無事任務を成功させた俺達は、原作のような欝フラグを起こすことも無く、悠々と竜母艦へ戻った。原作と言えば、ルイズの虚無は秘密にされていないためその功績がこちらが大げさなんじゃないかって思うくらいに盛大に称えられた。先導してくれた竜騎士一同も出世への近道となるだろう。
だが俺の能力にも限界がある。人は2本の腕しか持たない。万能ではないのだ。つまり、何が言いたいのかと言うと、神の頭脳ことミョズニトニルン、シェフィールドが見つからないのだ。司令部でここら辺の地形を把握したのだが、一人で水源全てを探るのは限界がある。仕方が無い。あれを使うか。
俺は身銭を切って100着ほどのクロースアーマーと、プレートアーマー一式、フルフェイスヘルム、後適当な武器をここロサイスで買ってきた。手持ちで今後のことも考えるとこれが限界だ。まあ、鹵獲品ばかりなのでかなり安かったではあるのだが。
そして何往復かでレビテーションで運び、持って来た竜の牙を人の居ないところでおもむろに蒔く。すると、そこから骸骨が沸いてきた。そう、RPGでおなじみ、スケルトンの上位互換、属性もアンデッドではない竜牙兵さんである。おまけに今回使ったのは恐竜の化石では無く本物の竜の牙だ。
ただし、この竜牙兵さん、マジックアイテムでもあるのでミョズニトニルンには相性が悪い。だから、まずは沸いてきた奴から順にアーマーを着込んでもらう。それでここら辺を素で徘徊してたら化け物扱い確定なので素肌?を晒さないことによりごまかすのだ。そして、その口に羊皮紙で書いた護符をねじ込む。これは操られるのを妨害するための措置で、咄嗟に思いついた苦肉の策でもある。頭蓋骨内でくしゃくしゃに丸めた護符が膨らむのでストンと落ちることも無い。100体全てに護符を食わせたらヘルムを被ってもらう。竜牙兵と言うだけあってその力と耐久性はかなり高い。本当は鎧など要らないのだが、まあ、カモフラージュだし、ついでに鎧を錬金で質の良いものに変えておく。
念の為錬金し終えた奴から順に、そいつ自身の手でゴリゴリとジャミングする魔術を刻んでもらう。まとめてやったほうが楽とは言え、一度着た鎧を脱いで内側にそこら辺の石片を錬金した鉄片で何かを刻む様はとてもシュールだ。
待っている間新しく更新した脳内レーダーには生き物、特に人間の姿は映らないので、新たにダイナマイトを作っていく。構造はもう熟知しているので作ったグリセリンと買った硝安で手軽に錬金し、導火線の先に引き抜いたら点火するよう筒を作り、水などが入らないよう密封する。
作り終えたダイナマイトは持って来た袋に入れ、鎧の内側に刻み終わった竜牙兵の順に魔力を込めていく。これでたとえ燃やされても鎧が残るし、逆に鎧が破壊されても護符が残る。
「よし、お前ら、行け」
何を探せとかは別に言わなくても良い。口頭で命令したのも気分だ。こいつらは脳内の補助術式で逐次連絡を取り合い、連携する。言わば、
命令された竜牙兵達は思い思いに武器を取り、わずかな音を立てながら小走りで駆けていく。これで見つかるといいんだけど、あんまり期待は出来ないね。
一仕事終わったので後は状況が動くのを待つのみだ。天幕へ帰って一杯やろう。
「では、任務達成と生還を祝って、乾杯!」
俺とルイズは合間を縫って知り合った竜騎士の面々と酒を酌み交わしていた。
「しかしすごかったね、あの新型爆弾は!」
太っちょ隊長のルネが絶賛する。
「ああ、空って遮蔽物が無いだろ?おまけに高速で爆破場所から離れるんだったら破片を飛び散らせる方が有効だと思ったんだ」
「それにあの飛行機だっけ?敵の射程外から攻撃できるのはすごい。おまけに普通の銃と違って連射ができる!」
ルネはご機嫌だ。
他にも、中性的で白い金髪の半端無いショタ度を誇る双子のジルベールとセブラン。互いに酌をしてニコニコしている。
赤毛のアッシュは貧乏性でワインをとにかく水で薄めて飲むのが好きらしく、時々中身を魔法でかき回している。
無口なのがフェルナンだ。別に飲み方は迷惑をかけなければ好き好きだと俺は思っている。
こうして親睦を深めながらも、こいつらは俺達の護衛任務に着いたのでゼロ戦の機銃を陸戦用に使うための分解を手伝ってもらった。部品がどこかに行かないように監視するのと、重い部分にレビテーションをかけてもらっている間に俺が念力でボルトを緩めたりしたのだ。普段コルベール先生はこれを一人でやるからすごい。
ともかく、持って来たストックやらの部品を取り付けて、機銃を取り外したゼロ戦は部品がなくなくことも余ることも無くきちんと機銃以外元に戻った。多分これは一人では出来なかっただろう。
今回で消費した分の弾薬は7.7ミリのみだったので、問題なく持って来たリロードツールで雷管を外し、新しいのに取り替えた。新しく作る雷管は使用済みで反応し終えた雷管を取り外して径やら厚みやらを計り、器の母型を作り生成後、中に雷管を作る。これが20ミリになると色々と面倒だったりする。大きすぎてツールが使えないのだ。
シェフィールドは現在竜牙兵が探しているが、なかなか見当たらない。一応目星を付けて水源の上流から下流にかけて配置をつけた。疲労などと無縁ゆえの運用法だ。
だが気を張っていてばかりでは身が持たない。俺はルイズと新しく知り合った仲間と一時の団欒を過ごしていた。
「失礼、ミス・ヴァリエールはここかい?」
が、時には邪魔も入るもの。
「ああ、だが貴公の名を教えてもらってもよろしいかな?」
ルイズの前に出て対応する。
「君が「左手」かい?ぼくの名はジュリオ・チェザーレ」
「そうか、俺の名前はサイト・ヒラガ。サイトーンじゃないからそこのところよろしく。俺を左手と呼ぶからには君は「頭脳」か「右手」か」
「右手だよ」
お互い意味深な会話をする。聞く人が聞いたら高二病で苦しむ内容だ。
「では紹介しよう。こちらがルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。今更隠す必要は無いと思うが、始祖の系統を受け継ぎしものだ」
「ご紹介に預かりましたルイズ・フランソワーズですわ。よしなに」
「これは噂に勝る美しさだ!なんと美しい!マーヴェラス!」
ジュリオは気障っぽい笑みから特大の笑みに変え、喜びを露わにした。あ、こいつイタリア人っぽい(偏見)。
そのままジュリオはルイズの手を取り甲に口付けした。ルイズは嫌じゃないけど特別好きでも無いと言った表情をしている。
「しかしいいのか?公で右手だの左手だのと言って」
「何、分かる奴にしかわからないからね。それに君達は「解っている」類だろう?」
俺の質問にも飄々とした風だ。
「なら、特別証を証明する必要も無いか」
「ああ、ぼくもここで証明するわけにはいかないからね」
互いににやりと笑う。事情を知らない竜騎士メンバーははてなマークを浮かべていた。
「で、あいつの対応は無難な状態でいいの?」
二人きりになり、ルイズがジュリオについて切り出してきた。
「ああ、あいつは「神の右手」、ヴィンダールヴだ。おまけに神官と来てる。十中八九俺達のことを調べに来たんだろう。別に媚びる必要はないけど、邪険に扱わなければそうそう危険なことにはならないと思う。たとえ空のデートに誘われても、断らないでおいてくれ。すまない、我慢させてしまって」
正直あの気障野郎に一時期とは言えルイズを預けるのは癪に障る。
「いいの。あんたも我慢してるんでしょ?限度はあるけど私も我慢するわ」
「ああ、ありがとう」
言葉少なくこの話題を終わらせる。引きずってても仕方ないな。
それからルイズとジュリオは司令部の命令でシティオブサウスゴータの偵察に向かった。理屈で言うとゼロ戦は見つけてくださいって言っているようなものだし、何より武装を外してしまっている。ジュリオは信用ならないが、ヴィンダールヴは信用できる。
ルイズが報告した後、任務を回された。この便利屋扱いにルイズもフラストレーションが溜まっているようだ。
次の任務は陽動。主力の反対側から侵入し、突撃に呼応して街中でイリュージョンを使って敵を混乱させる。言うだけは簡単な仕事だ。ただし、サウスゴータは道が入り組んでいてなかなか進みづらかった。ちなみに竜牙兵達はロサイスからそのまま徒歩だ。原作知識にずれがあるが、用心しておくに越したことは無い。
トリステイン・アルビオン王統派・ゲルマニア・ロマリア連合軍は1週間ほどでシティオブサウスゴータを開放した。ほとんどフルボッコだ。やっぱり洗脳で言うことを聞いているとは言えトロル鬼やオグル鬼がうろついていると不安だよね。
また、焦土作戦と兵糧攻めを合わせた様な状態になっていて、平たく言うとシティオブサウスゴータに食料がなかった。そういった意味でも協力的なサウスゴータの町民のおかげもあってここまで短期間で街を開放出来たのだ。
無事街が開放され、軍の偉い人が演説と表彰を行っている。隠す必要どころかアンリエッタ直々に「戦果を上げて来い」って言われているので俺達も大々的に表彰された。その表彰の中にギーシュの顔もあった。よかった。案外元気そうだ。
ギーシュの活躍内容は「一番槍及び亜人一部隊の殲滅、そしてギーシュ単騎での亜人幾名他多数の制圧」らしい。噂によると片手に「柱」を装備したゴーレムを使い味方からの被弾に構わず叩き潰したとか。帰ったら絞ってやらねば。
ハルケギニアは年の初め、ヤラの月、第一週を迎えていた。降臨祭である。この時ばかりは休戦し、辺りは馬鹿騒ぎだ。
俺は常駐している脳内術式を切らせないために一人になれるときは浅い眠りを繰り返し取っていた。
「才人さーん」
俺を呼ぶ声に意識を覚醒させる。シエスタの声だ。
そう、シエスタがここアルビオンに来ているのだ。理由は魅惑の妖精亭の手伝いだとか。なのでスカロン氏とジェシカ達も一緒で、シエスタ自身もいつもより際どい衣装を着ている。胸元が開いていたり、ミニスカだったり。
「こんにちは、シエスタ」
「はい、こんにちは、才人さん」
最近は二人になると余計な会話が入らなくなる。シエスタがぴとっと寄り添い、甘えてくるのを俺があやす。これがルイズも加わるとシエスタがお姉さんぶるから面白い。
「才人さん、ここのところ少し顔色が良くないです」
「ああ、ちょっと使い魔を作って警戒させててね。それの管理で眠りが浅いんだよ」
こういうとき嘘をつくと逆効果だ。
「ルイズ様も頑張っているようですけど、あ、そうだ。いいものがあるんです」
シエスタはポケットをごそごそして小壜を取り出した。
「それは?」
「眠り薬です。キチンと休みが取れるようになったら使ってください。ほんとはルイズ様が頑張りすぎてたときに止める用に買ったんですけど」
平民がポーションなんて高かったろうに。
「分かった。ありがとう、シエスタ。気になる用が終わったら飲ませてもらうよ」
「お礼はキスしてくれればいいです」
「9回でいいか?」
「もっとください」
謙虚じゃないなー。
相変わらず用事以外はぼーっとしていると、竜牙兵から報せが入った。
-任務Aを成功させましたー
-任務Bを失敗しました-
視覚をリンクしてみると、片腕を切り落とされたシェフィールドが。竜牙兵は切り落とした腕から指輪を抜き取り、腕を無造作にほうってある。
「よし、操られる前に撤収だ」
油断は大敵。後やることが出来た。
俺は魅惑の妖精亭・出張店まで行き、酒を樽で買い取り、それに対し水の秘薬を一滴垂らし、魔術を使う。
「「Remember」」
これを聞いていたお店の子は上手く訳されなかったらしく、疑問符を浮かべていた。せめて目に見える範囲だけでも敵に回って欲しくない。
「よし、みんな、これは俺のおごりだ!飲んで温まってくれ!」
歓声が上がった。現在雪がちらついており、幻想的な反面とても寒い。魅惑の妖精亭のみんなは商売とは言え露出の高い衣装でよくやる。
その足でゼロ戦に向かい、武器を全て取り出す。重いので紐でくくってレビテーションを使う。
それらを宿の一室を借り、押し込む。いくら物置代わりとは言え、この部屋で1エキューは無いだろう。
ここから先は気付かれないようにやらねば。何食わぬ顔で元の部屋へ戻り、竜牙兵は郊外の森で待機。少しばかり寝ることにした。
「……イト、才人!」
久しぶりに深く眠ったせいか、反応しきれなかったようだ。
「おはよう、ルイズ。どうした?」
「才人、敵襲よ。おまけに反乱まで起きているわ」
「なるほど、最悪だな」
「私達は殿軍よ。敵はおおよそ7万。時間稼ぎの捨て駒ね」
「分かった。まずは気付けの一杯と行こう。どうせなんだ。ルイズも付き合ってくれ」
俺は眠り薬入りのワインを出す。俺自身はこれくらいなら解毒出来る成分だったので、そのまま飲んでも問題ない。
「しょうがないわね。まあ、最後に乾杯くらいいかもしれないわ」
「では、乾杯」
「ええ、乾杯」
怪しまれると困るので、一息に飲み干す。それに倣ってルイズもやけ気味に飲み干している。
「才……人?」
「悪い、ルイズ。先に学院に帰っていてくれ」
「やめ……行……か……」
崩れ落ちるルイズを抱き寄せる。
「居るんだろ?」
「バレバレか」
扉の向こうからジュリオが現れる。
「俺は敵を迎え撃つ。ルイズを頼む」
「ぼくが信用できるのか?」
「神官である前に男だろ?それに女の前ならかっこつけたほうが良い」
「違いない」
苦笑している。
「任せた」
「任されたよ」
言葉少なめに確認し、俺は装備の置いてある場所へ向かった。
もはや街とかは関係なく、敵襲に備えて竜牙兵を街中に呼び出した。物資を持てるだけ持たせる。
そのまま郊外へ。こちらの兵力は100と1だ。だが、ガンダールヴは一騎当千だったっけ?
「すまん、相棒。千は盛りすぎだな。実際はそれほどでもなかった」
「こういうのは秘密にしておくもんだぞ」
「へえ、これがマスターの言ってた戦争か。ゼロ戦の奴に出番取られて退屈だったからな。派手にやろうぜ」
「慌てるな。これだけの数だ。喰い放題だぞ」
『そうだな』
1体の竜牙兵にはクロスボウを持たせ、1体は暴れるだろう弾帯の抑制の為補助、3体に1丁ずつ銃を背負わせる。残りは大盾と槍で防御陣形を取らせるが、俺の射線から外れるよう両サイドをカバーする。
「準備出来ているようだが、相棒、何をするつもりだ?」
「いやいや、ちょっと(時間稼ぎの)お手伝いをね?」
その言葉を皮切りに20ミリをぶっ放した。
ドンッドンッドンッ!と言う腹に響くどころか鼓膜にクる破裂音に顔をしかめるが、バイポットとグローブ越しに暴れる銃身を押さえつけ、敵軍の中央を狙う。そのたびにちぎれ飛ぶ人体。
その横でダイナマイトに火を点けた竜牙兵が、クロスボウを引き終えた奴にダイナマイトを渡し、曲射の体勢を取る。防御陣形に一番近寄っている敵の塊にダイナマイトを発射。直後、20ミリとはまた違った轟音。
そのまま大雑把に陣形を整えながら、20ミリを全弾撃ちつくす。これでも加減して撃ったけど、100発だとすぐなくなるな。
クロスボウ竜牙兵にはそのまま曲射を続行させ、銃を交換する。もう1丁の20ミリだ。
今度は先ほどより余裕を持って、どうせ敵が近寄ってきているのだから、その分的が大きくなっている。それに、身体のどこに当たっても基本的に死ぬレベルだ。貫通して5人以上は死んでいるんじゃないかな?
これもさきほどより余裕を持ったつもりでも、すぐに撃ち終わる。次、次だ。
7.7ミリを装備し、今度は相手の股を狙うように撃つ。銃が跳ね上がるし発射間隔が早いので、ブレて無駄撃ちしない為と、死ななくても足止め出来ればいいという判断だ。
タタ、タタタと調整する。発射間隔が短いため、暴れる弾帯が変にねじれてジャムらせないよう、且つ敵の足を可能な限り鈍くするために撃ち続ける。
そろそろダイナマイトが切れてきたようだ。槍を投げる準備をさせる。
3丁目も撃ち尽し、最後の機銃となった。もはや敵はかなり近い。こうなったらガンダールヴと身体強化だけで十分当てられる。最後の1丁に交換し、遠慮なく撃つ。
タタタタタタと言う音と共に、敵の悲鳴。中には操られているのか悲鳴を上げない敵も居るが、腰骨が砕けると這ってでも向かってくる。しかしそれも後続に飲まれる。
もうどれだけ殺しただろうか?これでもまだ敵の銃の射程内には入っていない。時折ゴーレムも出てきたが、術者が銃弾に巻き込まれたか、爆風に巻き込まれたか。撃ってる最中に自壊した。
最後の500発を全て撃ちつくす。単純計算だけでも1200発か。実際にはローディングした弾に撤甲弾が入っているので単体では無いな。敵は浮き足立っている。2割は喰ったか。
最後の機銃を撃ちつくし、機銃持ちは森へ下がらせる。ハルケギニアの冶金技術では再現出来ないだろうが、念のためだ。
「出番だ」
「ようやくか」
「待ちくたびれたぜ」
「では……投擲!そして、抜剣!」
竜牙兵の盾は矢玉を耐えるためのもの。こちらから攻めるのであればむしろその特性上邪魔になる。
「全軍突撃!」
剣が、斧が、鎚が。槍を投げ終えた竜牙兵は俺の後に続き、その獲物を構えて疾走する。長時間監視と偵察を続けさせたせいか、鎧にはうっすら錆が浮き、クロースアーマーなど布部分もほつれている。見た目は完全に幽鬼さながらだ。
そんな竜牙兵も耐久力と馬鹿力は当てになるものの、基本避けるということを考えない。だが、元の素材は竜の牙。火に極めて強く、その佼筋力に耐えるので、ブレットやジャベリンを喰らっても平然と進む。その様子にあちらからは銃撃の時とは違った悲鳴が上がっている。
俺は左手にくくりつけたスパイクシールドと地下水、右手にデルフリンガーを握り、魔法は斬り飛ばし、矢はシールドで受け流す。
そのまま乱戦に突入した。
俺をリーダーだと思っているのか魔法が多く飛んでくるが、それはむしろ好都合。敵を盾に、それでも避けきれないものだけをデルフリンガーで叩き落とす。
そうして1秒を稼いでる間に竜牙兵達が敵を押しつぶす。徐々に侵食が始まった。
時間を稼ぎながらも体力は可能な限り温存。呼吸を確保し地下水による詠唱を行う。遠距離攻撃はこちらの方が都合がいいのでエアカッターを飛ばし、時折空中に飛び上がったのを油断だと思われたのか、いっせいに防御を捨て攻撃してくるので以前体得した空中での二段ジャンプで避ける。これだけ塵が舞い上がっていると発動も楽だ。
それでも構わず攻撃してくる敵がいる。味方ごと巻き込んで攻撃する奴もいる。洗脳された兵だ。そういう時は貫通した槍が逆に足かせとなるので一旦距離を取り、デルフを地面に突き刺してリボルバーを発砲する。その際狙うのはもたついている洗脳兵ではなく、隊長格だ。一息で6連発した後、空薬莢をまとめてポケットに突っ込み、反対のポケットからスピードローダーでリロードする。
これを繰り返す。気がついたら頑丈な竜牙兵も除々に数を減らして行き、また、敵も目に見えて減っていた。
その中でも2種類の敵が居た。向かってくる敵と、逃げる敵だ。
逃げるなら好都合。そのまま放置する。向かってくる敵はここまで来るともはや洗脳兵くらいなもので、残りはよほどの勇者くらいしかいない。それも数少ない例外だ。こうなると作業と化す。
隙を見て水の秘薬を一気に飲み干し、腹話術の応用でエアカッターで牽制しつつヒーリングで癒す。二つまでの魔法なら属性が被らずドットに限り、同時に発動できるのだ。
その化け物具合を見て勇者も居なくなり、後は洗脳兵を屠殺する作業に移行する。
いつしかそれも居なくなり、とうとう歯向かう敵はゼロになった。
こちらの竜牙兵を数えても10を切っていた。色々と疲れた。
「終わりか」
「おう、お疲れさん、相棒」
「結構楽しかったぜ」
「これから俺を探しに来る奴を待つ。それまで森にでも身を隠すか」
こうして7万対101の戦闘は終了した。
20ミリって人体何人目で止まるんでしょうね?