『A』 STORY   作:クロカタ

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全国編の最終回です。



エピローグ下

 騎士ジンクス。

 ジンクスⅣオリジンの発展機。準決勝でアドウとバトルした事で大破してしまったジンクスⅣを修理するうえで、レイはある試みを考えた。

 

 それはジンクスⅣを様々な局面に適したバトルを行えるようにするというもの。

 

 これまで武装を使い捨てたり、ブースターとの合体、アームビット等の機能を付け加えたりしていたが、彼がこれから作るであろうジンクスは【ジンクスⅣ】という形にこだわらず、自由に、そして一点の特徴に突出したものを作り出す。

 

 

 

 その一体目が騎士ジンクス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 グレートゼオライマーこと真・冥・O。

 ミサトと共に完成させたガンプラを操作した私は会場を荒らすようにバグを飛ばしまくっているラフレシアを撃沈させたその後に、レイ君のジンクスと戦うべく向かい合っていた。

 彼とのバトルを心待ちにしていた私だが、思いのほか落ち着いていた。油断できない相手だってのは理解しているし、彼は前よりも格段に強くなっていたからだ……。

 

 それに正面で粒子のマントをなびかせ、ランスを構える騎士の姿を模したジンクス、あの様相の変化が私に並々ならぬ警戒を抱かせている。マントと鞘に収まった剣がなければジンクスⅣと同じ姿に見える……が、あのレイ君が普通のガンプラなんて作るはずがない。

 

「……まずは初手」

 

 真・冥・Oの宝玉が輝く。

 クリアファンネルミサイルによる不可視の爆破攻撃。当たれば致命傷必須の攻撃、真・冥・Oの装甲の大型化によりさらに多くのファンネルを積むことに成功したファンネルミサイルが、ミサトの正確な操作によってジンクスⅣへと殺到する。

 

 しかしジンクスがとった行動は回避でも迎撃でもなかった。

 その場から動かずに左腕で背面のマントを掴みとるというものだった。

 

「それは効かん!!」

 

 左腕を大きく翻し、掴み取った赤い粒子で構成されたマントを身に包むように纏う。

 爆発と共に直撃するファンネルミサイル―――だが、マントにより阻まれその防がれてしまう。ビームマント……?いや、それにしては硬すぎる、ビームマントじゃなければ……。

 

「アシムレイトかな!!」

「さあ、な……!!」

 

 クリアファンネルを防ぎきったジンクスは爆風をその手に持つランスで薙ぎ払うと、その槍先をこちらに向けて粒子ビームを放つ。私はそれを回避せずにI・フィールドで弾き、お返しとばかりに宝玉からのビームを打ち込む。

 

 勿論それだけで済ます筈がない。

 こちらも出し惜しみは無しだ、今日は思う存分にやらせてもらおう。

 

『I・フィールドも健在か……。……ッならば!そのフィールドを貫ける攻撃を!』

 

 左手から発せられた粒子の帯でビームを防ぐと共に、ジンクスは防御に用いた左腕を大きく掲げる。

 何をするつもりだ……?無手にも見える左手に嫌な予感を感じつつも次の攻撃を繰り出そうとする私だが、次の瞬間ジンクスの手に発せられた赤色の帯が収束していることに気付く。

 

『行け!!GNフォトン・ダガー!!』

 

「はぁ!?」

 

 収束した帯が楕円状のクナイへと変わり、それを指に挟んだジンクスがこちらに凄まじい勢いで飛ばしてきた。

 

「君にしては武装が少ないと思ったらそう言う事か!」

 

 粒子を集めた拳でクナイを弾きながらも、彼のジンクスのとんでもなさ加減にドン引きする。彼にしては手持ちが少ないと思っていたけど、それは逆だった。彼の戦術の幅は依然として減っていない、使える武装も持ち運ぶ必要が無くなり身軽になっている。

 

 そしてさっき繰り出されたGNフォトン・ダガー。

 恐らく、彼の予備機Gセルフのフォトンエネルギーとアシムレイトの帯を応用した新武装。I・フィールドを容易く貫く鋭利な手裏剣―――武装を投げつける印象が強い彼にはおあつらえ向きの武装だ。

 

「だからといって私に勝てるとは限らないんだよねえ!!ミサト!『風』!」

 

「―――分かった!」

 

 私の合図と共に真・冥・Oの両肩の装甲がスライドし、砲身のような機構が覗く。これが真・冥・Oの真骨頂、八極の一極―――『風』を司る兵器、『デッド・ロン・フーン』。

 渦巻き荒れ狂う暴風が、視界内の敵機を蹂躙すべく放たれる。

 

「粒子の風……!」

 

「前の冥・Oと同じだとは思わないで欲しいな。なにせこれは私達の最高傑作なんだから!」

 

 迫り来る暴風はレイ君のジンクス、そして近くに居た他のガンプラ達をも巻き込み、巨大な竜巻を形成させる。原理はイデオンガンと同じ……威力は幾分かこちらが劣るけども、渦の力はこっちの方が強い。

 飲み込まれたら、粒子の風で切り刻まれ―――ッ。

 

「あぶな!?」

 

 ジンクスが巻き込まれた竜巻から大型のクリアランスが正確にこちら目掛けて飛んで来た。驚きつつも粒子を纏った拳でそれを弾き飛んで来た方向、ファイターの叫び声が聞こえる阿鼻叫喚の竜巻の中を見る。

 

 荒れ狂う竜巻に囚われ碌に身動きの取れない多数のガンプラの中、粒子のマントを纏ったジンクスが腰から取り出したであろう実体剣の鞘を左で持ち、まるで居合の如き構えを見せていた。

 

『オリジンシステム……!』

「……なに?」

『―――斬り裂け!』

 

 ジンクスがその剣を抜き放ち、竜巻を一閃する。それだけで竜巻が半ば程から断たれ、半月状の赤色の粒子による衝撃で拡散し、竜巻が一瞬のうちに消え去った。

 いや、実体剣の刃から放たれた赤色の粒子の帯が扇状に広がり、風の流れを断ち切ったのか。

 

「へぇ……」

 

 竜巻が消失し、周囲に機体の破片と傷ついたガンプラが漂うが、ジンクスはそれに目もくれずに左手の鞘を宙空に投げ捨て、実体剣を両手に握りしめこちら目掛けて切り込みを仕掛けて来る。

 白銀の刃には先程の様な赤い粒子の帯は無い。

 

 刺突の如く突き出される剣をくるりと反転するように回避しながら、クリアファンネルミサイルを射出する。対してジンクスは赤い光の燈った実体剣を振るい、斬撃により発生した赤い斬撃が弾幕のように展開され、クリアファンネルミサイルを切り落とす。

 

「アシムレイトの剣……?」

『いいや、俺はアシムレイトを使ってない!』

「……っ!?」

 

 こちらが繰り出した拳を実体剣で防いだジンクスを見ながら思考を巡らせる。

 彼のオリジンシステムはアシムレイトによって作動する特性だ。カミキ・セカイくんのトライバーニングもそうだし、レイ君のジンクスもそれは同じだろう。

 

『いちいち倒れてちゃ安心してバトルができないからな!!まずはそれをなんとかさせて貰った!!』

 

 考えに没頭している最中、ジンクスが再び剣を赤く発光させ切り上げる。斬撃のように放たれる粒子の帯の刃、今までにないオリジンシステムの使い方――――。

 

 余裕を持って斬撃を躱した私はある答えに辿り着く。

 

「―――そのジンクスはオリジンシステムを……?」

『そう、オリジンシステムに特化させたジンクス。アシムレイトに頼らない俺だけのガンプラだ!』

 

 パワーでは勝てないと判断したレイ君は、思い切り背後へ飛ぶ。勿論、私も追い打ちをかけようとすると彼の腕部がオリジンシステムの赤い帯を纏い高速で回転しているのが見えた。どことない悪寒を感じ私も咄嗟に後ろへ回避する。

 

『貫け!』

 

 私が後ろへ回避すると同時に、腕部が回転したジンクスの左腕が私の真・冥・Oを貫かんばかりに放たれる。赤い砲弾と化した凶悪な拳が玄武金剛弾ばりの超回転で迫って来るのを見て、自分の頬が引き攣るのを感じながらファンネルミサイルで威力を減退させながら回避する。

 

『読まれた!?何故だ!?』

「こ、この……油断も隙もない。無意識スパロボ兵器が怖すぎる……」

「姉さんにも少しは責任があるとは思うけど……」

 

 オリジンシステムの帯が引き剥がされた腕を回収した彼をドン引きしながらも見据え、ミサトのツッコミをスルーする。

 ……いや、彼だって高校生だから多少のネタ位は受け流すだろうなぁ、とは思っていたんだよ。でもここまでやってくれるのは正直ヤバすぎる。無意識再現なのが余計に性質が悪い。

 

 というより彼のジンクスは本当に騎士ジンクスなのか?

 騎士というからには騎士ガンダムをモチーフにしたのだろうが、武装がヴァイサーガ寄りだし、ロケットパンチもソウルゲイン仕様になってるし!!

 

「でもっ、楽しいなぁ!!」

 

 宝玉から放ったビームをオリジンシステムの帯で防がれながらも、これ以上ない程の笑みを浮かべる。

 まだまだこの真・冥・Oは戦える。このガンプラを作ったミサトと私にとって、自らのガンプラの強さの証明はとても喜ばしく誇らしいものだ。

 

 だからこそ―――

 

「ミサト!『月』!!」

『え、やるの?……いや姉さんがいいなら従うけど……』

 

 やや引き気味な妹の言葉に微かな疑問を抱きつつも、背部ユニットを分離させる。分離された背部ユニットが上方へ上昇すると共に腰の砲台が展開され、上昇した背部ユニットと合体し大型の砲台へと変形する。

 

 

 真・冥・O 砲撃特化形態『月』

 

 周囲を巻き込み粉々にするのが『風』とするならば、高密度の粒子砲で相手を確実に破壊するのが『月』。

 今日は本格的に真・冥・Oを動かした日だ。これはいわゆる特大の打ち上げ花火、盛大にやろうじゃないか。

 

「はははは!!」

 

 背部ユニットに予めチャージされている粒子エネルギーを一気に放つ。予め粒子が溜めているならばチャージする必要も無い、よって即座に最大の一撃が放つことができる。

 砲門に紫電が走り、青白い巨大なビームが放たれた。

 

『お前っある意味ラフレシアよりも性質が悪いぞ!!』

 

 実体剣を放り投げたジンクスは迫り来るビームに対して立ち向かう様に両腕を広げ、オリジンシステムを発動しアームビットを飛ばす。本体はその場を逃れるが、飛ばされたアームビットは赤い帯を網のように展開し、ファイター達を巻きこまんばかりに突き進むビームを食い止める。

 

『流石にこれは無理か……ッ!!』

 

 しかし『月』の威力は彼の予想を超えるモノだったのか、数秒ほどの拮抗を見せたところでオリジンシステムの『網』は突き破られ―――その射線上にいるファイター達へと向かっていく。

 

『うわぁ!!飛び火したぞおい!!』

『光がァ――――!?』

『あ、これラグナロ―――』

『メイオウ様バンザーイ!!』

 

 やばい大惨事だ。

 ……でも彼等もファイターで今はバトルロワイアルの最中、流れ弾にあって撃墜される事なんてよくあることよくあること。

 

「……」

 

 そう思いつつも「やってしまった」とばかりに頭を抑えるが、放たれた粒子砲はもう戻らない。

 

 

 

 

 

 

『そのバトル!私が介入する!!』

 

 

 

 

 

「……うん?」

 

 バトルロワイアル参加者へ迫った粒子砲は、直撃する寸前に何者かに阻まれ、切り裂かれるように拡散してしまった。

 あれほどの砲撃を防ぐ者、それほどの実力者はこの会場内で限られている。

 現れたのは赤いガンダム―――『ガンダムアメイジングレッドウォーリア』。最強の名を冠するガンプラファイター。

 

『『メイジン・カワグチ!?』』

 

『見ているだけでは物足りん!!これほどのバトルッ指をくわえて見ていられる程ッ……私は大人ではなぁぁぁぁぁぁい!!』

 

 いや大人だろ。

 というツッコミをこの場に居る全員が心の中でツッコんだ筈だ。しかしアームビットと剣をその手に戻したレイ君のジンクスは、メイジンの言葉に驚愕したように声を震わせレッドウォーリアの方へ振り向いた。

 

『メイジンとバトル……だと?ミサキ!!一時休戦だ!!』

「ええっ?!私とのバトルは!?」

『一時休戦と言った!!こんな機会逃せるか!!』

 

 まるでメイジン・カワグチのような口調で飛び出して行ったレイ君のジンクスは流れるような動作で、私の近くに漂っていたクリアランスをアームビットで回収し、そのままガンブレイドを携えたレッドウォーリアへと突撃していく。

 

『メイジン!一つ手合せを!!』

『受けよう!私に見せてみろ!君の革新をォォ―――!!』

 

「ガンプラバカか!?」

 

 若干置いてけぼりにされた私は、このやるせない思いをどうしていいか分からずに呆然とする。というより、レイ君ってバトルに関してはメイジンに近い所あるよね。

 バカじゃないけどガンプラバカって所とか、突拍子も無い事する所とか。

 

『暇そうですね』

 

 メイジンへ向かっていくジンクスを眺めていると、目の前に一体の蒼いガンプラが現れる。

 ヴァ―チェを思わせる大きな体躯と、冥・Oと似た重々しい威圧感を放つそのガンプラを見て、軽いため息を吐きながらも笑みを浮かべる。

 

「……はぁ……暇だよ。なら代わりに君が相手してくれるのかな?」

 

『ククッ、貴方のような怪物と戦うのも一興……まだまだ力不足ですがね』

 

 冥・Oと似た黄金色の宝玉の輝きと共に周囲に黒い空間を発生させた蒼い機体―――【グランゾン】を見据え、私は再び燃え出した闘志と共に、クリアファンネルミサイルを飛ばす―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メイジン・カワグチとのバトル、それは俺にとってこれ以上に無い名誉な事だった。勝てるとは思わない、ただ負けるとも思っていない。相手がどんな人だって、俺はいつも通りにバトルをするだけ―――。

 

 ガンプラ学園の時と同じように……俺は何時だって挑戦者だ。

 いつだって本気でバトルしてきた、だからいつも通りに―――。

 

「トランザム!!」

『来い!レイ君!!』

 

 機体を赤色に染めたジンクスが、高速で距離を縮めたレッドウォーリアとぶつかり合う。

 圧倒的な技量とガンプラの完成度―――レッドウォーリアというシンプルなガンプラだからこそ分かる。

 こんなガンプラがあったのか。

 こんなガンプラが作れるのか。

 俺もこんな凄いガンプラを作りたい。

 

「くっ…………やっぱり……強い!!」

 

 トランザム中のジンクスでさえ上回る程の出力で圧倒してくるレッドウォーリアに劣勢に立たされても、楽しいという気持ちが抑えられない。

 精密すぎるガンブレイドからの射撃を腕部から伸ばした帯で防ぐも、一気に距離を詰められ展開した帯ごと押し出すかのように蹴りを放たれ、勢いよく後方に飛ばされる。

 

『合宿時、私がアドウ・サガ君に言った言葉を覚えているかね?』

 

「……っ、え?」

 

 休む間もなく振り下ろされたガンブレイドを受け止めたこちらに、ふとメイジンがそんな質問を投げかけてきた。

 合宿時……俺がアドウとバトルした時の話か、思えばずっと昔のような気がしてくるほど濃密な時を過ごしてきた。でも覚えている、アドウの世界に出て強者と戦いたいという言葉にメイジンは、アドウでは世界選手権のファイター達には勝てないと言い放った。

 そしてもう一つ、思い当たるものがあるとすれば……。

 

「強さだけを求めるのがガンプラじゃない……ッ、ですか!」

 

『そうだ、あの時の彼はただバトルがしたかった。勝ちすぎたが故の孤独、対等な者とのバトルに飢えていたからこそ、彼はガンプラバトルにおいて最も大切なものを忘れてしまっていた』

 

「大切なもの……」

 

『ガンプラを心の底から楽しむことをだ。だが君はそれを彼に思い出させた!ガンプラバトルを心の底から楽しいと思っている君が、バトルを通じて彼を真のファイターへと目覚めさせた!今のアドウ・サガ君ならば世界選手権へ挑戦する資格がある!そして―――君にも!』

 

 鍔迫り合いの状態のまま一旦後ろへ飛んだレッドウォーリアの右腕部の下方からバズーカが覗くと同時に放たれる。直撃はそのまま戦闘不能を意味する―――クリアランスをオリジンシステムの光で満たせ、ラフレシアを両断した長大な粒子の槍を形成し、弾頭を刺し貫く。

 

「世界選手権……興味が無いとは言いません。……ですが、今は貴方とのバトルが何より楽しい!!」

 

『……君は最初に会った時から変わらずボルケーノな少年だ……』

 

 ランスの粒子の槍を消し去り、再びメイジンへと加速をかける。

 まだ届かない、当然だ。相手は世界最強なんだから―――でも、いつか届かせてみせる。

 

 ランスを左手、剣を利き手に持ち替え後ろに流すように構え、姿勢制御に用いているマントとGN粒子の出力を上昇させ爆発的な加速と共に飛び出す。

 こちらの加速と共にレッドウォーリアも前へ進みだす。横に掲げられるガンブレイドとクリアランスがぶつかり合う―――

 

 

 

 

 

 

 

 

『待ち給え!!』

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、青色のドムがレッドウォーリアとジンクスの間に入り、ランスを盾で、ソードをヒートサーベルで受け止めた。メイジンに続いてのさらなる乱入者―――しかし、俺は一目でその正体が分かった。

 

 当然だ。

 何故ならばその『青』いドムは『青い巨星』と讃えられた卓越した技術を持つ歴戦練磨のファイターなのだから。

 

「ラル大尉!?」

『メイジン!空気を読め!』

『!?……これはラル大尉の……ドムR35?!』

 

 突如乱入してきたガンプラ、『ドムR35』ことラル大尉の操縦するガンプラがレッドウォーリアとジンクスの一撃を受け止めていた。

 

『レイ君……すまないが、メイジンの相手は私が勤めよう』

 

「ラ、ラル大尉?」

 

『君はまだここに来ることはない―――それに、君とバトルしたいファイターは沢山いる』

 

 ラル大尉の言葉に呆けてしまうがメイジンは彼の言いたいことを理解できたのだろうか、鍔迫り合いをしていたガンブレイドを引き、少し後方に下がった彼は俺の方を向き、手の平を向けてきた。

 

『―――フッ、そうかならば……この勝負預けよう!!』

 

「……え?」

 

『あ、待たんか!!』

 

  その言葉と共にドムR35とレッドウォーリアは凄まじい勢いで上昇し、壮絶すぎるバトルを始めてしまった。『なんと大人げない!』とか『子供という柄ではないだろう!』とか、その最中に馬型のガンプラに乗った黒いアストレイが「いざ、参じる!!」「駆けよトロンべ!!」と叫んで割って入り、さらに混沌を極める。

 しかし……繰り広げられているのは、フィールドを高速で駆け巡る最高峰の応酬戦。

 

 やっぱりメイジンは強かった。

 そして改めて再認識した、やっぱりあの人は俺の憧れだ……。

 

 

 

 

 

『見つけた!』

 

「!」

 

 

 こちらへ近づいてくるガンダムタイプのガンプラとGディフェンサーの改修機と思われるMA。その見覚えのある様相に目を見開きながら、正面で制止したガンプラ―――ガンダムMK2を見る。

 

「リュウトか!!」

 

『新たに改修を施したガンバインMK2……このエクスバインMK2と勝負して貰うよ!!』

 

 エクスバインに付き従う様に飛ぶ、Gディフェンサーから大型のビーム砲がパージされエクスバインの手に収まり、その砲身をこちらへ向けて来る。

 チーム『凶鳥のはばたき』のリョウト、俺と同じように改修してきたガンプラで来たか。相手にとって不足無し、こちらもランスと剣を握り直し構えようとすると、今度はリョウトの来た方向とは逆の方から大声と共に黒い二機のガンプラが近づいてきた。

 

『いいや俺が先だァ!!』

 

『待ちなさーい!!って、先輩!?』

 

「ナガレにノリコ!?お前らもか!」

 

 Gマスター……の改修機と思われる大柄なガンプラと、ノリコのディスヌフが現れる。彼らに続く様に続々とコスモ、そして他のファイター達が集まって来る。

 俺のジンクスと集まっているガンプラ達目掛け、バトルする気満々で近づいてくるガンプラ―――否、ファイター達を見て、ようやくラル大尉が伝えたかった事を理解し笑みが堪えなくなる。

 

『先輩はやらせないわ!!まずは私とコスモを倒してからきなさい!!』

『……え?俺も』

『うるせぇ!!なんだったらテメェも一緒にバトルしてもいいんだぜぇ!!』

『ちょっと待って!!ボクが最初に挑んだんだ!!』

『あー!!もう監督もバカもバカも皆好き勝手ばっかり~!!』

『メイジン何処行った!?くそ……ッ、折角のチャンスだったってのに………いや、後でサイン貰って売り払えばチャラに……?』

 

 一番近くにいる者達を筆頭にバトルを申し込んで来る。見知ったガンプラも、見知らぬガンプラも―――

 

「あぁ……これはメイジンとバトルしている場合じゃないな……」

 

 俺がメイジンと戦いたいように、俺と戦いたいファイター達も居る。

 俺と同じような挑戦者がここにはたくさんいる。そんな単純な事を忘れてしまっていた自分を恥ずかしく思う。

 

『―――レイ!!』

 

 堪え切れない笑みを漏らしている俺に声をかける一機のガンプラ。赤と白の配色、腰に携えられた一本の刀―――シアが言っていたセカイ君の新しいガンプラが真っ直ぐこちらに近づいて来た。

 

「セカイ君か」

 

『俺とバトル!ガンプラバトルをしましょう!!』

 

 モニターの隣に映し出されたセカイ君が、満面の笑顔でそう言い放ってくる。その笑顔を見て、つられるようにに口角を緩ませてしまう。

 ああ、彼はガンプラを心の底から楽しんでいる。

 選手権中でもそうだったが、シアにガンプラを作る技術を学び、自分で作りあげたガンプラを動かした彼の瞳は、眩い光で満ち溢れている。

 

「今はバトルロワイヤルだ!!やろうセカイ君!!ガンプラバトルを!!」

 

『はい!!』

 

 

 セカイ君のガンプラから視線を逸らし、近づいてくるガンプラ、目の前で喧嘩し始めたガンプラを見て声を張り上げる。

 

 

 

 

「全員まとめて面倒見てやる!!」

 

 

 

 

 そう言い放つと同時に粒子の衣を翻し飛び上がる。

 突然の飛翔に呆気にとられる面々だったが、俺の言葉を理解すると同時に好戦的な声を上げ追ってくる。

 

 あくまでバトルロワイアルなので、俺だけに攻撃が来ている訳ではない、でも無理はしたと思う。正直、あれだけの数のガンプラに粒子が保つ自信がない。

 

 それでも心の底から溢れでるワクワクが止まらなかった。

 

 背後から放たれるビームを回避しながらフィールドを見回す。

 蒼いガンプラと苛烈なバトルを繰り広げているミサキの真・冥・O。

 レッドウォーリアのSDガンダムとバトルしているGポータントとウィ二ングガンダム、そして大型の盾を両肩に装備させたガンプラ。

 レッドウォーリアとバトルしているドムR35、そして彼らに追随する勢いで食い下がる黒い馬を駆るアストレイ型のガンプラ。

 

 ――――やめられないな、こんな楽しい遊びは。

 遊びだから本気になれるし、遊びだから大人も子供も楽しめる。

 

 機体を反転させ、こちらへ向かってくるファイター達の方を向く。モニターの先には先頭を飛ぶセカイ君のガンプラがその拳を引き絞らせ接近してくるのが見える。生き生きとした彼の動きに自然と笑みを増した俺はランスと剣を構え、迎え撃つように加速をする。

 

 

『いくぞぉぉ!カミキバーニングッ!!』

 

 

「まだまだ付き合ってもらうぞ!ジンクス!!」

 

 

 ジンクスは俺のその声に呼応するように身に纏う粒子の衣を大きく広げ、宇宙(そら)を駆ける。




~完ッ~

2月から初めて……約5か月の間、長かったようで短かったです。
これで本編は終了です。
因みにジンクスのバリエーションは”K”以外に―――
type”I”
type”G”
―――の二つがあります(意味深)




一応、外伝と後日談のような何かを予定しております。
候補としては―――。

後日談『文化祭編』
   『コンサート編』
   
外伝『キョウスケ編』
  『選手権スレ』

短編『集え、始まりのもとへ』
  『100万Gの男』

 場合によっては変わってしまうかもしれませんが、とりあえずこれらを予定しています。
 今月は更新するのは難しいので来月から更新する予定です。



 では、ここまで読んでくださってありがとうございました。
 完結後も『A』STORYをよろしくお願いします。

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