『A』 STORY   作:クロカタ

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合宿へ行きます。
今回は、本編キャラが登場しますね。


過去編~ニールセン・ラボ~

 全国ガンプラ選手権へ参加する資格を勝ち取った俺達チーム『イデガンジン』。

 茨城県の代表になったのはいいのだが、その後が大変だった。トロフィーの授与やら地元の新聞の取材やらで本当に忙しかった。でも、本当に大変だったのは大会後、自宅の父にバトル中の事を話した途端、血相変えて病院へ連れていかれたのだ。

 

 結果は特に異状なし、まあ強いて言えば全身にかなりの疲労が溜まっていたらしいのだが、それはすぐに治るものだ。

 父はミサキとのバトルに何か心配する事でもあったのだろうか。

 

「レイ、もうすぐ着くぞ」

「……ああ、分かった」

 

 少し考えに耽っていたな。現在、俺達暮機坂高校ガンプラ部は、俺の父であるアンドウ・セイジの運転する車に乗って、合宿の為にある場所へ向かっていた。目的地は『ニールセン・ラボ』。ヤジマ商事運営のガンプラバトル研究所である。そこはあのヤジマ・ニルスが所属する研究所であると同時に、彼の旧姓にちなんで名づけられた施設。

 

「すいません、送って貰っちゃって」

「本当なら俺達は自分で行くべきなのに……」

 

 後ろの席に乗っているコスモとノリコが、申し訳なさそうに父に謝る。まあ同年代ならまだしも、先輩の父親に送ってもらうのは中々に気まずいものがあるのだろう。

 

「気にしなくていいさ。私もここへ古い友人に会うんだ。そのついでと思ってくれればいい」

「そうだぞ、コスモ、ノリコ。そんなに気負う事はない」

 

 しかし父の古い友人とは誰なんだろうか。現役だったころの関係者かな? ガンプラ研究所で落ち合うことからしてその可能性が高そうだけど。

 

「そうだ、レイ。新しいガンプラは完成したのか?」

「新しいガンプラ!? 選手権用に新しいガンプラ作ったんですか先輩!!」

「俺も興味あります!!」

 

 いやいや、がっつきすぎだろ二人とも。後ろの席から身を乗り出した二人を諌めながら、鞄のケースから未完成のガンプラを取り出す。

 ジンクスⅣ、劇場版ガンダム00に登場したジンクスⅢの発展型の機体。決勝には間に合わなかったが、なんとかここまで作る事が出来た。

 

「まだジンクスⅢの面影が残ってるけど、なんとかここまで形にすることができた」

「劇場版のジンクスですね!うわあアンテナもついてますし!」

 

 そう、ジンクスⅣの頭には、ガンダム特有のV字アンテナが付いているのだ。それによって、ちょっと悪そうな顔だったジンクスも見事にガンダム顔になった。

 まだ完成具合は70%ぐらいだが、大会までには絶対に間に合わせる。大まかな改修は全て終わっているので、後は細かい所を変えていけばいいだけだ。そんなには時間は掛からないはず。

 

「そういえば先輩、ニールセン・ラボにはどのくらいの人が来ているんですか?」

「……俺達みたいな県代表チームが多く来ているらしい。しかもその多くは連続で県代表になっている人達ばっかりらしい。もし練習の一環で対戦する事が出来れば、胸を借りるつもりで戦っておいた方がいい。負けるにせよ勝つにせよいい経験になると思う」

 

 むしろ俺達のような新参者の方が珍しいのかもしれない。県代表という物は県によってはあまり変わらない事が多いからな。去年の代表だった青嵐高校も、数年前からずっと選手権に出場していた強豪校だった。

 

「皆、見えてきたぞ」

 

 父の声で全員が窓の外を見ると、視界の先に大きい建造物が映る。風車のような特徴的な形、近くに大きな湖があり、自然に囲まれている場所に、目的地である『ニールセン・ラボ』が有った。

 

「あれが俺達の合宿場、か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ニールセン・ラボ、高性能のバトルシステムと充実したガンプラ工作室がある、ガンプラファイターとしては最高の設備がある環境。

 ガンプラバトルの特訓場として有名な場所だが、『全国大会を3回以上出場すること』が利用可能条件とされており、一般のファイターやビルダーには敷居が高い事で有名な場所。

 

 ……正直、全国初出場である自分達にはあまりにも場違いな場所だが、この研究所に関係のある父のおかげで、俺達のチームもここで合宿できるようになった、という訳だ。少しズルイ気がして申し訳ないが、使えるものは全部活用していこう。

 

 建物の中は壮観、様々な設備と広い空間。あまり来ないような雰囲気のある場所なので慣れない物がある。

 

「父さん、俺達は部屋に荷物を置いていくよ」

「鍵はさっき渡したから大丈夫だな?」

「勿論。それじゃあ行こうか」

「「はい」」

 

 受付を済ませ、父が予約してくれた部屋の鍵を貰い、部屋に向かう。父は別の知り合いに会うそうなので、別々になってしまうだろうが、問題はないだろう。

 

 建物内を見回りながら、今晩泊まるであろう場所へ向かう。

 ……でも、改めて見ると本当にすごい施設だ。プラフスキー粒子を研究する施設だけの事はある。

 

「色んな人がいるなぁ」

「そりゃそうだろ。何て言ったって研究所なんだから」

「工作ルームも充実しているな……」

 

 工作ルームには俺達と同じ年くらいの学生達が、真剣な表情でガンプラと向き合っている。自然に足が向かいそうになるのを自制し、視線を前に向ける。休憩時間に寄れば良い、せめてトレーニングが終わった後だ。

 

 建物内部を見ながら軽く話している内に部屋に到着。中を覗いてみると意外と広い……ガンプラを作る事も念頭に置かれて造られているのかもしれない。

 

「ノリコの部屋は別だ。男女一緒は問題あるからな」

「やっぱりそうですよね……」

「まあ、遊びに来るのは構わないぞ?」

「やったー!」

 

 遊びと言っても何時ものようにガンプラの相談だと思うけど。そんなことを考えながらノリコに隣の部屋の鍵を渡し、俺とコスモも部屋に入る。

 

「じゃあ、ガンプラを持ってトレーニングルームに行きましょうか」

「ああ……ん? ちょっと待て……あー悪いコスモ、先に行っていてくれ」

「どうしました?」

 

 俺としたことが、ジンクスⅣの肩のバインダーに昨日使った装備を取り付けるのを忘れていた。合宿ともあって少しテンションが上がっていたのかもしれない。遠足が楽しみで眠れない子供か俺は。

 ガンプラをテーブルに乗せながら、コスモにそのことを説明する。

 

「そうですか、じゃあ先に行ってます」

「すぐに向かう」

 

 コスモとノリコが先にトレーニングルームに向かう。……さあ、手っ取り早く装備を取り付けて向かおう。ランスは決勝で使ったGNガンランス、肩のバインダーにはGNバスターソードを一つ。腰部にはGNロングライフル。

 その全てをジンクスⅣに、ポロッと落ちないようにしっかりと取り付ける。

 

「……そんなに時間は掛からなかったな」

 

 ものの数分で終わってしまった。

 これじゃあ二人に待ってもらった方が良かったかな? 装備の取り付けが終わったジンクスⅣをホルダーに入れ、トレーニングルームに向かう。

 

 コスモとノリコに追いつくために、少し小走りで通路を進んでいると、通りがかった部屋から騒がしい声が聞こえてくる。

 

『おいセカイ!! ビルドバーニングは何処だ!!』

『今探しているんだよぉ!!』

『ならもっと良く探せ!!』

『もぉ~セカイく~ん!』

 

 ………声の幼さからして中学生くらいだろうか。ここにいるという事は、全国大会に出場する子達なのか……。そう考えると、やっぱりガンプラには年齢は関係ないと思わせてくれる。

 もしかしたら、この声の主である彼等とも、大会で俺達と闘うかもしれないな。

 

「む!!」

「っ……すいません!」

 

 と、思いを馳せていた所で、曲がり角で男の人とぶつかりそうになってしまった。寸での所で止まれたのはいいが、ぶつかりそうになったことには変わりない。謝罪しながら相手の顔を見ると、固まった。

 

 軽いオールバックにされた茶色がかった髪。

 バイザーを思わせるサングラス。

 年齢は20代前半。

 

 第7回ガンプラバトル世界大会準優勝者にして、世界大会3連覇を達成し、名実共に最強ファイターとして殿堂入りをした最強のガンプラファイター。

 

「メイジン・カワグチ……!」

「……良い目をしている。少年ッ君の名を聞こうか……ッ」

 

 流石メイジン、言動のテンポが三倍早い。

 どうしよう、少し感動してる。後進育成のために全国を回っているメイジン・カワグチと、偶然とはいえ会う事が出来るなんて、滅多にない。

 

「暮機坂高校ガンプラ部のアンドウ・レイです」

「暮機坂高校、確か茨城県からの出場者だったな。それにアンドウ……君がセイジさんの息子かな?」

「アンドウ・セイジは自分の父です」

 

 もしかしたら父さんの知り合いはこの人かもしれないな……。大会経験者の父なら知っていてもおかしくはない。

 

「……成程、父に違わず良いファイターの目をしている。

「父と比べれば俺なんてまだまだです」

「フッ………彼を燃え盛るようなバーニングな少年とするなら……君は内に秘めた熱い闘志を静かに燃え滾らすボルケーノな少年と言うべきか……」

 

 流石メイジン、言葉がスピリチュアルすぎてよく分からない。でもメイジンの言う事だ、きっと何か凄い意味があるのだろう。

 こちらを見て何故か笑みを強めたメイジンは、俺の肩に手を置いた後、さっと手を掲げ、俺がやって来た通路の方に歩いていく。

 

「……アンドウ・レイ君、また会おう」

「は、はい」

 

 ……すごい人だったな、色々な意味で。サインくらい貰っておいた方が良かったかもしれない。でも、できたらガンプラバトルをしてみたかったな……。勝てる確率は限りなく低いだろうけど、得る物はたくさんありそうだ。

 

「トレーニング室にいくか……」

 

 コスモとノリコにもメイジン・カワグチがここにいる事を話そう。きっと驚くはずだ、ガンプラバトルをする者なら必ず知っている最強のファイターだからな。

 

 そして俺の憧れの人の一人でもある。

 第7回ガンプラバトル選手権、父と一緒に会場で見たメイジン・カワグチの試合は、幼いころの自分でもすごいと思えるほどのものだった。戦術とか技量とかそういうものじゃなく、見ていて素直にすごいと思えるバトルをメイジンはしていたのだ。

 でも疑問に残るのはその決勝戦、イオリ・セイさんとレイジさんのスタービルドストライクガンダムとの戦いは、何処かメイジンらしくない荒っぽい試合だった。

 

「帰ったらもう一度見直してみるか」

 

 あの決勝戦、世界大会の猛者を相手に勝ち上がった三人の、今の自分とそう変わらない学生たちによる最高峰のガンプラバトルを……。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせた」

 

 メイジン・カワグチとの邂逅から数分後、ようやくトレーニングルームに到着した俺は、二人を見つけてトレーニングルームに入る。

 トレーニングルームには沢山のバトルシステムが設置されており、まさにガンプラバトルを練習するに最適な場所だった。

 

「ん?」

 

 コスモとノリコの姿が見えたが、どこか様子がおかしい。

 俺の声に気付いていないのか、目の前で行われているガンプラバトルに目を奪われている。

 

「どうした?」

「……あ、先輩」

「バトルか? 誰がやっているんだ?」

「鹿児島県代表の我梅学園と……ガンプラ学園です」

「……」

 

 ……ガンプラ学園と来たか。

 選手権6連覇を成し遂げているガンプラの為の学園。俄然……というよりすごく興味がある。期待を籠めながらフィールドを見ると……。

 

『俺達のザクがこんな簡単にッ!?』

『これが……ガンプラ学園だっていうのかよ!!』

 

『歯応えねぇーなァ!! おい!!』

 

 一体のガンダムに蹂躙されている三体のザク系列の機体。恐らく一体だけの方がガンプラ学園の機体だろう。……赤いマントのようなものを纏っている……何のガンプラを元にしているのだろうか。

 マントだからサンドロック? いや……あの前面の鎧はデスサイズの翼か? 共通点が多い部分があるからW系の機体?

 

『そんなんで選手権に出場しようってのかよ!!』

 

 その場から全く動かない赤マントを纏った黒い機体、その側面に装備されている大きな手から円錐状の物体が飛び出す。

 

「ファング……滅茶苦茶だな……」

 

 全くなんの機体から作っているのか分からない。それとも、いくつかのガンプラを組み合わせて作っているのだろうか?

 

「先輩、私止めに行っても良いですか?」

「………理由を聞こうか?」

「このバトル、ダメージレベルBなんです」

 

 ダメージレベルB……そうだとしたら、我梅学園のファイター達は……。

 でも止めに入ると言ってもバトルシステムを止める権限は俺達にはない。それにバトル中、ファイターの周りには防音の壁が作られている。

 止める方法はバトルに乱入するしかない。

 

「駄目だ」

「……です、よね」

「あの我梅学園の生徒も納得してバトルを受けた筈だ。それにノリコのガンプラは壊れたら修理に時間が掛かる。予備パーツはまだ出来ていないんだろ? そういうリスクは負う必要はない」

「……はい」

 

 乱入してバトルを止めると言っても、相手が言葉で納得してくれるとは限らない。もし、バトルに発展して壊されでもしたら、直す時間を費やさなければいけない。

 それにノリコとコスモのガンプラは元から改修しすぎて代替する部品が作りにくい。納得いかないように俯くノリコに再び声を掛ける。

 

「俺が止めに行く」

「え!?」

「先輩、貴方のガンプラも……」

「俺のはまだ部品の替えが効くからな。それに、あれ以上やらせるとダメージレベルがBといってもガンプラ自体が駄目になってしまう……」

「……で、でも!」

「俺はお前達のリーダーだ。そういうことはリーダーである俺に任せろ」

 

 我梅学園の三機は既に死に体だ。ミサキの冥・0と青嵐学園のバトルに展開が似てはいるが、あれはダメージレベルCの話だ。それにミサキはあそこまでしない……はず。加えて過度な暴言と死体撃ちはあまり褒められた事ではない……。

 今の俺のジンクスは、改修したといってもまだ完成していないので、その様相はジンクスⅢに若干近い。壊れたとしてもまだコスモやノリコよりは直すことが容易だ。

 ホルダーからジンクスⅣを取り出し、バトルシステムへ進む。

 

「やめたまえ」

 

 突然、何者かに横から手を掴まれる。驚きながら振り返ると、絶句する。

 

「青い巨星……ラル大尉……」

 

 何でここに……ってそれより今日は有名人に会いすぎだ。まさか伝説のグフ使いと会う事が出来るなんてもう感無量……じゃなくて、今はバトルを止めに行かなければ……。

 

「君達の会話は先程聞いていた。君の言う通り我梅学園の彼らはダメージレベルBと理解した上でバトルした……君も選手権の出場者なのだろう? 相手はガンプラ学園、ここは……」

「忠告ありがとうございます。でも、俺もファイターなんです。あれは、俺としても見過ごせない」

 

 後、このまま放っておくと、大事な後輩が飛び出していきそうだったからね。俺の言葉を分かってくれたのか、大尉は手を離す。俺は軽く大尉にお辞儀しながら、側面に設置してあるバトルシステムにジンクスⅣを置く。

 

「戦闘に発展しない事を祈るか……アンドウ・レイ! ジンクスⅣ! 出る!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ……もう終わりか……」

 

 鹿児島県代表我梅学園、ホワイトウルフ。大仰な名の割にはあまり歯応えがなかった。ガンダムジエンドの肩慣らしにもなれば良いとは思っていたが、肩慣らしにもならなかったぜ。

 

『く……』

『う……くそ……』

『まだ、負けては……』

 

「一人前なのは威勢だけかよ……」

 

 ボロボロのザク三体にもう戦える力は残ってはいない。よくそんな力量で県代表になれたもんだ。いいぜ、終わりにしてやるよ、お前らのお望み通りになァ。

 

 ガンダムジエンドを操作し、リボルバー型のビームガンを6発発つ。動けない相手ならこれぐらいで十分だろう。弾倉をリロードしながらそう考えていると、不意にレーダーに目の前のザクとは別の新たな反応が映りこむ。

 

「なんだ? ……乱入か」

 

 一直線にこちらへ飛んで来た機体は、三体のザクの前に降り立つとその手に持った大剣とランスで、ジエンドが放ったビームから我梅学園のガンプラを守る。

 

『突然の乱入申し訳ない。もう彼らにこれ以上のバトルは無理だ……引いてくれないか?』

 

 現れたのは灰色のジンクス……微細な違いがあるが、劇場版に登場するタイプのジンクスだ。いきなり現れてふざけた事を言うのは気に入らないが……さっきの一瞬で見せた機動性、何千と闘ってきたから分かる……コイツは強ぇ。

 

「お前は誰だ?」

『……茨城県代表、チーム『イデガンジン』。アンドウ・レイ』

 

 ……確か、関東圏の県代表チームで無茶苦茶強ェジンクス使いがいるとは聞いたが……まさかコイツか? そうだとしたら俺はとても運が良い。こいつら相手じゃ物足りなかったんだ。

 

「く、かはははははは!! 引く訳ねぇだろ!! 久しぶりに強そうな奴とバトルできるんだぜ!!」

『……ちょっと待ってくれ。俺は……』

「ファング!!」

 

 相手の返答を待たずに十基のファングを射出する。放たれたファングは一斉にジンクス目掛け飛んで行く。

 

「ほらほらぁ!! 避けねぇと後ろのに当たるぞォ!!」

 

 バトルに介入してくるような正義感溢れるような奴のとる行動は一つだけ、上に逃げるだろう。地表じゃ逃げる範囲が狭まる、だからより逃げやすい空への回避を大抵の奴は選ぶ。

 

『俺が出たのは藪蛇だったか!!』

「!」

 

 奴が取ったのはこちらに突っ込んで来るというものだった。向かってくるファングに自分から向かってくるなんてなんてとんでもねぇ事をする奴だ。だが、向かってくるファングはどうする?

 

『ファングなら!』

 

 右手に装備していたランスを肩のアーマーにマウントしたジンクスは、左手に持った大剣、GNバスターソードの刃を光らせ強引に振りぬく。それだけの挙動で奴に直撃する軌道にあったファングが全て切り落とされる。

 

「やるじゃねぇか!!」

『もっと怖いファンネルを知っている!』

 

 残りのファングはジンクスを素通りした後に折り返すが、それではこちらに向かってきているジンクスには追いつけない。

 ……面白ぇ、この短い時間だけでこいつがただもんじゃねぇことが分かった。両肩に接続された大型クローを動かし、目前に迫ったバスターソードを防ぐ。しかしそれも一瞬、背後から近づいてくるファングに気付くと、目の前のジンクスは即座に上方へ上がり停止する。

 

「他の奴とは違うなぁお前!」

『それは、大会を勝ち上がったからな』

「そう言う話をしてるんじゃねぇよ」

 

 俺が言いたいのは対等なバトルができる奴を見つけたって事だ。これで選手権での楽しみもできたってもんさ。

 

「自己紹介はまだだったなぁ。俺はガンプラ学園のアドウ・サガだ」

『……ここで終わりにするという選択肢は……』

「ないに決まってんだろ!!」

 

 浮遊させている残りのファングを合体させ、大きな銃弾にさせてジンクス目掛けて放つ。生半可な攻撃じゃこいつは壊れない、どうする? アンドウ・レイ。

 

 ジンクスは再び右腕に装備されたランスを右腕に装備し、ビームを放つ。だがそんなもんじゃ俺のファングは壊れない。それを悟ったのか、奴は再びランスをファングに向けると次はショットランサーを撃ち出しやがった。

 

「だから!! 効かねぇつってんだよ!!」

『そうではあるけども!! 俺のランスは!』

 

 射出されたランスは5発、その全てが連なる様にファングへ直撃し相殺される。まさかこれも防がれるとは思っていなかったが、相手が強い程、俺も熱くなるってもんだぜ!!

 

 全てのショットランサーを撃ち尽くした奴のランスは、緑色に輝くクリアパーツのランスに変わっていた。尋常じゃねぇ粒子量……アレがあいつの隠し玉っつー事か。

 

『ガンプラ学園相手に出し惜しみは無しだ!!』

「いいねぇ! そういう気概!! ますます気に入ったァ!!」

 

 そういう出し惜しみしない所は、キジマが気に入りそうだ。

 クリアパーツのランスに変わった奴の武装から、先程とは段違いの威力のビームが放たれる。GNソードⅤと似た兵器だな、そうなるとトランザムにすると巨大なサーベルに変わる可能性があるな。迫って来たビームをホバー移動で回避しながら、ビームガンを放つ。

 

『強いな……』

「おいおい、まだ終わりじゃねえだろ!!」

『止めに来た手前……こっちも楽しくはなってきた』

「お前も俺と同類じゃねぇか!!」

 

 身の丈ほどの大きな緑色のサーベルを生成したジンクスが、こちらへ急降下を仕掛けてくる。一撃に賭ける気か? ますます面白い奴だ、ならこっちも遠慮なくやらせて貰うぜ。

 肩のクローを開き、奴を迎え撃つ。どっちが強いか力比べと行こうじゃねぇか。

 

「最高だぜお前!! もう一回名前を聞かせろ!!」

『アンドウ・レイだ!!』

「その名前覚えとくぜ! アンドウ・レイ! 『デッドエンドフィンガー』!!」

 

 ジンクスが突き出した光の槍と俺のデッドエンドフィンガーが激突し、粒子が周囲に舞う。これがそうだ、これが俺がやりたかった戦いだッ強い奴とのギリギリまで互いを削り合う勝負!

 もっと楽しませろ! アンドウ・レイ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼は何者だい?」

「……見つけたよトシヤ、彼はアンドウ・レイ、今年大会初出場のチーム『イデガンジン』のリーダー」

「機体データは平均より上……いや、これはまだ未完成のガンプラだね。上がり下がりが不安定だ」

 

 僕の疑問に答えるかのようにノブヤとカズヤが答えてくれる。弟たちも僕と同様に、彼に脅威を感じたのだろうか。アンドウ・レイ……未完成のガンプラで、あのガンプラ学園と互角に渡り合えるのは脅威だ。

 今のうちにデータを集める必要があるね。それに彼の実力を考えるならば、彼のチームメイトも脅威と成り得る。それも合わせておく必要もあるだろう。

 

「僕達は運が良い。ガンプラ学園と、ノーマークだった実力者の戦闘データを取る事が出来るなんてね」

「そうだね、まさかこんな非公式の試合でこんなデータをくれるなんて」

 

 マヌケとも言っても良い。情報はバトルに置いてもっとも重要なファクターだ。それを晒してまで何が楽しいのやら……。

 

「彼の戦闘データは見つかるかな?」

「県大会のデータなら恐らくは」

「じゃあ、今夜集めたデータを見てまとめよう。それで対策を」

「そうだね」

 

 二人が頷くのを見て、再びバトルの方に視線を向ける。

 本当に楽しそうにバトルをしている。片や憎きガンプラ学園のファイター、片やノーマークだったファイター、ある意味で異質な二人のバトルに、僕はどこかざわざわするような感情を抱いた。

 




 今更ながらすごい間違いがあったことが発覚しました。

 本編での、選手権の茨城県の相手が鹿児島県でした。
 鹿児島といえば我梅学園、そう合宿の時にアドウ・サガにやられた三人のチームです。

 トーナメント表をずらす形で間違えてしまいました……変えるのも無理があるので、我梅学園は一つ上の和歌山県と入れ替えて、石川県とバトルしているということにしたいと思います。

……ん?一回戦の我梅学園の相手が茨城県だとしたら……あのニンジャ達は?……もしあのニンジャ達が茨城県代表のチームだったとしたら……


 アニメ本編でも茨城県は魔境だった


 ということになるのでは……?
 そうだったら後一体くらいニンジャが増えてもいいかもしれないですね(錯乱)


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