があるよな」

 

周囲の不安顔とステファノスの困惑顔に高塚は苦笑いを浮かべながら言った。

 

 

「う、うむ、そうだな…これでは情報としては少ないしな」

 

高塚の言葉に滝崎も場の空気を変えようと言った。

なにせ、ステファノスが持って来たのはクレタ島周辺の詳細海図と潮流・海底図、クレタ島詳細地図と数枚の偵察写真であったからだ。

 

 

「とりあえず、これだけでは到底、奪還作戦の大まかな物も作れない」

 

 

「だな、潜水艦による隠密偵察はもちろん、水雷戦隊や快速艦艇による威力・強行偵察、空母機により航空偵察も実施して、もっと詳しい情報を集めてからだな」

 

高塚の言葉に滝崎も頷きながら言葉を繋ぐ。

 

 

「さて、そうなると、みんなでワイワイとやりましょうか」

 

松島宮の言葉にクレタ島の海図と地図を広げ、ワイワイとやり始めた。

 

 

「……いつも、こんな感じなんですか?」

 

 

「はい、皆さん、堅苦しい会議より、伸び伸びとやる事が好きな方達なので」

 

ステファノスの質問に大淀は微笑みながら答えた。

 

 

 

暫くして 食堂

 

 

 

「威力偵察ですか?」

 

 

「あぁ、編成は考案中だが、快速艦艇が中心になるのは確実だ」

 

滝崎・高塚は川内型三姉妹と摩耶、鳥海、不知火と共に昼食をとりながら話していた。

 

 

「こう言った事は身軽な部隊が得意だからな。うん、ロースカツ丼美味い」

 

 

「ですが、何故わざわざ威力偵察を? 確かに偵察は必要ですが、クレタ島の防備は強力だと思いますが?」

 

 

「主攻や攻勢点を把握させないのも威力偵察の一環だ。それに強力な防備を敷くと言っても限界がある。更に言うなら、古今東西『強力な防備』ほど心理的隙を生み出す。針の穴の様な穴から難攻不落と言われた要塞が呆気なく陥落した話は多々ある。それに…俺らは硫黄島やペペリューの様な状況を出す訳にもいかないしな」

 

ロースカツ丼を食べながら語る高塚に不知火は疑問を示すがアッサリと答える。

それを聞いた滝崎は何も言わずに麦茶に手をつけ、川内達は疑問符を浮かべる…神通を除いては。

 

 

「事前の情報収集による緻密詳細な作戦、強力で高品質な装備、圧倒的な物量とこれを賄う補給力を持ってしても、島の攻略は難しい」

 

 

「そうです。今や殴り込みを含めて世界最強と言われるアメリカ海兵隊が硫黄島やペペリューを含めた日本軍との要塞島攻略の話に苦い顔を浮かべる理由がそれです。やはり、どれだけ時代が経ち、装備云々を説いても、防備を固められては相応の犠牲を出すのは必須。故にどう戦うかを…多面体的に観て、思考する事が指揮官に求められる。それは軍事だけでなく、経済・世論・世界情勢を含めて観なければならない……それに比べ、自らのフィールドで戦うにしても、戦術や指揮官や兵士の質が時代遅れならばどんなにも有利でもその前提は崩壊する……やれやれですよ」

 

箸を置き。遠い目で食堂の窓からマルタの海に視線を向ける高塚。

 

 

「(高塚の奴め、しっかりと神通さんを育ててるな。まったく、こりゃあ、後々が恐ろしいな)はいはい、その話はおしまい。ともかく、そう言った事がある、って認識で頼むよ」

 

そう滝崎は言った。

 

 

 

暫くして 高塚の執務室

 

 

昼食後、高塚は執務室に引っ込むと本棚のあちこちから必要な書籍を引っ張り出し、執務机に山と載せていた。

中には同人誌クラスの薄い本があるが……これらは外国軍の教本等々を和訳して同人誌に仕立て直されて販売されていた物だ。

実際、高塚はマルタに来てからは…まあ、日本にいる時もそうだったが…旧自衛隊の教本は基礎・基本の確認にのみ留め、大半は外国軍の教本や過去の戦闘記録を活かしいる。

実際、死に掛けた人間として、反映されない物より反映された物を使いたいからだ。

 

 

「ふむ……隠密に偵察隊を上陸させ、事前に敵情を把握する…半分、餓島攻略の時のアメリカ軍みたいなのがこの場合はいいかもな…って、これ、現代戦じゃん」

 

あれだ、これだを自己検討し、漸く纏まった案件を見て高塚は苦笑いを浮かべて呟く。

実際、高塚が言う方法は現代戦では当然とも言うべき、作戦実施前に特殊部隊を送り込み、レーザー誘導等で空爆や侵攻を容易化する、と言う一般的なセオリーだ。

 

 

「……さてはて、となると、人選だが…まあ、まず、俺の他に数人は必要だな。あきつ丸は色々あるから入れれないし…となると…」

 

脳内でサイコロを転がしてみて……出た答えはと言うと……

 

 

「……天龍、龍田、木曽、んで、状況によるが川内かな…後は出来れば駆逐艦を何人か…ん、どうぞ?」

 

思考中にノックが聞こえ、高塚は入室を促す。

入って来たのは神通だった。

 

 

「どうしました、神通さん」

 

 

「高塚少佐、先程のお話で私から提案があります。よろしいですか?」

 

 

「あぁ、別に構わないよ。それで、何かな?」

 

 

 

 

次号へ




ご意見ご感想をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。