IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版)   作:ピーナ

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お久しぶりです。今回から二学期編始まります。


第四十話 新学期スタート!

さて、二学期が始まり二日目の今日。

IS学園は三学期制なんだけど、始業式なんてない。春も入学式はあったけど、二、三年は始業式など無く、即授業だったらしい。二学期二日目にして一年生はいきなりISの実習が入っている。しかし、現在僕を含めたIS学園の生徒達は緊急の集会で講堂に集められている。

 

『緊急の集会って一体何なんだろ? 刀奈、何か知ってるか?』

 

こういう時に非常に便利な念話で刀奈に聞く。

 

『私は知らないよ。集会があるのを知ったのも皆と同じタイミングだし』

 

生徒会は一般生徒よりも教員寄りなのでこういう情報も早く来る。生徒会長の刀奈ならなおさらだ。しかし、その刀奈が知らないのなら今回は本当に緊急だったらしい。

 

「今日、皆さんに集まってもらったのは皆さんに新しい教員の方を紹介するためです」

 

壇上で話し出したのは当学園の学園長先生である、轡木由美子先生。用務員のおじさんである轡木十蔵さんの奥さんでもある。

しかし……わざわざ、新任の先生の紹介を緊急でやる必要があるのか? 三日後に文化祭に関しての連絡の生徒集会があるからその時でも良かったと思うんだけど。ありえそうなのは……その先生が全校生徒に発表するべき人だって事位か? 例えば織斑先生みたいな元国家代表みたいな。

 

「では、どうぞ」

 

学園長先生の呼び込みで入って来たのは、女性用のスーツの上に白衣を来た美人。……ってか

 

「はろはろ~、束さんだよ! 今日からここの特任教師になりました! 私が教えるのは課外で行われる、スッペシャルな授業だよ! 向上心のある子はどんどん来てね~。詳しくはHRで各クラスに連絡が行くからチェックしてね! そんじゃ!」

 

それだけ言って去っていく束さん。周りを見回すと皆口を大きく開けている。まあ普通の反応。織斑先生は額を抑えているけど僕が束さんと何度か話した感じの印象だと真面目な織斑先生は昔から振り回されて来たんだろうなあと容易に想像が付く。

 

『……予想外の人物が来たね』

『でも、全校生徒を呼んで紹介するわよね』

『たしかに~』

 

……まあ一つ言えそうなのは、

 

『私達はどうか分かりませんけど、先生方の仕事は増えそうですね』

 

虚の言葉が僕達全員の気持ちを代弁していた。ホント、ご苦労様です。

 

 

 

集会も終わり、僕達一年生は第三アリーナに集合していた。

今日は全時間ぶち抜きでのIS実習。僕と織斑君のせいで代表候補生、専用機持ちが一組に集中したために実習は全クラス合同になっている。

 

「全員集まっているな。今日はまず、専用機持ちの皆に戦ってもらう」

 

僕達の前に居るジャージ姿の織斑先生がそう言った。それと共に空間ディスプレイに組み合わせが発表された。

 

織斑一夏VS霧島八雲

篠ノ之箒VSラウラ・ボーデヴィッヒ

シャルロット・デュノアVS月村すずか

セシリア・オルコットVSアリサ・バニングス

凰鈴音VS更識簪

 

という組み合わせになった。

 

「なお、この組み合わせは夏季休暇の際、アリーナの使用時間の短い順で組んである」

 

へえー、みんな頑張ってるんだねえ。と言っても代表候補生や企業代表が多い現状でこの時間がイコールでこの夏休みの努力量にはならない。例えば僕は夏休みの大半を学校外で過ごしてISの訓練も会社の施設を使っていた。簪も今の専用機が完成するまでの時間が大半だろうしアリサやすずかは学校よりもウチの研究所の方が多いと思う。国外の代表候補生は本国での訓練時間もあるはずだ。ボーデヴィッヒさんなんかは軍人さんだから本国での訓練時間の方が多そうだし。

……そう考えると織斑君と篠ノ之さんの時間って短いよね。まあ、他の皆の数字が桁外れな可能性もあるから一概には言えないだろうけど。

 

「では、織斑と霧島は用意しろ」

 

さてと、どうやって戦いますかねえ……。

 

 

 

私達は八雲君と織斑君の模擬戦を見ている。と言ってもまだ始まっていないんだけど。

 

「解説はお願いね、簪」

 

横に居るアリサがそう言う。八雲君のISの戦い方は同じタイプの機体を使う私にとってかなり参考になるし、理詰めの戦い方も私に合っている。それの一つ一つを理解して自分の戦い方に取り入れて行けばまだまだ実力を伸ばせると思う。解説は自分の考えを纏めるプロセスに役立ちそうだから問題無いかな。

 

「うん、分かった。だけど後で八雲君にちゃんと確かめる方が良いよ。あくまで私ならこう考えるってのだからね」

「でも、二人分の考えを聞けるならお得だよね」

 

アリサの横に居るすずかがそう言う。ちなみに私のもう片方は本音。

 

『試合開始!』

 

山田先生の合図で模擬戦の火蓋が切って落とされた。

先に仕掛けたのは八雲君。Fバレットで牽制する。織斑君は二次移行で射撃武器が付いたと言えど、本領は接近戦。寄らせなければ実力の一割も発揮できない。セオリー通りの攻め方だ。

 

「こっちだって!」

 

織斑君も射撃武器で応戦。

 

「織斑君のあれは悪手だね」

「どうして~?」

「織斑の本領ってどう考えても接近戦でしょ? 八雲の射撃戦に付き合うより距離を詰める方がマシじゃない」

 

概ねアリサの言う通りだと思う。織斑君の射撃適性とあの射撃武器を鑑みると、至近距離での意表を突く使い方位だと思う。シューティングゲームなんかでのショットガンの立ち位置だね。オルコットさん辺りならあの武器を扱いこなせると思うけど。

後、織斑君の熱くなりやすいっていう性格も災いしているかな。

アリーナ内の戦いはお互いの射撃が当たらず膠着模様。お互い、高機動機なので回避能力が高いから仕方ないか。……だけど、

 

「八雲君の射撃、少し荒くない?」

 

すずかが私も気になっていた点を口にする。

 

「言われてみればそうかも。簪はどう思う?」

「私もそう思う。それに、Fバレットの連射速度と弾速が少し遅い」

 

Fバレットの全力から考えると見た感じ今は7割程度と行った所。全力で攻撃をしないという事はこの射撃は織斑君を確実に仕留めるための布石だと思う。……八雲君は何を狙っているの?

マルチタスクを使って気になる所を片っ端から考えていく。こういう時に並列で考えるのは便利だ。

一つは出だし。基本的に八雲君はこういう模擬戦の時は相手に合わせた動きをするために最初は様子を見るんだけど、今日はいきなり仕掛けた。これは慎重な立ち上がりの多い八雲君からするとかなり珍しい。結構な数見て来て十分織斑君の戦いを知っているからだとは思うけど、ひょっとしたら何か意図があるのかもしれない。

それと本領を発揮しない射撃。なぜ、Fバレットだけなのか。全力を出したりNバレットも混ぜればさらに避けにくいし、そもそも八雲君の勘と洞察力ならたとえ7割程度でも当てる事は出来るはずだ。

……一つ可能性が思い浮かんだ。これが八雲君の狙いとするのなら、

 

「アリサ、すずか」

「どうしたの、簪ちゃん」

「もうすぐこの試合終わるよ。八雲君の勝ちで」

「「えっ⁉」」

 

二人がそう言ったタイミングで織斑君は弾切れになったらしく、雪片に装備を変えて瞬時加速。一気にリズムを切り替えた。零落白夜も発動している。

次の瞬間、

 

『白式、シールドエネルギーエンプティ。勝者、霧島八雲』

 

とアナウンスが流れた。恐らく、ほぼ全員がどのように決着を着いたのか気付いていないだろう。当の織斑君も。アリーナはざわついてるし、織斑君は目を白黒させているから。私の予想通りだった。

 

「簪、どういう事よ!」

「勝ち方自体は簡単だよ。織斑君が突っ込んできたところに突っ込んで切っただけ。しかも、気付かれない様に一瞬で武器を変えてる」

 

その必要があったかは微妙だけど、手の内を隠すって意味合いなのだと思う。

 

「じゃあ、今までの射撃の意味は?」

「私が思う意味は二つ。1つは射撃武器分のエネルギーを使わせて確実に一撃で決めるため。もう一つは織斑君の心理を誘導するため」

「前者はなんとなくだけど分かるよ~。射撃戦に持ち込んで無駄にエネルギーを使わせようって事でしょ~?」

「そう。だから、珍しく一番最初から攻撃を仕掛けたんだと思うよ」

 

織斑君側からすればエネルギーに余裕があったのと、この前の一件で中々寄れなかったから様子見もあったんじゃないかと思う。それが最初の射撃戦。

 

「じゃあ、心理誘導って言うのは?」

「例えば、少し前にボロボロに、3対1で負けた相手と1対1でなおかつ自分の得意じゃない分野で五分五分に持ち込めてたとしたら、どう思う?」

 

これは例えでもなんでもないね。そのままさっきの状況だ。

 

「自分の実力が伸びたって思うんじゃないかしら」

「私も同じかな」

「これが織斑君の心境。少し『自信』が出て来たと共に少し『慢心』も出て来た。この二つは紙一重だから。だけど、射撃武器が打ち止めで『焦り』がプラスされた。『決めなきゃいけない! 今、自分は攻撃を避けられている、流れに乗れているから行ける! 一撃で決める!』みたいにね」

 

あくまで想像だけど、大体合ってると思う。

確かに織斑君は流れに乗れていたとは観ていて感じた。けど、それはあくまで自分の流れであって、この試合そのものの流れは膠着していた。いや、八雲君が膠着状態を意図的に作り上げた事を考えると試合の流れは八雲君に有ったのかもしれない。八雲君はその自分の作った流れに織斑君を乗せれば良いだけ。勝機は勝手に来るし、それを逃すほど八雲君は甘くない。

 

「つまり、八雲君は織斑君に自分の攻撃の事しか考えさせないようにした。織斑君からしたら最速で最高の攻撃かもしれないけど、八雲君からしたら予想通りでしかなかった。後はタイミングを合わせて切り落とせばカウンターは成立だよ」

 

八雲君の射撃の精度が抜群に高いのは今までの模擬戦やら実習で周知の事実。互角なのは狙撃型を使っているオルコットさん位。オルコットさんはそれが『最大の武器』なら、八雲君のは『手札の一つ』。今回の場合、八雲君はその精度の高さを『当たらないギリギリの距離を狙う』という事に使って逆手に取ったという訳だ。織斑君からしたらその精密な射撃を避けられていると思っていただろう。だけど、ここで一番特筆すべき点は八雲君が『決着から逆算して始めから戦っていた事』だと私は思う。織斑君が読みやすいっていうのを入れてもそんな真似は私には出来ない。

今回の一戦はISの技術うんぬんを抜きにして『戦い』という物の経験値の差が如実に出た。恐らく、この結果を見通せていた人は誰もいないと思う。途中何処かのタイミングで八雲君の考えを見抜けたのも私を含めて何人居るか……。

 

「八雲君からしたら、想定通りに行って最低限の労力で倒したって事だもんね」

「被弾ゼロ、彩雲は個別のエネルギーだからSEの消費も移動だけ。……無茶苦茶ね」

 

だけど、それが分野は違えど魔法戦において超一流の八雲君の実力の一端。長い間最前線で戦い続けてきた経験の賜物。でもこの試合で私に必要な物が分かった。相手の2手3手先を読み切る力と、試合を牛耳れる戦略、戦術の確立。だけど、それをするには足りない物がある。経験だ。私自身の経験、紫雲や野分との経験、様々な物が足りていない。でも、それはこれから積んでいけばいい物。まずは目の前の物を頑張ろう。

 




急展開! 篠ノ之束、教師になる。

本作の束さんは宇宙を夢見る天才科学者の要素が強く、フリーダムな行動を見せますが、かなり白いです。
ISを世間に発表した理由も「自分とは違う視点から見る事でISをより高い完成度にする為」という目的です。なので、自分と同じ夢を持つ研究者、面白い発想を持っている技術者と交友関係を持っています。興味対象が広くなっている感じですね。


VS一夏戦は恐らく最も一夏をエネルギー消費を少なくして倒す方法「突っ込んできた所をカウンター」をやってみました。瞬時加速さえ読めれば誰でも出来ます。


次回はこの模擬戦の続き……ではなく、クリスマス用に書いているこの作品の最終回と予定している物を上げようと思います。このIFルートの一応の決着点ですね。
投稿は24日の夕方~夜を予定しています。

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