ワイルドハント異伝   作:椿リンカ

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ロッドバルト「あぁ、また会いましたね。いやはや前回はタツミさんが登場しましたし、ワイルドハントの戦力が過剰なぐらいになっていますね。困ったものです。そうそう、今回はリンネさん視点で話が進みますが、次回からはタツミ君の視点が続きます」

※リンネ視点です


「俺の帝具は普通じゃない」

シュラの奴はバカだバカだと思っていたが、こんな大馬鹿をやらかすとは思ってもなかった。

・・・大馬鹿とわかるのは、原作知識のある俺や他の転生者しかわからないだろう。普通に人間が見れば「新人候補を連れてきた」程度の話だ。

 

「兄貴!ワイルドハントの補欠として入れたいやつがいるんだ」

 

こんなことをほざいた後に紹介したのが、まさかのタツミだ

 

この【アカメが斬る!】の重要なキャラクター

ナイトレイドに入り、帝具である悪鬼纏身インクルシオを継いで、皇帝一族が使う帝具であるシコウテイザーを破る

・・・そういう筋書きのはずだ。

 

「あ、あの、俺をここで働かせてください!!」

 

執務室に響くほどの声量で頭を下げて頼み込んできた。

 

「・・・」

「いいだろ?普段の事務仕事とか全部兄貴がしてるからよ、なんなら補欠がいたら助かるじゃねぇか」

「その、俺・・・村に仕送りをしないといけないし、それに出世しないといけなくて・・・」

 

「・・・」

「こいつよ、兵士の募集に入れなかったって聞いたから誘ったんだよ。適当にエンシンと剣術で競わせたら結構な逸材だし」

「あのっ、俺、お金もちょっとなくて泊まるところも・・・だからその、お願いします!!」

 

俺が何も答えない間に二人がどんどんアピールしてくるが、正直雇う気にならない。

・・・まったく面倒なことをしてくれるものだ。

確かにタツミをこのままワイルドハントに引き留めたほうがいい。だが、今の組織のありようはタツミには合わないはずだ。

 

「・・・タツミ、と言ったか」

「はい!なんでもします!」

 

「・・・ここがどういう組織か、分かっているのか」

「え?えぇっと・・・秘密警察、でしたよね」

 

「・・・悪を持って悪を制す、そういうやり方をしている。生憎、俺の愚弟は才能があるろくでもないクズ共しか勧誘してないからな。その馬鹿共が悪人に対して好き勝手しているだけだ」

「・・・」

 

「メンバーには海賊や猟奇殺人鬼に人斬り、西の王国で魔女認定された女や錬金術師まで在籍している。まともな奴らはいない」

「・・・」

 

「薬漬けにしたやくざに薬物投与したりな。この間は民間人を拷問していた貴族を処罰したり凌辱していたようだな・・・なぁ、シュラ」

 

そう言って、シュラを見ると少しバツが悪そうにしている。そのまま黙って様子を見守るようだ。

本当のことを俺は言っただけなんだがな。

・・・まぁいい。問題はタツミだ。

 

 

「・・・その、俺、ちゃんと知ってます」

「!」

 

「街に来たときとか、その、お金を盗んでいった女から聞いてて」

「・・・どういう内容だ」

 

恐らくはナイトレイド所属のレオーネから聞いたのだろう。

ナイトレイドからすれば、敵対組織のはずだ。ろくなことは言ってないと思うが・・・

 

「・・・帝都の住民からは、恐れられていたり、感謝されてるって」

「感謝されるようなことは何一つしてない」

 

「・・・・・・帝都でひどいことをしていた奴を、同じ目に・・・いや、それ以上に報復してくれるって。貴族や権力のある悪人相手にも怯まない人たちだって。」

「・・・そこの愚弟たちが馬鹿なことをしないための処置の一つだ」

 

根気よく説得しようとするが、目の前のタツミはまっすぐにこちらへと射抜くような視線を向ける。

・・・正義の味方と勘違いしているのだろう。

そんな綺麗なものじゃあないんだ

 

「兄貴、いいだろ?」

「お願いします。軍に入れないなら、俺は・・・」

 

「・・・わかった。ただし、どうやらワイルドハントに夢を見過ぎているようだからな。試用期間を設ける。いいな?」

 

俺が妥協案を提示すると、タツミはすぐに嬉しそうにしながら「ありがとうございます!」とお礼を言ってきた。

シュラも機嫌がよくなったのか、早速タツミを連れて案内すると俺に言って執務室から出て行ってしまった。

 

・・・まぁ、試用期間中にきっとタツミは幻滅するはずだ

 

静かになったことだから、また調書の作成をしないといけない。あとは情報屋や子飼いの隠密からの情報をまとめないとな・・・

 

 

 

≪おやおやぁ、まさか才能ある少年を手放そうっていう気なんですか?≫

 

 

 

・・・俺の持っている帝具「時間逆行メフィストフェレス」から声が聞こえた。耳障りな言い方をする男の声に俺は書類を書き進めながら適当に返答した。

 

「手放すも何も、この組織に合わないはずだ」

 

≪決めつけはよくありませんよ≫

 

「・・・それはそうと、帝具が話しかけるな」

 

≪酷いですねぇ。そもそも私は帝具じゃないんですよ?≫

 

・・・・・・俺の帝具は、帝具じゃない

いや、この世界では帝具とされているが実際はその枠組みに無理やり収まっただけの悪魔だ。

あの悪魔・・・ロッドバルトが俺に寄越したのだ。

 

≪ロッドバルトから言われて貴方を手助けすることになったんですから仲良くしましょうよ≫

 

「黙れ悪魔。穢れているような悪人と仲良くする義理はない」

 

≪酷いですね。そういう偏見はよくありません。そういうジェノサイド的な思想はどうにかしたほうがいいですよ≫

 

まったく本当に煩い奴だ。普段は黙っているくせに

 

・・・こんな悪魔はかまわない。それよりもタツミだ。

 

・・・試用期間中に、ワイルドハントのメンバーの異常さに気が付くといいが・・・

 

 




帝具「時間逆行メフィストフェレス」

モノなどの時間を巻き戻せる帝具
奥の手は不明
・・・・・・実際は帝具ではない。
また、この帝具を手に入れた経緯は現時点では不明。ロッドバルトが寄越したらしいが・・・?

メフィストフェレス・ナーヴェ・シューリピアカ

ロッドバルトが寄越した帝具としてリンネを補佐する悪魔
ロッドバルトと同じ名前があるようだが関係性は不明。ロッドバルトの名前を気軽に呼んでいるので、レイク・オブ・スワンの関係者ではないらしい。

***

ロッドバルト「いやはや、先んじてメフィストが出たようですね。まったく彼も存外ノリノリですが・・・あぁ、そうそう。次回からはタツミさん視点がメインになる回が続きそうです。お楽しみに」

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