Fate/Zero ゼロに向かう物語   作:俊海

1 / 25
思いついたんで書いてみただけです。
続きは多分書きません。各々の造像にお任せするってことで……
ジョジョっぽい言い回しとかが苦手なもので、すごく疲れますし。

まあ暇潰し程度にでも思ってくれれば幸いです。
それではどうぞ。



Fate/Zero ゼロに向かう物語

 間桐雁夜は、魔術と言うものを忌み嫌っている。

 それは自分の家系の魔術があまりにもおぞましいものだったり、恋敵が魔術師だったり、魔術師の倫理と言うものが理解できないものであったりするからだが、とにかく雁夜は魔術と言うものに嫌悪を覚える人間であった。

 

 

「かはっ!……ぐ、ぐぅ……っ!」

 

 

 そんな人間なのに、なぜ彼は今、苦悶の表情を浮かべて魔術を行使しているのか。

 なぜわざわざ逃げ出したはずのこの家に戻ってきて、彼は血反吐を吐いているのか。

 

 ……答えは、その魔術の犠牲になった幼い少女を守るためだ。

 自分の命と引き換えにしても、想い人の娘であり、今よりもなお小さなころから可愛がっていた間桐桜――元遠坂桜を救い出すために、彼は拒絶していた魔術に手を出したのだ。

 聖杯戦争と言う、過去の英霊を召喚し、万能の願望器である聖杯を奪い合う血みどろの戦い。

 それを制すれば、桜を助けられると信じて彼は自分の肉を寄生させた蟲に食われながら、魔術師となった。

 

 そして今、その英霊――サーヴァントを召喚する儀式を終えたところ。

 全身の痛みに耐えながら、雁夜は自らの喚び出したサーヴァントの姿を見ようと前を向くと――

 

 

「な、なんだよこいつ……」

 

 

 だが、いざ召喚したサーヴァントの第一印象に、雁夜は思わず息を呑んだ。

 なにせ、彼が喚んだものは、理性を失い、意思の疎通をすることなど不可能に近い『バーサーカー』のはずだったのだから。

 

 しかし、雁夜の前に現れたサーヴァントは、とてもじゃないが狂戦士には見えやしない。

 生身の戦闘など不可能だとしか思えないほどの細い体付きに、アメリカの国旗を思い起こすような衣装。

 明らかに、古代の英雄だの、中世の武人だのではない。どう見ても、現代に近いサーヴァントだ。

 

 しかも、その極めつけが――

 

 

「――一応聞いておこう。お前が僕のマスターか?」

 

 

 口を開いて、言葉を発したことだ。

 意味のないうめき声や、叫びではなく、雁夜に対しての明確な意志を持って、意思の疎通をするために、サーヴァントが口をきいた。

 

 

「あ、ああ……確かに俺がマスターだが……」

 

「おいおい、お前がマスターのくせに、僕に対して『なんだよこいつ』って言ったのか?そいつは何とも失礼な話じゃあないか?」

 

「い、いやお前の言いたいこともわかるんだが……。か、確認したい……お前のクラスは、一体何だ?」

 

「そんなことはお前が一番知っているはずだ。バーサーカーで僕を喚んだんだろう?だったらバーサーカー以外の何になるって言うんだ?」

 

 

 なんとも生意気なサーヴァントである。

 他人を、しかも初対面の相手に、馬鹿にしたような態度をとっているのは、生まれついてのものだろうか?

 それとも、彼の英霊としての誇りとして一般人相手にはそう易易とは頭を下げない意思表示のつもりか?

 

 

「全く……どうして僕をバーサーカーなんかで召喚したんだ?ライダーか、最悪アーチャーの方が適性が高いっていうのに……」

 

「……クソ、失敗した……」

 

 

 だが、そんなサーヴァントの言葉も耳に入らないくらい、雁夜はひどく落胆していた。

 体中の激痛よりも、せっかくの希望さえも潰えてしまった事実が、雁夜のなけなしの気力を蝕んでいく。

 

 まともに狂化させることもできないまま、バーサーカーを喚んでしまった。

 あまりにも致命的すぎる、これでは桜を救い出すことができない。

 そう結論付けてしまった雁夜は、自分の愚鈍さを呪うしかなかった。

 

 

「……何をそんなに落ち込んでるんだ?……お前」

 

「バーサーカーの狂化が失敗しているのに、どうやって元気を出せって言うんだよ……」

 

「失敗……?いや、成功してるぞ?ちゃんと僕は『狂化』に当たるスキルを持っているはずだ」

 

 

 そう告げられて、雁夜はすかさずバーサーカーのステータスを確認した。

 そこには、『狂化』のスキルは存在していない。

 あるべきはずのスキルの代わりに、書かれているものは――

 

 

「……『漆黒の意志』……?」

 

「おかげで助かったよ。もしも僕が狂ってたりなんかしていたら、まともに戦うことなんかできやしなかったんだから」

 

「ちょっと待て!お前のステータスも見たが、ほとんどがD以下ってどういうことだ!?しかも一番高いパラメーターもCしかないじゃないか!」

 

 

 先ほどの失望も、体中の痛みさえも忘れ、雁夜は吠えた。

 このサーヴァントのステータスがあまりにも低すぎるせいだ。

 

 幸運がCなのはまだいい。筋力や耐久もDなあたり、見た目と同様、現代に近い英霊なら大体はこんなものだ。と納得できるくらいのステータスでもある。

 だが、このサーヴァント、魔力はE、敏捷はE-だ。

 はっきり言ってまともに戦える気がしない。

 その上、さらに悪いことに……

 

 

「宝具がないのに、どうして狂化しないほうが強いって言い切れるんだ!?」

 

 

 バーサーカーは『宝具を持っていない』のである。

 『狂化』のスキルは、理性を失う代わりにパラメーターを引き上げる効果がある。

 しかし、その代償として、狂っているがゆえに、特殊な宝具でもない限り、その力を使うことができないというデメリットも存在する。

 このバーサーカーは、宝具を持っていないのだから、むしろ『狂化』したほうが強くなれるとしか思えない。

 

 

「僕は宝具なんかいらないからな。ちょっとした能力と、『技術』が僕の武器さ」

 

「『技術』……だと?」

 

「そうさ。『技術』だから宝具にはならない。キャスターの強大な魔術が『魔術』というスキルとして認識されるように、ライダーの乗りこなしが『騎乗』として扱われるように、僕のそれはそういうものなのさ」

 

 

 『技術』

 なるほど、言われてみれば納得できる。

 宝具というものは、原則的に時代が古くなる方が強くなる。

 過去であればあるほど、世界は神秘に包まれていたのだから。

 

 けれど、バーサーカーは新しい時代の英霊だ。

 神秘というものは、人類が歴史を刻むほどに廃れていくものだが、それとは相対的に 積み上げられていくものが、人間の技術である。

 バーサーカーはそれが武器であるから『宝具』にはならないのだと言っているのだ。

 

 

「じゃあ、どんな『技術』なんだ?バーサーカーだからマッドサイエンティストだったりしたのか?」

 

「僕は科学とかそういうのはよくわからないよ。僕の技術は『回転』だ」

 

「……『回転』?」

 

「まあ、そのあたりはおいおい説明するとして……だ……」

 

 

 そこでようやく、バーサーカーは雁夜から視線を外した。

 外して、次にその目が捉えたのは、こちらを観察するかのように眺めている一人の老人だ。

 間桐臓硯――雁夜の父親であり、魔術の力で人外と成り果て生き続けてきた文字通りの『怪物』である。

 

 

「さっきからやたらとこっちを見てくるが……あんたは一体なんなんだ?僕のマスターでもないんだろう?」

 

「なぁに、そこな未熟者のためにいろいろと用意してやっているおせっかいな爺じゃ。別にワシはお主らの邪魔をするつもりはない」

 

「そうか、だったらそこにいるのが邪魔になるからさっさと出て行ってもらえないか?」

 

「おお、そうかい。じゃあ老耄はさっさと出て行かせてもらうわい。じゃあそいつを頼んだぞバーサーカー」

 

 

 やけに不気味な笑みを浮かべながら、臓硯は地下室から出て行った。

 雁夜は、妙にあっさり引き下がったことに違和感を覚えたが、自分としてもあの化物を見続けるのは精神的に来るものがあるため、あえて黙っていた。

 

 

「ふぅ……やっと鬱陶しい奴もいなくなったか。改めてよろしく頼むマスター」

 

「……雁夜、にしてくれ、マスターなんて呼ばれるのはむず痒くて仕方ない」

 

「そうか。じゃあカリヤ、まず聞かせてもらいたいことがある」

 

「何だ?」

 

「その、聖杯ってやつにかける願いって何かを教えて欲しい」

 

 

 願い?

 ……ああ、そういえば聖杯には願いを叶える力があったんだっけ。

 そんなことには興味がなかったから忘れていた。

 

 

「……俺に、聖杯にかける願いはないよ」

 

「はぁ?だったらなんで参加してるんだ?」

 

「どうしても、救いたい子がいるんだ。桜っていう、まだ小さな子供だ」

 

「その子が、聖杯戦争とどう関係がある?」

 

「おぞましい魔術から桜を解放するために、臓硯に聖杯を渡すんだ。そうすれば、あの子も助かる……!」

 

 

 雁夜にとって、聖杯は桜との引換券程度にしか思っていなかった。

 そのためにも、絶対にこの聖杯戦争を勝ち抜かないと……

 

 

「……待て、おぞましい魔術だとか、桜って子供に関しても聞きたいことがあるが、『そんなこと』よりも重要なことがある」

 

「!お前っ!『そんなこと』とは何だ!?俺がどれだけ――」

 

「ああ『そんなこと』だね!はっきり言って、僕にとってはこっちの疑問の方が最優先されることだ!」

 

「――!」

 

 

 雁夜の話を聞き、それまで静かに話をしていたバーサーカーが声を荒げ始める。

 自分が必死になって悩んでいる問題を『そんなこと』扱いされて、反論しようとする雁夜だったが、バーサーカーの剣幕に圧倒されて口をつぐんだ。

 

 

「カリヤ!お前今聖杯を『渡す』って言ったか!?そんなことをしたら僕の願いが叶えられなくなるじゃないか!」

 

「え……お前は何を言って……」

 

「ゾウゲンに譲っちまったら僕はどのタイミングで聖杯を使えるんだ!?」

 

「そんなもの、臓硯に頼めば――」

 

「あの妖怪みたいなやつが、手に入れた聖杯を他人に使わせるようなタマに見えるのか!?僕は知っているぞ、ああいう人間を!自分の目的を達成出来たら、それに協力した奴に顧みることなく始末する、ゾウゲンはそういうやつだッ!」

 

 

 バーサーカーは、生前に敵対した、ある人物を思い浮かべる。

 多くの人の血が流れ、何人もの命が失われようとも、彼は『正義の行動』と信じて疑わなかったが、まだ自分よりは人間として正しい道を歩んでいた。

 それでも、その人物は目的を達成したらそれで終わりだ。

 その手助けになった人間を労うことなどしなかった。

 臓硯は、その手のタイプの人間によく似ている。

 

 だから、臓硯に聖杯が渡った時点で、バーサーカーの願いは届くことはなくなってしまう。

 バーサーカーはそう断定した。

 

 

「もしもカリヤがゾウゲンに渡すなら、僕はお前を殺してでも止めるぞ。幸い僕には神秘なんて欠片もない状態で召喚されたからな、一週間ぐらいなら現界できる」

 

「お……おい?冗談……だよな?」

 

「冗談じゃない。僕のステータスを見ただろう?そこに答えが載っていたはずだ」

 

「ぐっ…………クソッ!」

 

 

 雁夜は確認してしまっている。

 バーサーカーの持つ、『狂化』の代わりに与えられているスキル――『漆黒の意志』を。

 だから、わかってしまう。

 バーサーカーは、『やる』と決めたら『絶対にやる』のだと。

 

 

【固有スキル】

 

漆黒の意志:A

 

戦闘狂や殺人嗜好とは一線を画す純粋な殺意。

目的へ向かう意志が恐ろしく強く、そのためには殺人すら厭わず、人間性すら捨てられる覚悟を持つ。

普段は意思疎通や会話をすることは可能だが、一度『覚悟』を決めてしまえば、よほどのことがない限りマスターでもその行動を止めることはできない。

Cランク相当の『心眼(真)』及び『戦闘続行』を得る。

また『覚悟』を決めた時、バーサーカーの『あるスキル』の破壊力と効果を強化する。

 

 

 なんだこのスキルは。

 下手な『狂化』よりもよっぽど厄介じゃないか。

 制御不能な理性ある人間なんて、どう扱えばいいんだ……!

 

 

「な……なんだよっ?お前がそこまでして叶えたい願いってなんなんだ!?」

 

 

 もう、これしかない。

 叶えられる願いがどんなものなのかを聞いて、妥協点を探すしか。

 けれども、こんな意志を持っている奴の願いが、まともであるという保証が無い以上、分が悪すぎる賭けだ。

 どうか、少しはマシな願いであってくれ――

 

 

「……死んだ友人に、また会いたい」

 

「…………へ?」

 

 

 何か、信じられないことを聞いた気がする。

 まるで、銃を向けられ、射殺されると思って身構えていたら、実は水鉄砲だったみたいな。

 そんな拍子抜けのようなものが雁夜を襲う。

 

 

「友人に会いたい……彼ともう一度話がしたい……ただ、それだけだ」

 

「いや……それだけって、それは死者蘇生なんじゃ……」

 

「だからこそ、僕は聖杯が欲しいんだ。こればっかりは譲れない」

 

「そうは言われても……」

 

 

 雁夜にとって、却ってやりにくくなってしまった。

 悪意ある願いなら、令呪でもなんでも使って強制的に言う事を聞かせればいいのだが、あまりにも真っ当すぎる願いで、元一般人の雁夜としては無下にするのも良心がとがめてしまう。

 

 

「よし分かった。……カリヤ、お前はどうしたいんだ?言ってくれ」

 

「だから……俺は聖杯なんて……」

 

「そうじゃあない。サクラを魔術から解放するためにゾウゲンに聖杯を渡すと言ったな?どうしてそうなるんだ?そんなもの、さっさと誘拐でもして遠くに連れて逃げればいいじゃあないか」

 

「無理なんだよ……臓硯からは逃げられないんだ……あいつが桜の体内に蟲を寄生させているから……」

 

「ゾウゲンを始末すればいいのか?」

 

「いや、まずは桜の心臓に居着いている蟲からどうにかしないと、臓硯が人質にとってしまう……」

 

「サクラの蟲は一匹だけか?」

 

「数は分からないが、心臓にいるやつだけでも潰せたら助かるはずだ」

 

「ゾウゲンを殺すのも難しいと……」

 

「いくら殺しても、核になる蟲が生き残ってたら意味がないからな」

 

「…………ふむ」

 

 

 殺せるものなら、自身の命と引き換えでも雁夜は臓硯を殺したい。

 だが、臓硯自身がおぞましい数の蟲に体を変化でき、桜の体内にも蟲がいる。

 どうやって手出しすればいいのか、雁夜には分からなかった。

 

 

「じゃあ、もしもだ。仮の話だぞ?」

 

「……なんだ?」

 

「もしも仮にだ。サクラの蟲を除去できて、ゾウゲンを始末することができたなら、聖杯は全部僕に譲ってくれないか?」

 

「はっ、そんなことができたなら、聖杯でもなんでもくれてやる」

 

「そうか。じゃあ案内しろ」

 

 

 すっくとバーサーカーが立ち上がると、いきなりわけのわからないことを言い出した。

 

 

「案内って……どこに?」

 

「サクラって子のところだ。そいつの蟲を殺してやる」

 

「……なんだって?」

 

「僕の能力は、そういうのが得意だからな。両方共にケリをつけよう」

 

 

 あまりに都合の良すぎる言葉を聞いたせいか、一瞬何を言われたか理解できなかった。

 徐々に、頭で理解していくと、今までの絶望も苦痛も消え去って、雁夜はバーサーカーの肩を掴んだ。

 

 

「ほ、本当だな!?嘘じゃないよな!?」

 

「ああ、保証してもいいぜ。寄生虫くらいならどうってことはない」

 

「こっちだ!絶対だぞ!?絶対に治してくれよ!?」

 

 

 肩の手を、バーサーカーの手にへと移動させて、病人の様相を呈していた人間とは思えないくらいの強い力で引っ張っていく。

 もはや雁夜の頭には、この一年間の忌まわしい記憶や、全身を蝕む蟲のことなどすっぽ抜けて、桜を治すことしかなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おじさん?」

 

「桜ちゃん……っ!ようやくだ!ようやく君を助けられる!」

 

 

 桜の部屋にバーサーカーを連れて飛び込むと、雁夜は桜を抱きしめた。

 手加減を忘れてしまうほどに、掴んだ希望を離さないように。

 

 

「痛いよ……おじさん……」

 

「あ、ああ、ゴメンね桜ちゃん」

 

「ふーん……この子がサクラか。窓は……あるな」

 

 

 桜の姿を認めると、次にバーサーカーは外が見える窓を探し始めた。

 そこから目に入る木々を確認し、再び桜に向かい合う。

 

 

「雁夜、今から僕が行うことは少しショッキングかもしれないが、邪魔だけはしないでくれよ」

 

「ショッキングって……やっぱり苦痛を伴うとかか?」

 

「僕が今から見せるのは『回転』だ。僕の友人なら、もっと高度な治療ができるんだろうけど、痛みだけはないはずだから安心してくれ」

 

「……分かった。お前に任せる。桜ちゃん、少しだけ我慢できるかな?」

 

「うん……我慢、する」

 

「いい子だね。じゃあ、このお兄さんが桜ちゃんの悪いところ、全部治しちゃうから、頑張ってね」

 

「頑張る……おじさんの言うことだもん」

 

 

 桜は素直に雁夜の言うことを聞いて、バーサーカーの前に立つ。

 逆に雁夜は、桜をバーサーカーに任せ、少しだけ距離をとった。

 あまりに近づきすぎたら邪魔になるだろうと思ったからだ。

 

 

「………………」

 

「……どうしたんだバーサーカー?指先を桜に向けて……何かするんじゃないのか?」

 

「今『回転』させているところだ」

 

「?いや回転もなにも、お前は何も持っていないじゃないか」

 

「そうだ、カリヤには見えない。同じ能力を持ったものにしか『この力』は見えないんだ」

 

「何を言って――」

 

 

 突如、桜の体に異変が起きた。

 『穴』が空いたのだ。

 しかもただの『穴』じゃない。動いている(・・・・・)。まるでその『穴』が生きているかのように――

 

 

「カハッ!ううぅ……ゲホッ!ゲホッ!」

 

「桜ちゃん!?おいバーサーカー!本当に大丈夫なんだろうな!?桜ちゃんに何かあったら令呪を全部使ってでもお前をぶち殺すぞ!」

 

「……サクラに我慢しろって言ったのはどこのどいつだった?」

 

「うっ……」

 

「体内の蟲が殺されて、その血が出てきてるだけだ。サクラには怪我はない」

 

 

 言い終わると同時に、桜の表面を蠢いていた『穴』も消えていく。

 体内の治療が終わって、精根尽き果てたのか、桜は深い眠りについていた。

 

 

「これで大丈夫。完璧にサクラのなかの蟲は殺し尽くせた。OK!……たぶん」

 

「え?今なんて言った?ちょっと待て!今小さく『たぶん』って付け足さなかったか?『たぶん』ッ!?」

 

「心配するなって!治ってるって!『穴』だって無くなったし、サクラも静かに寝てるんだから治ってるんだ!……きっと」

 

「何だよそれ!?『きっと』ォォ!?」

 

 

 バーサーカーの曖昧すぎる反応に雁夜は全力で突っ込む。

 が、後日綺麗さっぱり蟲がいなくなった桜の姿があったため、実際に問題はなかったようだ。

 

 

 

 

 

 これは、ゼロに向かう物語だ。

 かつて、自分の『マイナス』を『ゼロ』に戻すことができた男が、異なる時代の『マイナス』を『ゼロ』に向かわせる物語。

 バーサーカーの名は『ジョニィ・ジョースター』

 雁夜の運命は、この『無限の回転』を持つサーヴァントによって大きく変わる。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。