転生先が平賀さんな件   作:スティレット

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 基本、タイトルは気分で書いてます。あんまり深い意味はありません。


シューティングみたいに撃ちっぱなしだとすぐ無くなるよね

 不用意にカリンちゃんに勝ってしまった俺は、名実ともに個人戦最強のメイジ殺しとなってしまった。

 

 まずは脇差とデルフリンガーを回収し、魔法剣モードにしてるときに必要以上に魔法を吸い込んでいないか確認する。大丈夫だ。

 

 そしてカリンちゃんは俺に一言「お見事」と言ってから治療を受けに行った。

 

 それから地下深くの風石のことをエレオノールに聞かれたり、精神力の吸出しを俺監修の元エレオノールがカトレアに施してみたり、その間に薬湯の素が集まったので次ルイズが帰ってくるくらいまでの薬湯と、念の為そのレシピを書いておいた。それはいくらかマイルドになっているとはいえ、蜂蜜なしではとても飲みにくいものである。しかしあんまり混ぜて変質されてもこまるのでロシアンティーのような飲み方を教えておいた。

 

 ヴァリエール公爵とは娘を賭けて決闘したり、酒を酌み交わす仲となった。前者は特にブレイド捌きがカリンちゃん以上で、リーチが短くとも回転数の多い脇差と地下水じゃないととてもじゃないが攻め切れなかった。後者はカリンちゃんの負けを認めて、正式に婿として見るからだそうだ。ワルドとの婚約は口約束なのでノーカウントらしい。

 

 一方シエスタも、俺の恋人候補と言うことでお客様扱いとなり、待遇が一段階上がった。もともとヴァリエール城内はその侍従で回っているから問題ないのだが、あちこちのヘルプに行かなくても良くなったというわけだ。おかげで女4人暇な時はエレオノールを筆頭に集まり、きゃいきゃいとおしゃべりしている。たまにツンデレのツンの部分が邪魔して素直になれないエレオノールが俺に態度を改めて「ルイズ相手にはどうすればいい?」とか魔法談義をしに来たりと、姉とは違った一面を見せるようになっていた。

 

 カトレアは相変わらずだ。むしろ俺が取り繕わないので、相変わらずあらあらまあまあと言っている。こんな身体の弱っている人をどうにかしようとも思わないし、戦争が終わったら少しずつ名所でも観光してもらいたいと告げたらとても嬉しそうだった。

 

 逗留している間にエレオノールとの共同作業で最高品質の水の秘薬の量産をしていた。人間だったら一舐めで、ドラゴンだったら一掬いで動けるようになる一品だ。もちろん水魔法と併用すれば血液が増えるまで擬似的にそれを再現し、傷を負う前の動きが出来る。これを衝撃に強く、取り出しやすい箇所のあちらこちらにばらばらに装備して、必要とあらば使う予定である。

 

 作業中にも風石をなんとかする方法を聞かれたので案を複数出してみた。

 

 

 

1.エルフを頼る。

 

 これはあまり現実的ではない。そもそも火竜山脈が浮き上がる前に何とかしろと言うほうが無理だ。

 

2.平民に魔術を広める。

 

 これを行うには異端審問を突破しなければならない。だからルイズが女王になるのが一番手っ取り早いのである。アンリエッタだと力不足だし、俺がルイズ直属でガンダールヴだったらうかつに手を出せないだろうと言う魂胆だ。

 

 

 

 そうしてやることをやり終えた俺達は、不便だろうからと公爵からの身分証を貰い、学院に戻った。お土産にはキュルケたちの分とは別に個人的に竜の牙を集めてもらったが。

 

 

 

 学院は静かだった。どうも男性教員と、男子学生が徴兵されてがらーんとしていた。

 

「ダーリン、おかえりなさい!寂しかったわ」

 

「兄さん、おかえり」

 

「ただいま、キュルケ、タバサ。急で悪いんだけど、また数日中に戦争に行かなきゃいけないんだ。その間、卑劣なレコン・キスタのことだ。手薄になっているここに人質を求めてやってこないともかぎらないからね。無骨で悪いんだけど、二人にはこれを渡しておく」

 

「これは?」

 

「ここのピンを外して5秒後に強い光と音を発する爆弾みたいなものだよ。火のメイジによっては目に頼らなくても熱を見れるらしいけど。これは直接見ないで建物の死角からとかから投げるように。時間を調節したかったらピンをはずして、例えば2秒置いて投げたりすると相手の不意も付けるから。使う機会が無いのが一番なんだけど。それとルイズの家で作ったアカデミー主席との合作の水の秘薬。これも一つずつ念のため持っておいて」

 

「分かったわ。ダーリン。決して私達は無関係じゃないのね。留守はあたしとタバサが守ってるから、安心して」

 

「それと、例の件だけど、レコン・キスタのどさくさに紛れるほうがいいだろう。もちろん監視が着いている前提で動いて欲しい。そこでアレが役に立つはずだから」

 

「ええ、でも、ダーリン。それだけだとちょっと物足りないわ」

 

「わかったよ、おいで」

 

 俺はキュルケと抱擁を交わした。

 

「兄さん、私も」

 

「ふふっ、タバサは最近甘えん坊だな。ほら、ぎゅー」

 

「ぎゅー」

 

「ねえ、ダーリン、戦争が一段落着いたら、話したい事があるの。生きて帰ってきてね?」

 

「兄さん、死なないで」

 

「分かったよ。例え一度死んでも生き返ってでも戻ってくるから安心して待っててくれ」

 

 死亡フラグは積み重ねると生存フラグになるってどっかで聞いた。

 

 

 

 尚、この際、ルイズには片っ端から虚無の魔法を試してもらっていた。

 

「爆発が消滅なら、次は魔法の無効化とかあるだろう」

 

「・・・・・・来た、なんか聞こえてきたわ!」

 

「よし、次だ。虚実を操ると言う意味で敵に大規模な幻影を見せることも可能なはず」

 

「・・・・・・よし、次よ!」

 

「虚無の虚が入るんだから水魔法ほどじゃないにしても、ものを忘れさせたりすることが出来るかもしれない」

 

「これも当たりね!」

 

「水魔法で似たようなものがあるなら、系統魔法が虚無に倣ったのかも。思考速度や行動力を加速させる魔法も出てくるんじゃないか?」

 

「まさかこんなのがあるなんて」

 

「よし、最後のアイディアだ。元々サモン・サーヴァントを始祖がコモン用に改良したものだとしたら、自身が自由に行き来できる魔法もいけるはずだ」

 

「ワールド・ドア・・・・・・これが気軽に使えるなら、才人の国にも遊びにいけるかもしれないじゃない?」

 

 結論。勢いだけすごかったけどかなりのスパルタだった。念の為ルイズの腰にベルトを巻いて、そこに固定化をかけたオルゴールを入れるポーチを作り、必要な時に復習してもらうことにした。

 

 

 

 その後、コルベール先生の下へゼロ戦を取りに行ったら、横にいくらかデチューンされた機体が出来ていた。な、何を言っているかわからねえと思うが、俺にも分からん。

 

「おお、サイト君ではないか!とうとう部品の規格化に成功してね、試しに作ってみたんだ。どうかね?よく出来ているだろう」

 

「そうですね。ところで試運転は?」

 

「それはサイト君にやって貰おうと思ってたところだよ。武器じゃないとそのルーンが反応しないということだからね。不本意だが一応ヘビ君シリーズを取り付けてみた。もちろん弾薬も出来ているぞ」

 

 ニトログリセリンが出来ていたので、ギーシュと先生との協力で無煙火薬を作っていたのだ。弾頭は余ったものを粘土で型を取って鋳型を作り、錬金し、そこからペンチ状に加工し母型を作った。徹甲弾は2種類の粘土を母型に入れ錬金、芯を鋼鉄にし、ジャケットは絵の具を塗って錬金して鍍金とした。銃は固定化の重ねがけにより熱の変化と衝撃に強い機銃と機関砲が出来た。弾薬も薬莢とベルト全てに固定化がかかっていて、劣化の心配も無い。雷管と火薬、弾頭はむしろ反応や変形をしてもらわないといけないため固定化は無いが、もちろんゼロ戦本体にも固定化と要所に硬化をかけているので防御力が上がっている。

 

「今回の戦争は致し方が無いものだと理解しているが・・・・・・私は戦いが嫌いだ」

 

「だが、このように、魔法無しでも大空を飛べるからくりを生み出したのも火無しでは出来なかったと思う。そう言った意味では火は破壊し、その後再生、いや、新生するのかもしれない。だから、火は破壊だけで無いと、私は証明したいのだ」

 

「出来ますよ。先生なら」

 

 これだけ頑張っているし。

 

「ゼロ戦と操縦が同じなら先生は後部座席に座ってください。まだ時間がありますので練習しましょう。ただ、これらも作りすぎると空気を汚染してしまう危険性がありますが、そこは第一人者であるコルベール先生が舵を取ってくれれば上手く行くと思いますよ。一段落着いたら俺の方から王宮に新しい機関の設立を申し出ても構いませんし。サスペンションとタイヤが出来たから、次は車を作りましょう。馬車より馬力もあって、乗り心地もずっといいはずです」

 

「そうだ。なら、まずは生き残らないといけない。だからサイト君、生きて帰ってきてくれ」

 

 そんなやりとりをした後、手作りの飛行機を飛ばしてみたり、ゼロ戦で練習したりと、残りわずかな時間思い思いに過ごしていた。

 

 

 

 年末、ウィンの月の第一週、マンの曜日にアルビオンのレコン・キスタへ向かって出航することとなった。俺とルイズは装備を身につけ、ゼロ戦で「ヴュセンタール」号とやらに向かっていた。

 

 ヴュセンタール号は竜母艦というだけあって大きいが、ゼロ戦を着艦させるには距離が足りない。どうしたものかと思っていると、ロープを引っ張り出してきた。それをフックに引っ掛けろって言うわけか。

 

 早速着艦し、フックをロープを引っ掛けて止める。なんとかなった。

 

 ゼロ戦を降りた俺達は士官に会議室まで通された。

 

「ようこそ、ミス・ヴァリエール、そして、ミスタ・ヒラガ。総司令官のド・ポワチエだ」

 

 その横には副官らしき人や鉄兜を被ったカイゼルひげのおっさんが居る。こっちはゲルマニアから出向だそうだ。

 

 ほかにも階級の高いのがちらほらと。どうやらここが総司令部らしい。

 

 ちなみになんで俺まで名前で呼ばれているかと言うと、王宮の他にヴァリエール公爵の身分証が効いているらしい。

 

「各々方にお二人を紹介しますぞ。ミス・ヴァリエールはタルブにおいて敵旗艦レキシントン号を無傷で堕とした実績があり、また、その使い魔であるミスタ・ヒラガも20騎の竜騎士を仕留めるほどの腕前です」

 

 これまで胡乱気な目で見ていた一同の目の色が変わった。

 

「また、ミス・ヴァリエールはレコン・キスタとは違い「真の虚無」なのです」

 

 

 

 会議は難航していた。結論だけ言うと、無傷で6万の艦隊を「ロサイス」に上陸させたいと言うものである。

 

「虚無と言うからにはアルビオンの艦隊を一撃で吹き飛ばすような魔法は無いのかね?」

 

「前回は精神力を抑えましたが、虚無は燃費が悪いのです。別の手段を取ろうと思いますわ」

 

「ほう」

 

「明日までには案をまとめておきますので、少々お待ちください」

 

 そう言うとくるりときびすを返し、さっさと割り当てられた部屋に行ってしまった。俺もルイズに付いていく。

 

「感じ悪いわね」

 

「俺達のことを駒としか見てないんだろ」

 

「虚無って言ったら明らかにあいつらより上なのに・・・・・・まあいいわ。レコン・キスタを落とした暁には名実ともにそれが確かになるのだから」

 

 互いに愚痴りながら歩いていると、後ろからこちらへ向かって若い貴族が歩いてきた。他に5、6人ほど鋭い目つきでにらんでいる。が、カリンちゃんの眼光にくらべればまだまだだな。

 

「おい」

 

「なんだ?」

 

「来い」

 

 正直面倒だったが、とりあえず着いていった。

 

 

 

「これはなんだ?生き物か?」

 

 なんかゼロ戦の前まで連れて来られて質問された。

 

「これは飛行機械だ。燃料を入れて飛ばす、魔法に依らないものだ」

 

 なんかもうあれなんで簡潔に答えた。

 

「ほら!ぼくの言ったとおりだ!1エキューだぞ!」

 

 これが生き物かどうかで賭けをしてたらしい。

 

「驚かせちゃったかな。ごめんね?」

 

「まあいいさ、賭けてたんだろう?」

 

「うん」

 

「これは生き物だと思ったんだ」

 

「こんな生き物居るわけ無い!」

 

「世界は広いんだ、居るかもしれないだろ!」

 

 ぎゃーすか馬鹿騒ぎしてるのを見てると教室で騒いでる男子学生を思い出した。俺修行とか研究でほとんどつるまないけど。

 

 

 

「ぼくたちは竜騎士なんだ。本来なら後1年訓練しなくちゃいけないんだけどね」

 

 あー、タルブでかなり被害が出てたからな。

 

 そういいながら竜舎を案内された。

 

「竜騎士になるのは大変なんだぜ。最初から使い魔なら楽なんだけど、そうじゃないなら竜に自分を認めさせないといけない。乗り手の腕、自分にふさわしい魔力、頭の良さ。そういうのを竜は見抜くんだよ」

 

 竜騎士もなかなか大変なんだな。

 

「試しに乗ってみる?」

 

「いいのか?」

 

「乗れるものならね」

 

 先ほど着艦するとき先導していた太っちょの竜に試しに乗ってみることとなった。

 

「・・・・・・」

 

 まず、無言で竜を見つめる。小源(オド)大源(マナ)を変換し増幅し、プレッシャーをかける。

 

「きゅー」

 

 竜は頭を垂れた。

 

「よしよし」

 

 そのままひょいと鞍にまたがってみても、振り落とされない。竜相手でも特に問題ないな。

 

「すごいよ君!一発で認められるなんて!」

 

「それほどでもないよ」

 

 あれこれ質問してくる見習い連中を適当にいなして、ルイズと相談することにした。

 

 

 

「今回はどんな手段がいいと思う?」

 

「そうだね。別に撃破が目的じゃないからあまり精神力を使わないイリュージョンで良いと思う。ただ、寄って来る敵は機銃で捌くから倒すには至らないかな。当たり所によるけど」

 

「分かったわ。それでいきましょう。念の為ルーンの復習をするから、その間話しかけないで」

 

「了解」

 

 暇だったので、これからあの学生気分が抜けてない連中を一人でも多く生き残らせるために作戦を考え、それを伝えにいくのだった。

 

 

 

 現在俺はダータルネス方面に向かって飛んでいる。誘引が目的だ。

 

「ルイズ、そろそろ接敵するから合図してくれ」

 

「わかったわ」

 

 ルイズにゼロ戦に備え付けられてあった黒板で周りの味方に合図してもらった。あいつらには煙幕兼攻撃用のダイナマイトと、それを応用して作った防御用の破砕手榴弾を1つずつ持たせている。直前で逃げる振りをして散開、後、火を点けたどちらかの爆弾を使って敵を撹乱するよう伝えてある。導火線の先端には燐が塗られており、蓋を引き抜くと点火する。蓋は金属ラベルで留めてあり、直接火に放り込まない限りは大丈夫な設計な、はず。

 

 先行していた竜騎士隊は敵をギリギリまで引き付け散開。当然敵の竜騎士が追う形となる。俺達の方にも来るが、そっちは騎士を7.7ミリの点射を繰り返し黙らせる。照準の度に別の角度を狙うので操縦がガクガクと荒くなるが仕方が無い。

 

 あちこちで爆炎が広がり、鉄片が飛び散る度に敵が堕ちていく。良い感じだ。

 

「ルイズ、そろそろ次だ」

 

「わかったわ」

 

 黒板で再び合図をしてもらい、今度は俺の近くにぴっちりくっ付くようにしてもらう。

 

「とどめだ」

 

 ゼロ戦に付け加えられたレバーを引き、ぴょこぴょこと飛び出るヘビの舌を引っ張る。

 

 しばらくし、しゅぽっと言う音と共にゼロ戦にコルベール先生が着けた「空飛ぶヘビくん」が後続の敵に飛んで行った。後ろは見えないが、説明によるとホーミング式だったかな?ともかく、これで敵もただでは済んでいないだろう。

 

「ルイズ、敵は?」

 

「ほとんど居ないわ。今味方が複数で追い回しているところよ。あ、堕ちた」

 

「よし、なら最終段階だ」

 

「任せなさい」

 

 ダータルネス上空に辿り着いたので、そこで高度を上げ旋回する。そこで風防を開いたルイズがスペルを唱え――。

 

「イリュージョン!」

 

 そこに大規模な船団の幻影が出来た。これで今回の仕事は片付いたな。まあ、戻るまで油断は出来ないんだけど。




 デルフリンガーの記憶を思い出させたように連想式で一気に虚無を覚えさせました。記憶チートの本領発揮。以前にも書きましたが、この作品は集中力次第で覚醒します。

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