Fate/Zero ゼロに向かう物語   作:俊海

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申し訳ありません。この二日間旅行に行っておりました。
次からはある程度更新速度は戻していきたいので、お許しください。


アサシンは隠れない。

 ウェイバー・ベルベットは、自分は優秀な人間だと思っている。

 祖母から数えて三代目と、魔術師としての歴史が浅い家柄の出身で、そのため魔術刻印の数は少ないが、そんなハンデなど努力と才能でいくらでも補えると信じているのだ。

 

 しかし、魔術師たちの総本山ともいえるロンドンの時計塔は、名門と呼ばれる家に生まれただけの優等生達が幅を利かせ、自分たちのような血統の浅いものがまともな評価をされることはほとんどあり得ないという、ウェイバーが忌み嫌っていた権威主義の塊ともいえる世界だった。

 それでもと、その時計塔の仕組みそのものに挑戦するかのように、ある日、一つの論文を作成し始めた。

 構想三年、執筆一年を費やした論文『新世紀に問う魔導の道』が完成したときは、この間違っている時計塔の体制に影響を与えるものだと確信していた。

 

 だが、その論文を、ケイネスはウェイバーの目の前で破り捨てたのだ。

 自分の集大成を破り捨てられたという事実に呆然としているウェイバーに、ケイネスは『こんなのは妄想にすぎない』とバカにしたセリフを吐いた。

 その時の屈辱は今でも忘れられない。

 だからこそ、自分を馬鹿にした連中を見返すためにこの『聖杯戦争』に参加したのだから。

 自分の考えこそが正しかったのだと証明するために。

 

 

「バーサーカー、約束通り訪問してやったぞ!早くここを開けるがよい!」

 

「……はぁ」

 

 

 しかし、目の前のサーヴァントを見ていると、参加したことを後悔してしまいそうになる。

 ウェイバーのサーヴァントであるライダーは、『アドミラブル大戦略』というロゴの入ったTシャツにジーパンという、現代風――とは言っても、それでも何かがおかしくはあるが――の衣装に身を包んでいる。

 どうしてそこまで現代の衣装を着たがるのか、なぜその衣装の料金を自分が支払わなくてはいけないのかとウェイバーを悩ませ、その上ライダーは、最初は下に何も履かずに外に出ようとしたのだから始末に悪い。

 

 今ライダーはバーサーカーの拠点の前で大声を出している。

 なんでインターホンを使わないのか。近所迷惑甚だしい。

 

 

「……ライダー、いくらなんでも時間を考えろよ」

 

「むっ?何を言うか小僧、言われた通り朝のうちにここにやってきたではないか」

 

「ああ、確かにそうだよ!確かに朝だよ今はっ!まさに今から朝が始まるんだからなっ!!」

 

 

 ライダーが間桐家に到着したのは日の出の時間だった。

 冬とはいえ、かなり早い。そんな早朝に大声で叫んでいるのだから腹が立つ。

 おそらく、ウェイバーの機嫌が悪いのも、睡眠時間が十分ではないからだということと関係があるのだろう。

 

 

「そうがなり立てるな。兵は拙速を貴ぶと言う。ならばこの早期の行動に何ら恥ずべきことはなかろう」

 

「恥ずかしいとかじゃなくてマナーを考えろって言ってんだ!!何で大声を出してんだ!お前の声は無駄に響くから五月蠅いんだよ!!」

 

「そんなもの、征服王のこの豪胆さを臣下に見せ付けるために決まっておろう!」

 

「本っ当にバカだなお前ーーーっ!」

 

 

 朝から体力を使わせるサーヴァントだ。

 腕力に自信のないウェイバーでは、聖杯戦争が終わるまで体力持つのかすら危うい。

 

 

「そら、そんなことを言っているうちにバーサーカーの奴が出てきたぞ。向こうも準備はできていたということだろう」

 

「……はぁ」

 

 

 聖杯戦争がはじまってから、ため息をつく回数が増えてきたような気がする。

 それはともかくとして、ライダーの言う通り、屋敷の中からバーサーカーが現れた。

 サーヴァントには睡眠が必要ないとはいえ、慌てた様子を見せないあたり、向こうも想定の範囲内だったということか、冷静な性格だからと言うだけなのか、それとも――

 

 

「……やぁライダー、ウェイバー君、約束通り来てくれたようで感謝するよ」

 

「何、余は約定を違えるような男ではない。感謝されるようなことではない」

 

「うん、そこは僕も素直に評価するよ。さすがは征服王イスカンダルだ」

 

「はっはっはっ!そうであろう、そうであろう!」

 

 

 バーサーカーの言葉に気を良くしたライダーが大声をあげて笑う。

 しかし、ウェイバーだけが何か嫌な予感がして後ずさる。

 バーサーカーはにこやかに対応しているのに、すごく恐ろしい何かの気配を感じた。

 

 

「それはともかくとして、だ」

 

「うむ?バーサーカー、どうかし――」

 

 

 チュインッ!という音と共に、自慢げに踏ん反りがえっているライダーの頬を何かがかすめた。

 あまりにも突然の出来事に、あの豪放磊落なライダーが途中でセリフが途切ってしまう。

 何が起こったのか分からないという様相のライダーと、滅茶苦茶怯えまくるウェイバー。

 そして、二人が、ふと目の前にいる同盟相手であるサーヴァントの目を覗き込んだ。

 

 直後、ウェイバーは覗き込まない方が良かったと後悔した。

 バーサーカーの瞳の中で黒い小さな炎が燃えているのが見えてしまったから……。

 

 

「……今はまだ早朝だ……インターホンもある……どうしてライダーは大声で僕らを呼んだんだ……?」

 

「それは、まぁ、余の豪胆さをだな?」

 

「お前自身のはた迷惑なアピールと言うのは、重病人や幼い子供の安眠妨害をする以上に価値があるものなのか……?」

 

 

 圧倒している。

 バーサーカーがあのイスカンダル大王を圧倒している。

 バーサーカーから、容赦がない、やると決めたらやるという『スゴ味』を感じる。

 先ほどからウェイバーが感じていた嫌な予感というのは、これのことだったのだ

 

 

「ライダー……まだ情状酌量の余地ありだが……次同じことをやったなら、即!始末してやる……」

 

「……肝に銘じておこう」

 

 

 ライダーの傍若無人さに辟易していたウェイバーにとって、今のやりこまれているライダーの姿は溜飲が下がるものだったかもしれないが、そんなことより目の前のサーヴァントへの恐怖の方が上回っているので、そんな余裕はこれっぽっちもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、臣下になった直後に謀反を起こすとは、中々やりおるなお前さん」

 

「……謀反を起こされた本人からそんな評価をされるとは思わなかったよ」

 

「そういった者も飲み込んでこその征服王だからのう」

 

 

 喉元過ぎれば熱さ忘れる。という言葉がバーサーカーの脳裏をよぎった。

 殺されかけたというのに全く気にしていないライダーの様子に、自分がやったことながらも呆れてしまう。

 

 

「頼むから朝から大声を出さないでくれ。僕の陣営の人間はどっちも衰弱してるんだ。しっかり寝ないと体力が持たない」

 

「それはすまなかった。今後はこういうことがないように気を付けよう」

 

 

 理由を述べれば反省はしてくれる分、まだライダーは接しやすい相手だ。

 アーチャーやキャスターでは絶対に無理だろう。

 それでも非常識な人間であることには違いないのだが。

 

 

「ところでバーサーカー、この装束はどうだ?この胸板に世界の全図を乗せることができるあたり、実に小気味良いと思わんか?」

 

「………………」

 

「どうだ?どう思う?」

 

 

 ライダーが着ているのは、ゲームか何かのロゴがプリントされたTシャツ。

 そんなものを自慢げに見せつけられても、一般の感性を持っているものならどう反応すべきか分からない。

 無言になったバーサーカーを見て、ウェイバーはこいつも返答に困っているのかと思った。

 

 

「いい―――ねェ―――すごくいいよ!超イケてる」

 

 

 が、バーサーカーの口からありえない言葉が飛び出した。

 あろうことかライダーのセンスを肯定したのだ。

 …………言葉の割には、なんというか、こう、バーサーカーの顔面の筋肉が口元以外全く動かないほど凄まじく真顔な上に、人間はここまで感情を込めずに喋ることができるのかと思うくらいの棒読み加減ではあるが。

 

 

「あっ……ヤバイ!スゴクいいッ!激ヤバかもしれないッ!頭に浮かぶんだよ!世界征服って感じのイメージが!」

 

「本当か!!本当にそう思うか!?」

 

「最先端を行くっていうのかな……目を奪われるよ!ギリシャ辺りなら大ヒット間違いなしかも!」

 

「実は余もそう思っておったのだよ!そうだろうっ!?」

 

 

 次から次へとポンポン出てくるバーサーカーの賞賛の言葉。

 自分のセンスを理解してもらえたのがよほど嬉しかったのか、ライダーの気分が高揚しまくっている。

 …………なお、上記のセリフをバーサーカーは表情もトーンも先ほどから一切変えずに喋っているのだが。

 

 

「……これって、本気で気に入ってるのか?それともわざと合わせてるだけなのか?」

 

 

 喋っている内容とバーサーカーの態度のギャップに、ウェイバーはどっちなのか判別できずにいた。

 その答えは、目の前のサーヴァントにしかわからない。

 

 

「それはともかく、僕のマスターはまだ寝ているから、聖杯戦争について話し合うのは後ででもいいか?もしも用事があるなら僕だけになるけど」

 

「いや構わん。こちらから押し掛けたのだ、いくらでも待とうではないか」

 

「そうしてくれると助かる。あと二時間くらいしたら起きてくると思うから、それまでは自由にしてくれ」

 

 

 ウェイバーにしてみれば、こんな早朝にたたき起こされたというのに待たされることに釈然としないが、考えてみれば全ての元凶はライダーにある。バーサーカーを恨むのは筋違いと言うものだろう。

 だとしても、まだまだ眠いし、朝食も食べていないので腹も減る。コンディションとしては最悪だ。

 

 

「ふわぁ~あ…………うん?」

 

 

 あくびをして目をこすっていたら、目の前にバーサーカーが立っていた。

 何か器のようなものを右手に持って。

 

 

「……ぼ、僕に何か用でもあるのか、バーサーカー?」

 

「いや……あのライダーのことだ……君はまだ何も食べてないんだろう?」

 

「まあそうだけど……それが?」

 

「インスタントだけど、食べるかい?朝だし、そんなに重たくないものを選んだつもりだけど」

 

 

 そう言って、右手に持っていたカップうどんをウェイバーに渡した。

 それを受け取ったウェイバーは、状況が呑み込むことができず、手元にあるカップ麺のパッケージと、正面にいるバーサーカーの顔を何回か交互に見た。

 しばらく時間がたって、バーサーカーが自分のことを気遣ってくれているということにようやくウェイバーは気づく。

 

 

「……いいのか?」

 

「そっちから押し掛けてきたとはいえ、何もせずにいるっていうのもあれだからね。これくらいは構わないよ」

 

「……その、悪かった」

 

「気にしなくていいさ。ライダーを見てみろよ、あいつなんか全種類制覇するつもりだぞ」

 

 

 そう言ってバーサーカーが指さした先には、用意していたであろうカップ麺やその他インスタント製品を各々一つずつ作っているライダーの姿があった。

 ……彼には遠慮と言うものがないのだろうか。

 

 

「うーむ、手軽に作れて保存もでき、何より旨い。まさに兵糧にもってこいだのう。しかも飽きないように数多くの味もあるとはたまげたもんだわい」

 

 

 何やら感心した様子でライダーがインスタント食品を眺めている。

 確かにライダーの時代にインスタント食品があれば、兵糧の問題は大幅に改善できただろう。

 そんなインスタントラーメンを発明した日本人というのは、食に関してはどこまでも貪欲な民族なのかもしれない。

 

 

「またあいつは……!」

 

「あれくらいなら同盟を結ぶための必要経費さ。それで、食べる?食べない?」

 

「……食べる」

 

「了解。お湯ならあっちのやかんにあるから、好きに入れてくれ」

 

 

 空腹の中、こうも勧められたら断れない。

 まさか自分を毒殺するつもりもないだろうし、素直に食べることにしたウェイバーだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまないね、わざわざ来てくれたのに寝ちゃってて……」

 

「あー、いや、こっちこそこんな早朝に来て悪かったよ」

 

 

 バーサーカーの言う通り、雁夜はあれから二時間後に起床してきた。

 ウェイバーは、雁夜の姿に、まさに死人のような人間だという感想を抱いてしまった。

 しかし、どことなく人のよさそうな雰囲気があって、聖杯戦争に参加するような魔術師とは到底思えない。

 どうしてこの人が、こんなバトルロイヤルに参加しているのか不思議で仕方ない。

 

 

「ふむ、確かに風が吹けば折れてしまいそうなほどに衰弱しておるな。お前さんが余に憤った理由も分かる」

 

「おい、ライダー!」

 

「ははは、いいんだよウェイバー君。誰だってこの姿を見たらそう思うさ」

 

 

 ライダーの無遠慮な言葉にウェイバーが咎めようとするが、雁夜自身は気にした様子もない。

 一年間蟲蔵に入れられ、生きることを諦めていた雁夜からすれば、『死にそう』という言葉は『生きている』と言われているのと変わらない。

 むしろ気にせず言ってくれる方が気負いしなくていいから楽だ。

 

 

「見た目通り、俺の体は中も外もボロボロだ。バーサーカーが助けてくれなかったら一月もしないうちに死んでた身だからね。全然間違ったことは言ってない」

 

「……そうか。お前がそういうならいいけど……」

 

 

 ウェイバーは何か申し訳ない気分になるが、本人が言うならと引き下がった。

 

 ちなみにウェイバーは日本語がしゃべることができない。

 雁夜が会話できるのは、彼がルポライターで海外に行く時に学んだからだ。

 サーヴァントは言語を知識として与えられる。なので会話する分には問題ない。

 

 約一名を除いて。

 

 

「……おじさん、この人なんて言ってるの?」

 

「このお兄さんはね、おじさんが病気みたいだから辛くないか。って心配してくれたんだよ、桜ちゃん」

 

 

 雁夜のすぐそばに座っている桜には、四人が何を喋っているのか分からない。

 まだ幼い少女に英語を理解するのは仕方ないことだが。

 

 

「……失礼だけど、その女の子は?」

 

「ああ、この子は桜って言って、俺の子供みたいなもんだよ」

 

 

 正確には姪だけどね。と雁夜は付け加える。

 ウェイバーは、桜が雁夜の傍にいるのは父親が恋しいからなのだろうと判断したが、それでも聖杯戦争の話をするのに、小さい子供をこの場に連れてきていいのだろうかと訝しむ。

 

 

(内容が分からないならいいんだけど、それでもなぁ)

 

 

 考えても分からないので、ウェイバーは桜のことについて考えるのをやめた。

 実は、その理由がとてつもなく重たいものだとは知らずに。

 

 

「じゃあ長々と話していても始まらないし、本題から入るぞ」

 

 

 微妙な空気が流れ始めた瞬間、バーサーカーが口火を切る。

 事実、このまま傷付くだけの空間になるのは誰も得しない。

 

 

「僕達が君達の下につくことに反対意見はあるかい?」

 

「無論、余にはこれっぽっちもないぞ」

 

「……僕も賛成」

 

 

 ライダーは当然ながら、ウェイバーも割かし前向きだった。

 ある程度接していて、バーサーカー達は悪いやつらではないと確信できたからだ。

 しかもバーサーカーは、ウェイバーが敵視しているケイネスに言い返してもくれた。

 なので、ウェイバーからしてもバーサーカーは好印象なイメージが残る。

 

 

「それで、今のところはどこの陣営もサーヴァントは脱落していないんだけど……」

 

「あれ?アサシンは脱落したんだからいいんじゃないのか?」

 

「そうだな。俺もお前もそれを見たはずだぞ」

 

 

 ウェイバーと雁夜はアサシンがあの金色のサーヴァントに倒されているのを見ている。

 なのでアサシンはもういない。そう二人は思っている。

 しかし、バーサーカーが逆に問い返す。

 

 

「……君達もアサシンがアーチャーにやられるところを見たんだろう?」

 

「そうだ。僕だって使い魔を通してその現場を……」

 

「でもおかしくないか。マスターたちがアサシンが倒されるところを目撃した。それがおかしくないか(・・・・・・・・・・)?」

 

「それのどこがおかしいんだよ?」

 

「逆に、どうしてマスター全員がアサシンが倒される場面を目撃できたんだ?アサシンは隠密行動に長けてるんだぞ」

 

「それは……」

 

「まるでアサシンが来ることが分かっていたかのようにアーチャーが迎撃態勢をとっていた……とか、他のマスターの使い魔が見張っているのが分かっているはずなのにあんな偵察をしていた……とか、何一つばれないように偵察しようという動きが全くない。そこが変だ……」

 

 

 言われてみれば、バーサーカーの言う通りだ。

 『気配遮断』のスキルを持っているからといって、アサシンの地力が極端に落ちているわけではない。

 生前から暗殺に長けているからこそハサンの名が得られるのだ。

 であれば、どうしてマスター全員の目に留まる形でアーチャーに倒されたのか。

 あのアーチャーがいつ来るか分からないアサシンを迎え撃つために待機していたとは考えにくいし、そもそもアサシンのマスターもなぜ令呪を使って撤退させなかったのか……。

 

 

「………まさか……!」

 

「なるほど……」

 

 

 ウェイバーと雁夜は、バーサーカーが何を言いたいのかが分かったようだ。

 そしてライダーがバーサーカーの考えているだろうことを引き継いで言葉にする。

 

 

「つまりお前さんは、アサシンは『気配遮断』に頼らなければいけないほど、隠密行動がまるでできない無能だったか、もしくは隠密行動はできたが、わざと見せつけるように倒されたと。そう言いたいわけだな?」

 

「そういうことだよ。アサシンはまだ脱落していない可能性が高い。そう考えて行動しなくっちゃあならない」

 

 

 バーサーカーは洞察力が高い。

 特に、何かしら奇妙なことが起こった時、その理由を把握する能力に秀でている。

 普通の人間では『そんなことをするなんてバカな奴だ』とか『そんなバカげた能力があるわけがない』と否定することも、バーサーカーの場合は『そんなバカな行動をとったからには間違いなく何かしらの理由がある』とか『そうなるからにはそういう能力があるということだ』と肯定することから始まる。

 

 つまり、バーサーカーは常識外のことが起きても対応することができるのだ。

 さんざん彼の人生では奇妙なことしか起こらなかったのだから、当然ともいえるが。

 

 

「お前さん、ますますバーサーカーらしくなくなっていくのう」

 

「褒め言葉と受け取っておくよ」

 

 

 ライダーの軽口に、口元に笑みを浮かべて軽口を返す。

 なんだかんだ、この二人は相性がいいのかもしれない。

 

 

「それらを踏まえて、僕たちがこれからどう行動していくかだけど……」

 

 

 そうやって敵のサーヴァントについて考えながら、自分たちがどう動くか話し合おうとしたバーサーカーの耳に、重い破裂音が響いた。

 一般の人間には聞こえず、魔術に関わる者だけが聞こえる音だ。

 

 

「何だ?今のは……?」

 

 

 さっきの音はライダー達にも聞こえたようだ。

 どこから聞こえたのかと、桜を含めた全員がきょろきょろしている。

 窓の方を見ると、遠くから煙が上がっているが見えた。

 

 

「あれって確か冬木教会の方向だよな?」

 

「聖杯戦争をする上で、何か不具合でもあったんじゃないか?」

 

 

 おそらく、魔術的な措置がされているあの煙も魔術師たちの目にしか映らないはずだ。

 それが冬木教会から打ち上げられたと言うことは、監督役がマスター達に伝えることがあることを意味する。

 

 

「でもまともにサーヴァント同士で交戦したのは昨日が初めてだってのに、気が早いな」

 

 

 聖杯戦争中に監督役が参加者たちを召集するのは異例中の異例だ。

 可能性として挙げられるのは、聖杯戦争のルールの追加か変更。もしくは聖杯戦争そのものが破綻するような事態が発生したときくらいだ。

 

 

「……とりあえず会議は中断だ。何が起こったのか、僕達には知る必要がある」




Q

雁夜おじさん、ジョニィと見ていたならなんでアサシンのこと分かってなかったの?

A

単にジョニィが言ってなかっただけです。
ギルと交戦して、『これだったら令呪を使えば撤退くらいは何とかなる』と確信できたので、今言いました。



Q

潜入自体はアサシンは作戦とか知らずに結構ガチでやってたんじゃないの?

A

その通りです。
ただ他人格からは「取り立てて得手のない人格」と呼ばれている人格だったらしいので、普通に切り捨てられたそうです。
バーサーカーは、分身できること自体知らないので、ある程度相手が強いと想定したうえで考えています。
だから『潜入のスペシャリストのアサシンが、あんな雑にやられる訳がない』と思っています。


Q

ジョニィ……苛立ってたとしてもライダーを撃つ振りしなくてもいいじゃあないか。
ひどいやつだッ……射殺しようとするなんて……!

A

いいや慈悲深いぜ。マジで射殺しようとしなかっただけな……。
イスカンダルの部下である、武将クレイトスの死因は何か知ってるか?
イスカンダルが酒に酔ったのが発端で、酔ってぶちぎれたイスカンダルが刺殺したのがその次だ。
おまえさんが、その事実を書き換えるつもりか?

それに威嚇射撃なので、ジョニィの生前の敵と比べると実際遥かに慈悲深いです。
ジョジョの世界は、ちょっとしたことで人が殺されまくる世界ですし……。

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