IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版)   作:ピーナ

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なんとか、前の回で言った通り上げる事が出来ました。


第六話 一人の少年の物語

編入生二人が来て少し経ったある日の休日、時間が出来たから、私は虚ちゃんと本音ちゃんの三人でアリサに会いに行った。霧島君の事を知るために。

 

「待たせたかしら、アリサ?」

 

アリサは話し合う場所にバニングス社を指定した。なので、私達は受付の人に教えてもらった部屋にやって来た。そうしたら既にアリサは待っていた。

 

「そんなに待ってないわ。それでそちらの二人は?」

「私の幼馴染でウチに代々仕えてる家の子よ」

「布仏虚です」

「布仏本音だよ~」

「アリサ・バニングスよ。よろしくね。で、今日は大事な話があるって聞いたんだけど?」

 

こうやってスパッっと何事も進めるのがアリサの良さだ。

 

「……霧島君の事を聞きに来たの」

 

私がそう言うと、途端にアリサの顔が真剣になる。……やっぱり彼にはそれほどの事があるみたいだ。

 

「良いわよ。ただ、興味本位なら、やめた方が良いわ。アイツの背負い込んでる物は軽い気持ちで聞けるようなものじゃないから」

「そんなんじゃないよ~。私もお嬢様もお姉ちゃんも」

「そう……分かったわ。でも、今から話す事は又聞きの部分も一杯あるし、私の主観も入ってる部分もあるから全部正しいってわけじゃないわよ」

 

そう言ってアリサは話を始めた。

 

 

 

「まず、私と八雲が知り合ったのは小学三年の初日、通学のバスでよ。別の幼馴染が八雲の家のお隣さんでその子に紹介されたのが切っ掛け。あの頃はどこにでもいるような普通の男の子だったわ。まあ、ビックリするくらい料理が上手かったり、その上に運動神経抜群で勉強も出来るっていうだったり、かなりハイスペックだったけど」

 

運動神経が良いのは分かるな~。体育の時間でも軒並みかなり高い数字出してるから。女子ばかりだからよりその数字の凄さが分かる。勉強も先生に当てられると普通に答えるているし。でも、料理は想像付かないかな~。でも、上手なら食べてみたいな~きーりんの作るご飯。

 

「ただ、決定的に普通と違った事があるの」

「違った事ですか?」

「ええ。かなりぶっ飛んだ話になるけど、アイツは『魔法』が使えるの」

「「「……えっ⁉」」」

 

驚きでそれしか声が出ない。だって、突然魔法って言われても信じられないよ~。でも、りさりさの真面目な表情を考えると冗談じゃなさそうだ。

 

「まあ……そうなるわよね。でも、事実よ。ちょっとした切っ掛けでそれが使える事が分かって、その技術がある他の世界の事を知ったの。それと共にこの世界が色々な世界が存在する多次元世界だという事もね。八雲が強いのも戦いに慣れているのもこれが理由。詳しくは知らないけど、素質が凄いあってそれを買われて、その多次元世界を股にかけて平和を護る組織に所属しているの」

「ちょっとした切っ掛けって?」

「戦争やら色々な理由で失われて今の技術では作れない危険な超古代の遺産の回収よ。ロストロギアって総称されてるらしいわ。偶然、小三の時にそれに関連する事件に巻き込まれたの」

 

なんか、波瀾万丈だ。私の小学生時代とは比べものにならない位。

 

「どれくらい危険なの?」

「詳しくは聞いてないわ。守秘義務もあるし。まあ、これが切っ掛け。巻き込まれた事件は無事に解決して、私達の共通の幼馴染のお父さんが剣道の基本教えていたから、剣道と魔法の練習以外は普通の生活をしていたの」

 

 

 

「それで、その年の五月の真ん中くらいに八雲は八雲にとって大きな出会いをしたの。アイツの趣味は読書なんだけど、本って案外するじゃない?」

「そうですね、文庫版ならともかくハードカバーなら結構しますね」

 

私が良く霧島さんを見かけるのは学校の図書室ですし、本音やお嬢様も教室や寮の自室で良く本を読んでいる姿を見ているらしいです。それは変わってないんですね。

 

「で、私達の学校は大学付属の私立の小学校だったから、蔵書の多い大学の図書館が学校の近くにあるんだけど、一般的な文芸作品は少ないから、ちょっと遠いけどアイツは市立の図書館に良く行ってて、そこで一人の同い年の女の子に会って、一目惚れ。まあ、初恋ね」

 

初恋とは……なんとも、甘酸っぱいお話ですね。

 

「その子、八神はやてって言うんだけど、その子は重い病気で不治の病とされていたの」

 

いきなり重い話になりました。……しかし、

 

「妙な言い回しね、不治の病とされていたって」

 

お嬢様の言う通りです。普通なら「不治の病だった」で良いはずです。でも、アリサさんは非常に頭の良い方です。それは今までの話の上手さ、説明の上手さでよく分かります。なのでこの言い回しにも意味があるのでしょう。

 

「それは、『この地球では』って事。はやての病の原因もロストロギア。この時点で普通なら諦めるでしょうね」

 

解析できない技術で起こった病なら治し様が無いように思います。

 

「でも、そのロストロギア『闇の書』って呼ばれている物には守護騎士が居て、彼女の治し方を提示したの。その方法は手段を問わずに魔力の収集。そして、偶然、八雲にはそれを実行する能力を持っていた。それも比類のない力が。だから、八雲達はその未来を否定するために動き出したの。魔力の収集の為に魔法生物や管理局の魔導師を攻撃して戦闘能力を奪ってからの収集だから、それは当然罪に問われる事で、その結果にはやてを助けても決して彼女が喜ばないと分かっていても、ね。ちなみに、このころに私ははやてに初めて会ったわね。幼馴染と一緒に図書館に行った時にね」

 

……何処までも不器用な方ですね。そして、一途な方です。

 

 

 

 

「でも、いくら八雲に力があっても、能力が高くても、当時のアイツは小学生。連日連夜学校行って、休まず戦って、心配かけない様にお見舞い行って、そんな休む暇も無い状態で、気力だけで動き続けて、ついに倒れたの。そして、その事件は八雲が倒れている間に全てが終わった。はやての死っていう、八雲の中で最悪の結末で。その結末を八雲は独りで背負い続けてるの。今も。今のアイツにあるのは罪の意識から来る、戦って守るという義務感と、死に場所を探している虚無感だけよ」

 

……想像できない位、彼の背負っている物は大きく重かった。軽い気持ちじゃなかったけど、聞くべきじゃなかったとまで思ってしまう。

それと共に納得いった事もある。

 

「霧島君の誰とも関わらないのは……」

「もう大切な人を失う悲しみを感じたくないからでしょうね。関わらなければ、そんな事もないだろうし」

 

私もそう思う。

それと共に、彼の、あそこまで無謀な戦いの意味も分かった。今の彼にとって自分の命はかけらの価値も無いのだ。だから、一番有効な手段だと思ったら、自分の身を気にせずその手段を使う。

……そんなの、悲しすぎるよ。

 

 

 

「……私は八雲ほどはやてとの付き合いがあった訳じゃないけど、あの子は絶対に八雲を責めてないし、身も心もボロボロのアイツなんて見たくないと思ってるはずよ。でも、私や私の幼馴染達の言葉はアイツには届かないのよ。どんだけ踏み込んでも、アイツがそれを拒んでいるから。今の環境じゃ、これ以上は望めないのよ。だから、ある意味ではIS学園に行くことが切っ掛けでまた歩き出してくれれば良いと思っているわ。今日、三人に話したのもその一環よ。……私達の幼馴染をお願いね」

 

私達じゃ力不足。歯がゆいけど事実だ。私が、すずかが、なのはが、フェイトが、アリシアが、ユーノが、それ以外の色んな人が色々言っても八雲の心には届かなかった。

私は今の立ち止まって過去を見続けて自分で自分を傷付ける今の八雲を見たくない。だから、私が出来る事を何でもやる。信頼できる楯無に護衛を任せたのも、ウチのIS開発の部門の人達にISの勉強を見てもらっているのも、今日三人に話したのも全て今の私が出来ると思う事だからだ。

 

「……私に何かが出来るか分からないけど、協力したいと思うよ。なんていうか、放っておけない感じがするし」

「私もだよ~」

「私もです」

 

三人味方が増えた。待ってなさい、八雲。アンタが沈んでいくのを黙って見過ごせる人間なんてアンタの傍には居ないのよ! だから、戻ってきてよ……。




今へとつながる八雲の過去を語り、知る回でした。
大きな変更点は修正前と違い、布仏姉妹がいる事。ほっとけない彼女達も動きました。

次は……最初の山場ですね。

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