『A』 STORY   作:クロカタ

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ビルドファイターズAを全巻買って見たところ―――


―――ガンプラ塾が弱肉強食過ぎて笑えない……。


今回は閑話のようなものなので、三体ほど再現機体を出させていただきます。





過去編~再戦を約束して~

 合宿が終わり茨城県に帰ってきた。

 これだけ言えば合宿がとても短く感じてしまいそうな感じだが、実際はとてつもなく濃い期間だった。全国屈指のバトルシステム、全国の強者たちとのバトル。

 アシムレイト。

 ガンプラ学園。

 カミキ・セカイ君とチームトライファイターズ。

 大黒刃にナガレ・リョウヤ。

 

「―――つまり合宿は楽しかったわけだね」

「まあ、そうだ」

「羨ましいなぁ」

 

 場所は地元の模型店、そこに設置されているバトルシステムを間にし、俺とキリハラ・ミサキはガンプラバトルを行っていた。

 

「合宿から帰って次の日なんでしょ、疲れてないの?」

「心配いらない。この通りガンプラバトルが出来る程度には元気だよ」

 

 ノリコとコスモには休んで貰うべく今日は休息日としたけど結局ジッとしていられなくなり、ちょうど携帯に電話してきたミサキからの誘いを受け、この模型店に来た訳だ。

 ミサキからの誘い、それはガンプラバトルに付き合ってくれないか?というものだった。こちらとしては実力者である彼女とバトルできることはなんら悪い事ではないので、今こうしてバトルしているのだが―――。

 

「今日はジンクス使ってないんだね」

「俺だって何時もジンクスを使っているわけじゃない」

 

 今日の俺はジンクスを使ってバトルしてはいない。

 現在操作しているのはジンクスⅣではなく別のガンプラ。ヴィクトリーガンダム、機動戦士Vガンダムに登場する主人公機で、背部ユニットを取り付けることで様々な局面に対応することができる万能機である。

 

「君がガンダムを使うのは似合わないなぁ」

「実際、あまり使わないからな」

「ジンクスが君には一番合ってるよ」

「ありがとうございます、っと」

 

 呑気な会話をしながらもミサキのガンプラから放たれたビームを回避する。ミサキ自身も本気で戦っているわけではないが、油断していたらどこかしら吹き飛ばされる。

 

「お前もその機体は合わないと、思うぞ」

 

 『荒野』のステージに設置された岩陰から緑色のガンプラが飛び出してくる。緑色のずんぐりとした機体、ボリノーク・サマーン……珍しい機体を使ってきたミサキに驚きながらも、ビームサーベルを伸ばす。

 

「そうかな?この機体は訳すと『森のくまさん』って言うんだ。可愛くない?」

「見た目にそぐわないファンシーさだな」

 

 扇状にさせたサーベルでビームを弾き、ボリノーク・サマーンにビームシールドでの体当たりを仕掛けるが、それも躱される。

 

「その場でガンプラ作ってバトルするのは悪くない」

「でしょ?私は妹と一緒にやってたけどね」

「一人っ子だから羨ましいよ」

 

 ふふんと得意げな笑みを浮かべるミサキに、苦笑しつつも手は休めない。しかし、こうまで勝負がつかないとはな、素組のガンプラじゃ慣れないところもあるが―――そろそろ時間か……。

 

【TimeUP!】

 

「時間切れだね」

「そう設定したからな」

 

 あらかじめ時間制限を設けておいた為にバトルが強制終了され、お互いのガンプラが戦っている状態で停止する。

 

「いやあ、次はどうする?何か作る?」

「それもいいな……」

 

 作ったガンプラを戻して、バトルシステムが置いてある部屋から商品が置いてある場所まで移動する。

 流石はこの町一番の模型屋、品揃えは専門店にも劣らない。山のように並んでいる箱を吟味しながら、ミサキと共に店を歩く。

 

「今日は大会で使うガンプラは持ってきているのかい?」

「改修してる最中で今日は持ってこなかったんだ。だから、代わりに暇を見つけて作っていた、こいつを持ってきた」

 

 ホルダーからガンダムタイプのガンプラを取り出す。先程使っていたVガンダムは店で作っていたものだが、これは違う。ジンクスがもしもの事態で使えなくなった時の為に作っておいた予備のガンプラ。

 ダメージAで行う選手権用にいくつか使っていたガンプラの内の一つで、俺にしては珍しいガンダムタイプの改修機。

 

「Gーセルフ?」

「大会前に発売されたからな。買ってみて、試しにバトルしたらこれが面白い。結局はジンクスの方が優先されてしまったけど、これも良いガンプラだ」

 

 新しいものは好きだ。部活の一環でモンテーロを購入しようと此処に来たら、Gセルフしか店頭に置いていなかった事がそもそもの始まりだった。キットには最小限の装備しか入っていなかったが、それも良いと思い少しだけ改修を施したのだ。

 

「大まかな改修はしてないが、少なくとも県大会では戦えるように作っておいたものだ」

「へぇ……私はキット見てげんなりしたけど、中々いいね。今日買って帰ろうかな」

 

 まじまじと興味深そうにGセルフを見るミサキ。

 つい前に宇宙用バックパックが発売されたので、それを装備させているが……今度、トリッキーパックやアサルトパックも出るんだよな。何時か買ってみたい。

 というより、ジンクスに装備させるのも面白いかもしれないな。

 

「うん、良いガンプラだ」

「でもこれじゃあ大会には勝ち上がれない。アシムレイトの発動と同時に発生する、あの赤い粒子の帯……あれを制御できるようにしなくちゃならない」

 

 アシムレイト―――父から聞きだした話を聞き、正直俺は耳を疑った。強い思い込みに寄り成せるファイターの極致ともいえる技能、ガンプラの出力を三倍にさせるが代償としてガンプラが負ったダメージを自分にも反映させてしまう危険なもの。

 

「しっかしアシムレイトねぇ、随分と物騒なものがあるね。まあ、そんな奇天烈な現象が起きてる人が少ないのは幸いだよ」

「確かにな、下手すればガンプラバトル自体が危険と判断されてなくなる」

 

 そうなったら最悪ガンプラバトルがなくなるという事態が起こるかもしれない。それだけは絶対に嫌だ。だからあの力は制御できるようにしなくてはならない。

 自分のせいでガンプラバトルが無くなる、という事態は防がなくてはならない。

 

「………大丈夫なの?」

「大丈夫さ。合宿の時痛めた足も、この通りすぐに治った」

 

 痛めた方の脚を動かしながら、近くの棚に置いてあるキットを手に取る。………シャッコ―か、同じVガンダム系列の機体だが、こちらも中々面白い造形をしているから結構好みだ。

 

「それよりミサキはどうしているんだ?大会が終わってから」

「新しい大会用のガンプラを作ってるよ。冥・Oの強化型をね」

「……素直に怖い。アレと戦うのは神経削るからな」

「そう言わないでよ。完成したら真っ先に君と戦おうと思ってるんだから」

「……それは光栄なことで」

 

 冥・Oがより凶悪になったガンプラといずれ戦わなくちゃいけないのか、これは来年の大会も大変かもしれないな。

 

「でも作っている間はどうしているんだ?冥・Oは使えないんだろう?」

「勿論、君と同じ予備の機体位はあるさ」

 

 バックから一体のガンプラを取り出し俺に見せる。全体的に明るい灰色で着色され、背部スラスターは翼のようになっている。一瞬アドウと同じタイプのガンプラに思えたが、すぐに元になったガンプラが思い浮かんだ。

 

「エピオン……か?」

「そう、名前は【風のエピオン】……冗談、冗談、名前は決まってないよ。だからただのエピオン」

「……近接格闘が得意なお前には合っているガンプラだな」

「冥・Oを作っている間に使っていたガンプラもこれさ」

 

 ガンダムWに登場するエピオン・システムを内蔵した近接特化型のガンダム。近接型のMSを使うと思ってはいたが、近接に特化している機体を持ってくるとは思わなかった。

 

「お互い予備機を持ってきたことだし、一度本気でバトルしてみる?」

「……やるか」

 

 手に取ったキットを元の場所に戻し、バトルシステムがある場所に再度向かう。今度はさっきのような軽い戦闘ではなく本気での戦闘、しかもどちらも大会用に作っておいた予備機、面白いバトルになりそうだ。

 

『レイくーん……おーい、レイくーん』

 

 バトルシステムに歩を進めようとしていた俺に、店長が声を掛けてくる。あまりに此処に通っているせいか名前を憶えられてしまった上に、色々指導とか頼まれるのだが……今度もまたガンプラ初心者の子にレクチャーして欲しいとかのお願いだろうか……?

 

「レイ君、呼んでるよ?」

「ちょっと待っててくれ」

 

 首を傾げているミサキをその場に残し、こちらへ手招きしている店長のいるカウンターへ近づく。よく見るとカウンターには店長以外に二人の同い年くらいの男がいる。

 

「店長、どうかしたんですか?」

「いやぁ、丁度君が此処に居てくれて良かったよ。実はさ、この二人が此処で一番強いファイターは誰だって言ってね」

「一番強いファイター?」

 

 腕試しという奴か?店長の言葉を怪訝に思いながら、店長の前にいる二人を見る。片方は緑がかった髪色で、もう一人は茶髪に近い赤みがかかった髪色をしている。

 俺の視線に気付いたのか、赤みがかかった男が一歩踏み出して、こちらへ一礼した後に口を開いた。

 

「すいません。俺達は千葉県から旅行でやってきた者なのですが、偶然バトルシステムがあるここを見つけまして―――」

「ガンプラバトルするなら強い奴と戦いたいってなっ、なっキョウスケ」

「少し黙ってくれないか、折角店長が呼んできてくれた人なんだぞ……マサキ」

 

 ……一応はバトルしたいだけのようだ。それにしても千葉県からか、隣県から旅行とは随分と酔狂な事をする二人だな。

 

「受けてもいいんじゃない?」

「ミサキ……」

 

 店長に呼び出された俺を疑問に思ったのか、ミサキが何時の間にか近くまで来ていた。話も半分くらいは聞いていたようで、ニコニコと楽しそうな笑みを浮かべている。

 

「私達は二人、相手も二人。ほら丁度ぴったり!」

「それもそうだな、丁度バトルしようと思っていた所だしな」

「感謝する」

「サンキューな!」

「じゃあ、バトルシステムはさっきの所を使ってもいいよ。……あ、でもダメージレベルはCでやってね。うちはダメージレベルC以上は禁止だからね」

 

 店長の言葉に頷き、さっきミサキと共に使っていた一番奥にある大きいバトルシステムに脚を運ぶ。

 とりあえずは其処に着くまでに、自己紹介を済ませておく。

 

「俺はアンドウ・レイ」

「私はキリハラ・ミサキ」

「俺は、アイバ・キョウスケ。こっちがマサキ」

「よろしくな!」

 

 キョウスケにマサキか。

 

「何で茨城に?」

「合宿だ。旅行という名のな、今年はガンプラバトル選手権には出場できなかった……だから今年は関東圏のファイターと経験を積んでおこうと思って此処に来た」

「二人じゃ大会には出れねぇからなぁ、まあ、作って一年も経ってないガンプラ部に部員が入る方がおかしいけどよ」

 

 大会に出場できなかった、か。まるで去年の自分を見ているような気分だ。俺は後二人だったが、この二人は後一人で大会に参加できた……一人の違いだが、その残りの一人がどうしようも遠かったのだろう。

 

「じゃあ、此処に来て正解だったね」

「……何故だ?」

 

 にっこりと笑ったミサキがこちらへ視線を移す。その視線に何処か悪戯を仕掛けようとする子供のような悪意を感じ、思わず彼女を止めようとするが、ミサキをひらりと身を翻し俺の背後に隠れるように移動した。

 

「レイは、我が茨城県の代表チームのリーダーなんだよ!」

「何!?」

「すげぇ、やっぱり俺の勘は間違っちゃいなかった!!」

 

 見て分かる通りに戦意を滾らせる二人。やや呆れた目で背後のミサキをみやるも、彼女はニコニコと笑った表情を崩さずに、手を合わせ形だけの謝罪をするだけだった。

 ……どうせ、本気でバトルしたいという理由だろうが、俺をダシに使うのはやめて欲しい。

 

「残念ながら、今日は大会用のガンプラは持ってきていないんだ……すまない」

「謝らなくていい。押しかけたのはこっちだからな」

「全国に出場できる選手と戦えるだけで俺は十分だぜ!!」

「……じゃあ、バトルしよう」

 

 一際大きいバトルシステムが置かれている部屋に到着した。

 キョウスケとマサキはやる気十分とばかりに、早々とシステムの前に移動した。

 

 こちらも彼らと向かい合うように移動し、ガンプラを置く。

 ……よく考えれば、ミサキと一緒にバトルするのはこれが初めてだ。ちゃんとチームワークを取れるかどうか心配……いや彼女はチームワークとか考えるようなタイプじゃないな。

 

「Gセルフ、アンドウ・レイ、出る!」

「エピオン、キリハラ・ミサキ、出るよ!」

 

 宇宙用バックパックを装備したGセルフが、シールドと盾を装備した状態へステージへと飛び出す。選択されたステージは月面。宇宙用バックパックが有効に活用できるステージだ。

 

「ミサキは……」

『ここだよ』

 

 斜め上でエピオンが腕を組んだ姿で浮かんでいる。何だろうか、冥・Oと同じ威圧感を感じるのは気のせいだろうか。

 

『まずは相手の出方を見ようか。勘、だけどあの二人結構やると思うよ』

「ああ」

 

 薄々は感じてはいたが、キョウスケとマサキ、ふちらも只者ではない雰囲気を醸し出していた。俺が選手権に出場すると聞いた時のあの目からビリビリと伝わる、凄まじい気迫。

 

「簡単には終わらないな……このバトルは……」

 

 十秒ほどレーダーを注視していると、急速に接近してくる二つの反応がレーダーに映りこんだ。

 

「来たぞ!!」

 

 一体は月面をホバー移動しながら、もう一体は宇宙から近づいてくる。小さいながらも前方に見えた機影をモニターに拡大しながら、ライフルの照準を合わせる。

 

「赤い……ケンプファー、か?」

 

 赤い重戦車、それがまず最初に抱いた感想だった。両肩に増設された巨大なスラスターに、左腕のガトリング砲、そして父が使っていたようなとっつき……そして全体を真赤に染め上げるような着色。

 

 凄まじいスピードで一直線でこちらに近づいてくるケンプファーにビームを放つ。GNビームライフルとは違う短いビームが連続して赤いケンプファーに向かっていく。

 

 だがケンプファーは避けずにそのままビームが直撃する、落とした、と思ったのも束の間、ビームによって生じた白煙から無傷のケンプファーが飛び出してくる。

 

『その程度じゃコイツの装甲は貫けない……ッ』

「俺の相手は硬い機体ばっかり……」

 

 最近のファイターは硬さに主眼を置いているのか、ミサキと良いナガレといい皆硬すぎる。装甲の隙間を狙うのも手だと思うが、キョウスケがそれを許すとは思えない。

 接近戦もあのとっつきが怖い。

 

「でも……リスクを負わなきゃいけない時もある」

 

 首元からサーベルを引き抜き、盾を構えバックパックの出力を上げ飛び出す。こいつのサーベルなら大抵のものは斬り裂ける筈。

 

『この距離、行ける!ブースト!!』

「それはこちらもそれは同じ!!」

 

 赤いケンプファーが月面からジャンプし、ガトリングを乱射しながら右腕のとっつきを引き絞る。嵐のように襲い掛かって来るガトリングをシールドで防ぎ、近づいた所をサーベルで切り落とさんばかりに縦に振るい下ろす。

 

 相手は相変わらず回避する挙動を見せない。変わらず右腕を力の限り引き絞っているだけ―――。サーベルがケンプファーの頭部に接触しようとしたその瞬間、ケンプファーの頭部のホーンが赤く発光しサーベルと激突した。

 サーベルから伝わるこの感触、抵抗されている……ッ。

 

「角が武器なのか?!」

『伊達や酔狂でこんな頭をしている訳じゃない!!』

 

 バチィッ!と大きな音を立てサーベルと角が接触し火花を散らす。赤く発光……ビームに対抗しているという事は発熱しているという事、つまりヒートナイフと同じ機構があの角に備わっているのか!

 

『その隙!!頂いたぞ!!』

「しま……ッ!」

 

 一気に加速を掛けたケンプファーにサーベルを持った腕が弾かれ無防備な体勢を晒す。これではとっつきが直撃する、そうなる前にシールドを相手と自分に挟み込むように構え、スラスターを上昇するように噴かす。

 

 とっつきがシールドに深く突き刺さると同時に、右腕から撃鉄のような音が響く。

 

「ぐぅ……!」

 

 凄まじい衝撃がシールドから伝わり、貫かれるもギリギリ回避が間に合い、上空に逃げる事に成功する。

 突然の衝撃、あれは……パイルバンカーか?直撃は危険すぎる。恐らくだが、あの武装は大抵の防御なら難なく突破し致命的な損傷を与えてくる。

 だからこその重装甲型のケンプファーか。

 

『流石だ、伊達に選手権に出場する訳じゃない……ッ!

「それはこっちの台詞だ……肝が冷えた」

 

 初撃でやられてもおかしくはなかった。やはりとっつきは恐ろしい、父から何度も食らってはいるが、未だにあれを防御できるシールドが作れない。

 ……だが、こちらもGセルフの力を出し切った訳じゃない。シールドはまだ使える。武装もまだある。とっつきの衝撃をモロに受けた左手を確かめながら、フォトンエネルギーを発生させる。余剰エネルギーとして放出されたフォトンエネルギーがふわふわと掌に溢れ出てくる。

 ……行ける。

 

『この機会、胸を借りるつもりでやらせて貰う!!』

「こちらも!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっちは楽しそうにやってるねぇ」

『アンタは楽しくないのか?』

「冗談」

 

 レイ君は、ケンプファーとバトルしているようだし、私は私で好きにバトルさせて貰いますか……。

 目の前で浮かんでいる白色のガンプラ、西洋剣を握った騎士を思わせるかのようなその機体。そして普通のガンプラにはない尾と足の爪。

 これはやはり―――。

 

「魔装機神だね。元になったのはシナンジュかな?」

 

 サイバスター、スーパーロボット大戦OGサーガに登場した風の魔装機神。全く、こうも私と同じような発想をする人を二人も見つけるなんて思わなかったよ。

 

『知ってるのか!?』

「レイ君と戦ってるのはケンプファーを元にしたアルトアイゼンでしょ?私ロボット大好きだから大抵は知ってるよ……」

『まさかこんな簡単にバレるなんてな……』

 

 エピオンの翼を大きく広げ、腰にマウントされているビームソードを装備する。風のランスターをモデルにして作ったガンプラだが、あくまで主武装はビームソードだけ。

 元々使っていたガンプラだ……思う存分にやらせて貰うよ。

 

「さあ、私達もバトルしよう」

『……アンタ相当強ぇな。だけどな!!俺のガンプラは―――』

 

 距離が開いているにもかかわらず、実体剣を素早くこちら目掛けて振り下ろした白いシナンジュ。直感的に危険を感じ、機体を横に逸らすと透明に近い斬撃が私の横を素通りしていった。

 

「プラフスキー粒子を斬撃に乗せて飛ばしたのか……面白い事をするね」

『……へへ、やっぱそう来なくちゃ!』

 

 実体剣を再度構えるシナンジュ、得意分野で勝負しようという訳か。乗るしか手はないね、きっと楽しそうだ。右手にビームソードを携え、シナンジュへ突撃する。

 

「風をモデルにしたガンプラ同士で勝負と行こうじゃないか!!」

『……はっやっ!?』

 

 慌てて防御したシナンジュの実体剣にビームソードがぶつかる。徐々に押し込むことも可能だが、そのままの状態で両肩の装甲をスライドさせ、砲口を展開する。

 

『ただのエピオンじゃないのかよ!?』

「君と同じさ!ボーン・フーン!!」

 

 という名のプラフスキー粒子の竜巻を両肩から放つ。ゼロ距離からの砲撃、普通は当たるが相手は私の勘通りに只者ではない。鍔迫り合いの状態から、抵抗するために出力を上げていたスラスターを切り、下方に下がりボーン・フーンをギリギリ避けたのだ。

 

『あ、危ねぇ……』

「油断は命取りだよ!」

『分かってるっつの!』

 

 続けて振るわれたビームソードを、受け流し粒子の斬撃を放つ。迫りくる斬撃をビームソードで無理やり弾き、再度接近し、剣戟を交わす。

 

「ははっ、いい、すごく良いよ!!」

 

 お互いの剣がぶつかった衝撃で距離が離れたその瞬間、私はMAに変形し月面から大きく離れるように上昇した。私が変形した意味が分かるかな、マサキ君。

 

『速さ比べか……面白れぇ……ッ』

 

 実体剣を腰にマウントさせたシナンジュは、こちらへ追いすがるべく一旦上昇してくる。だがMA化したエピオンには追いつけない。いくらサイバスターをモデルにしてもその状態で追いつけるほど甘くはない。

 

「どうするんだい?」

『理想を実現させる為には―――』

「!?」

 

 上空へ上がったシナンジュが変形していく。尾が顔のように前面に展開された後に、頭部は胸部に隠れるように沈み、脚は前脚のように変形し、最後に背部のスラスターが上を向いた。

 ―――まるで、鳥に似た姿に変形したシナンジュが、凄まじいスピードで急加速し私のエピオンへ追いすがる。

 

『無理しねぇと駄目だからなぁ!!』

「どっちか早いか競争と行こうじゃないか!!」

 

 予想以上にこのバトル、面白い事になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 強い、流石選手権に出場する選手でもある。

 俺のアルトアイゼン・Kの攻撃をこうも容易く回避し続けている事から疑いようもなく強い。だが少し妙だ、俺のステークの攻撃の対処が慣れ過ぎている。

 まるで何度も戦ったことがあるようにも見える。

 

 アンドウ。

 ……まさか、な。

 

「貴方はッアンドウ・セイジの関係者か何かか!」

「ッ!父だ!!」

 

 ステークを薄い青色の光を灯った手で払ったGセルフから戸惑い気味にそう返された言葉に、何処か納得する。そうか、『荒熊』のご子息が彼なのか。妙な縁だ、まさか憧れの存在の家族と戦うとは。

 

「猶の事、勝たなければならない!!」

 

 ヒートホーンを赤熱させ、そのまま体当たりを仕掛ける。当然相手は回避しようとするだろう。

 だが、そうはさせない。

 

「この距離でクレイモア……貰ったぞ!!」

『散弾!?』

 

 両肩がスライドし、大量の炸裂徹甲弾が射出され目前のGセルフに殺到する。至近距離からのクレイモア、余程の装甲ではなければ堪えるはずだ。

 

 だが彼のGセルフはシールドを投げ捨てサーベルを持った両手首を高速で回転させシールドのようにして次々と襲い掛かって来るクレイモアを防いでしまった。

 クレイモアですらほぼ無傷で防ぐか……。

 

「まだ、至らない……だが!!」

 

 クレイモアによって生じた爆風によって視界が不安定な今なら!未だに凄まじい回転をするサーベルによって黒煙が吹き飛ばされた瞬間に、頭部のヒートホーンを加熱。

 

 ミキサーのように回転するサーベルにヒートホーンを激突させ無理やり回転を阻害し、動きが止まった所でステークを胸部目掛けて正確に打ち込むべく、空いている左手で右腕を拘束し、そのままステークを突き出す。

 

「受け取れ!!」

『ッ!!』

 

 胸部にステークが直撃する瞬間、Gセルフの体表が揺らぎ陽炎のような何かが飛び出しアルトを押し出した。訳の分からない現象に焦燥しながらも、ガトリングを連射しながら、月面に着地する。

 

「機体の表面に展開させた粒子を形として放ったのか……」

『はああああ!!』

「……くッ!!」

 

 こちらが月面に着陸すると同時に急降下しサーベルを振り降ろしてくる。

 

「甘い!!」

 

 左腕の三連ガトリングを放ち、破壊とは言えないがサーベルの発生部分を破壊する。これでサーベルは失った、この距離ならば―――。

 

『Gセルフのフォトンエネルギーはッこんな使い方もできる!!』

 

 無手になったはずのGセルフが再度手を掲げ水色の粒子エネルギーをその手に発生させ、振動するように震えたソレをこちらを両断するように思い切り振り降ろした。なんだか分からないが直撃はマズい、そう直感的に判断し、狙いを定めずに右腕のステークを前方へ突き出した。

 

「――――!」

『―――ッ!』

 

 手刀のように繰り出されたGセルフの振り下ろした一撃はアルトの左肩に紫電を撒き散らしながら深く突き刺さる。だがこちらの装甲は伊達じゃない、損傷を気にも止めずにそのままステークがをセルフの右肩目掛け突き刺し破片を撒き散らす。

 

「全弾持っていけ!!」

 

 断続的に衝撃がGセルフ目掛けて襲い掛かる。その度に左肩に突き刺さった手刀からこちらへも衝撃が伝わるが、それは相手も同じ。我慢比べ、とはいかないがその左腕は頂くぞ……ッ!

 

『やむなしか……ッ!』

 

 最後の一撃を放つその瞬間、ガクンと手応えが消えた瞬間に機体に大きな衝撃が走る。逃げられた訳ではない、現にステークは肩に突き刺さっている、だが肝心の本体が左肩をパージし、アルトの腹部に蹴りを叩きこんだのだ。

 

 左腕を捨ててこちらへの攻撃を優先させたのか……。こちらもマシンキャノンは撃てるが左腕が上がりそうにない。

 結果的にはどちらも腕を失った状態、五分と五分だ。

 

『……来年、俺達はまた大会に出る』

 

 宇宙へ昇ったレイのGセルフからそんな声が聞こえる。来年の大会、それを意味するのは―――。

 

『来年は選手権に出れるかは分からない。だが、次会った時は俺も本気のガンプラでお前と戦いたい』

「……望むところだ。今日、貴方と戦えたのは何よりの励みになった」

 

 左腕が駄目になってしまったせいか予備弾倉を装填できず、残り一発のままのステークをGセルフへと向ける。

 次の選手権は必ず勝ち上がって全国へ行く。この際オープントーナメントに出て力を磨くのもありだ。やれることは全てやっておきたい。

 明確な目標が出来たからかこれからしなくていけないことがどんどん見つかって来る。

 

「手始めに打倒させて貰うぞ、レイ!!」

『こちらも切り札を切らせて貰う!』

 

 左腕を失ったGセルフの各部のクリアパーツが光を灯す。

 その光はクリアパーツから徐々にGセルフを覆う。恐らくアルトの肩を貫いた手刀と同じフィールドを纏っている……。

 

「だとしても、俺のやる事は変わらない」

 

 何時だってやってきたように、この右腕でどんな装甲も撃ち貫くのみ。青い光を纏ったGセルフがさらに上空へ昇っていくと同時に、こちらも全力で月面を飛びあがる。

 拳を突き出し急降下してくるGセルフと、ステークを構え上昇するアルト。

 

 地球をバックに激突した二つのガンプラは自然に組み合うような形で制止する。大きさが異なるガンプラだが、どういうことか体躯で劣るGセルフと力は互角、拮抗するように腕部を震わしながら頭部を激突させたGセルフをモニターから見て、自然に笑みがこみあげてくる。

 

「フッ……」

 

 マサキではないが、俺もガンプラバトルを楽しんでいると言う事か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっちは派手にやってるねぇ!!」

 

 地球を背にし凄まじいバトルを繰り広げている赤と青のガンプラを横目で見る。こちらは高速戦闘の真っただ中だが、気になるものは仕方がない。

 しかも、あのレイ君のガンプラの状態……アレがアシムレイトか。傍目ではよく判断し辛いけど明らかに普通のガンプラが出せる粒子量じゃない。

 

『余所見している暇があるのかよ!』

 

 一気に接近してきたMA形態のシナンジュが一瞬で変形し実体剣を振り降ろしてくる。こちらも変形しビームソードで振り下ろされた剣を防ぎ、ボーン・フーンを放つ。

 

『このままじゃ埒が明かねぇ!!』

「おや、私達も必殺技って奴を出してみるかい?」

『上等ッなら見せてやるぜ!!』

 

 実体剣を後方に投げ捨てたシナンジュの各部に取り付けられた緑色のクリアパーツがレイ君のガンプラと同じように光を灯す。まさか、この子もアシムレイトを……?いや、違うこれは蓄積された粒子を解放しているのか、武装が実体剣しかないデメリットを利用したシステム。

 私の冥・Oと同じ感じにしたという事か。

 

『アカシックッ―――』

 

 それならばこちらもエピオンの奥義をぶつけなければ意味がない。貯蔵された全粒子を用いての一撃、いくら硬く造っておいたエピオンでもただでは済まない。

 

 ビームソードを後方に投げ捨て両肩の砲口を開く。放つのは暴風、私が用いる数少ない遠距離武装。

 

「デッド・ロン―――」

 

 お互いの必殺の一撃放たれるその瞬間、私はある事を忘れていたことに気付いた。そう、ここは先程までレイ君と一緒にバトルしていたバトルシステム。

 当然、バトルでの設定はさっき私達がバトルした時と同じ設定だと言う事、私達がバトルしてから既に10分以上が経過している。

 慌ててバトルが始まってからの時間を確認するため、モニターの端に表示されている数字に視線を移そうとしたその瞬間。

 

 

【Timeup!】

 

 バトルを強制終了させる合図が月面に響き渡った……。

 

「……あ」

『……へ?』

 

 素っ頓狂な声を上げるマサキ君の声を機に、制限時間の超過によりバトルシステムが強制的に解除されてしまう。

 レイ君も今更ながらに気付いたのか、バトルシステムが解除され、姿が確認できるようになった彼は、頭を抑えていた。正直、私もそんな気分だ。しかも必殺技をぶつけようとしていたから尚の事恥ずかしくなってきた。なんて言い訳しようか。いや、これは言い訳しないで素直に謝った方が良いのではないか。

 

「悪い、制限時間をかけていたのを忘れてた。もう一度バトルしよう」

「ホント、ごめんね……」

「………いや、いい」

「お、おいキョウスケ!」

 

 何故か再戦を断るキョウスケ君。満足したような表情からしてこのバトルに不満があったようには言えないが、一体どういう風の吹き回しだろうか。

 

 首を傾げる私だが、そんな疑問を知らずかレイ君の方へ歩み寄ってきたキョウスケ君が手を差し出してくる。

 

「次戦うのはもっと大きな舞台だ」

「そういうこと、か」

「ああ、そういうことだ」

 

 微かな笑みを浮かべ、握手に応じたレイ君。これが男の友情という奴なのかーと思いつつも、何故か釈然としない気持ちになる。

 

「おっと、キョウスケ君、来年の大会に関してなら。レイ君はまずは私に勝たなくちゃ全国へは行けないよ」

「……同じチームじゃなかったのか?」

「ミサキとは決勝で戦った縁だ」

「え、そうだったのか!?道理で強いわけだぜ、一人は優勝者でもう一人は準優勝者かよ!」

 

 私とレイ君が同じチームだったらさぞかし面白い事が起きそうだけど、彼には頼れる後輩達がいるから私が入る余地はないんだよね。

 

「今日は無理なお願いを聞いてくれて本当に助かる。選手権、応援してる」

「静岡県にも行く予定だから応援しに行けるぜ」

「ありがとう、そっちも部員集め頑張ってくれ。アドバイスにはならないかもしれないが、部活説明会はあまりコアな事を説明しない方が良い。作る楽しさを前面に押し込めば、興味を持った人が来てくれると思う」

「そうなのか……良い事を聞いた」

 

 マサキとも握手を交わした後に、彼らと別れる。彼らの次の目的地は東京らしい。茨城県からならば電車一本で東京に行けるからという理由だそうだ。

 

 彼等の背を見送りながら、指を一つずつ折り曲げたレイ君は、嘆息しながら軽いため息を吐く。

 

「アドウにリョウヤにキョウスケにセカイ、バトルを約束した人たちが多くて困るな」

「私も忘れないでね」

「そうだったな。お前が最初だったな……」

 

 満更でもなさそうに笑みを浮かべたレイ君は夕暮れに染まった空を一度だけ見た後、また店内に脚を運ぶ。私も彼の後を着いて行くように歩くと、不意に前を歩く彼が一つの箱を棚から取り出し私に差し出す。

 

「俺と同じガンプラじゃ、面白みがないだろ?だから今度はこれを作ろう」

「Gーアルケイン?……姫様のガンプラじゃん。私にぴったりだねっ」

「……あ、ああ」

「普通に引かれると困るよ……」

「……でも、結構久しぶりにG-セルフを使ってみたが……これを応用すれば……」

「レイ君、君はジンクスをスーパーロボットにするつもりかい?……前のジンクスでもリアルロボットギリギリなのに……」

「……?」

 

 小粋なジョークを放ちながら、今日が着々と終わっていく。ふと、カウンターにまで運ぼうとしたレイ君に渡されたキットを少し眺め考えに耽る。

 

「アルケイン、か」

 

 MAになるG系のMSだから改修によっては結構私好みなガンプラになりそうだ。もしかしてこれは贈り物という奴か?と、少し乙女的な事を考えてみるが……レイ君にはそういう感情はないのだろう。

 ただ、ガンプラを通しての人と人との触れ合いを楽しんでいるのだろう。彼はそういう男だ。

 

「……あ」

 

 ……そういえば、忘れてたけど、今日レイ君を呼び出したのはあるお願いをする為でもあったんだ。

 

「レイ君」

「どうした?」

「君の後輩のガンプラ作り、私手伝っていい?」

「……いいのか?」

「いいの、いいの。あの子達のガンプラ、興味あるし!」

「そっか、ノリコもコスモも喜ぶ」

 

 ガンダムを知り尽くしたレイ君とロボットオタクな私の力が合わさればとんでもないものが作れそうだ。

 それで大会を驚かして楽しむのも……悪くない。

 

 

 




 プロローグの惨劇を引き起こした功労者の一人、キリハラ・ミサキ。


 ジンクスばかり使っては、あまり戦闘的に面白みがなくなってくるので、今回はG-セルフを使わせました。

 Gセルフなら、オーバーマンの技くらい簡単にできるはず(真顔)
 実際、拳にフォトンエネルギー纏わして殴り飛ばす描写もあったこともあって、劇中のフォトンエネルギーの応用性が凄まじいと感じたので出しました。




 今回の再現機体は、スパロボOGの主人公機二体と風のランスターを登場させていただきました。

 アルトアイゼンをケンプファーにした理由は、

 ケンプファー=闘士
 アルトアイゼン=古い鉄

 というドイツ語で呼ばれている機体同士である事に加え、角が素敵だから、という理由でした。


 風のランスターに関しては……色以外の見た目がすごいそっくりだったからです。
 胸のパーツと良い、翼の形状とか。


 サイバスターも同じ理由ですね。
 変形に関しては、意外と単純な機構だったので再現可能と判断しました。


 今回は閑話のようなものなので、アルトアイゼンとサイバスターは全国大会編では出番はおそらくないです。



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