転生先が平賀さんな件   作:スティレット

50 / 57
 日本編は思ったより考えるのが難しいです。シミュレートとはなんだったのか。


番外編 3話

 無事何事もなく旅館で一泊を過ごし、朝が来た。

 

 朝食前にまた歯を磨くことになったが、ルイズとシャルロットは寝ぼけ気味だ。特にルイズは低血圧なので俺にされるがまま歯を磨かれている。シャルロットは一応ぎこちない手つきで歯を磨いているが、寝癖が直っていない。

 

 シエスタとテファは人の面倒を見る立場の人間だったので、起きたらすぐに顔を洗い、時間をかけてなれないブラシを動かしていた。キュルケはその間くらいだ。あまり甘える機会が無いのでこのときはそのままルイズと一緒に歯磨きを催促してくる。あれ、ブラシは無理でもハルケギニアで糸ようじを売り出せば儲かるんじゃないか?

 

 歯を磨き終わったら朝食だ。焼き鮭か。いいね。

 

「みんな、そのまま聞いて欲しい。今日は滞在する部屋探しだ。時間が余ったら家に寄って昼食を食べた後、何するか考えよう。今日の夕飯を聞いてきたが、ヨシェナヴェもとい寄せ鍋が出るらしい。あちらでは手に入らない調味料も使われてるから、昼食の後買い物もいいかも知れないな」

 

「分かったわ」

 

「あたしは買い物で100えんしょっぷって言うのに寄ってみたいわ。ダーリンの国がパン一つ買える値段でどれだけのものが売っているのか興味があるもの」

 

「図書館に行きたい」

 

「もし時間が余ればですけど、才人さんが暮らしていた町をゆっくり散策してみたいです。小さい頃の才人さんはどんなことをしてたかも気になります」

 

「私もシエスタと同じ意見よ。ゆっくり歩いて回るだけでも十分楽しめそう」

 

 結構意見が割れたな。

 

「分かった。けどシャルロット、君は日本語をまだ読めないだろう。あちらの文字に比較的近い英語から学んでいこうか。買い物に100円ショップと本屋に寄るとして、それから散策しよう。昨日は暗くなる前に旅館に到着したから分からなかったけど、ここら辺は夜でも街灯の灯りで夜道も明るい。夕飯までに間に合えば十分かな」

 

 今日の予定を話し合ってから、目星をつけてある不動産屋に当たることになった。

 

 

 

 マンスリーマンションは2ヶ月契約で、俺を含め6人で暮らすのでちょっと高めの広い奴を探すことになった。

 

「この国の家は機能性を優先しているから、廊下も短めだ。ただ、いちいち家具を揃える必要の無いところを借りる予定だから気に入ったものが有ったら候補にいれよう。こっちは一月が平均30日程でね。今は月始めだからほぼ60日だ。それくらいあればルイズの精神力も貯まっているだろうから、帰りは俺の家の姿見にワールド・ドアを使う予定。何か質問あるかな?」

 

「精神力を貯めるのは一月で十分なんだけど、なんで二月も留まるの?」

 

「それは学校を長い間休学していたり、世間への説明もあるからね。知り合いや友達にも元気な顔を見せなきゃいけない。たまに帰ってくるから心配するなってね。それに警察って言う犯罪者を捕まえる機関もあるから、俺が失踪していた間のことを説明して、なおかつ魔法があることを証明して見せないと周りが納得しないからかな」

 

「・・・・・・そう」

 

「気にしないでくれ、ルイズ。半分は俺の意思でゲートに飛び込んだんだ。確かに辛いこともあったけど、楽しいこともたくさんあった。それにこんなに多くの恋人に恵まれたから俺は後悔してないよ」

 

「才人がそう言うなら出来るだけ気にしないことにする。けど、せめてものケジメとして義父さまと義母さまには謝らせて。半分は自己満足かもしれないけど、そうでもしないと申し訳が立たないの」

 

「ルイズがそれでいいなら文句は無いよ。さて、なんかしんみりしちゃったけど、これから楽しいことはたくさんあるからね!張り切っていこう」

 

 強調するように明るい声を出し、話はこれでおしまいと打ち切った。

 

 

 

 借家を選ぶのには難航を極めた。シエスタ、シャルロット、テファはまだいい。ルイズとキュルケがそれなりに過ごすには妥協を許さなかったのだ。俺は行く先々に暗示をかけて「男一人に女5人連れ」から「6人家族」に認識をずらし、ついでに違和感を消す。保証人には後日父さんになってもらうとして、家事はシエスタとテファが出来るからなんとかなるだろう。シャルロットのはサバイバル技術だし。

 

 そうしてなんとか部屋が決まり、一段落付いた頃には正午を回っていた。

 

 携帯は既に解約されているので公衆電話から自宅へ電話をかける。

 

「母さん?才人だけど、お昼まだ取ってない?うん、うん、バスで家まで一旦帰る予定だから、何か買って帰ろうかと思うんだけど、ハンバーガーでいい?うん、分かった。じゃ、後でね」

 

 今回はモ○にしよう。個人的にはあっちの方が食べ応えがあるイメージだ。それにバンズも潰れてないので見た目もいいし。

 

「よし、一旦帰るから途中手軽に食べられるものを買って家で食べよう。まだ暑いからデザートはアイスにでもしておこう」

 

「あいす?氷?」

 

「アイスクリームの略だよ、シャルロット。他にもシャーベットとかあるけど、氷菓子はまとめて俺はアイスって呼んでいるんだ」

 

 そういやマルトーさんも順調に出世してたっけ。魔法学院の料理長だからじきに日常魔術以外も学ぶ許可が下りると思うけど。

 

 しかしアイスクリームだったら溶けないようにドライアイス貰わないといけないな。先にスーパーでも寄るか。

 

「今日の昼食はハンバーガーって言うミンチ肉を丸めて平たく焼いたものなどに、パンで挟んだものだ。一覧も絵付きで見れるから、細かい質問はその時受け付けるよ」

 

 余談だがスーパーでは色とりどりのアイスにシャルロットが「一人一つまで」と言う言葉に結構な時間悩んだ。制限かけないと太るぞ。

 

 

 

 帰ったらルイズが開口一番「ごめんなさい」と言う事案があったものの、俺がこうして無事帰ってきたことと事前の説明により、母さんは責める事無くとりなしてくれた。このときばかりは母の偉大さを知ったよ。

 

 それから仲良くみんなで昼食となった。アイスもドライアイスを貰って、今は冷蔵庫の冷凍室に放り込んであるから大丈夫。今度水石と風石を利用して冷蔵庫でも作ってみるかな。水の精霊に石貰ってこなきゃ。

 

 高校は通信制に移行しておこう。暗示と事情の説明でゲート越しにレポートを渡すだけで単位がもらえるようになればいいな。日本で合法的に稼ぐにはせめて高校卒業まではこぎつけないと。裏の仕事なら問題はないんだが。

 

 まあ、裏と言っても俺の場合は下準備と言うか、比較的安全な生産作業がほとんどだ。魔道具作成だけで今は十分食っていける。地下水もあるから錬金したダイヤを暗示で違和感を持たれないようにしつつ売り払えばいいってのもあるし。

 

 その地下水はデルフにあちこちで聞いたことを自慢していた。その一方でデルフは俺の過去を母さんから聞いたらしく、ハルケギニアでの話を交えながら談笑していたようだが。準備段階で戦争などの話は制限をかけておいたので多分大丈夫だろう。

 

 今はみんなで電化製品の説明を母さんから受けている。物珍しさもあって貴族の3人も進んで聞いていた。ま、母さんの「いざとなったら家を守れるように家事の一つでも出来ないとダメよ」ってのが効いたのかもしれない。

 

 特にシエスタは洗濯機や乾燥機など、手作業でやらずに済む電化製品に感銘を受けていた。貴族娘達はいまいちピンと来ないようだったが、洗濯板でごしごしするのはそれなりに骨なんだよ。手もみ洗いが必要と言う例外も存在したものの、ネットに入れて洗えばいいのもあるので熱心に操作法を学んでいた。これは電化製品一式を俺がレビテーションで運ぶフラグかな?ソーラーパネルと風車の設置も検討しなければ。

 

 俺が機材を揃えるために宝石を売る算段をしている一方、他のみんなは楽しそうに質問をしていた。

 

 

 

「せまいけどその分色々な品物がぎっしりね。あたし、こういうの好きよ」

 

 本屋でアルファベットの本と英語の小説、英和辞典などを買い、俺達は100円ショップに来ていた。ツェルプストーの家は家具がばらばらで結構なカオスを生み出しているので、雑多でも整理の行き届いた店内にキュルケはお気に召したようだ。

 

「みんな、籠に入る分なら買っていいからそのまま持ってきてくれ。ただし、封を開けないこと。買う前に開けるのは常識がなっていないといい顔されないからね」

 

 買い物で思い出したが、みんな私服だが中世風なせいかどこか違和感が拭えない。後日みんなで服を買いに行かなければ。今着ているのは部屋着にしてもらって、一人上下5着までは買わないとダメか。貴族と現実の最低の妥協ラインはそこかな。

 

 一人で女の服選びの値段を予想して戦慄しつつも、男の見栄で内心を押し殺して店内で邪魔にならないようみんなを連れて歩く。だが興味津々なキュルケとシャルロットは早々に離脱。ルイズとシエスタもお菓子コーナーへ消えていった。一応全員時計の見方を教えてあるので分からなくなったらカウンターの時計を見ながら邪魔にならない位置で待っているよう言ってある。唯一テファは俺の後ろでおっかなびっくり着いて来ている。

 

「あ・・・・・・」

 

「ん?」

 

 テファの視線の先を見るとそこには玩具コーナーが。

 

「孤児院のみんなにあげれば喜ぶかなって思って」

 

「そういうことか。なら、一緒に選ぼうか。後はマチルダの手鏡や櫛でも探そう」

 

「うん、ありがとう、サイト」

 

「テファこそいつもみんなを気にかける心を俺は見習いたいと思うよ」

 

 100円ショップでは男の子と女の子、そしてマチルダが喜びそうなのをテファと相談して選んだ。

 

 

 

 100円ショップでの荷物が予想外に多くなったため、今日のところはこれで旅館へ戻ることとなった。少し早いが風呂に入ってさっぱりした後、夕飯だ。

 

「いただきます」

 

 今日の夕飯は寄せ鍋だ。ただ、旅館なのでみんなで一つの鍋をつつくのではなく、一人用の鍋に各自固形燃料で熱しながら食べるのだ。

 

「寄せ鍋は基本的に何を入れても寄せ鍋だ。シエスタのところだと山菜が主だったみたいだね」

 

 後ウサギ肉とか。

 

「はい、これは海のものですか?こんなに大きな海老まで入っててびっくりです」

 

 淡水だともう一回り小柄だったりするからね。でもアメリカザリガニは他の海老っぽいのを駆逐しちゃうから持ち込まない。

 

「凍らせる技術があると遠くまで腐らせずに運べるから、トリステインに戻ったら港町で独自の料理を探すのもいいかもしれないね」

 

 唐突だが、麦でみりんは出来るのだろうか?あれは主に米だった気がするが。

 

 そうしてみんなで鍋を食べながら、終わったら歯磨き指導をしてみんなでまたテレビを見ながら寝た。今日は歌番組か。




 思えばシエスタの作る寄せ鍋は調味料に何を使っていたんでしょうね?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。