転生先が平賀さんな件   作:スティレット

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 お待たせしました。あちらをほぼ毎日更新してたので、こちらは手付かずでした。


番外編 7話

 オルニエール領と学院を往復しながら内政をこなし、早数週間が経った。

 

 季節は秋。収穫の時期であり、今年は辛うじて凶作を免れたが、少し食糧事情が芳しくないので肥料を作るのも並行して領民の食料の買い付けを魚と貝でまかなった。

 

 両方ともタダで放出し、その代わりごみの選別は徹底してもらう。酸性、中性、アルカリ性を分けて、土の状態によって使い分けるのだ。

 

 一方で上下水道工事のための人足を雇う触れも出した。それの問題に対応する警備部も。もちろん予定通り圧迫面接は行ったよ。

 

 ほっと一息付いてたであろう平民を襲うのは伏せてあった二次面接と言う情報。

 

 緊張した顔が俺たち貴族一同と村長達によって一気に青く変わる。

 

 俺は手を組んで黙したまま動かない。その横でルイズたちが淡々と質問をする。「志望動機は?」「オルニエール領に対しての印象は?」「帰ったら何がしたい?」など。

 

 大抵は視線が右往左往して比較的威圧感の無い村長か、美貌に当てられて俺の婚約者の誰かに行き着く。だが、そこで威圧感を出すのだ。「誰の許しを得て人の恋人を見ているんだ?」と。

 

 そこまで行くと大抵正直になる。戦場で培った威圧が嘘をつかせないのだ。

 

 後ろめたいものはここで詰むし、もし、俺が気がつかなくてもルイズ、キュルケ、シャルロットが見逃さない。シエスタとテファは囮だ。目を付けた時点で威圧する。

 

 こうして警備部の二次面接を行った。もちろんその分待遇も良い。人足と比べると専用の住居も用意される。それだけ待遇がいいので抜き打ち検査は行うが。

 

 それで「オルニエール領に残りたい」と思わせたら、後は自身に頑張ってもらう。人は一度贅沢を知ってしまうと取り上げられるだけで苦痛なのだ。

 

 だけどそれだけだとまだ足りない。そうだ、俺のネームバリューを利用して学校を建てよう。

 

 通常の魔術学院ではなく、読み書き算数を一通り教え、領民が他所に移らないよう、他の領の税率などを調べ、おまけに公共事業にどれだけ力を入れているのか知ってもらう。他の領だと税に6割持っていくとかザラだし。上位成績者には補助金を出そう。

 

 しかしそれだと警備部がパンクしてしまうな。計画書だけ立案して、実行は春からでいいだろう。春になったらまた警備部の増員だ。それまでにノウハウが出来ていれば良いんだが。

 

 うむ、昔読んだオリ主みたいに行かないものだ。あちらを立てればこちらも立てなければ片手落ちどころか破綻してしまう。俺の後ろ盾は強力だが、俺自身の貴族暦は薄っぺらい。別のもので代用しながらごまかしごまかしやっているのが現状だ。

 

 領地の経営はこんなところか。

 

 

 

 コルベール先生から手紙が来た。所在地はロバ・アル・カリイエからだ。

 

 なんでも、高高度、雲の上のギリギリいけるところまで上昇し、サハラを越えたらしい。よく鉄血団結党に見つからなかったな。

 

 後は東方の交易品に今俺が読んでいる手紙を紛れ込ませて、学院まで届くようにしたとか。

 

 それにしても、勢い余って国の上を飛ぶ許可を貰い忘れたとは先生らしい。ほとぼりが冷めるまであちらで研究と探索を続けるそうだ。

 

「ねえ、才人、何を読んでいるの?」

 

 一緒にお茶を飲んでいるルイズが声をかけてくる。

 

「コルベール先生がロバ・アル・カリイエまで到達したんだって」

 

「それはすごいじゃない!」

 

「さすがミスタだわ」

 

「興味がある」

 

 ルイズ、キュルケ、シャルロットは大きく食いついてくる。逆に接点があまり無いシエスタとテファは置いてけぼり気味だ。

 

「今はうっかり国の上を許可無く飛んじゃったからほとぼりが冷めるまであっちで研究だって。まあ、先生のことだ。ロバ・アル・カリイエの技術をさらに発展させてそうだな」

 

「それもそうね」

 

 パトロンであるキュルケが一番分かっているようだ。

 

「一応、知り合いのエルフに頼んで手紙を紛れ込ませて返信しようと思うけど、何かあるか?」

 

「あ、それなら乗組員の給料でもあっちじゃエキューは使えてないかもしれないし、実家からゴールドのインゴットを送らせるわ」

 

「それもそうか。じゃあ俺も宝石を何か錬金して送っておこう」

 

「私はトリステインの料理が恋しくなっているかもしれないから、そっちを主に送っておくわ」

 

「ドクペ。コルベール先生ならこの知的飲料の味が分かるはず」

 

 キュルケはパトロンだから分からんでもない。ルイズの言い分も最もだ。だがシャルロット。ドクペは人を選ぶぞ。いや、ドクペが人を選ぶのだ。それと知的飲料ってフレーズ気に入ったんだね。

 

「あの、コルベール先生って?」

 

 テファが質問してくる。

 

「俺達の恩師さ。俺がこの学院で一番お世話になった先生って言っても過言じゃないな」

 

 戦争の話も酒と一緒に付き合ってくれたし。

 

「確か発明が好きな方でしたね。今思えば夢を忘れず情熱的な方だったと思います」

 

 コルベール先生の小屋は俺とシエスタが時折掃除をしている。たまにテファも手伝ってくれるが、あれが誰の小屋までは知らなかったか。

 

「なら、まとめてビダーシャルに頼むから、そのときテファをネフテスまで連れて行って良いか聞いてみるか」

 

 悪いなみんな。ルイズが虚無だから必要以上のメンバーを連れていけないんだ。




 これからは可能な限り執筆の頻度を上げるため、こういう軽い話を書こうと思います。

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