お待たせいたしました。
全ての決勝トーナメント進出チームが決まった。
チーム『ソレスタルスフィア』
チーム『トライファイターズ』
チーム『ビルドバスターズ』
そして―――チーム『イデガンジン』
そしてチーム『イデガンジン』に敗北したチーム『フォンブラウン』のルーカス・ネメシスは決勝トーナメント出場チームを見上げ、薄らと笑みを浮かべた。
不思議と悔しいとは感じない。
むしろ清々しい気持ちだ。本気で戦って負けたのだから。
「嬉しそうだな」
「!」
トーナメント表から離れ後ろを向いたルーカスに、金髪の男が声を掛ける。ガンプラ学園の白い制服を着た美少年、キジマ・ウィルフリッドが壁に寄りかかりながら腕を組み、ルーカスを見ていた。
少し驚いた表情を浮かべたルーカスだが、直ぐに微笑と共に歩き始める。
「僕はまだまだ勝ちたいと思える人が居る。それが嬉しいんだ。キジマ・ウィルフリッド君」
「……強いか、アンドウ・レイ……いやチーム『イデガンジン』は」
正直、キジマはルーカスが勝つとばかり思っていた。実際、バトル終盤の流れは粒子補給をしたフルクロスに向いていた。だが、それをアンドウ・レイが見事逆転して見せた。否、彼らのこれまでの行動すべてが、ルーカスが立てた勝利への布石を崩し勝利を手にした。
「それは、君が確かめるべきだ。決勝トーナメント、楽しみにしてる」
「……フッ、その通りだな。私も少し高揚しているらしい。あんなバトルを見せられてな」
どんなことをしてくるか予想すらできない彼等の戦いはキジマの闘争心を沸き立たせていた。勿論一緒に見ていたアドウもだ。レイのジンクスⅣの右腕がフルクロスを貫いた時なんて『なんだそれ!ソウルゲインかよ!!』と言った後にこれ以上ないくらいに爆笑していたのだ。
その時の事を思いだしながらも、キジマは自分を通り過ぎ会場の外へ消えて行ってしまったルーカスに一度振り返り、一層笑みを深め歩き出す。
「兄さん!」
「む、シアか」
自分を探していたのか、シアがこちらを見つけると駆け寄って来る。
……なんとなしにある事を思い出したキジマは大会中気になっていた事を聞いてみる事にした。
「そういえば……アンドウ・レイ、の事はどう思っている?」
一回戦後、意味深に「ヒ・ミ・ツ」とシアが言ったことを思いだしたので緊張気味にそう聞いた。一時は離れて暮らしてた妹がまさか、まさか色気づくような事態があってはいけない。
しかし、シアの答えは思ったより淡泊だった。
「ガンプラが凄い大好きな人だなって」
「……それだけか?」
「そうだけど……それがどうしたの?」
首を傾げこちらを見る妹に若干額を抑えながら、「そういえば妹はこういう妹だった」ということを今更ながら思い出す。
なら安心だ。いつか見た夢で『シアァァァァァァァァァ!!』と叫ぶような事態にならずに済んだようだ。
「ならカミキ・セカイは?友達か?」
「セカイっ?」
明かに違った反応を見せるシアにキジマは動揺を見せる。
―――カミキ・セカイとシアは年が近い。
セカイはガンプラ初心者、らしい。シアは卓越した技術を持っている……。
「まさか……そうなのかシア……」
「?」
ニッコリと笑みを浮かべながら首を傾げるシアに何かを確信したキジマは表情を引き締める。
「そうか、頑張れ」
「?」
「さあ、決勝トーナメント前に準備をしておかなければな」
「……?そうね?」
さも自然な流れで会話の流れを変えたキジマは、監督とアドウの居る個室の方に共に歩いて行くのだった。
『熱血ガンプラバトル!!』
「あ、レイ君をインタビューしてたおねーさんが出てるよー」
「そこに食いつくなよ……」
私は今、レイ君達が泊まっているホテルで彼のガンプラの改修を行っていた。今の時間は7時位だろうか、ようやく暗くなった外を見ながら、私は軽い現実逃避をしていた。何故、ミサトとカナコとコスモは買い出しに行ってしまった……彼等もレイ君のこの発想の凄まじさに驚くこと間違いなしなのに……。
「いいじゃん、綺麗な同年代の人にインタビューされて嬉しくない?」
「うーん、今はバトルの方が重要だからなぁ」
興味なさげに手元のガンプラに目を移したレイ君。前レイ君がテレビ出てるよーって言われて見て思ったけど、彼は本当にガンプラにしか興味がないんだね。
今、テレビに映っている同年代位の少女、確かモデルをやっている……カミキ・ミライだっけ?女の子の私から見ても可愛いと思えるほどの美人さんに直々にインタビューされても毛ほどもなびかないとは……なんとも鉄壁過ぎるガンプラバカだ。
『では準決勝の見どころをガンプラバトル解説者ライナー・チョマーさんにお聞きします』
「なにッッッ!!ライナー・チョマーだと!?」
「凄い食いつきっぷりだね!?」
画面にカラフルな衣服を着た赤みがかった男が出てきたその瞬間、レイ君はぐるりと画面に釘づけになる。連年世界大会に出場しているベテランのガンプラファイター。
「むむ……これ昼間の映像か……」
「そうだね。でもさ、この人が出演しているって事は少なくとも世界大会関係者は注目しているってことじゃないの?」
「そういえばそうだな」
「……それだけ?」
「……そうだけど?」
世界へ実力を見せつければオープントーナメントへ挑戦できるかもしれないんだよ?
「オープントーナメントには、出たくないの?」
「……あ、出たい」
「今気づいたね……」
この大会のことしか考えていなかったのかな?
意外と抜けてるところあるから、この大会の後とか考えてなかったんだろうなぁ。
「そんな先のバトルの事なんか考えてられるか。まずは目先のバトルだ―――さ、チョマーさんの話も終ったから作業に戻ろう」
テレビ画面からこちらに顔を向けたレイ君は、何処か満足気にガンプラを磨き始めた。
「―――ミサキ、アシムレイトの発動と同時に発生するこの帯を有効に使う機構を考え付いたんだが……」
「う、うん」
彼の目の前には、大体の修理を終えた両腕が無いジンクスⅣと、武装が全て取り外され、分解されたブースター。掌に置かれた腕を私に見せつけた彼は真剣な表情でこちらを見てくるが、とてつもなく嫌な予感を感じとった私は曖昧に頷くことしかできない。
「まず、腕部の排出口を4つから8つに増やす。肘に近い部分と手首に近い部分にだ」
「あのラインの出す口を増やすって訳だね。でも増やしてどうするの?」
「指向性を持たせて腕を飛ばす」
「………いや、あのさ……真面目に言っているの?」
私のように何かモデルにして言っている訳じゃない。レイ君はロケットパンチの意味を理解せずに、ただただ利便性だけを求めて真面目に腕を飛ばそうとしている。
「俺はいつだって真面目だ。腕を飛ばす、というのは奇抜な発想だとは俺も思った。でもなミサキ、奇抜と思えて実際かなり使える。リーチを伸ばせる、意表をつける、手から離れた武装の確保、そしてラインと併用して使える―――というより、アシムレイトと同時に使う事を考えている」
ロケットパンチってそんな深い事考えて撃つものだっけ……?逆に凄いよ、ロケットパンチにそこまでの可能性を見出せるなんて。
でも、面白いなぁ。
「腕部の排出口はブースターの役割も?」
「そうだな、アシムレイトを使わない状態では意味をなさないから、今回は一部分だけサーベルの機構も加えておこう。ビームトンファーのように肘の部分の排出口に乗せる感じに嵌めておけば干渉しないだろう。いざという時パージして手持ちとして使えるし」
ジンクスⅣの形を保ったままどんどんスーパー系になっていく……。
「アシムレイトもトランザムとは別にして使う。今まではトランザムと併用し使っては来たが、これからのバトルはそうは言っていられないレベルのバトルになる」
「フィードバックは?」
「なんとかしてみるさ」
ケースから細長いサーベルの柄に当たる部分を取り出し、それにジョイントの様なものの外側を削りながら巧く嵌め込み、外した右腕の肘に当たる部分にカチリと挟み込むように取り付ける。
塗装はしていないのでサーベルとジョイントの色が目立つが、それでも違和感がない位にはそれっぽい。レイ君は満足そうに笑みを漏らすと、再びケースから緑色のビーム刃を取り出し取り付けた柄に差し込んだ。
「よし、本当は手首につけたいが……手持ちの武器が干渉するのを防ぎたいから、これで取り敢えずとするか……」
ジンクスⅣに嵌められた腕の肘に生えたサーベルを見て、ソウルゲインかよ!?というツッコミをしなかったのを褒めて欲しい。これを素でやっているのか彼は……だとしたら凄すぎる。
とりあえず私ももう片方の腕を取りながら、レイ君と同じようにサーベルを取り付ける作業を手伝う。腕を飛ばす機構は少し時間がかかりそうだけどできなくはないね。
「腕を飛ばすのは私に任せてよ。君はブースターの修理に集中して」
「助かる」
そう言うと私にガンプラの右腕を私の前に置き、ブースターを手に取り傷ついた部分を確認している。彼はブースターも改修すると言っていたから、私の思いつかないような凄いことをしてくれるに違いない。
「ブースターを……コアファイター……削れば?いや無理か」
彼は何時もバトルの後、こんな風にガンプラを直していたんだろう。一回戦前まではこのジンクスⅣもここまでのガンプラじゃなかった。でも……。
「今までの経験が生きたのかな?」
「ん?何が?」
「いやぁ、このジンクスⅣになるまで一杯強い人たちとバトルしてきたから、それが君の力になっているんだろうなぁって」
「そりゃそうさ」
今までのバトルを思い出すように、一度目を瞑り笑顔になった彼は数える様に指を折りたたみ、これまで戦ってきた人たちの名を口ずさむ。
「リョウト、カナコ、リョウヤ、ルーカス、マサキ、キョウスケ、アドウ……それにお前とミサトと、他にも沢山いるけど……俺と戦った人達との経験と知識が詰まったのがこのジンクスだ」
―――なんだか今のレイ君に申し訳なくなってきたのは気のせいだろうか。
だって、名前を聴く限りカナコとルーカス、という子以外全員……いや、言うまい。私とバトルしたときもレイ君スーパーロボットに片足突っ込んでいたし、資質はあったのだろう。
「後は……やっと戦えるチャンスが来たからかな?」
「?」
「ガンプラ学園とだよ。あそこは俺の憧れだったんだ。……別に入学したかったとかそういうことじゃない。戦いたかった、高中最強と讃えられているからな―――それがもうすぐ叶うかもしれないって思ったら……楽しむしかないだろ。ガンプラバトルなんだから」
「……フフっ、そうだねっ」
まあ、彼のガンプラは色々変わってきているけど、彼のガンプラファイトに対する思いは初めて会った時から全然変わっていない。それが凄く良い所だと思う。
「GNガンランスも持ち手を覆うようにしてもっと保持力を上げたほうがいいかな……」
「スレードゲルミルかよ……ッ」
「え?」
「な、なんでもないよ……」
無意識に変な所を学んじゃうところが傷だけどね……。
『ぶち抜けぇぇぇぇぇぇぇッ!!』
「―――私の彼に対する考察はどうやら間違っていた様だ」
レイとミサキがジンクスⅣの改修に勤しんでいる一方で、セカイ、フミナ、ユウマのチーム『トライファイターズ』の面々は、ガンプラの修理を休憩する合間に、決勝トーナメント出場チームの各バトルを見て考察を立てていた。
決勝トーナメントはトーナメント表発表と同日に行われるので、今の内に対策を練っておかいた方が良い。チームの付き添いで来ているラルのその言葉で始めたミーティングだが、チーム『ビルドバスターズ』とチーム『ソレスタルスフィア』のバトルの映像を見た後、チーム『イデガンジン』のバトルの映像を見て、おもむろにラルがそう呟いた。
「それってどういうことですか?」
「何かおかしいことでもあるんですか?」
ジンクスⅣがフルクロスを殴り飛ばす瞬間で一時停止し、表情を鎮めたラルにいまいち分からないとばかりにフミナが質問する。
傍目から見れば、ジンクスⅣがフルクロスを殴り飛ばすと同時に腕部をパージしたようにしか見えない。しかもフルクロスの巨体に隠れているからか、ジンクスⅣの切り離された腕が見えない。
セカイも腕をパージしていると考えたらしく、首を傾げながらそう疑問の声を出す。
「先輩、セカイ、アンドウ・レイさんは腕をパージしたんじゃない。引き千切ったんだ」
ラルが応えようとする前に、ビルダーとしての腕に自身があるユウマがラルと同じように表情を険しいものにしながら言い放つ。―――腕を引き千切る。フミナはその事実に思い至り、驚愕の表情を浮かべた後にそれがどれほどの行為かを理解し、僅かに顔色を悪くする。
「それがどうしたっていうんですか?」
「セカイ君。レイ君は君と同じアシムレイトを発動した状態だったんだ」
「!」
ようやくセカイも理解できたのか、自身の右腕を抑え信じられないような表情を浮かべ、ラルを見た。
彼自身アシムレイトの痛みは一番理解しているつもりだ。大会中で腕を壊された時は、激しい激痛が走った。
「私は前に彼はセカイ君とは真逆に位置すると言ったね?」
「は、はい」
「逆だ。彼は君と近い、チームの勝利の為に死力を尽くしチームメイトに活路を作り出す役割を担っているんだ」
ラルが合宿で初めて会った、アドウと我梅学園のバトルに乱入した時のチーム『イデガンジン』の会話。今思えば、彼の発言は内に秘める激情が漏れ出したからこその行動だったのかもしれない。
「一人で突っ走る所とガンプラの知識力を除けばセカイに似てるな……しかもセカイのバーニングバーストよりも遙かに応用性が優れている粒子の帯……厄介だな」
「盾とかスラスターみたいに使ってたね……」
ユウマとフミナが動画を見ながらジンクスⅣについての考察を述べているところを見ながら、一つ頷いたラルは鞄からもう一つディスクを取り出し、今映っている4回戦のものと入れ替える。
「それにもう一つ見てもらいたいものがある。これはチーム『イデガンジン』のこれまでのバトルを纏めた簡単なものだが……」
映り込むのは一回戦から四回戦のバトルの映像。
チーム『トライファイターズ』に劣らないド派手で迫力のあるバトル。部分部分に纏められた簡単なものだが、三人は食い入るようにそれを見つめる。
「イデオンもガンバスターも優れたガンプラだ。でも今はレイ君のジンクスに注視してくれ」
「―――あ!」
「成程……ッ」
「へ?なに?」
フミナとユウマの驚いた声に、セカイが分からないとばかりに隣にいる二人を見やる。
「勝ち上がっていく毎に、ガンプラが改良されていっている……」
「うむ、ただ修理している訳じゃない。合宿の時もそうだったが、彼のガンプラは未完成だった。それからだ、彼のガンプラのバトルを見る度に強くなっていく」
「壊してしまったら……もっと強くするという感じですか?」
「いや、多分違う。彼は経験を取り込んでいる、と私は考えている。例えばで言うなら三回戦で使ったブースターに装備されているGNバスターソード、四回戦では片手持ちができるように縮小されているだろう?」
確かに、とユウマは思った。
あのランスもブースターに増設されたGNダガーも一回戦にも二回戦にも見れなかったものだ。
だとしたら、決勝トーナメント、アンドウ・レイはさらに改良したジンクスⅣを出してくるのではないのか?と思ってしまう。
普通なら新しい装備を試合で試そうとするなんて危険な行為だ。余程自分の腕に自信がなければやろうとは思わない。少なくともユウマはやらない。
「―――ビルダーとしての自負。それがアンドウ・レイさんの強みでもあるのか……」
「ヨーロッパジュニアチャンプをも下したチームのリーダーだ。皆、準決勝であたることになったら心して掛かるように」
「「はい!」」
決勝トーナメントに出場した3チームはどれも強敵揃い。
それでも彼らは勝たなくてはいけない。
自身の目標の為に―――。
信頼する先輩の為に―――。
強者と戦う為に―――。
準決勝戦が行われるその日、会場の真ん中へ集められた決勝トーナメント出場チームの面々の中で、カミキ・ミライの合図と共にモニターに映し出された組み合わせに心を震わせていた。
準決勝第一試合、暮機坂高校VSガンプラ学園
準決勝第二試合 天王寺学園VS聖鳳学園
「―――ははッ」
準決勝の相手がガンプラ学園。
なんということだ全く、柄にもなく笑みが止まらず、口元を抑えてしまう。
「相手にとって不足無し、って所ですね!」
「やってやりましょう」
後輩達も怖じ気づくどころか、笑みすらも浮かべ高揚している。ああ、そうさ、優勝するには必ず打倒しなければならない相手がガンプラ学園だ。
去年はただ見ている事しかできなかった。
年が明けてもただの憧れだった。
ミサキとのバトルで県大会を制し目標は打倒へと変わった。
ニールセンラボでアドウとのバトルを通し再戦を約束。
なんて長くも短い道のりだろう。
だがそれは確かに俺達が通った道のり―――。
「ここまで来たぞ。アドウ」
「ああ、待っていたぜ……レイッ」
ずっと待っていた―――そんな顔をしている男の名は、アドウ・サガ。ニールセンラボで戦ったガンプラ学園の生徒。凄まじい技量と、特異なガンプラを扱うファイター。
「私も忘れて貰っては困るな」
「決勝に上がるのは私達よ」
キジマとシアがアドウの横に並び出る。アドウだけが相手ではないことは分かるが―――どちらにせよ俺達の気勢が下がる事はない。
「決勝に上がるのも!それに優勝するのも私達よ!!」
「ノリコ言いすぎだぞ、と言いたいけど―――同感だ」
威勢よくそう言い放つ二人。
だが、ノリコの言葉に他の二チームも反応したのか食って掛かる様にこちらへ詰め寄って来る。
「おうおうおう、アンタ等好き勝手言っているようだがなぁ!優勝するのはワイら、チーム『ビルドバスターズ』やさかい!」
「いいやそうはさせない。優勝は僕達チーム『トライファイターズ』だ」
「なんやてぇ!!」
心形流の使い手と思わしき男子とユウマくんが口喧嘩の如く詰め寄っている。
……まさか、アドウに再戦の約束を果たそうと言い放った事を切っ掛けに、こんな事になるとは思わなかったな。
「いい加減にしろ、物事は単純だ……誰が勝つか、負けるかだ。ようするにバトルすればいいんだよ」
アドウがそうその場の面々に言い放った。
単純明快、いかにもアドウらしい言葉に苦笑しながら、ノリコとコスモの方を向く。
「だ、そうだ。ならバトルで示そう。今まで俺達が培ってきたものを全て使ってな。一応聞いておくが、ガンプラ学園相手に怖じ気づいてはいないよな?」
「勿論ですよ!」
「ここで怖じ気づいたらこれまでの意味がありません……やりましょう」
―――なら、これ以上言う事はない。
準決勝第一試合はこの後すぐに開始される。
「なら、やるか……最強を打ち倒すぞ」
「「はい!!」」
「このバトル、どう見る?トシヤ」
「……実力だけ見るならばガンプラ学園。だけど、このバトルは僕には予想がつかない……」
会場から遠く離れた新潟から見ているが―――正直言って、このバトルは全くの予想がつかない。ガンプラ学園は今の大会でも常軌を逸したレベルの強さだが、チーム『イデガンジン』も相当だ。
「イデオンの火力、ガンバスターの火力―――正直パワーだけなら今大会一」
「というよりあの二機硬すぎるんだよね……イデオンに至ってはサイコフレーム内蔵とかおかしいレベル」
ノブヤとカズヤが呆れた様に愚痴を漏らすが、事実あの二機の単体火力は異常なので特に反論しない。一回戦を見た時なんて眩暈がしたよ。
「一番おかしいのはアンドウ・レイなんだけどね」
「納得」
「だよね」
「正直、彼は僕達の予想を超えて来る。こんなにもデータが役に立たなくなるのは、トライファイターズ並さ」
「腕引きちぎったのはドン引きしたよ」
「「うんうん」」
あれは僕もドン引きした。
アシムレイト対策に考えて置いた戦法も水泡に帰すくらいのバカな戦法だ。でも一番ドン引きしたのは茨城県県大会決勝戦、チーム『冥王』とのバトル。
アンドウ・レイが撃墜してようやく気付けた不可視の攻撃。
僕達はアレをクリアファンネルの亜種と見ているけど―――あれを相手にほぼ単体で立ち回るのはそれだけで頭がおかしい。
「まあ、アドウ・サガもキジマ・ウィルフリッドも化物だが……アンドウ・レイとその仲間も十分化物だ」
だからこそ分からない―――だがそれ以上に楽しみだ。
このバトルの行く末が。
会場に設置されたバトルシステム、壇上へ上がる入り口で俺達は並んでそれを見据える。
手の中にはこれまで一緒に戦ってきたガンプラ。
隣には一緒に戦ってきた頼もしいチームメイト。
視線を観客席の方に向けると、見知った顔がちらほらと見える。
ミサキとミサト。
マサキとキョウスケ。
カナコとリョウヤ、センガ。
それにリュウトもルーカスだって見ているだろう。
「―――」
後輩と顔を見合わせ壇上に上がり、対戦相手の顔をしっかりと視界に収める。
無精髭を生やした白髪の青年、アドウ・サガ。
金髪の髪を結った碧眼の青年、キジマ・ウィルフリッド。
銀髪の髪の少女、キジマ・シア。
三人ともがファイターとしてもビルダーとしても最高峰に位置する存在。
「俺達は
そうさ、俺達はこの大会ではいつだって挑戦者だった。なにもかもが手探りのバトルだったし、このジンクスだってバトルの度に直して形にしていった。
バトルシステムの前に立ち、今一度、ジンクスⅣオリジンに目を向ける。
「思う存分にやろう……」
そう一言だけ呟き、システムにジンクスとBASEを置く。BASEがデータを読み込みプラフスキー粒子の放出と同時にジンクスがバトルシステムの中に入り込み、俺の周りにコックピットのように粒子によるしきりが形成され、目の前にガンプラを操縦する球体が生成される。
それに手を置きゆっくりと息を吸いながら、隣にいるであろうコスモとノリコに聞こえる様に声を張り上げる。
「チーム『イデガンジン』!!」
「「行きます!!」」
さあ、ガンプラファイトをしよう。
かつて、スパロボ学園というDSのソフトがありました。
………うろ覚えですが狐っ娘(?)とのバトルがキツくて泣いた覚えがががが……。
次話、対ガンプラ学園です。
今話は、ジンクスⅣの改造話です。
予想できるでしょうが、アシムレイトと合わせてドン引きするロケットパンチの使い方をします。
ま、既に三兄弟ですらドン引きさせているので、手遅れみたいなものですねっ(白目)