転生先が平賀さんな件   作:スティレット

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 出来たー!3巻はじめは2週間近くネタが思いつかなかったけど今回すんなり出来たー!


ルイズの気持ち

 報告を終え、一度王城へ改めて謁見した帰り、トリステインの城下町、ブルネンデ通りでは戦勝記念のパレードが行われていた。

 

「これだけのお祭り騒ぎだと故郷でもやってたお祭りを思い出すな」

 

 その独り言にルイズが反応した。

 

「へえ、あんたのところのお祭りはどんなことしてたのよ」

 

「そうですね。基本的に家庭ではあまり作られない食べ物や、小物、あと飼育用に鶏の雛とか小魚、ヨーヨーと言う玩具などが売られていました」

 

「雛はともかく魚?平民の家だとすぐ死んじゃわない?」

 

「本格的に飼いたかったら水の中にこの間教えた酸素を水に溶かす装置や水槽を買わないといけないため、結構高くつきますね。そうだ、今度お好み焼きでも作りますよ。そして皆で食べましょう。プレートはギーシュに錬金させて、食材はタバサに空輸してもらいます。あの子は育ち盛りなので食いついてくると思います」

 

「それはいいわね。あら」

 

 談笑しながらも小物を売ってる露店が目に付いたようだ。

 

「ちょっと見ていくわよ」

 

「了解」

 

 そこには明らかに安物やバッタモンといったような代物が並んでいた。正直言うと以前ルイズに渡した風石のサークレットとペンダントと比べてもチャチだ。

 

「うーん」

 

 ルイズは白い貝殻のペンダントを見てうなっている。どうも見劣りしてるせいなのか踏ん切りがつかないようだ。

 

「主、いまいちなら私が手を加えましょうか?これならシンプルに貝殻だけにして下げるのもアリでしょう。なんなら以前渡したペンダントと違和感がないよう組み合わせておきます」

 

 店主に聞こえないよう耳打ちする。

 

「そう、なら買うわ。いくら?」

 

「へえ、4エキューでさあ」

 

「・・・・・・作りの割に高いわね」

 

「主、ここは私が出しますよ。旗艦を沈めた記念と言うことで。魔法を覚えたときの品はこちらでようやく決定したので楽しみにしておいてください」

 

「そ、そういえばそういうことも言ってたわね!期待しないで待っているわ!」

 

 未だにこういうところでは歳相応に意地を張って素直な態度を取らないこともあるんだよ。うちのご主人。

 

「あ、ついでにそこの水兵服を全部ください」

 

 

 

 学院に帰り、次の日疲れを抜くためベンチで地下水とデルフリンガーを装備した状態でぼけっとしていると、シエスタが渡したいものがあるということで白いマフラーを持ってきた。

 

「おまたせしましたサイトさん、ゼロ戦の窓を閉めてる間は竜より寒くないんですが、開ける時はどうしても冷えると思うので、よかったら首に巻いてください」

 

 俺は手に取りまじまじと観察する。そこには二人分の長さにハルケギニア文字で「サイト シエスタ」と黒字で縫ってあった。

 

「ありがとうシエスタ、おいで」

 

 シエスタを横に座らせ、俺の首にマフラーの半分を巻いた後、シエスタにも巻く。

 

「長さ的にこういうことかな?この甘えんぼさんめっ」

 

「エヘヘ、もっと撫でてください」

 

 この雰囲気に魔剣どももこれには沈黙。辺りに甘い空気が漂った。

 

 しかしそれも長く続かなかった。腕を組んだルイズが仁王立ちでベンチの前に来たのだ。まあ脅威判定は俺の主観で低かったので無視してたんだけど。

 

「おや、ご主人。見てください。シエスタがゼロ戦で風防を開ける時寒いだろうと、マフラーを編んでくれたんですよ」

 

「へ、へえ、良かったじゃない」

 

 この間きちんと線引きが出来ないうちはこちらもそれ相応の態度を取ると言うのが後を引いてるのか、思ったほど怒ってはいない。

 

「でも、こんな公共の場でいちゃいちゃするのはいけないことだと思うのよ」

 

「それなら前にキュルケとかがやってたじゃないですか。最近私をターゲットにしてから鳴りを潜めてますけど」

 

「それでもよ!」

 

 どうもあふれ出る嫉妬心が抑えきれないようだ。理屈じゃないらしいからね。

 

「まあいいわ。話があるから、部屋に来なさい」

 

「そうですか、分かりました。ではシエスタ、またね」

 

 と、離れようとするとシエスタは俺の腕をぎゅっと抱きしめ、

 

「ミス・ヴァリエール。やきもち焼くのは結構ですけど、それならきちんとケジメをつけてからにしてください。サイトさんはもはや私一人では独占出来るほど小さい人では無いと思ってます。だから他の女の子を見てても構いません。だから、もし好きなら堂々と開き直ってください」

 

 その言葉にあっけを取られたルイズはしばし沈黙するも、

 

「確かにこれじゃフェアじゃないわね。「使い魔の前に人間」、か。なら、返事は部屋でするわ。他の人間に聞かれたくないもの。シエスタは構わないけど、あなたはまだ仕事が残っているでしょう?だからサイトと二人きりで話すわ」

 

 「先に部屋で待っているわ」と言って、ルイズは去っていった。なんなら今のうちにルイズに渡す品でも持っていくか。

 

 

 

「遅かったじゃない・・・・・・」

 

 なんでうちのご主人は頭が「興」に見えるレイヴンのような言い回しをするんでしょうねぇ。

 

「昨日言ったじゃないですか。魔法が使えるようになった記念品を用意してあるって。ペンダントの加工はもう少し時間がかかりますが、先にこちらをと思って持って来ました」

 

 そうして小さな箱を取り出す。

 

「なら、まずそっちを先に見せてもらおうわ」

 

「どうぞ」

 

 そうして箱から出てきたのは琥珀色のイヤリング。良質な土石が買えたので、緊急用に精神力を込めて投げればそこから精神力を込めた相手の言うことを聞くゴーレムが地面から生えてくる。せいぜいドットレベルだが、1体3メートルのアイアンゴーレムが半自律状態で守ってくれるため、持ち主がパニックになっていても問題ない代物だ。これは術式に式神を応用した。俺が居ないときの肉盾として役に立ててもらうつもりだ。

 

「意外と地味なイヤリングだけど、あんたが用意したって事はそれだけじゃないのよね。どんな効果があるの?」

 

「はい、これは精神力を込めて地面に投げると、そこを媒介としてアイアンゴーレムを作り出します。片方1体で、それぞれ3メイル。簡易的な思考を持っていますので、簡単な命令でも意図を汲んで行動してくれます。私が間に合わないときの緊急用としてお使いください。尚、精神力を込めるのに杖は要りません」

 

「あんた・・・・・・土石使ったゴーレムなんて私の家の橋の鎖を引くゴーレムくらいにしか使われるのを見たことがないわよ。よく見つけてきたわね」

 

「お金があるうちは定期的な情報収集などは欠かしておりませんので」

 

「そう、あんたはいつもなんだかんだで私の事を考えてくれているわね。さっきはメイドに現を抜かしていたけど、人間だものね。恋人でも無いのに妨害する権利は無いとは分かっているわ。だからここで区切りをつけておこうかと思うの」

 

「そうですか、ようやく覚悟が決まりましたか。私はどちらでも構いません。どうぞお聞かせください」

 

 勢いをつけるように催促する。

 

「好き、あんたのことが好き。サイト。くやしいけど、認めるわ。それに、使い魔だの平民だの言っているけど、トリステインでの法に無理やり当てはめているだけだものね。そこら辺の惰性で貴族をしている奴らよりあんたの方がよっぽど風格があるわ。だったら、これも悔しいけど、ゲルマニアで貴族になる手もありだと思う。でも、姫様に提案したこと、それが私に気づかせてくれたのよ。あんたが支えてくれる限り私は例え一度膝をつけてもまた立ち上がれる。失敗なんて散々してきたもの。だから女王になると言う提案もいいかなって思った。姫様は先王が急に亡くなってしまった事もあって十分な教育もなされていないみたいだし。そ、それに、あんたが望むのなら、妾を取っても構わないと思っているわ。もちろん私が一番だけど。だから、極力嫉妬はしないようにする。どう?返事を聞かせて?」

 

 原作よりリアリストで、行動を迫られて、なおかつ導いたからか、意外と早く結論を出してきた。素直に言うと割と早くデレた。

 

「わかりました。いや、分かった、ルイズ。これより俺はお前のことをこう呼ぶ。好意を受け入れる。俺も好きだと言ってくれる相手は明らかな罠でもない限り受け入れるから、シエスタのような妾も作るかもしれない。しかしいいのか?伝統を重んじるトリステインが、ゲルマニアみたいにどこの血族とも知れない血を王家に加えて。その上妾が平民だぞ?」

 

「いいのよ、そこは私とあんたで努力して変えるわ。確かに伝統も大事だけど、今必要なのは改革よ。ゲルマニアみたいに1から10まで成り上がりを作るつもりは無いけど、報いることも必要だと考え直したわ。だから、本っ当に不本意だけど、妾を取るときにツェルプストーも望むんなら同盟組むのにも有利になるし、我慢してあげる。タバサって子は義理の兄妹の関係らしいから知らないけど」

 

 マジでリアリストになったな。今回でトリステイン一国だけの脆弱さが分かったか。アルビオン王統派が付いていなければ苦戦を強いられたのはこちらだろう。ゼロ戦では戦術的勝利は得られても戦略的勝利が得られないかも知れなかったのだ。フルパワーでのエクスプロージョンを使えばその限りではなかったが。

 

「ならば、これから先は恋人として接しよう。妾候補に入れるなら、シエスタとも仲良くしてくれると嬉しい」

 

「出来れば後半の言葉は入れないで欲しかったわね。ちょっと無粋だと思ったわ」

 

「すまない、これで許してくれないか?」

 

 手を取って抱き寄せる。

 

「ルイズ、君は華奢でとても可愛らしいな」

 

 じっと見つめる。

 

「サイト、あんたも先入観なしで見ればかなりの優良物件よ」

 

「ふふっ、さっきの仕返しか?」

 

「さあね」

 

「ルイズ・・・・・・」

 

「サイト・・・・・・」

 

 そうして最初は拙い接吻だったが、いつのまにか深くお互いの唇を貪っていた。




 このルイズは清濁併せ持つ気概も備えています。そろそろキュルケにもなんか作ってやろうかな。

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