IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版)   作:ピーナ

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第三話はほとんど新規作成になっています。


第三話 青年の本質

クラス代表決定戦の後、周りの目は少し変わった。「気味が悪い」から「恐怖」に。

それもそうか。常識から考えたら、イギリス人は国家代表候補生。それなりの実力を持っているのだから。でも、僕はそれに圧勝した。自分の理解できない力を恐れるのは人として当たり前の事だ。まあ、僕には関係ない。

それでも、例ののんびりした女の子は相変わらず、僕に話しかけてくる。それに最近は彼女だけではない。

 

「ね~、霧島君」

 

ルームメイトの会長さんも積極的に話しかけてくるようになった。彼女達は一体何を考えて、僕なんかに話しかけるのだろう?

 

 

 

予想のはるか上をいった一年一組のクラス代表決定戦。その後のふたりの男子の評価はさらに両極端になった。一人目の織斑君は「初心者でありながら代表候補生に肉薄し、素質を見せつけた」二人目の霧島君は「強すぎて、怖い」というものだ。その恐怖の感情は戦った、織斑君やオルコットちゃんも持っているらしい。

私は同じ部屋で暮らして、彼が勤勉な性格である事が分かっている。人と関わるのは避けているのでアリーナで訓練はしないけど、部屋で出来る筋トレや、ISの勉強の予習復習、朝早く起きてのランニングなどの姿を見れば、一目瞭然だ。

そんな彼だから、彼の強さにはちゃんとした理由があると思う。その理由を彼は決して言わないけど。

だから、私は彼の強さにそんな感情を持たなかった人もいる。私はそうだし、本音ちゃんもそうだ。更には彼の担任でもある、織斑先生もそうだった。私達の考えは大体同じ。「暗い眼と強さについて知りたい」この一点だ。私と本音ちゃんはそれに合わせて『独りになろうとする霧島君をほっとけない』という気持ちもある。

 

 

ある日の事、私は虚お姉ちゃんと一緒に生徒会関係の荷物を運んでいた。お嬢様も生徒会長だけど、国家代表であり、専用機持ちでもあるから、日を決めてこの日は訓練、この日は仕事と分けている。今日は訓練の日なので居ない。しかし、二人で運ぶには中々骨の折れる量だ。

 

「本音、少し持つ?」

「お姉ちゃんの方が多いし、これ以上負担を掛けられないよ~。それに、私は書類仕事得意じゃなくて、あんまりお手伝い出来ないから、これ位はやるよ~」

 

お姉ちゃんはお嬢様専属のメイドなんだけど、学園でお姉ちゃんがやっている仕事と雰囲気から言うとお嬢様の専属の秘書って感じがする。

話ながら進んでいると私の腕の重みがかなり無くなった。見ると、きーりんがいた。その手には私やお姉ちゃんの手にあった荷物があった。

 

「きーりん?」

「……困ってるようなんで、手伝います」

「ありがとうございます、霧島さん。私は布仏虚。本音の姉です。いつも妹がお世話になっています」

「霧島八雲です。よろしくです、先輩」

 

お姉ちゃんへの自己紹介の感じ、相変わらずだな~。でも、こういう優しい所もあるのを知れただけで今日は十分かな~。

それから、きーりんは荷物を生徒会室に運び込んで、図書室に向かった。

 

「噂みたいな、怖い人ではないわね、彼は」

 

初対面のお姉ちゃんは私達少数の方のイメージを抱いたみたい。

確かに戦いの強さの面で怖いと思うのは分かる。でも、そんなのは彼自身を見ていれば抱かない物だ。強さや力にきーりんの本質は無い。彼の本質はさっきの行動だ。そう言いきれる。

 

「でしょ? 多分、凄く優しいんだよ、本当は」

「……その優しさを隠すような何かが起こってしまったんでしょうね。本音の言葉を借りるなら『何もかもを絶望してしまう』ほど大きな事が」

「だね~。でも、そんな絶望だけじゃもったいないよ。私やお嬢様はだから……」

「ほっとけない、ね。私もそう思うわ。といってもルームメイトのお嬢様やクラスメイトの本音ほど出来る事は少ないけど、出来る事は手伝うわ」

 

お姉ちゃんなら、色々相談できるかな? 私達生徒会の中できーりんの本当の性格に一番近いと思うし。

 

 

 

学校に編入生が来た。……どうでもいいけど、なんで、入学式のタイミングじゃなかったんだろう? 入学一ケ月って交友関係とか固まって入りにくいと思うのだけど。まあ、僕には関係ない事だ。

転入生である中国人は話しかけてきたのは一回だけで、すぐ引き下がってくれた。ありがたい。まあ、その条件のために一回戦う羽目になったけど。アリサ、というより僕を保護したバニングス社への恩返しをするために相手の機体のデータと僕の機体のデータと経験は欲しい所だし。

 

 

 

一年生に編入生が来た、中国の代表候補生、凰鈴音ちゃん(私の中ではりんりん)

りんりんは今までの他の人とは違う手段をとって来た。それは「引き下がる代わりに一回戦う」という条件をきーりんに飲ませた事。

国家代表候補生の事も考えると、データ収集かな~? と思ったけど、雰囲気的に実力が知りたいって感じだし、実際にりんりんがきーりんの事を聞きに来た時に話した感じだと警戒しなくて良さそうだな思う。

 

 

 

私、凰鈴音が二人目の男性操縦者である霧島八雲に勝負を挑んだ切っ掛けは転入初日の朝にある。

前日の夜遅くにIS学園にやって来た私は持っていた軽食で夕食を済ませて、早めに眠った。その反動で翌日は結構朝早くに目が覚めて、何の気も無しに窓から外を見たら、早朝に関わらず黙々と走る霧島の姿を見つけた。

その後、ルームメイトのティナ・ハミルトンやクラスメイト、幼馴染の一夏に彼の事を聞いてみたけど、口々に言うのは『強い』と『怖い』という事だけ。

確かに代表候補生に勝つのだから強いのは分かる。怖いはそれの派生だろうと思う。大体の人はそれで止まってしまっている。私が知りたいのは私が見たものと周りの評価とここまで食い違う彼自身なのだ。

一人色の違う答えをくれたのは、クラスでほぼ唯一彼に積極的に話しかける布仏本音という子。彼女は「きーりんは真面目だし優しいよ~。私とお姉ちゃんが重い荷物を運んでる時に手伝ってくれたし。ただ、それを何かそれ以上の事で隠れてしまってるだけなんだ~。そこまでは付き合いの長くない私には分かんないけどね~」と答えてくれた。

どれが正しいのかは分からない。それを判断する方法の一環として私は彼に勝負を挑む事にした。

 

『試合開始!』

 

相手が射撃型だと分かっているから第三世代兵装の衝撃砲『龍咆』の出し惜しみは無し、一気に行く!

しかし、攻撃は届かない。衝撃砲の見えない砲弾を構えた二丁のエネルギーライフルで相殺された。

 

「まだまだ!」

 

更に連打で放つ。しかし、全て防がれる。

想定外の事が起こった私は動揺して攻撃がどんどん単調になっていったと思う。最終的にそれで攻撃を完全に読まれて生まれた隙を突かれて私は負けた。

……後でこの試合の映像を反省の為に見直して気が付いたんだけど、この時霧島は一歩も動いてはいない。そして龍咆の射線は一直線。発射のタイミングもそれに集中すれば分からなくはないだろうから、後は射線の上に攻撃すれば相殺される。

龍咆は衝撃を飛ばしているから、相殺自体は簡単にできるのは分かる。撃った場所が分かるから迎撃できるのも分かる。でも、それを試合中に実行に移せるかどうかは別問題だ。

当初の予定的には、本音の意見の方が正しい気がした。いくら才能があろうと、あそこまで強くなるにはとんでもない量の訓練が必要だと思う。それは一年で代表候補生になった私が今の場所に至るまでがそうだったから、そう思う。どうして、そこまでの訓練をする必要があったとか気になる事もあるけど、それは聞かれたくない事かもしれないし、たとえそれを聞いたところで私の接し方が変わる訳ではない。それに今すぐ出来るような事でも無い。出来るのなら本音が何とかしているはずだと思うから。

とりあえず今は遠目から注目してるだけかな。もし、何か変わったと思ったらもう一回話しかけたらいいだけだし。

 

 




リメイク前では完全カットだった、VS鈴戦を対戦相手である鈴目線で追加すると共に、少し早い虚との遭遇エピソードを追加しました。
前者はリメイク前に端折った鈴関連の話を独立させるし、書いてしまおうと思ったから。後者は八雲本来のお人好しで優しい部分がまだ残っているって事を書いておく方が良いかなと個人的に思ったからです。
次回はクラス代表決定戦。こちらはほとんどそのままなので明日にでも上げると思います。

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