今回はむしろ余計なくらいかな?気合を入れました。
「いいですか?この空気中には酸素と言うものがあり、これは大体の生き物が生きていく上で必要なものです。火を燃やしても精神力に依存していなければ基本的に酸素と燃料を燃やして火は成り立つのです。しかし、この酸素は文字通り酸の文字が入っている通り、これが食べ物や飲み物、果ては金属すら酸化と言う現象、つまり食べられなくなったり錆びたりします。これと、食べられない発酵を含めて大雑把に人は腐ると言うのです。ここまではいいですか?」
オルレアン家から帰り、休戦協定の期限まであとわずか。多分レコン・キスタは奇襲をかけてくるだろう。そんな中、俺はギーシュとコルベール先生、そして専門外とは言え、俺のやる授業を見たかったルイズ、キュルケ、タバサ組。図などの小道具の準備を手伝ってくれるシエスタを集めて、放課後に一室借りて基本的な分子の成り立ちを教えていた。
「確かに、坑道などでは所によっては見えない毒ガスで死ぬ場合がありますが、あれはそれの他にもう酸素がなくなっているから酸欠に陥りますな」
錬金と火によって広範囲の相手を酸欠させる魔法の使い手であるコルベール先生は十分分かっているようだ。
「じゃあサイト、錆びないようにするにはどうすればいいんだい?」
火より土属性の金属に興味があるらしいギーシュ。
「それは表面に錆びない金属や液体を塗って乾かしたりすればいい」
こんな感じで順次質問に答えていく。当初、コルベール先生と議論して知識のすり合わせをする予定だったのだが、ついでにギーシュも参加させるかと思いついた結果、こうなった。
「こうした特徴がある酸素ですが、ほとんど無いところでも火の手が燃え残る場合があります。そこに扉などを開けて急に酸素が入ると、火はそれを求めて一気に扉の外へ爆炎と化し燃え広がる事があります。火事のときはそういうことに注意してください」
「爆炎と言えばダーリン、ヴァリエールの爆発魔法は火の魔法じゃないみたいだけど、あれって何に属するの?」
火については一言あるキュルケが質問する。
「爆発については火が分かりやすいけど、エネルギー、つまり力の急激な解放と言うものもあるんだ。それは圧倒的な精神力だったり、物と物同士が反応した余剰な力だったり、色々あるから答えを出すには早い。瓶に風魔法で内部に圧力を加え続けると破裂するのもあるしね。ここまでで他には質問はありますか?」
「無いわ」
皆をまとめるようにルイズは言った。ちなみに一言もしゃべってないタバサはひたすらメモを取ってる。魔法の応用にでも使うのか?
「では、皆が理解しているところで、次は火繋がりで熱に関する話をしましょうか。加熱と冷却がありますが―――」
「ダーリンって本当に博識ね。腕っ節が強くて頭も回るなんて、ゲルマニアだったらあとお金があれば十分貴族になれるわ」
「お金で爵位が買えるなんて、だからゲルマニアは野蛮なのよ」
「なによ、有能で力があるものが上になる。単純で分かりやすいじゃない」
授業のあと、キュルケとルイズがいつものように言い争いをしている。女の喧嘩に下手に仲裁に入ったら面倒なことになるので、毎度ながら放置だ。
「サイトさんにはいつも驚かされます。どうやってそんな知識を身につけたんですか?」
シエスタが尊敬のまなざしでこちらを見ながら質問してくる。
「俺の国は文明が発達した分、人が長生き出来るんだ。だから最初の大体20年前後のうち6歳くらいから18歳まで勉強するんだ。義務教育って言ってね。これは15歳で終わるんだけど、それが一般的かな。希望者はそこからさらに勉強する。十分力を身につけてからの方が働くにも効率がいいからね」
こちらの識字率は低い。むしろ官能小説などを嗜んでいる平民のシエスタが少数派なのだ。
「まあ、何百年か前かな?江戸時代って呼ばれる時代があったんだけど、晴耕雨読なんて言葉がその時代には既にあったかな?晴れた日は畑を耕して、雨の日は書を読むって意味だね。割りと勤勉なお国柄でもあったみたいかな」
ガチで絵馬に神様への報告として頭のいい馬鹿のような計算が出来た事を書いたものもあるらしい。
「兄さん、冷凍からの急激な加熱について、もっと詳しく」
『兄さん!?』
コルベールを除いたメンバーが疑問符を浮かべてこっちを見てくる。
「あんた血の繋がらない娘にそんな呼び方を強制させるなんて、不潔よ!」
「あら、最近仲がいいと思ったら恋仲じゃなくてそっちだったの」
「サイト・・・・・・何故か僕はとても君がうらやましい」
「サイトさんとミス・タバサの関係ってそうだったんですか。確かにサイトさんは頼れるお兄さんって思えますから」
好き勝手言ってくれる。コルベール先生だけはこちらを生暖かい目で見るが。
「主よ、詳細は省かせてもらうがタバサはこんな小さな身体で色々頑張っているのです。年長として少し手伝ったら成り行き上そういう呼ばれ方になっただけです。むしろそれは下種の勘ぐりなので、やめていただきたい。まあ、キュルケ、こないだのこともあるしな。そういうことだ。ギーシュ、頑張ったらお前もあのケティとか言う娘にそう呼んでもらえるかも知れんぞ。最後にシエスタ。君が一番分かっているようだね」
質問を順番に答えていく。思考補助術式のちょっとした応用だ。これが最大10人を突破すれば俺も聖徳太子クラスかも。
「まあそんなわけだ。っとタバサの質問だったな。ええと冷凍から加熱だっけ―――」
質問に答えようとしたところで、きぃぃぃんと言う金属を共鳴のような音が鳴る。
「え、何?なんなの?」
「来たか。主、タルブの村が襲われました」
ルイズ達があたふたする中、極めて冷静に伝える。平民でも使えるマジックアイテムをシエスタの家族に渡してあったのだ。用途は割れたら片方が共鳴するだけ。そこらの石を十数分で加工した。シエスタは驚愕から目を見開く。
「コルベール先生、レコン・キスタからタルブを守るためにゼロ戦を使うことになりました。どんな理由かは知りませんが戦闘を忌諱している先生には申し訳ないのですが、俺はシエスタの家族を助けるために行って来ます」
「・・・・・・そうか、分かった。私は戦争嫌いだが、かと言って一方的に殴られ続けろと言うほど愚かでは無い。がそりんも補充してある。無事を祈るだけしか出来ないこの身を許して欲しい」
先生の懺悔にキュルケは軽蔑の視線を向けるが、許してやってくれ。先生にも色々あったんだよ。それを俺から話すわけにはいかないが。
「では主、参りましょう。私は部屋から武器を持ってきますので、先に後ろの座席に座っていてください」
「手早くね」
最低限の会話をし、俺達は部屋を出ようとする。
「あの、サイトさん!」
「ん?」
「村を、みんなをお願いします・・・・・・どうか」
「任せろ」
背後のシエスタへ振り返らずサムズアップで返し、走り出す。キュルケとタバサは留学生と言う自分達の身分が分かっているらしく、通り過ぎる際悔しげな顔をしていた。
「遅いわよ!」
これでも十分急いできたんだけどな。部屋に戻り、今日の朝まで作り続けた秘密兵器と部品が余って組み直したもう一つのクロスボウ、デルフリンガー、そして地下水を載せる。
「お待たせしました。今回はデルフリンガーと俺が指示を出しますので、指定した船などを撃破してください。戦争はまだまだ先がありそうです。精神力を温存する必要があるでしょう」
手札を残せるに越したことは無い。
「そう、仕方ないわね。考慮しておいてあげるわ。それで、誰がクランクを回すの?」
「そうでした。申し訳ありません、主、私はゼロ戦を走り出さないようにしていますので、お願いします」
「本当に仕方ないわね」
原作のような状態だったら果たしてここまで妥協してくれるだろうか?
「では、お願いします」
失くさないよう座席に分割してしまってあるクランクを取り出し、ルイズに渡す。
「回すわよ!」
クランクを予想外の速さで組み立てたルイズは、さっと取り付けそれを回す。その声には抑えているものの、喜色の色が出ていた。
ブレーキをかけつつエンジンを始動させ、プロペラを回し、ルイズを待つ。
「いいわよ、出して!」
「行きます」
こうして俺達は
高度をあらかじめ稼ぎ、目視出来るよう雲海ギリギリ下を飛行していた俺達はタルブと盛大に砲撃しあっている船、そして飛び回る竜騎士達を発見した。
「では主よ、まずあの羽虫を片付けます。お手を煩わせる必要も無いので、しばしお待ちを」
「善きに計らいなさい」
「なーんか娘っ子のご機嫌が有頂天だね。なのになんでか薄ら寒いものを感じるんだが、どうよ?」
「俺はお前ほどマスターたちと付き合い長くないからな。なんとも言えねえな」
きっと後ろのルイズは笑いながらもハイライトが消えているのだろう。
早速こちらを撃墜しようと近づいてきた竜騎士が居たので、あちらの射程の外から指きり射撃で20ミリを喰らわせる。竜は首を下げていたから助かったものの、衝撃波で昏倒したのか騎士の下半身だけを乗せて墜落する。上半身?千切れ飛んだよ。
その様子を見ていたらしい他の竜騎士3体が、連携を合わせてこちらに向かってきた。2体の竜で追い立て、本命の1体で仕留める算段か。
「デルフ、今の張り付いてる奴以外追加が来たら教えてくれ」
「合点」
まずは先にこちらを仕留めようとする1を片付ける。残った2に構わず、速度にものを言わせて強引に照準する。そして、合った瞬間に点射。胴体に砲弾を受けた火竜は火炎袋に着火したらしく、爆散した。
「相棒、追加は来てないが張り付いてる奴らがそろそろ危ねえ」
「分かった」
俺は座席の窓を開け、秘密兵器に火を付けてからそのまま後ろに流すよう放った。
後、爆音。黒色火薬以上の威力を持つダイナマイトが背後に回った2体を巻き込み、炸裂する。石鹸製造で貯まったグリセリンと、黒色火薬を作れる時点でこちらでも売っていた硝安などで作った。ちなみにニトロゲルの作成法は秘密だ。下手すると指が飛ぶどころではない。
「なによあれ!」
驚いたルイズがたずねてくるが気にしている余裕がない。
「終わったら説明します。それより残りをさっさと片付けますので」
残りの竜騎士達は射程外から飛んでくる謎の魔法と、背後に回っても巻き込まれる爆発にも怯むことなく向かってきた。だが、速度の出ない火竜ではドッグファイトで容易に後ろを取られ、先ほどのように連携して来るも後ろを取ったと思ったら爆弾が飛んでくる。結果はガン○ムがリック○ムの集団を倒したような状態になってしまった。
「主、羽虫の掃討が終わりました。一番大きな船の上に着けます。出来れば風石のみを狙うのがよろしいでしょう。鹵獲すれば王家が喜びます」
「ようやく私の出番ね。任せなさい!」
あまり近づくとぶどう弾が飛んでくるため、遠くから高度を上げレキシントン号に近づく。今回はトリステイン空軍に加え、わずかながらとは言え準備期間を得たアルビオン王統派が居るのだ。あちらはロマリアに何か言われる前にトリステインを打倒すればなんとかなると思っていたのかもしれない。だが、現実は2国の空軍の連携により苦戦している。つまりレキシントン号を守っていたのは竜騎士達で、残りはトリステインと王統派を相手するのにこちらまで手を回す余裕が無いのだ。
「ちょっとここからじゃ魔法を撃ちにくいわ。サイト、詰めなさい」
そう言って後部座席からよじよじとルイズが出てくる。いや、もうレキシントン号だけだからいいんだけど。
「エオルー・スーヌ・フィル・ヤスンクサ・オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド・・・・・・」
旋回してる間、苦し紛れに一隻の船が近づいてきたが。片手でしっかりルイズを抱きかかえて宙返りし、甲板にクロスボウでダイナマイトを飛ばした。
「ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ・ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル・・・・・・」
風穴を開けられた船はこちらの味方の船に追撃の砲撃を受け、あっけなく沈んでいった。
「いくわよ!エクスプロージョン!」
どうもフルでスペルを唱えたようだが、トランス状態ではなく、余裕がある様子。きちんと精神力を残してあるな。
その直後、レキシントン号を一回り小さくした光が船を中心に輝き、その直後、浮力を失った敵の旗艦はゆっくりと沈む。集団でレビテーションでもかけているのか?
「あはは、あはははは、やったわ!は、ははははははは!」
ルイズは壊れたように笑っている。確か虚無って負の感情を力の源にしてて、幸せだと威力が出ないんだっけ。これなら幸福を感じつつも病んでるからむしろプラスなのか?ヤンデレにはなってほしく無いんだが。
「ご苦労様でした、主。残りの雑魚はほとんど片付いてますし、殿下達の軍が見えたので、そちらへ降りましょう」
「そうね、ふふふ、姫殿下達の驚く顔が思い浮かぶわ。それに、王家に認めてもらえば、実家へも報告できるし、ふ、ふふふふ・・・・・・」
トランスはしていないがトリップしている。ま、降りる頃には元に戻っているだろう。多分。メイビー。
それから一度大きく旋回し、未だ歩兵が居る村ではなく、安全の為トリステイン軍の背後から降りてアンリエッタに取り次ぐ時間の方がかかったのは余談である。
風竜がゼロ戦とドッグファイトできるくらいの速度で、頑張れば音速を出せるらしいです。韻竜って火竜じゃなくてもブレスを吐けるんだろうか?描写を見た記憶が無いからなんとも言えないです。