IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版)   作:ピーナ

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お久しぶりです。ようやく夏休み編の最終話です。


第三十九話 愛の響

さて、いよいよ夏休みも最終日という事で僕は恋人達と総勢七人で出掛けている。と言ってもデートなんていう色っぽい物じゃない。やって来たのはバニングス社直轄の研究所の地下試験エリア。ここでやる事は……

 

「1対6の魔法での模擬戦ねえ。なんでまた?」

「腕試しよ、腕試し」

「……どこまで出来るかやってみたい」

「って、この姉妹が凄いやる気だったから、無理言って押さえてもらったのよ」

 

まあ、国家代表の刀奈と姉を目指す簪の腕を上げたい気持ちは理解できる。

 

「じゃあ、別に二人だけで良かったんじゃない?」

「魔法は私達が望んだものだからね。現状どこまで出来るかを試したいんだよ」

「なるほどねえ……。了解。それじゃあ、全力で行かせてもらうよ」

 

僕としては愛する人達と戦うのは嫌なんだけど、彼女達の意見も尊重したい。色々考えて非殺傷設定だから、全力で戦って終わってから全力で皆を治せばいいかと自己完結した。

 

 

 

私達は今八雲に対している訳だけど、私達自身八雲の魔法戦の実力はなのはとフェイト、大和から聞いた事でしか知らない。八雲も私達の魔法の全容を知らないから情報量的には互角だけど、超一流の魔導師三人をして「魔法戦全般に置いて霧島八雲は次元世界最強」と言わせるほどだから、圧倒的に不利な事だけは間違いない。

しかも、私達六人だとバランスが良いとは言い辛い。前衛が刀奈と私で、私は前衛と中衛をこなせる機動型だから、中後衛の多いこのメンバーの前衛に求められる『後ろに通さない』という仕事を務めるのは少し難しいと思う。幸い相手は一人だからまだ何とかなりそうだけど。

 

「さて……戦闘中の指示は全部簪ちゃんに任せるわ」

「そうだね。それが良いと思うよ」

「頼んだわよ、簪」

 

私を含む、前中衛組がそう言う。

 

「えッ? わ、私⁉」

 

指名を受けた簪は驚いている様子。だけど、簪以外の皆からしたら納得の人選なのだ。

まず、基本的に戦闘経験の浅い、私、すずか、本音、虚の四人は論外で刀奈と簪の二人になるんだけど、ポジション的に八雲と直接対峙しないといけない刀奈にそんな負担を掛ける事は出来ない。それに刀奈自身が「簪ちゃんは自己評価が低いだけ。ポテンシャル的には私に匹敵するわよ。戦略眼や咄嗟の判断力は上かもね。最近は皆のお蔭で自信も付いてきたから、近い将来国家代表になるわよ、絶対」とシスコンを差し引くとしてもべた褒めだったし。

 

「だって~、のはちゃん達言ってたよ? CGは司令塔ポジションだって」

「それに一番マルチタスクを使いこなせるのは簪さんですから」

 

後衛二人が追撃を掛ける。ちなみに本音の言ってる『のはちゃん』はなのはの事。フェイトは『ふーちゃん』、アリシアは『あーちゃん』と呼んでいる。……会ってないユーノや大和を何て呼ぶか少し気になるわねえ。

 

「……分かった、やってみる。それで作戦なんだけど……」

 

ここから簡単に作戦の根幹を打ち合わせをしていくけど……刀奈の言ってた戦略眼良さってのがよく分かるわ。皆の魔法の特徴を捉えつつ、長所を生かせる物だと思った。

これで、八雲に一泡吹かせてやるわ!

 

 

 

「僕は準備万端だけど、そっちは?」

「いつでも良いよ」

 

お姉ちゃんが代表して答えた。

 

「了解。叢雲、合図をお願い」

 

八雲君がそう言うと、私達と八雲君の間に大きく『READY』の文字。数秒後、『GO!』に表記が変わる。それと共に、

 

「「「はああああ!!!」」」

 

正面でぶつかり合う、八雲君とお姉ちゃんとアリサ。

お姉ちゃんがランス、アリサが連結刃刀、八雲君が二刀流。

国家代表であり、生身でもかなり強いお姉ちゃんの槍捌きの凄さは私が良く知っている。そして経験が浅いとは思えないほど、アリサの剣筋も鋭い。しかし、その二人の攻撃を凌ぎ、反撃し、押している八雲君。多分、二人は『次元世界最強』身に染みて感じているだろう。

これは当たり前の事なんだけど、八雲君はIS戦で本気を出せない。『出さない』のではなく、『出せない』。八雲君の本気は膨大な経験値、豊富な魔法、自身の磨き上げた剣技、これらを組み合わせた物だと思う。IS戦ではその前提の一つ、豊富な魔法が使えない。それっぽい事が出来ても、それは本気じゃない。まあ、今の八雲君はお姉ちゃん以外には+剣技も封印していて圧勝できるんだけど。……二学期からがっつり八雲君とお姉ちゃんに訓練してもらおう。

 

「すずか、行くよ! アクセルシューター」

「うん! フリーズバレット」

「「シュート!」」

 

青みがかった白色の誘導弾と深い青色の直射弾の攻撃が八雲君を襲う。

八雲君は咄嗟にそれらを防ぐんだけど、シールドはあっさり壊される。基本的に防御魔法は使用した魔力に比例して硬くなる。八雲君の場合魔力量が桁違いに多いから、彼の中ではそこまで使っていなくても結構硬い。本来なら私達のシューター数発で壊れるものじゃない。なら何故壊れたのかと言うと、

 

「くそっ、すずかの方、氷結かよ⁉」

 

八雲君の吐き捨てた通り、すずかには魔力変換資質『氷結』を持っている。魔力変換資質って言うのは術者が使った魔法に属性を付与する能力で氷結以外に、アリサの持つ『炎熱』、フェイトの持つ『電気』の三種類がある。炎熱と電撃は割といるらしいけど、氷結はかなりレアらしい。

さっきのは私の誘導弾で八雲君の回避エリアを限定的にしつつ氷結で八雲君のシールドを凍らせて脆くしてから私のシューターで砕くという方法だ。私のすずかのコンビVSなのはとの訓練の時、強固ななのはの防御を打ち破るために即興でしたのを今回も使った。これで、八雲君はすずかの射撃にも気を取らないといけない。だから、多分……

 

「こうなったら!」

 

八雲君は今までの防御を重視した物ではなく、機動力を生かした回避型にシフト。お姉ちゃんとアリサに抑えられてシューターに狙い撃たれるのを嫌がったんだろう。ここまでは予想通り。

最低限の防御と回避でお姉ちゃんとアリサ、さらには中衛に居る私やすずかにまで攻撃してくる。後衛にまで行かないのは多分、囲まれる状況、特に、私とすずかの射撃に背中から撃たれる状況を作りたくないからだと思う。

こっちに大きなダメージは無いけど、さっき以上にダメージが与えられない。今の戦闘スタイルはIS戦の時に近いからある意味見慣れた物。だから、これも想像は出来た。

シューターで弾幕を張りながら次の作戦に動くタイミングを計っていると、ふと、体が軽くなる。

 

『かんちゃん、支援魔法の準備終わったよ~』

『作戦通り動きますね』

『了解。聞いてたよね、アリサ』

『ええ、もちろん』

 

私が立てた作戦の始動のキーになるのはアリサ。

 

「魅力的な女の子達から逃げるなんてどうなの?」

「確かに皆は可愛いし、バリアジャケットも似合ってるけど、それはそれ、これはこれ!」

「つれないわねえ。それなら捕まえるわ! フレイムアイズ!」

「なあ⁉」

 

アリサのデバイス、フレイムアイズは連結刃刀。つまり、剣の役割と鞭の役割が出来る。この中で唯一八雲君のスピードに付いて行けるアリサに八雲君の動きを止める事を頼んだのだ。アリサは私の期待通り、伸ばしたフレイムアイズで八雲君の動きをからめとり一時的に止めた。

 

「虚さん!」

「お任せを。チェーンバインド!」

 

動きを止めた八雲君を虚さんのバインドでガチガチに固める。……固定→砲撃は若干トラウマだよ。なのはのせいで。

 

「うぐぐ……」

「無理やり引き裂こうとしています! 次を急いで!」

「お姉ちゃん! アリサ!」

「一気に行くわ! この一撃に全てを賭ける! 蒼流!」

「燃やし尽くしてやる! 炎覇!」

「「水月槍!(鳳翼翔!)」」

 

お姉ちゃんが投擲した水で作られた巨大な蒼流旋と、アリサの剣から放たれた炎の鳥が八雲君に同時に着弾し前衛二人の大技が炸裂。だけど、ここで油断をしちゃいけない。

 

「行っくよ~! 無垢なる光と風が相手を包む!」

「私も行きます! 漆黒の鎖に抗って見せなさい!」

「「イノセント・シャイン!(ダークネス・バインド!」」

 

身動きの取れない八雲君を中心に光の風と闇の鎖の巨大魔力が直撃。後衛二人の強力魔法だ。……やり過ぎな気もするけど、更に追撃をかける

 

「最後は私達! 地、水、火、風、四つの力を一つに!」

「冷気に抱かれて終焉を迎えよ!」

「「エンシェントカタストロフィ!(インブレイスエンド!)」」

 

黄色、青、赤、緑の球体の中心に八雲君を据え、その上から巨大な氷の塊、その氷の塊が落ちてくると共に、四つの球体から魔力が放たれ大爆発を起こす。私達の全力六連撃を八雲君にぶつけたけど……

 

「皆、強すぎでしょ……」

 

八雲君はまだ落ちてなかった。「強すぎ」って言うけど、私達の持ち技の中でトップクラスの技を6発ぶつけても倒せない八雲君に言われたくないよ。

 

「皆奥の手行くよ!」

『『『『『『Mode Release Over Limit』』』』』』

 

 

 

『『『『『『Mode Release Over Limit』』』』』』

 

……えっ、あれで本気じゃなかったの? しかもオーバーリミッツって。僕、生きてれるかなあ。

 

「「「「「「私達の魔法の源! 私達の想い! 響け! これが私達のラヴ・ビート!」」」」」」

 

僕を中心に正六角形に居る皆を中心にピンク色の魔力の奔流が流れ出す。

なるほど、なのは達の言ってた「愛の力」ってのはこういう事ね。……ホント、愛されてるねえ。でも、だからこそここで落ちるわけには行かないよ。まあ、ただの意地なんだけど。

 

「叢雲」

『Mode Release Over Limit』

「本気には本気でお相手するよ! 天光満ところに我はあり、黄泉の門開くところに汝あり、出でよ神の雷! これが僕の全力全開! インディグネイション!」

 

僕を中心に降り注ぐ雷。威力だけならこの魔法を超える物もいくつかあるけど、僕が考える僕のとっておき、全力全開はやっぱりこれだと思う。

巻きおこった砂煙が晴れると皆は地面に落ちていた。

 

『試合終了』

「皆、大丈夫?」

 

地面に立ってから皆に聞く。怪我無いと良いけど。

 

「「「「「「大丈夫ー……」」」」」」

 

一応意識はあるみたいだけど、立ち上がれないらしい。まあ、こうなるまでしたのは僕だし、ちゃんと責任取らないとね。

 

「とりあえず、万物に宿りし生命の息吹を此処に。リザレクション!」

 

全力の回復魔法で皆の体力を回復させる。オーバーリミッツ使ったけど、僕の魔力自体はそんなに使ってないからね。結果的に余力はあった。

僕の最大の回復魔法の効果は抜群で、皆は立ち上がって動けるくらいまで回復した。正確に言うとすずかだけまだ起き上がってない。打ちどころでも悪かったかな?

僕はすずかの傍に駆け寄って話しかける。

 

「大丈夫?」

「体の方は大丈夫だよ。だけど、腰抜けちゃった。だから、運んでほしいな。お姫様抱っこで」

 

まあ、汗かいたままだと風邪引くかもしれないしなあ。明日から学校だし、それは不味いよな。

 

「はいよ」

 

僕はすずかを抱き上げる。やっぱり、女の子の体は柔らかい。皆、ISに乗ったり、魔法を使ったりでそこそこ体を鍛えているのに、それが失われないから不思議だよ。

 

「「「「「ずーるーいー!」」」」」

 

五人にこう言われちゃったから、この後一人ずつお姫様抱っこでアリーナのピットに運んだ。皆の体の感触も満喫できたし、役得役得。

この後、夏休み最後だからみんなでカラオケに行った。皆の歌を楽しんだんだけど、全員とデュエットしたから僕だけ歌った量が多かった。今の所喉が痛いとかは無いけど明日に影響でないと良いなあ。




ここまで来るのに半年掛かりました。

次回のお話は夏休み明けすぐの実習としていくつかのバトルを何話かに分けてお送りします。

その前に設定集を上げる予定です。


カラオケでそれぞれが何を歌ったかは皆さんにお任せします。

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