転生先が平賀さんな件   作:スティレット

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 やっぱりうろ覚えだと書きにくいな。そういや使い魔品評会もやってなかった。今更どうしようもないな。


露払いは原因にでもしてもらいましょうか

 あの後、殿下にダミーと本物の二通の手紙を書いてもらい、ダミーをルイズ、本物を俺が持つことにした。蝋印は両方とも本物のため、外からは見分けは付かない。

 

 それから火急の用件と言うことで当直の衛兵さんにも頼んで馬車にアルビオンへのお土産を積んでもらい、後はチップを払って黙ってもらった。

 

 ギーシュには嫌がられたがこの間作った鎖帷子を着せている。

 

「主、こちらを」

 

 俺は簡単に加工したペンダントとサークレットを取り出した。

 

「風石で作った矢避けのお守りです。簡単な風や火魔法なら逸らし、ある程度の質量までなら直撃は避けられます。これから戦地に赴きます故、身に着けていて下さい。急だったもので粗末なのはご容赦を」

 

「そ、あ、ありがと」

 

 そういえば何気にこう言ったプレゼントは初めてだったか。

 

「サイト、扱い違くないかい?」

 

 ギーシュが抗議してくるが――。

 

「ギーシュ、お前の鎖帷子は手首まで覆っているし、お前土メイジなんだから防御得意だろ。矢が飛んで来そうな時はゴーレムに盾持たせておけ」

 

「わかったよ」

 

 トレーニングの内容に、作り終わった金属を武具に作り直させたりしているので、その中にタワーシールドもある。なんとかなるだろ。

 

「ところで、僕の使い魔も連れて行って良いかい?」

 

「使い魔なんて居ないじゃない」

 

「ちょっと待ってくれたまえ。ヴェルダンデー!」

 

 ギーシュがそう呼ぶとでかいモグラが顔を出した。目がつぶらだ。

 

「嗚呼、僕のヴェルダンデ、今日もお腹一杯ミミズを食べたかい?」

 

 モグラと抱き合うギーシュ。シュールだ。

 

 しかしモグラは鼻をひくひくさせると、ルイズの方に寄って行った。

 

「な、何よ」

 

 そしてそのままのしかかり、ルイズを押し倒す。

 

「やめなさい! ギーシュ! あんた飼い主でしょ! 何とかして!」

 

「どうやらその指輪がお目当てのようだ。ヴェルダンデは僕のために宝石を見つけてきてくれるからね」

 

 この戯けが。のほほんと見ているんじゃない。

 

「はいはいヴェンダンデー。良い子だからうちの主に乗っからないでねー」

 

 モグラをごろんと横に転がし、腹をわしゃわしゃと撫でてやる。モグラを撫でるのは初めてだが、モグラでもスキンシップで大人しくなるのか。

 

「さて、主、念の為予備の服は積んでありますので、汚れが気になるなら着替えるとよろしいでしょう。ギーシュ。お前の使い魔は馬に追いつけるのか?」

 

「ああ、掘り進む速さは馬にも負けないぞ」

 

「じゃあ、馬車に着いてきてくれれば良い。主が着替え次第行くぞ」

 

 別に夜明けとか待つ必要も無いのでまだ日は昇っていない。

 

「待ってくれ!」

 

 ルイズが着替え終わって馬車を出そうとすると、上空から声が聞こえた。

 

「魔法衛士隊隊長、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドだ。アンリエッタ王女殿下から君達の護衛の任務を授かった」

 

「主、残念ながら、黒です。が、尻尾を出すまで泳がせておいて下さい」

 

 ルイズはこちらを驚愕の目で見ていたが、間諜、アンリエッタが俺達以外に任務を振らないよう釘を刺したこと、そして前もって予定外の増員には疑ってかかることを念押ししたため、猜疑の視線を送ってきたようだ。だがそれも少しの間で、ワルドに対応した。

 

「お久しぶりですわ。ワルド様。いえ、ワルド子爵」

 

「ルイズ、長く放っておいたのは本当にすまない。けれど僕達は婚約者じゃないか! そんな他人行儀はやめてくれ! 昔みたいにワルド様と呼んで欲しい」

 

「分かりました。ワルド様」

 

「ワルド様」

 

 めんどくさいなー。でもここで釘刺しておかないともっと面倒になるからなー。

 

「ん? 君は?」

 

「はい、ルイズ様の使い魔をしております。サイトと申します」

 

「そうか、君が・・・・・・」

 

 ああ、確かこいつ俺がガンダールヴか当たりを付けてるんだっけ。

 

「スヴェルの夜までまだ余裕がありますので、賊を警戒しつつペースを維持しようと我が主と友とで相談しておりました。しかし空中から警戒できるワルド様がいらっしゃったのはとてもありがたい。よって、私がお願いするのはおこがましいと思うのですが、主の安全には変えられないので、先行して偵察をお願いできますか?」

 

 ルイズとギーシュは何か言いたそうだったが、こんなやり取りはいつものことで、結果を出しているので黙っていた。

 

「そうか、そういうことなら任せてくれたまえ。さ、ルイズ」

 

 ルイズを連れて行こうとするのでチェーンコンボ。

 

「貴方様は噂に名高い「閃光」と聞いています。主様を連れたままでも十分賊には対処できると思いますが、主様も貴方様の負担にはなりたくないでしょう。よって、賊を発見したら規模次第ではそのまま単独で強襲をしかけて殲滅して頂けないでしょうか? 私どもは魔法や矢の届かない位置で万が一に備えて主様を守りますゆえ」

 

 トラップカード「持ち上げつつ自作自演を潰す」を発動。

 

 ワルドは一瞬顔をしかめたが――。

 

「わかった。そちらも任せたまえ。「婚約者」を危険に合わせるわけにはいかないからね」

 

 いやに「婚約者」を強調するワルド。内心焦っているのか?

 

 そうしてギーシュとルイズを馬車に乗せ、俺達は出発した。

 

 

 

「どういうこと?」

 

 馬車の中でルイズが切り出した。さっきのワルドとのやり取りか。

 

「主、王女殿下とのやりとりを覚えていますね? それもあるのですが、情報屋から色々と調べさせた結果、レコン・キスタとの繋がりがある者の中に残念ながらジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドの名がありました。それがまさか今回の任務に関わってくるとは思っていなかったのですが、釘を刺した上で来たのです。どんな思惑があるのかは分かりかねますが、主の身の安全には代えられないのであのようなやり取りになりました。婚約者と聞いていたので話さなかったのは申し訳ありません、あ、ギーシュ。今の情報は忘れること。じゃないと消されるかもしれないから」

 

「そんなさりげなく重大な情報を漏らさないでくれたまえ!」

 

 そんなギーシュに軽い調子で謝りながら、馬車を走らせていた。前方に小さくグリフォンが見える。先行しているワルドだ。

 

 そんなワルドが急降下したので、馬車を停止させる。

 

「何かあったのかしら?」

 

「おそらく賊でしょう。ギーシュ、念の為馬を守ってくれ。俺は馬車に矢が飛んできたらそれを防ぐ」

 

「分かった。任せてくれ」

 

 最近はこういう雰囲気になるとギーシュは若干謙虚になる。「なんでもあり」での模擬戦でもまだ負けていないため、少なくとも俺の意見はまず聞く。

 

 しばらくして、ワルドがこちらに来た。

 

「賊が待ち伏せしていたみたいだね。僕でも単騎で殲滅出来たから、もう大丈夫だ」

 

「分かりました。ありがとうございます、ワルド様。では、生き残りの処理はこちらで行いますので、引き続き警戒をお願いします」

 

 悲しいけどここで逃がすとラ・ロシェールでまた襲われる危険があるので芽を摘んでおかないといけないのよね。

 

「サイト・・・・・・」

 

 暗に殺すなと言っているのだろう。でもここで禍根を断っておかないといけないのだ。

 

「主様。この馬車に捕虜を乗せるゆとりはありません。そして、ここで処理しておかねばまた別の人々が犠牲になります。どうしても必要なことなのです。ですが無抵抗の人間を殺す様を見る必要はありません。ギーシュとここで待機していてください」

 

 許しは請わん。

 

「いえ、私は貴族よ。これが必要なことだったら、逃げないわ」

 

「僕も手伝わせてくれ、サイト。乙女が気丈にもここまで言っているんだ。僕だけ逃げるわけにはいかない」

 

「了解しました。では、ワルド様。こういった場合終わったと思った時が一番危険なので、グリフォンで周囲の警戒をお願いします」

 

 この後俺は、ギーシュの魔法で首だけ出して埋めた自称賊の頭部を機械的に西瓜割りの要領で潰していった。2人潰した時点で傭兵だと正体を明かしたが、それでもまた襲ってこないとも限らないので残りも自己暗示で平静を保ちながら潰していった。今夜は眠れそうに無いな。

 

 

 

「ダーリン、置いていっちゃうなんて悲しいわ!」

 

「・・・・・・」

 

 ラ・ロシェールでキュルケとタバサに遭遇した。原作の通り追って来ていたらしい。ただ、夜明け前に出発したのと、道中の賊はワルドが無双したためこちらが早く着いたらしい。

 

「今回は色々と訳ありだったからね。話すわけにはいかなかったんだ」

 

 さっき鏡で目を見たら、微妙に死んでいたが、暗示をかけなおして平静を保っている。ごまかせている、はず。

 

「・・・・・・ダーリン、何かあったの?」

 

「何、気にすることは無いよ。ここじゃどこにでもあることさ」

 

 本当によくあることだ。特に、これから戦争になったら末端の兵士の風紀なんぞ期待出来ない。早めに慣れるのが一番だ。

 

 ただ、決闘の時と違い、無抵抗の人間を殺すのがここまでクるとは思わなかった。想定していたが、暗示を覚えていなかったらどうなっていたかわからない。

 

 何を今更綺麗ごとを並べようとしているんだ。考えるだけ無駄なことだ。

 

 そうして思考を切る。

 

「それはそれとして、部屋割りを考えよう。キュルケとミス・タバサは仲が良いし、個室か同室かはまかせるよ。ギーシュは俺と同室かな。ですが、私は主様の使い魔でもありますのでルイズ様の隣室を希望します。ワルド様は主様の婚約者とのことですが、今回は任務が任務なので、申し訳ないのですが別室でお願いします。場合によっては不本意ですが、主様の御母堂に報告しなければなりませんので」

 

 カリンちゃんの名前を出すとワルドの顔が引きつる。ああ、こりゃ稽古でもつけられたな。

 

「そうだね、使い魔君の意見におおむね賛成だ。皆はそれで良いかい?」

 

「あたしは構わないわ」

 

「賛成」

 

「僕も出来れば節約したいし、それで良いよ」

 

「わかったわ」

 

「では、今日はゆっくり休もうか」

 

 ワルドが解散を促すが――。

 

「私は船を手配しましょう。それに土産を積まないといけないので」

 

 馬車に火を点けられては困るので、まだ動けるうちに動いておくことにした。それにしても最近タバサがじっとこちらを見て、たまに「ミスはいらない」と言うのだが、これはハニートラップか? それとも単に好感度が足りているのか? 今度キュルケに相談してみよう。

 

 先手先手を打ち続けているので多分ワルドは明日、割と本気で来るかもしれないな。さっさと荷物積んで寝よう。今日はそれで終わりだ。




 アドレナリン全開で相手が向かってくるって言う状態と、フラットで無抵抗の相手だと殺す抵抗感が段違いらしいので、こんな感じになりました。

 ダクソ2の私の信仰戦士は理力1なので師匠が着いてきてくれません。一旦10まで上げようかな。

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