IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版) 作:ピーナ
今年は中々思うように筆が進ま無い時期がずっと続きました。このお話もリハビリとして書きました。
このお話はご都合主義の塊による特別編です。サブタイトルで分かる通り、去年のお話がたたき台になっています。
一人で夜天の魔導書を闇の書にしたナハトヴァールの残滓に向き合っている。コイツと決着を付けるのは僕達じゃないとね。
僕は胸にある待機状態のスノーレインを手に取る。
「さて、始めようか。今日という日に相応しい奇跡を! これが僕の紡いできた絆! 我が前に具現せよ、夜天の騎士たちよ! サモン・フレンズ!」
特大の魔法陣と共に現れたのは五人の人。四人は丁度7年ぶりに再会する。もう一人は初めて会うけど、誰だか分かる。
「久しぶりだね、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ。それと初めまして、管制人格さん」
「主はやてよりリインフォースという名を頂いた。そっちで呼んでくれ、霧島八雲」
「分かったよ。良い名前をはやてから貰ったね、リインフォース。あっ、僕は八雲でお願い」
「分かった」
「それで八雲、私達の相手はアレか?」
シグナムの目線の先には僕達の因縁の相手。
「うん。アレはさ他の誰でもなく僕達で倒さないとね」
「だな。あれは私達でぶっ潰さねえと」
気の早いヴィータは既にグラーフアイゼンを構えている。
「っと、その前にシャマル」
「分かってるわよ。それじゃ、皆の所に行ってくるから後はよろしくね」
そう言ってシャマルはIS学園の海沿いでこっちを見ている皆の回復をしに行ってくれた。シャマル先生の本領はあっちだからな。
「それじゃ、こっちも始めようか。ザフィーラ!」
スノーレインのガントレットモードを呼び出しながらそう言う。
「ああ、行くぞ」
「「鋼の軛!」」
巨大な圧縮魔力のスパイクを開戦の合図代わりにナハトヴァールに打ち込み、動きを止める。
「八雲、着いて来いよ!」
「OK、ヴィータ。スノーレイン、モードチェンジ! ハンマーモード!」
「「カートリッジロード!」」
僕とヴィータの言葉と共にグラーフアイゼンとハンマーモードのスノーレインは巨大化しギガントフォルムになる。
「「轟天爆砕! ギガントシュラーク!」」
「ぶっ潰れやがれぇぇぇぇ!」
大質量の最大出力打撃。シンプルだけど強力な一撃はナハトヴァールを分かりやすく破壊した。しかし、再生速度がかなり速い。この部分だけなら多分、7年前並なんじゃないかな。
「スノーレイン、モードチェンジ、ボーゲンモード。シグナム!」
「ああ。全力で行くぞ、八雲!」
僕達は並んで弓を構え、魔力を溜めていく。攻撃は来るけど、心配はない。皆が止めてくれるから。
……7年の時は長いね。気付いたらシグナムよりも身長が高くなってるよ。
「「翔けよ隼! シュツルム・ファルケン!」」
音速を超える魔力の塊は着弾と共に強力な爆炎と衝撃波を生み、ナハトヴァールを焼き尽くす。しかし、まだ蘇生するし、コアは見えない。大分破壊したと思うけど。
「八雲、私も行こう。ユニゾン・イン!」
リインフォースが僕の傍に来てそう言うと、一体化してしまった。海面を見ると僕はリインフォースと同じ銀髪赤目になってる。……これじゃ、僕が銀髪君じゃん。でも、凄く力を感じる。
『そして、これが主はやての杖と魔導書だ』
そう言って僕の右手には剣十字の杖、左手には夜天の魔導書が現れた。
「とりあえず、動きを完全に封じたいね。リインフォース、何か良いのある?」
『それなら、最適な物がある』
リインフォースがそう言うと魔導書が勝手にページを進め、あるページで止まった。……なるほどね、文字は読めなくても内容が理解できる。あんまり使った事無かったけど、スノーレインの魔法のストレージ機能と同じ感じだ。というより、スノーレインはこれが元になったんだろう。
「『彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け。石化の槍、ミストルティン!』」
詠唱と共に掲げた杖のさらに上に現れた魔法陣を中心に6本、その6本の真ん中に巨大な7本目の光の槍が現れ、発射される。
この技は見た目通りの威力は無い。だけど、『石化の槍』を冠している通り、着弾した部分から石化させていく。見た感じ再生もされていない。これなら!
「ユニゾン・アウト。リインフォース、皆、決めてくるよ」
「任せたぞ、八雲」
「うん。行くよ、スノーレイン。シュベルトモード! 叢雲!」
「Mode Release Over Limit」
オーバーリミッツ使用と共に僕はナハトヴァールと海面の境目に向かい、
「魔神剣・刹牙!」
そこから切り裂き続けながら舞い上がっていく。
一太刀一太刀が圧縮魔力を纏った斬撃だから威力は折り紙付。ただでさえ脆い砂岩になっているナハトヴァールの外部を粉々にしていく。
最後に両方の剣で締めの斬撃を出すと、コアが露出した。
「これで終わりだ! 真神!」
まず、コアに左のスノーレインで切り上げの一撃。それと共に右の叢雲にありったけの魔力を込める。
「煉獄刹!」
右の叢雲の膨大な圧縮魔力を纏った突きでコアと突き刺す。少ししてから、そのコアに亀裂が入って、粉々に砕け散った。魔力反応もない。
「終わったか。……お前も安らかに眠ってくれ」
ナハトヴァールが原因で夜天の魔導書は闇の書になった。だけど、ナハトヴァールが悪いわけじゃない。自分の野望の為にナハトヴァールを生み出し夜天の魔導書を闇の書にしてしまったかつての主が悪い。そいつのせいで、皆は終わらない地獄にいたようなものだし。
「お疲れ様、八雲君」
いつの間にかシャマルが僕の傍に来ていた。
「いやー、久しぶりに魔法を使ったから疲れたよ」
「とりあえず、動かないでね。風よ、癒しの恵みを運んで」
怪我は無いけど、シャマルの癒しの風は疲労回復と魔力補給が出来るから、非常にありがたい。
「無事、決着を付けれたな」
「ありがとね、シグナム。皆も」
僕の周りには7年前に分かれた仲間たち。今日という日が起こした奇跡の再会。……だけど、その時間は長くは続かない。
「……また、お別れだね」
「ああ」
「僕が言うのもなんだけど、はやてを頼んだよ」
その言葉に5人は力強く頷いてくれた。
「八雲も達者でな」
「分かってるよ、ザフィーラ」
「あんまり心配させないでね」
「気を付けるよ、シャマル」
「一度でもお前に会えてよかった」
「僕もだよ、リインフォース」
「次に会う時は手合せを頼む」
「楽しみにしてるよ、シグナム」
「はやての分まで幸せにな」
「違うよヴィータ。僕ははやての守護騎士の皆の分まで幸せになるよ」
「そっか……」
そう言うとヴィータは後ろを向いて、少しだけ、IS学園の方に飛んでいく。
「アリサ! すずか! それに、八雲の事を大切に想ってくれてる奴ら! こいつはさ不器用で無茶しいのバカ野郎だ! だからさ、近くに居れない私達の分まで八雲の事頼むぜ!」
「そんな事、言われなくても分かってるわよ!」
「八雲君の事は私達に任せて!」
アリサとすずかがヴィータの言葉にすぐさま答える。……中々に酷くねえ?
「ヴィータ、ひょっとして僕の事嫌い?」
「ああ、嫌いだね。はやてや私らをいつも心配させてた八雲なんて大嫌いだよ。だから、心配にならないようにアイツらに頼むんじゃねえか」
身から出たさびだった。今までが今までだっただけに言い返せない。
「……っと、そろそろ時間切れか」
五人の周りには白の光の粒子が。……もう時間か。寂しさはあるけど、悲しさは無い。別れても僕達には確かな絆があるから。
「またね、皆!」
「「「「ああ(ええ)!」」」」
「どしたの、リインフォース?」
なぜか、リインフォースだけ反応がなかったから、僕は問いかけた。
「いや、ナハトヴァールの呪いが解けたからな、八雲に渡さないといけないものがある」
「僕に?」
……なんだろ? 皆の力ならスノーレインに宿ってる。絆も僕の心の中にあり続ける。いっぱい貰ってるのにそれ以外にあるの?
「すぐに分かるさ。ではな」
リインフォースのその言葉を最期に皆は光の粒子として空に還っていった。
その空を見上げてると人影が見えた。あれは!
僕は一気に高度を上げて受け止める。受け止めた人は僕の予想通りの人。けど、まずは……
「何狸寝入りしてんの? はやて」
「やっぱ、気付くか~。八雲君に受け止めて欲しかったんよ」
僕の腕の中にいるはやては笑顔を浮かべながらそう答える。
「そっか……。お帰り、はやて」
「ただいま、八雲君」
「で、さっきリインフォースが言ってたナハトヴァ―ルの呪いってのは何なんだ?」
「前の暴走で私が取り込まれて、結果的に消滅した時に私の体は仮死状態で八雲君の持ってた夜天の魔導書に封印されてたんよ。まあ、封印を解く方法が分からなかったから、死んだも同然だったんやけど、多分さっきの戦いに出た空間の残留魔力を使って皆が解除してったんやと思うで」
「そうなんだ」
皆からの最初で最後のプレゼントって訳か。
僕は皆にもう一度チャンスをもらったんだ。ちゃんと気持ちを言葉にしないとね。
「……はやて、これから僕と一緒に歩いてくれますか?」
「そんなん、当たり前やん。あの子達のお願いは私が幸せになってくれる事で、それは八雲君の傍やないと手に入らん物やもん」
「もう、君一人だけを愛する事が出来ないけど、それでもいいのか?」
「ええよ。それに、八雲君は守ると決めた大切な人が多い方が良いと私は思うで」
「なんだよそれ?」
「そのままやよ。八雲君は大切な人が多ければ凄く強くなれると思う。けど、無茶しいやから、同じくらい支えてくれる人も沢山居る方がええと思うよ。まあ、そういう人が居る事に気付けてるから大丈夫やと思うけど」
……無茶しいに自覚がある分否定できないなあ。けど、僕には帰る場所がある。待ってくれている人達がいる。それが分かったからはやての言った通りもっと強くなれると思う。
「沢山の大切な人が居るけれど、今だけは私だけを見て欲しいな」
「……ちょっと待ってて。『アリサ』」
とりあえず、念話をアリサに繋ぐ。
『何?』
『はやてに7年分の幸せを少しでもあげたいんだ』
『その言い方はズルいわよ……。ちゃんと私達にも埋め合わせしなさいよ!』
『ありがとな、アリサ。説明とかよろしく』
それだけ言って、僕ははやてと二人で転移した。
向かった先は海鳴市。何かしたくても、もう夜もそこそこ遅いし、準備も何もしていないから、クリスマスらしい事なんて何も出来ない。
「なんか不思議な感じやなあ。自分の足で立って、八雲君の横でこの街を一緒に歩いてるのが」
叢雲とスノーレインのバリアジャケット機能の応用で着替えた僕たちは街中をのんびり歩いている。
「確かに。……今から何か出来るわけじゃなかったからさ、僕達の生まれ育った街でも見て回ろうかなって思って」
「十分やよ。私は八雲君が傍でいてくれるだけで、十分」
「そっか」
特に目的地もなく歩いていたら、海岸に出た。結構暗くて静かだから、普段なら綺麗な星空が見えるんだろうけど、今日はあいにくの曇り空で、ぼんやり月が見える程度。
「星は見えへんなあ。少し残念」
「まあ、これから先、いくらでも機会が……」
あるさ、と言おうとしたら、空から雪が舞ってきた。確かに冷え込んでいたし、曇り空で予報でも降るかもしれないとは言ってたけど、こんなタイミングよく降るとはねえ。
「ひょっとしたら、あの子らがお祝いしてくれてるんかもね」
「だとしたら、憎い演出するねえ」
こんなの、一生の思い出に残るよ。絶対。……あっ、そうだ。
「はやて」
「ん? 何?」
「メリークリスマス」
「……そういや、言ってなかったね。メリークリスマス」
この後、学園に帰って皆と小さなパーティーを開いた。僕と僕の愛する人達だけの小さいけど、スペシャルなパーティーを。
久し振りなので出来がどうかが分かりませんが、楽しんでいただけたら幸いです。