IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版)   作:ピーナ

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山場の前編です。


第七話 過去の遺物

まあ、なんかいろいろあって、今は行事の一つ学年別トーナメント初日となった。

学年別トーナメントはほとんどの一年生にとって初の公式戦の場となる。今回は何故かタッグマッチになったのだが、人数の都合上と僕の実力の問題で一人で参加する事になった。まあ、パートナーの事を気にしなくていいから良いんだけど。

日程は初日に一回戦全部を消化し二日目で残りの試合を消化する。これが二、三年になるとはっきりと科が分かれて、出場する人が減るから一日で全日程を行えるけど、一年は全員参加なので二日に分けられる。ちなみに二、三年は来週末になる。土曜が二年で日曜が三年だったはず。

僕は唯一の単独出場なので、シードとなっている。だから今日は試合が無い。なので今日は部屋でゆっくり読書をしようと考えている。ちなみに同室の会長さんはお仕事でアリーナへ。なんでも「生徒の実力を把握するのも生徒会長の仕事」なんだとか。

そんな時、ISのプライベートチャンネルに通信が入った。

 

『はい、霧島です』

『霧島、今どこに居る』

 

通信相手は僕の担任の先生。何の用だろ?

 

『僕は今日予定が無いので部屋で明日の為に休んでますけど……何かあったんですか? 先生』

『ああ。ボーデヴィッヒのISが暴走して、それを止めたはずだが、再び暴走を始めてな、上級生や教師部隊が抑えているが、正直戦況も良くないし、残りのエネルギーも心もとない。そこで、お前に時間稼ぎを頼みたい。……やってくれるか?』

『ええ、構いませんよ。移動の時間が惜しいので、アリーナの外でISを展開しますけど、よろしいですか?』

『了解した。アリーナ上空のシールドが解除されているから、そこから入れ。……頼んだぞ』

『了解』

 

通信を終え、僕は窓から飛び立つ。僕の手が届く範囲で出来る事を最期の一瞬までやってやるさ。

 

 

 

「最悪の状況ね……」

 

思わず私はそう呟いた。

学年別トーナメントAブロック一回戦第一試合、つまりはトーナメントのオープニングゲーム。カードは織斑一夏&シャルル・デュノアペアVSラウラ・ボーデヴィッヒ&篠ノ之箒ペア。その試合の最終盤に事件は起こった。織斑・デュノアペアの勝利で終わるかと思われた時ボーデヴィッヒちゃんのISが暴走したのだ。それ自体はすぐ織斑君が倒して一段落と思ったのだが、何故かISは再び暴走し、もはやISと呼べない位禍々しい物に変化した。

エネルギーの少ない織斑君達を一悶着あったけど下がらせて、私は教師陣とその暴走体(仮)に協力して当たった。

正直、アレを形容する言葉は『化け物』がぴったりだと感じた。十機以上のISが同時に挑んでもびくともせず、それで、触手らしきものでの攻撃は一撃でかなりのエネルギーを削る。一機また一機と戦闘継続困難に追い込まれ、今では残っているのは私だけ。それも回避ばかりで攻撃に中々移れない。

そして、疲労からだろう。一瞬集中力が切れてしまって、それが命取りになった。暴走体の攻撃が直撃コース。防御も回避も間に合わない。思わず私は目をつむってしまう。

しかし、衝撃はいつまでたってもやってこない。恐る恐る目を開けると私を庇い、背中で攻撃を受けている霧島君の姿があった。

 

 

 

僕がアリーナに着くと、そこには異形の物体とそれに対する会長さんの姿があった。どうやら、彼女が殿を務めているらしい。

 

(しかし、叢雲。アレも魔法関連、ロストロギア関連の物品かな?)

(恐らくは。ISが限界を迎えると共に暴走するように設定してあったのではと推察します)

(……たちの悪い時限爆弾だな)

 

止まったと思ったら再起動して暴走だろ? たち悪すぎ。精神的な疲労も半端じゃないだろうし。

 

(マスター。それともう一つご報告が)

(何?)

(以前の時、ゴーレムと似たと言いましたが何か分かりました)

(そうなの?)

(ええ。あれはジュエルシードです。恐らくゴーレムと間違えるように反応を誤魔化していたんでしょう。今回は違うようですが)

 

また、懐かしい物を……。しかし、あれは管理局で厳重に封印されているはずだ。って事は自体はより面倒な方向に……。いや、その辺は後で考えよう。

 

(まあ、その辺も後々報告だね。んじゃ行きますか)

 

戦線に参加しようとした瞬間、会長さんに向けて攻撃が行われる。会長さん自身はかなりの実力者のはず(以前『生徒会長はすなわち学園最強の証』と言っていた)なのだが、疲労からだろう、反応が一瞬遅れた。そして、それは戦いの場では命取りになる。……そんな事、僕の目の前でやらせるかよ。

僕はPICを全て切り、重力に任せながら落ちていく、その間も当然、全開でスラスターを噴かせている。そして、攻撃と会長さんの間に入って、僕自身の身を盾にして庇う。よけきれず右のわき腹を背中側から抉られる。ISの絶対防御にバリアジャケットとISスーツを抜いてくるんだから、脅威だ。そこそこ血も出ているが、それは問題じゃない。

 

「き、霧島君……?」

 

目を瞑っていた会長さんが僕に気付く。

 

「会長さんは下がってください。ここは僕が引き受けます」

「でも、血が……」

「気にしないでください。見た目ほど深くはありませんから」

 

それは嘘だ。怪我は見た目通りの深さで放っておけば結構ヤバいと思う。

 

「……分かった、ここは任せるわ。それと、絶対に無事に帰ってきて」

「……分かりました」

 

そう言って、会長さんは戻っていった。

……どうして、僕は会長さんに分かりましたなんて言ってしまったんだろう? 僕は死を望んでいるはずなのに。自分の感情が自分でもよく分からない。

 

(叢雲、怪我はどんな感じ?)

(大き目の血管が傷付いているので少しまずいですね、早いうちの応急手当をお勧めします)

(……治癒魔法を僕は使えないよ?)

 

正確にはあの後、治癒魔法が使えなくなった。理由は不明。レアスキルと精神状態の関連した問題ではないかというのが管理局の医務官の見解だった。

仕方ないか。僕は叢雲をIS戦に対応させた専用刀『瑞雲』を呼び出した。

 

「魔王炎撃波」

 

僕は刀に火を纏わせるとISの絶対防御を叢雲に部分的に解除してもらって、その刀を患部に押し付ける。

 

「ぐああああああっっっ!!!」

 

激痛で声を上げてしまう。意識も持ってかれそうになるのを必死に耐える。体力も持ってかれたけど、これをしないと戦闘中に意識を失う可能性もある。

 

「はあ……はあ……準備完了。余裕も無いし、とっとと決める」

 

僕は一気にトップスピードに乗り、相手に肉薄する。相手もそれを避けるために迎撃するが、僕はそれを掻い潜っていく。

 

(叢雲、封印すべきコアはどこに?)

(スキャン完了。相手の中心部ですね。しかし、ISを取り込んでいるので強固な装甲で守られています。まずはその破壊を)

 

装甲の破壊と封印までか……威力の高い奴を撃ちこみますか。

まずは近付いて、相手に二撃、十字に切り裂く。そして上空に飛ぶ。その間に武器を『彩雲』に変更。魔力封印に対応したバレット、『Yバレット』に切り替えている。

 

「ターゲットロック。撃ち抜かせてもらう」

 

そこから発射された大きな魔力弾が十字に切り裂いた所に吸い込まれていくように命中する。僕の技の一つ、「クライシスレイン」だ。

 

(マスター、封印が不十分です)

(分かった。でも、動きが弱っているし、直接雷神剣ぶち込んで封印するか)

 

再び一気に近付き、露出していたIS部分に刀を突き刺す。と、その瞬間、

 

(マスター、相手に高エネルギー反応! 自爆を狙っています!)

 

とことん性格のひん曲がった奴だな、これの開発者。しかし、封印直前で一番気が抜けてる時だから、かなり有効な手でもある。

 

(くっ、叢雲、周りにバリアを展開。周囲への被害を防げ。僕はこのまま封印をする)

(了解)

 

自爆と封印、どっちが早い? 時間との勝負だ。

 

 




修正前の四話の部分を加筆したら今までの話と同じくらいの分量(3000字前後)で二話分になったので二つに分けました。
今回の話は流れ的には変更点は無いですけど、設定として無人機や暴走体に使われているのがジュエルシードになりました。全てではなく一部のですけど。
修正中に「そういや、スカリエッティってガジェットにジュエルシード使ってたなあ」と思ったので入れてみました。


次回は……序盤のクライマックス。書いてて辛くなりますけど、頑張ります。

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