IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版) 作:ピーナ
外に居た異形の物体―叢雲曰く『ナハトヴァールの残滓』―と開戦して早数時間。入れ代わり立ち代わり戦っている。叢雲の予想通り、地球の武器はあまり効果が無く、私達がメインに立ち回るようにしている。防御面を考えて虚と本音はISを装備して魔法を使っている。だから、バリアジャケットと飛行魔法分の魔力消費は無い。
そのおかげで余裕があるけど、この調子が何時まで続くか……。
「厳しいね、アリサちゃん」
「終わりが分かんないってのがね」
三チームに分けて一時間交代で当たっているけど、いずれは魔力回復か間に合わなくなる。それまでに何とかする手段を考えないといけない。その辺は私達は全く知識がないので叢雲任せなんだけど。
そんな時、
「秘剣・斬水!」
その言葉と共に巨大な水の刃が飛んで行った。他のメンバーはビックリしているけど、私とすずかにとっては頼れる幼馴染の到着に一安心した。
丁度交代の時間だし、戻りながら私達は大和に話しかける。
「遅いわよ、大和」
「仕方ねえだろ、緊急事態で長期戦を考えたら移動に魔力を使えなかったんだもんよ。恭也さんが居たから、車出してもらって急いだんだぜ?」
「なのはちゃんとフェイトちゃんは?」
「二人は先に学園で今後の事情説明してる。ちゃんと打てる手を打っておいたから」
あっさりそういう対応できるのは流石、現場に居る人だなと思う。
「どういう方法?」
「ま、7年前と同じだな。ただ、その準備にどれだけ急いでも5日は掛かる」
「どうして、そんなに掛かるのよ!」
「秘密兵器は搭載されてないんだよ、許可が下りてから搭載だから、時間が掛かるんだ」
……とりあえず、終わりが見えただけ良しとするべきか。
「まあ、なのはやフェイトも居るんだ、何とかして見せるさ」
「凄い自信だね」
「ぶっちゃけると、7年前よりは弱いからな。さっきの手ごたえで分かった。完全消滅は無理でも完全復活させない様に攻撃し続けるなら出来ると思うぜ。……アイツが居たら、確実なんだけどな」
「仕方ないわよ」
「だな。今のアイツの事を考えるとアイツの手を借りる訳には行かねえよ」
僕が目を覚ますと真っ白な空間に居た。……デジャヴュっていうか、半年前に同じような事が有ったねえ。といっても、今回は怪我したわけでもないし。
だけど、僕が忘れようとしていた記憶が思い出された。闇の書の暴走によって皆が居なくなる所。ボロボロの体調で現場に行こうとして倒れた所。
あれのお蔭っていうのは嫌だけど、僕は忘れちゃいけない記憶を思い出せた。
「寝ている訳には行かないなあ……」
「せやね。こんな所でゆっくりしてる場合とちゃうよ」
声の方に向くと、そこにははやてが居た。驚きはあるけど、この前ほどではない。
ただ、彼女の左手の薬指には見覚えのある指輪が。……もしかして、あの言葉聞かれてた? それなら、神様って中々粋でサービス精神旺盛なんだねえ。かなり恥ずかしいけど。
「久しぶりはやて」
「せやねえ。予想以上に早い再会やけど」
それは僕も思う。次に会うのは何十年も後の事だと思ってたもん。
「今回は突発的な事だから許してくれ」
「責める気はあらへんよ。今回のはしゃあないもん」
そう言って貰えると助かる。
「しかし、八雲君も変わったねえ。半年前とは大違いや。恋は人を変えるんやね」
「変わったっていうか、昔に戻ったって感じかな」
「いや、変わったやろ。特に女の子を何人も引っかける所とか」
……そこを突かれると弱いなあ。事実なだけ言い返しようもないし。
「まあ、八雲君位勝手に背負い込んで苦労してしまうような人には沢山の人に支えてもらう方が良いんとちゃう?」
「……いや、凄くあっさり認めるんだな」
僕としては後ろめたさも結構あったんだけど。
「だって言ったやん? 『ちゃんと幸せに暮らしてな』って。今のが八雲君の見つけた幸せなんやったら、私のお願いは叶ってるもん」
そういうもんかねえ……。
「……そういえば、どうして僕はここに?」
「おっ、話題変えた。……まあ、今の事は私も関係している。っていうか、私達が収めないといけない事やし」
「そうだな」
アレを消すのは僕の、僕達の仕事だ。
「やけど、私はなにもできへん。だから、八雲君に直接お願いしよう思うてな」
「僕自身、皆と違うけど夜天の魔導書の騎士だからさ。後始末は僕が付けないとと思ってるよ。だから、行ってくる」
「流石やね。それでこそ、私の大好きなたった一人の男の子やよ」
そう、正面切って言われると結構恥ずかしいなあ。だけど、その期待に応えたい。……我ながら単純だねえ。
「ありがとな。ちゃんと決着付けてくるよ」
「頑張ってな。……そや、一つお願いがあるんやけど」
「何? すぐに出来る事ならやるよ」
こういう事態だからいくらはやての頼みでも流石にね。
「うん、騎士甲冑みたいなって思って」
「そっか、はやては見た事無いんだ。分かったよ」
ってか、騎士甲冑を装備するのはあの時以来だな。気付いたらデザイン元のジューダスの身長超えてるなあ。個人的にはこっちも好きだし、ISの方も何とか出来ないか言ってみるかな。
「私はこっちの方が好きやなあ。でも、その仮面はいらんのとちゃう?」
「確かに、今となっていらないね」
元々仮面は正体を隠すための物だった。こんなので隠せるとは思わないだろうけど、実はこれ、認識を誤魔化す能力があって僕と気付かせないためには必要な物だったのだ。
仮面を外そうと手を掛けようとしたら、先に正面に立ったはやてが僕の仮面を取って、唇を重ねる。……多分、傍から見たら抱きつかれてキスされてるように見えるんだろうなあ。
「これで、八雲君の勝利は決まったね」
「女神のキスだから、ご利益抜群だろうね。じゃ、行ってくる。またな、はやて」
「うん、行ってらっしゃい、八雲君」
「思った以上に皆の消耗激しいな……」
ナハトヴァールの残滓を相手にしながら俺は思わずそう呟いた。
今現在は俺一人で攻撃を加えている。
こんな化け物を相手とした経験など、普通に地球に暮らしているのならありえないし、余計な緊張感がある分、疲労感が大きいのも仕方ない。だから、プロである俺達が矢面に立たないと。気付いたらもう夜だ。とりあえず、もうひと踏ん張り頑張りますかね。
っと、そんな事考えてたら何本も触手伸ばしてきやがった。
「甘いぜ! 秘剣・光牙!」
回転しながらの魔力斬撃で全部斬り捨てる。本来なら突っ込んでく技なんだけどな。
しかし、相手もしつこく攻撃を繰り返す。
「あー、面倒だ! 秘剣・「サンダーブレード!」」
俺が技を繰り出そうとしていると上から雷の剣が降って来た。こんな技を使うのは一人しかいない。
飛んできた方向に目をやると夜空に融け込むような漆黒の騎士甲冑に身を包んだ、俺の幼馴染が立っていた。
「……ったく、登場がかっこよすぎだろ。八雲!」
「主役は遅れてやってくるものさね。大和、休んでていいよ。疲れてるでしょ?」
「いやいや、一人じゃ無理だろ!」
「大丈夫。それに、僕が決着を着けないといけない事だからさ」
……こりゃ、何かやる気の目だな。それに、出来ない事を言うような奴でもないし、任せても良いだろう。
「分かった。だけど、すぐ後ろに居るぜ」
「それは、お好きにどうぞ」
言葉を交わし終わると、俺は少し後ろに、八雲は前に出る。
しかし、一人で何とかできる方法って何だ?
「さて、始めようか。今日という日に相応しい奇跡をさ!」
この後、俺は奇跡を一番近くで目撃する事となる。
という訳で甘めのお話でした。
大和の技について
分かる人は分かると思います。八雲の魔法の元ネタとは会社繋がりですね。
でも、もう出たのが10年近く前ですからねえ……。
さて、クリスマス特別編も次で終わりです。苦い、甘いと来て最後は熱い! ですかね。ではまた1時間後にお会いしましょう!