転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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……また、変な題名に。
本日は『青年士官苦労記』も更新します。


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数日後 マルタ島鎮守府

 

 

 

「うーむ……まだかね〜?」

 

 

「憲兵さん、そんな風に建造カプセルの前に陣取ってもそんなにかわりませんよ」

 

建造カプセルを眺めながら呟く高塚に明石が呆れながら言う。

朝から高塚は工廠の建造カプセルの前に陣取っていた。

松島宮が久々に大型建造を行なっているので、高塚は暇潰しがてらに工廠に来ていた。

 

 

「それより、憲兵さん、仕事は?」

 

 

「終わったから、こうして暇潰しで工廠に居るの。最近は学習会も開店休業状態なのよ」

 

『学習会』とは高塚の知っている事を工廠妖精や有志の艦娘相手に教えている集まりだ。

先の戦いの回復期間中なので高塚も気を使って開いていなかった。

 

 

「アー、憲兵殿ヤ〜」

 

 

「ホンマヤ、ホンマヤ」

 

 

「チョウドエエワ〜、憲兵殿〜、マタマタプレゼントヤデ〜」

 

高塚の姿を見た工廠妖精達がワラワラと集まり、工廠長妖精が代表して言った。

そして、妖精達が持って来たのは……。

 

 

「……日本刀?」

 

 

「セヤデ〜、伊勢ト日向ノ主砲ノ残鉄デ造ッタンヤデ〜」

 

 

「憲兵殿ハ軍刀持ッテ戦ッテルノガ絵ニナルカラナ〜」

 

夕張の言葉に妖精達が口々に言う。

 

 

「あはは…そうか…まあ、儀礼用に使うのはいいかもな」

 

そう言って高塚は日本刀を受け取り、鞘から抜いてみる。

 

 

「………手に馴染む…自分には勿体無いくらいだ。ありがとうございます」

 

そう言って高塚は鞘に納めた。

 

 

 

その頃 滝崎執務室

 

 

「うーむ、とりあえず、レキシントン退場の孔はエンタープライズで埋まるし、他にも翔鶴・瑞鶴も居るし、まあ、大丈夫だな」

 

編成表やら何やらを見ながら滝崎は呟く。

なお、執務机は仕事(書類)よりもその資料(編成表や勤務表等々)が乱雑な山を形成していた。

 

 

「……五航戦の子には無理をさせないでね」

 

 

「ん、あぁ、既存組や軽空母組も居るし、下手にガチガチな勤務にしない限りは現状でも余裕あるよ…それより、加賀さん、素直に褒める方がいいと思いますがね?」

 

 

「いいの、世界や艦種が違っても私が小言を言い続ける限り、五航戦は伸びていくわ。特に瑞鶴は」

 

 

「…まあ、それが個性的な気遣いならば自分は強制する気はありませんし」

 

そして、滝崎は加賀と共に仕事をしていた。

なお、松島宮は金剛、比叡、榛名、霧島、長門、陸奥、大淀らの秘書艦勢が固めているので問題はない。(なんの?)

 

 

「そう言えば、鳳翔さんもハミーズさんやアーガスさんが来てから御二方と話しているところを何度も見ますね」

 

 

「なにせ、国は違えど初期の空母組ですから…話が合うんでしょう」

 

実際、居酒屋鳳翔で『ミニ女子会』をやる程に仲が良い。

滝崎や高塚、松島宮も数回程混ぜてもらっていた。

 

 

「まあ、私としては古参組が仲良くしてくれる事は助かりますよ。あっちの世界では無いですが、イギリスとドイツ・イタリアの間にウチら日本勢が入って緩衝材になるなら、その内、双方打ち解けていく事になりますし」

 

 

「……それが深海棲艦でも?」

 

 

「えぇ、殲滅戦なんて時間も資材もバカ喰いする事なんてするより、和平の道を探すのがいい。しかも、向こうもその意志を示してきた訳ですからね……正直、私としては戦いで血の流れる光景なんて見たくも無いですからね」

 

加賀の言葉に苦笑いを浮かべながら滝崎は言った。

 

 

「…ホントに副官は変わらないわね。戦う事を決めても、絶対に何処かで逃げ道を作り、更に敵も救おうとする…ウェーク、ミッドウェー、ソロモン、東海岸…血が流れても血を見るのを嫌がる、救える限りは自らを傷付いても救おうとする考えは」

 

 

「あはは…偽善に聞こえるかもしれませんが…やはり、私は悪魔にはなれないんですよね」

 

 

「…でも、その『変わらない』がいい子も居るんですからね」

 

 

「あはは…さてと、そろそろ仕事を終わらして、松島宮の様子でも見に行くかな」

 

 

 

 

暫くして 工廠

 

 

 

「建造完了ヤデ〜」

 

工廠妖精の言葉に夕張と共に持ち込んでいた『現代陸軍自走砲全集』を見ていた高塚が顔を上げた。

 

 

「やれやれ、四番機だけ4時間越えだったからな。結構暇を持て余したかな」

 

 

「じゃあ、全機ロック解除して」

 

 

「ハイナ〜」

 

明石の指示に妖精達が4基の建造カプセルのロックを解除した。

すると……

 

ボボーン!!

 

……三・四番機から爆発がおこった。

 

 

「マルタ島鎮守府名物『レシピ無し爆発建造』のコンビか。明日は嵐かね〜」

 

 

「憲兵さん、冷静な解説してないで排煙手伝って下さい」

 

 

「窓開けて、窓〜」

 

 

「大変ヤ〜、大変ヤ〜」

 

高塚の冷静な呟きにツッコミを入れる明石、直ぐに指示を出しながら手近な窓を開ける夕張、あちこちで窓や排煙装置を働かせる妖精達。(なお、全員慣れた為に冷静である)

 

 

「内線電話の準備しておいてよかった。さてさて、どちら様がきましたかね?」

 

そう呟いて三・四番機に目を向ける高塚に煙の中から……

 

 

「ケホケホ…あっ、改利根型重巡洋艦にして日本最後の重巡洋艦大仙です! 利根姉さん、筑摩姉さんに負けない様、対潜・対空任務に努めます!」

 

 

「煙いよ〜…あ、加賀型戦艦二番艦土佐です! 四国の地名がついた初の軍艦です! 加賀姉さんと共に頑張ります!」

 

 

「……夕張!! 緊急事態や!! 内線回せ!!」

 

 

 

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