転生先が平賀さんな件   作:スティレット

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 今日だけでまさか3話連続投稿とは思うまい。出せるときに全力を出すのが私のスタイル。


王族のごたごたに巻き込まれたけど私は元気です

「俺は王を辞めるぞシャルルゥー!」

 

 欝モードから一転、何言ってるんだこの王様は。

 

「陛下、ジョゼフ陛下、今辞められては困ります。大方シャルロットに王位を譲ろうと言う考えなのでしょうが、今の今まで復讐と任務に生きてきたシャルロットがいきなり貴方の代わりなんて出来るはずがないじゃないですか。それより姪が可愛いなら、まず従姉妹のイザベラ様でしたっけ?その方の仲立ちをお願いします。それと陛下はエルフと繋がりがあるのでしょう?今から起こる災害の保険の為に、顔つなぎをお願いしたいのですが」

 

「む、それもそうか。つい先走ってしまったわ。許せ」

 

 ああ、もう、王族ってこれだから・・・・・・。

 

「まず、シャルロットが学院を卒業するまで王の教育は待ってあげてください。残りわずかな青春なのです。楽しませてあげるのがよろしいでしょう。ついでにシャルロットとの交際を認めてください」

 

「それはシャルロットも同意してのことなのか?」

 

「無論です。なあ、シャルロット」

 

「うん」

 

「ならば余計なことは言うまい。これまで叔父としてふさわしい行動すらしてこなかったのだ。シャルロット。お前が好きな相手を愛せ」

 

「わかった。その、ありがとう、叔父上」

 

「むう、姪とはこんなにも可愛らしかったものなのか。俺は過去に目を向ける余り現在(いま)見るべきものを見ようとしなかったのだろう」

 

 確かにもじもじするシャルロットはとても可愛いが、シェフィールドさんが切なげな顔で見ているぞ。

 

「シェフィールドさんにもたくさん苦労をかけたようですし、呪いは解呪しておきました。ただし、相当体力が落ちていると思うので、無茶させないように添い寝でもしてあげてください」

 

 俺の言葉にいいぞ、もっと言えと目の下にくまをつくりながらも満面の笑顔を浮かべる神の頭脳。そのスキルもあって何徹もしたマッドサイエンティストのようだ。

 

「そうだな。貴様の言葉には一つ一つが最もだ。どうだ?シャルロットを娶った暁にはガリアで王にならんか?」

 

 そんな「世界の半分をお前にやろう」みたいなノリで言わんでください。

 

「いえ、恐縮ですが、トリステインの次期女王との先約があるのです。シャルロットはそれを承知の上で俺に見て欲しいと言いました。俺もシャルロットを妹のように大切に思っていたので決して嫌いではありません。その言葉に真剣に向き合うため、先方には話を通してあります。故に、傲慢ではありますが、もしシャルロットとの間に子供が出来たらその子に王の教育を施してあげてください」

 

「ぬう・・・・・・シャルロットがそれで構わないのならば仕方あるまい。ただし、俺が言うの資格も無いかも知れんが、シャルロットを悲しませるな。それが条件だ」

 

「確かに、承りました」

 

 後日聞いたところによると、シェフィールド本人が水の秘薬を飲んでジョゼフと無理にハッスルしたらしい。本人が惚気て言い放ったのだから間違いないだろう。

 

 

 

「・・・・・・!・・・・・・・・・!・・・・・・!」

 

 これまでの緊張が解けたのか、防壁のかけ直しが効かなくなった俺はグラン・トロワの一室でサイレントをかけ、涙を流し壷に向かって嘔吐してた。涙は枯れず、吐くものがなくなってもえづき続けた。

 

「兄さん?」

 

 まずい、サイレントが切れたのか。それとも気配すら気付かないほど余裕が無かったのか、シャルロットが俺を心配そうに見ている。上手い言い訳が思いつかない。

 

「この間の戦争で、いっぱい、いっぱい人を殺したんだ。使い魔を作って殺させもした。俺も何人殺したのか分からない。俺が殺した。俺が殺したんだ」

 

 懺悔が止まらない。感情が抑制出来ない。限界だったんだ。俺自身にはもうどうしようもない。

 

「兄さん、サイト」

 

 ゲロまみれの俺の顔をシャルロットは優しく抱き寄せた。

 

「サイトは悪くない。私も居る。散々助けてもらった。だから、今度は私が助ける番。泣き疲れて眠るまでずっとこうしてる。だから、私の前では弱音を吐いて」

 

「あ、ああ・・・・・・あああ」

 

 それから俺はシャルロットの小さな胸で本当に泣き疲れて眠るまで嗚咽が止まらなかった。

 

 

 

 泣き、シャルロットの服を胃液で汚しながらも一晩経ち、翌日俺はシャルロットの胸に抱かれながら寝ていたのに気がついた。

 

 シャルロットの服は俺の胃液で異臭を放っている。だが、それでも嫌な顔一つせずに俺の頭を抱きかかえシャルロットは眠っていた。

 

「よう、相棒。立ち直ったようだな。嬢ちゃんに礼言っとけよ」

 

「マスターもあんな顔するんだな」

 

 二振りの魔剣が気軽に声をかけてくる。今はその気遣いが嬉しい、が、地下水。お前俺の後腰に装備してるからそこからじゃ顔見えないだろうが。

 

「俺も人間なんでね。笑うだけじゃなく泣いたりもするさ・・・・・・もう大丈夫だ」

 

「相棒の本格的な人間相手の初陣はあれが初めてだからな。それまでゼロ戦に乗って落としてただけだし。気にすんな」

 

「えっ、マジかよ。アレだけの戦いっぷりで初陣かよ?」

 

「まあ、そんなところだ。ところで、タバ・・・・・・シャルロットを綺麗にするから、集中させてくれ」

 

『分かったよ』

 

 寝ているシャルロットの服にコンデンセイションと火の魔術の同時発動で、人肌に温めてから起こさないように濯ぐ。

 

「ん・・・・・・あ、ん」

 

 濯がれている間くすぐったいのか、シャルロットが色っぽい声を出すが、我慢だ。こういうのは女の子の覚悟が完了してからじゃないとダメだと思っている。

 

 終わったら壷に汚水を捨て、抽出をかけて乾かす。

 

「ん、兄さん?」

 

「おはよう、シャルロット。それと、もう兄さんじゃなくていいよ。才人って呼んでくれ」

 

「分かった、サイト」

 

「それと、昨日はありがとう、そして済まない。汚した服は寝ている間に魔法で洗っておいたから、そこまで汚くは無いはずだけど、念のため一度洗濯に出しておいてくれ」

 

「いいの。むしろ頼ってくれてうれしかった。それと、服を洗っている間換えが無いから、サイトが温めてくれればそれでいい」

 

「・・・・・・いいのか?昨日の今日だぞ?」

 

「時間は関係ない。私が決めた。あなたがいい」

 

「分かった。出来るだけ優しくする」

 

「うん」

 

 結局もう一晩泊まることになった。

 

 

 

「若いな、二人とも」

 

 翌日、げっそりした様子のジョゼフがそう呟いた。となりには何故かジョゼフよりつやつやしているシェフィールドの姿が。

 

「陛下もまだまだ現役そうじゃないですか。その様子じゃ相当搾り取られたみたいですけど」

 

「・・・・・・言うな」

 

 言い返すとばつが悪そうにそっぽを向くジョゼフ。あんた人が変わりすぎじゃないか?シェフィールドさん。そこで「そんなジョゼフ様も可愛い」とか言う顔してないで嗜めてやってくださいよ。

 

「いいじゃないですか。それより、陛下には愛人も居るのでしょう?お薬処方しておきますから。腹上死とかシャレにならないので精が付く奴を」

 

 主に材料はトロル鬼の生血とかで作るけど。

 

「・・・・・・ああ、頼む」

 

 こりゃ本格的に参ってるね。早めに贈ってあげよう。

 

「それはそれとして、イザベラ様への仲立ちの件、是非ともお願いしますね。最初のうちは素直になれないかもしれませんが、昔は仲が良かったと聞いています。それに陛下は魔法の使えない苦しみが分かるはず。ガリアは魔法大国ですが、「それ以外の才能」も発掘出来るよう取り計らってください」

 

 その言葉に目を見開くジョゼフ。

 

「貴様・・・・・・いや、そなたは本当によく気が付くな。アレは俺に似て魔法が下手だった。いや、俺にはまだ虚無があったが、アレもラインなのだ。シャルルやシャルロットと比べられ、鬱屈している。もしよければそなたの知恵を貸してもらえんか?」

 

「そうですね。それでは俺から贈り物をしましょう。ただし、それは武器です。それがシャルロットを傷つけないよう、導いてあげてください。過去、貴方とオルレアン公の起こった悲劇が重ならないように」

 

「感謝する。それで、贈り物とは?」

 

「今から創ります。これは王族だけの秘密として、信用出来る方に調合をお願いします。よって、今から言う金属を出来るだけ集めてください」

 

 今回一日で作るから出来るだけ楽がしたい。なので土くれから錬金するわけにはいかないのだ。

 

 

 

 そうして集めてもらった金属を溶かし、抽出をかけて余計な成分を飛ばす。足りない金属はしょうがないので錬金した。そして、程よい配分で混ぜる。今回作るのはブルーステンレスの6ミリ8連発リボルバーだ。イザベラはキュルケと違って護衛が居る。万が一の護身用、それも慣れていない射撃では数撃つしかない。だがオートマチック式は整備をこまめにしないと俺の技術では動作不良を起こす。だから消去法で6ミリを8連発にしたわけだ。

 

 もちろん6連発と違い、レンコン式の弾倉は回る角度も変わる。まずは製図し、それに沿って製作するが、ハルケギニアの最低距離単位がサント、つまりセンチからなのだ。相当の忍耐力を要し、また、失敗も繰り返した。念のため0.1サントから図れる定規などを揃えてもらったが、俺が欲しいのはそのさらに0が一つ余計にある奴なのだ。正直キュルケ用に製作した奴よりきつかった。

 

 一応ハルケギニアにも銃はある。だが、最新式はまだマスケット銃。ブリミルが降り立って六千年ほど経っているらしいが、魔法技術の依存により、産業の発達がそこまで積極的ではない。いつかは辿り着くかもしれないが、それはせめて俺が生きている間は先送りにしたい。死んだ後まで面倒見切れんし。

 

 そういう俺の事情もあって、重要機密となったパーカッション式リボルバーを製作した。頑張ればサプレッサーもいけるかもしれないが、そうなったら貴族は暗殺に怯え、平民が革命を謡うだろう。それは面倒だ。

 

 とにかく、リボルバー自体のノウハウはあったので四苦八苦しながらも作り、ジョゼフに託した。願わくば、これがシャルロットとイザベラの架け橋とならんことを。




 正直ここまで肩の調子が良いとは思いませんでした。程よい気温がすばらしい。寒いと肩が痛くなり、暑いと汗ですぐかゆくなる。日に2回お風呂に入らないと気がすまなくなりますし。

 追記

 デルフにとって遠距離からちまちま撃つのは初陣とは看做さないらしいです。

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