「結婚を前提に俺と付き合ってください!!」
コスミナさんと巡回中にいきなりコスミナさんにプロポーズしてきた人がいた。綺麗な季節の花で彩られた花束を差し出して跪いてる。
いきなりのことにコスミナさんもキョトンとしてるし、頭が追い付いてないようだ。
「こらぁ!お兄ちゃん!何いきなり告白してんのよ!」
「あいたぁっ!」
・・・気が付くと、少し小さな少女が跪いていた男性の頭をチョップしていた。
少女は俺とコスミナさんのところまでやってきてくれるが、金髪で三つ編み姿が可愛らしい。
「ごめんなさい、うちのお兄ちゃんがいきなり迷惑かけました」
「・・・あっ、いえいえ、コスミナちゃんはイケメンさん大好きですから。一緒にイイことするなら・・・」
「コスミナさん!だからそういうことやるのは控えろってセシルさんも止めてましたからね!?」
今度は俺が少女と男性に謝る番だ。
とりあえず路上でもなんなので、男性が営んでいる店で休ませてもらうことになった。小さい店だが、いい雰囲気の弁当屋さんだ。
「仕事でウマトラ劇場に行くことが多いんですよ。その、コスミナさんがウマトラ劇場で歌っているのを聞きまして。それでその歌う姿が綺麗で・・・」
「ごめんね、お兄ちゃんが。でも、どうせなら私とお兄ちゃんと友達になってよ」
「・・・はぁ。ん?ウマトラ劇場?」
「あっ、その、その話は・・・」
なんで劇場に?
「・・・コスミナさん?」
「うう、まだ秘密にしておこうって思ってたんですが・・・」
店を離れて、すぐ近くのウマトラ劇場にやってきた。劇団員が劇や歌の練習をしているようだが、コスミナさんが入ると、すぐに劇団員が気が付いた。
「おお!コスミナじゃないか!」
「はい、今日はちょっと見回りついでに・・・」
「ねぇねぇコスミナ、ちょっとこっちの歌を一緒に歌ってくれない?」
「お仕事中ですけど・・・タツミちゃん、いいですか?」
「えっ」
いきなり聞かれて、思わず頷いた。
・・・どうやらコスミナさんは俺やワイルドハントのみんなが知らない間に劇場の人間と馴染んでいるらしい。
その間に劇場の支配人が俺に話しかけてきた。
「コスミナさんのスカウトの話をしていたんですが、まだ渋られてるんですよ。でも、時々歌ったりしてくれますし、劇団員にはいい刺激になってます」
「・・・はぁ、でも、なんで」
「実はウマトラ劇場は・・・オネスト大臣の息子であるシュラ様が幼少期から懇意にしてくれまして。それでコスミナさんが帝都に来てすぐにこちらを紹介してくださったんですよ」
・・・・・・それは初めて聞いた話だ。
コスミナさんもそうだが、シュラさんもそういうことは言ってないし。リンネさんたちからも聞いたことが無い。
「最初はコスミナさんの性格に驚きましたが、シュラ様から予め聞いておりましたし。今ではコスミナさんと友人になった劇団員も多いのですよ」
「そうですか・・・でも、楽しそうにしてますね」
「えぇ、ワイルドハントも危険な仕事と聞きますからいい息抜きになるかと思います。もっとも、あんなに素晴らしい歌声の持ち主なら・・・」
「・・・」
「タツミちゃん、もうちょっとセシルちゃんたちには秘密で」
ウマトラ劇場を出た後、コスミナさんに頼み込まれてしまった。
「え、なんでですか」
「ふふーん!セシルちゃんも皆さんとお友達になってもらいたいのでサプライズしたいんです!」
「サプライズって・・・」
「セシルちゃんも年頃の友達がいませんし、他のみんなもそうでしょう?それにいつも、セシルちゃんはコスミナちゃんを心配してくれてますから」
「・・・そうですか。俺も秘密にしておきますね」
「ありがとうございます!」
コスミナさん、故郷を追われて辛い思いをしていただろうに・・・帝都に来て、少しは幸せなんだろうか。
「シュラっちには感謝してます!帝都に来てすぐにあのウマトラ劇場を勧めてくれたんですよ」
「シュラさんが斡旋って、なんか意外だなぁ」
あまりシュラさんはそういうタイプには見えない。多少女遊びはしてるから、夜の街でも多少顔は広いみたいだけど、ウマトラ劇場のような類の人脈もあるんだ。
「うーん、シュラっちは最初、コスミナちゃんを劇場に置きたかったみたいですよ」
「・・・え?」
「でも、コスミナちゃんだって帝具がありますし、帝具で倒したイケメンさんとイイこともできますから、今は保留してるんです。」
「そうなんですか・・・なんというか、コスミナさんはブレないなぁ」
ちょっと正気が減ってるところはあるにしろ、コスミナさんも帝具使いとしてそれなりに強いらしいから・・・
・・・でも、シュラさんがそういうことを言っていたのはなんか驚いたなぁ
別に悪人とまではいかないけど、それなりにガラが悪いところあるもんな。エンシンさんと下世話な話でよく盛り上がってるし。
「そういえばタツミちゃん、遠方にいる官僚さんの護衛任務が入るそうですよ」
「護衛任務って・・・急ですね」
「リンネっちが急に。シュラっちからこっそり教えてもらったんですけど・・・シュラっちのお父さんと対立する派閥の官僚さんらしいですよ」
対立・・・つまりは良い官僚なんだろうか?
護衛ってことは、危険な目に遭うかもしれないってことだろう。初の護衛任務ってことか。
「どういう組み分けになるか分かりませんが、お互いに頑張りましょうね!」
「・・・はいっ!」