転生先が平賀さんな件   作:スティレット

1 / 57
 別の作品執筆してる途中で電源が落ちて白紙状態にぶちきれた反動で書き上げました。昔書いてた作品のリメイクでもあります。結構変わってるところも多いので読んでくれたら幸いです。


先が分かってるならまず準備

 どこをどう間違ったか分からんが、気がついたら赤ん坊になっていた。

 

 死んだ覚えも無いし、これが胡蝶の夢と言う奴なのかもしれないが痛覚はあるし意識も無駄にはっきりしている。

 

 苗字は知らないが俺の今の名前はサイトというらしい。

 

 これが神様転生だったら「あの世界」に転生したのかもしれないが、神に会っていないのでそんなことは分からない。

 

 少なくとも強くてニューゲーム状態なんだ。最悪も想定しなきゃいけないが、まず歩けるまでは間接の柔軟化と程々の筋トレかな。

 

 

 

 2年経ちました。毎日がルーチンワークと化してたのでそこは割愛。強いて言えば、同年代より丈夫な身体が出来た。

 

 この頃はもう絵本をねだって文字を覚えるフリ、ヒーローごっこをするフリをして倉庫から拾ってきた木材で作った棒とかで我流の剣術や体術の練習など。前世は空手で黒帯だったのでそこがベースだ。剣術もどちらかと言うと棒術や釵(サイ)、トンファーを削って作って型の練習に取り入れている。身体鍛えるの好きなんだよ。前世から。

 

 親は俺が平均より早く喋りだしたのを皮切りに、知能が高いと言う認識を刷り込んでおいたのと、身体は本能に忠実なので無理せず乳幼児の演技せずに泣いたり笑ったりしてたので今のところ違和感を持たれていない。せいぜい聞き分けのいい子と言う感じだろう。おかげで日の高いうちは庭の敷地内だったら一人で出歩ける程度の信頼を得ている。それで玩具の作成が出来たわけだ。現在は弓を試行錯誤して作っている最中だったりする。

 

 それが日の目を見たのか、3歳からちびっ子空手教室に通えることとなった。悪ノリして道場の鍛錬後、年上相手にプロレス(ルチャリブレ)してたらいつの間にかガキ大将ポジになってた。いくら身体に精神が引っ張られているとはいえ我に返るとドン引きして欝になったりする。

 

 後は順調に身体を鍛え、その合間にルーン文字や、もしかしたら使えるかもしれないのでこの世界での魔法を探している。幸いインターネットが普及しているので、検索エンジンから気になるのを片っ端から貪っていった。顔が見えないのでネットサイト作ってる人との交流も問題なく、この歳でアングラなサイトにも入り浸ってたりもする。

 

 そんな生活を2年ばかり続けていたら、どうやら当たりを引いたようだった。

 

 意気投合したサイト主と親に見つかった時の保険の為にこちらが用意したチャット部屋で深いところまで語り合ったり、食い違った意見を徹底的に議論するのが日課なのだが、その中でも今回は呪詛をメインとする方々とチャットしていた。ルーン文字による簡単な呪い(まじない)も習っているが、手札は多いことに越したことは無いので和洋問わず色々なところから知識を吸収している。

 

 その中でも詳しく知られたのは解呪方法で、一番簡単なのが呪詛返しらしい。とは言っても素人が下手にやると悪化するからもし呪いを喰らったら神社などに行くようにと言われた。次に加害者にも被害を与えない解呪なのだが、上手く会得出来ればもしも俺がラノベの住人になっていたとしても都合のいい部分だけ残して解呪出来るかもしれないと思った。

 

 つまるところ、俺はこの世界が「ゼロの使い魔」かもしれないと疑っているのだ。

 

 取り越し苦労だったらそのまま自衛官にでもなろうと思うし、道場を持ってもいい。ただし、「異世界への扉」が開かれたら……。しかもそれが他に適合できる使い魔が居なくて何度も、それも俺の都合など知ったことではないと日時問わず開かれたら堪ったものではない。

 

 そういうこともあり、小遣いやお年玉、その他臨時収入はほぼ全て貯金に回され遊ぶ暇はせいぜい空手道場の鍛練後くらい。幼稚園では当たり障りの無いように振舞っているが、一緒に遊びにいく友人は皆無なので適当に友好の範囲を維持している。

 

 そんな変わった子供でも成長には睡眠の大事さを知っていたので居眠りすることも無い。パソコンによるチャットも俺の家にはゲーム機が無いので黙認されている。深夜父親が見たエロサイトの履歴をそっと消してやるくらいのやさしさもあるし。

 

 

 そんなわけで5歳になったら、空手とは違う道場に連れて行かれた。

 

 

 なんでもここは祖父の知り合いの道場らしく、剣道と剣術を教えているらしい。

 

 確かに身に覚えがあるのは自己鍛練でアクロバティックな動きをしながら棒を振り回していたりもしていたので、それを隠しもせずにいたから祖父に伝わって、そこからこの道場に経由したのだろう。

 

 そして興味を持たれて今に至る、と。

 

「よく来てくれたね」

 

 がっしりとした体つきのお爺さんがニコニコと笑いながら歓迎している。ちなみに俺をここに連れてきた祖父はなんかドヤ顔だ。

 

「この子は大分前からヒーローごっこをさせるには惜しいくらいの動きをしていての。今は空手をやらせているんじゃが、爺馬鹿かと思われるかも知れんがそれだけじゃ勿体ないと思って連れてきたんじゃよ」

 

「ふむ、つまり剣道ではなく剣術の方を僕に教えて欲しいと言うわけだね?」

 

「そうじゃ。ただ、本人の意思は確認していなかったからの。ここで決めてもらうとするか」

 

 いきなりの無茶振りですよ。まあやりますけど。

 

「ええと、はじめまして、ひらがさいと、5さいです。けんじゅつってさむらいとかにんじゃみたいになれるの?」

 

 どうも舌っ足らずな発音しか出来ない。そこ、あざといって言うな。

 

「うん、頑張れば出来るよ。ここでは剣術を教えているけど、僕個人は他にも色々かじっているから気に入ったものがあったら他にもある程度は教えられるよ」

 

「しゅりけんとかなげられますか?」

 

「うん、投げられるよ」

 

「わかりました。いろいろおしえてください」

 

 こうして俺はにわか剣術から本格的な剣術などを習うことになった。

 

 

 

 そうしてまたしばらく時は過ぎ―――――。

 

 

 

 今、俺は黒色火薬を利用した爆弾を作っていた。

 

 突込みどころ満載だって? そう言うな。いくら俺が憑依転生した身でイレギュラーだったとしてもこの身は仮にも平賀才人。無事平穏に高校卒業出来れば自衛官にでもなるつもりだが、あの世界にはすでに黒色火薬は流通していたし、水の中や雨でも湿気ない爆弾が必要だと思ったんだ。

 

 黒色火薬以上の爆弾などはどうしてもコルベール先生の協力を仰がないとダメだろうし、あの人戦争嫌いだから論外だろう。だったら金で解決する分まだこちらの方がマシだと言う事だ。

 

 後は切り札としていくつかの比較的簡単な魔法を取得した。いや、ほんとにあるんだね。何年も情報収集して、週末に修行つけてもらった甲斐はあったよ。若いとそれだけで可愛がられるから得だよね。と言っても解呪以外は派手な攻撃魔法なんぞ無く、せいぜい指先から火を灯す程度のしょぼいレベルのがいくつかだが。それと暗示。この世界の基準だと小源(オド)大源(マナ)を増幅するのだが、これが限界らしい。昔にさかのぼるに連れてもっと派手なことが出来たと言われているらしいのだが。

 

 

 武術に関しては問題なく上達している。

 

 空手は元々黒帯だったから言うまでも無く師範代に褒められるレベルで、鍛練は大人に混じってやっている。むしろ鍛練中は年下を指導することが多くなったような気がする。

 

 剣術などは、元々祖父の知人のお爺さんの理念が武芸百般だったらしく、さまざまな武器を扱って一つのエモノに慣れさせないようにされている。俺が希望すればそういった武器の扱いも教えてくれるが、時にはそのさらに知人のところに預けられたりして野試合に行ったり、あの人は生まれる時代を間違えたんだなぁとしみじみ思った。

 

 今後できれば切り札として銃が欲しいが、ライフルは黒色火薬と相性が最悪で、散弾はリロードが非常に面倒だ。それになによりコネが無い。暗示が使えると言っても言葉の矛盾が発生するとすぐ解けるし、リロードツールは普通は大型でかさばる。そこは手作業で代行すればする分だけ軽量化できるかもしれないが、銃すら手に入れていないのに取らぬ狸の皮算用をしても仕方が無いので保留。

 

 そうして小学校を卒業した。

 

 

 

 それから中学で、留学した。

 

 理由は現代工学で黒色火薬に強い銃器を作ってくれる銃器メーカーを探すため。

 

 留学先ではサムライとニンジャは大人気だったので簡単になじめた。言葉の壁はすでに予習済みだ。

 

 休日に居合いでエアガンの弾を斬ったり、背骨ごと付いてる牛肉を両断したらとてもうけた。これもあの師匠が調子に乗って修練レベルをどんどん上げていったのが悪いんだ。

 

 そうしながら17歳までに米軍経由で黒色火薬対策をしたリボルバーとライフルを送ってもらえるように中学の間はじっくり根回しした。

 

 後はせっかく人気者になれたのでステイ先の友達と内緒で夜に外へ繰り出したり、酒に慣れておこうと思ってたまり場で酒盛りしていたりした。それと実銃の練習やハンティングくらいか。

 

 

 

 楽しい中学校生活が終わり、俺は日本に戻ってきた。

 

 銃器の根回しにはちょっと人に言えないようなバイトで稼いだ金などを使ったり共犯者を作ったりして十分に信用できるはずだ。

 

 帰ってきたのと高校入学祝いで師匠からは父の名義で胴田貫のような肉厚な刀を大小貰った。前から欲しがっていたのを覚えていてくれたのか。

 

 白状しよう。俺はもう完全に「ゼロの使い魔」の世界に転生したと思っている。もし仮17歳になってからしばらくする間もなく召喚される場合がある。

 

 17歳からの外出は極力控え、外出中は可能な限り合法的に刀を所持する必要がある。銃は無くても最悪あっちにはクロスボウや弓があるのでガンダールヴ補正でなんとかしよう。

 

 そうこう考えながらも師匠の家で弓を引いていた。四本の指の間に三本の矢を挟み、複数の目標を射抜く練習だ。

 

 これはすでに慣れきったものだが、油断こそが一番の敵。雑念を捨て、身体に染み付いた行動を取る。

 

 今俺が使っているのは俺の標準よりやや小さな弓で、弓を寝かせてばらばらの目標を狙っているのだ。一応洋弓もあるのでそういう練習も出来る。

 

 集中は一瞬―――そして、発射。

 

 それぞれの矢は全て命中。数撃ちは即死を狙うものではないので腹などの胸甲に守られていない部分を狙う想定でやっている。

 

「最初聞いた時はただ面白いと思っていたけど、ここまで来るともはや流石と言うべきかな」

 

 師匠が笑顔で褒めてくれる。この人は対峙した時こそ圧倒的な威圧感を出すが、それ以外ではこんな感じだ。

 

「いえ、俺こそこんな弓道とも言えないような真似を許してくださって本当にありがたいです」

 

「いいんだよ。うちは剣道と剣術を分けるように、これも立派な弓術だと思ってるから」

 

「重ね重ねありがとうございます」

 

「じゃ、今日もこの後矢筒背負って通してみるの?」

 

「はい、想定ではこれでは致命傷になりませんから。連続して畳み掛けないと」

 

「分かった。これに関しては僕には言うことはないから終わったら声かけてね」

 

「分かりました」

 

 お互い緩いかもしれないけどこんな感じだ。

 

 その後俺は矢筒を背負い、三本づつ放つのだった。

 

 

 

 そうして色々鍛えながらも逆に17までは安全と考えているので、鉄屑で棒手裏剣を作る練習をしたり、非常時には自力で防具を修繕しないといけないので失敗しながらも鎧を作ってみたりした。

 

 

 

 そして17になりしばらくして、運命の日がやってきた。

 

 

 

 俺は毎日やっている荷物チェックをして、久々の休日なのでゆっくり寝ていようかと思ったのだが――――。

 

 部屋のベランダにゲートが出来ていた。

 

 ついに来たかと思いながらも行ったら戻ってこられるか分からない。両親の悲しむ顔がちらつく。

 

 そこで、まず両親を呼んで状況を説明した。

 

 父は難しい顔をし、母は止めたが、準備不足で強制召喚されるより今行った方が良い事。必ず帰ってくることを伝え、ゲートの存在をビデオカメラを回して一部始終を撮影してもらうことにした。これで場合によっては地球側からもなにかしらのアプローチをしてくれるかもしれない。

 

「じゃあ、父さん、母さん。すぐには帰れないかもしれないけど、大丈夫。帰ってくるから」

 

 そう言い残しハルケギニアに旅立つのだった。いざ行かん、トリステイン。




 もはや憑依なのでオリ主です。そして数々の作品を参考にした結果、完全に魔法の無い地球では無く探せばある(ただししょぼい)。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。