IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版)   作:ピーナ

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誰が来るんでしょうねえ……(棒)


第三十八話 パパラッチ襲来!

IS学園の夏休みも後三日。今日は何もせずのんびりしようと決めている。朝の内にパパッと二学期の予習を済ませて今はベットの上でゴロゴロしている。反省文? そんなものはデートの前に終わらせたに決まってるじゃん。ちなみに僕の左腕は本音が、右腕はすずかが腕枕にしてる。結構腕に筋肉ついているから硬いと思うんだけどねえ。皆こうやってしたがるんだけど、皆がたまにやってくれる膝枕とは違って寝難いと思う。ちなみに他の皆はと言うと虚はこの前の一件のISの整備の手伝いに、アリサ、刀奈、簪は三人でISの訓練に行った。

そんな事を考えていると部屋のドアがノックされた。

 

「んもー、せっかくはっちーとのラブラブタイムだったのに~」

「仕方ないよ、本音ちゃん。お客さんは私達が何してるか知らないんだから」

 

まあ、すずかの言う通りなんだけど、本音の言いたい事も分かる。僕だってノックした人は無粋だなと思ってるから。

 

「しかし、誰だろうな? 二人は心当たりある?」

「私は無いよ」

「そーいえば、この前のかんちゃんの専用機テストの時にかおるん先輩が来るって言ってた気がする~」

 

なるほど、黛先輩ね。って事は僕がIS学園に戻って来た時に言ってた取材って事だな。

 

「ですが、皆さん。部屋の前には四人の反応があります」

 

そう言うのはこの部屋の防犯システムさん事、僕の相棒、叢雲。黛先輩は確定として後のメンバーは誰なんだ?

 

「あー、私はなんとなく察しが付いたよ~」

「私も。それじゃ、私達が出よっか」

「そだね~」

 

そう言って二人は起き上がって入口の扉の方に向かった。

ちょっとしてから、

 

「おっ邪魔しまーす!」

 

と言って黛先輩は突入してきた。その後にすずかと本音、更にその後ろに凰さんとデュノアさんとボーデヴィッヒさんがやって来た。……なんで?

 

「はっちー、お茶とお菓子の用意をお願ーい」

「はいよ」

 

本音の言うお菓子と言うのは、僕がお昼を食べた後に作ったオレンジタルト。……なんか分かんないけど、横で食べてたアリサの顔を見てたら思いついたから、食堂の人に材料を譲ってもらって作ってみた。ちなみに二つ作って一つは食堂の皆さんにおすそ分けをした。

お茶は、虚セレクトの紅茶。淹れ方も虚と桃子さんに教えてもらったから、それなりに自信がある。個人的には紅茶よりはコーヒーや緑茶の方が好きだけど、皆でお菓子を食べる時に紅茶も飲むようになっていった。これが簪の言ってた『私達色に染める』って事なのかも。

 

「たっだいまー!」

 

刀奈の声が聞こえたって事は三人帰って来たって事か。

 

「あら、お客さんが沢山いらっしゃいますね」

 

虚も一緒に帰って来たのね。て事は僕等7人分+お客さん4人で11人分か。12等分で一切れ余るなあ。どうするかは後で考えるかあ。

 

「八雲さん、お手伝いに着ました」

「ありがとうな、虚。それじゃあ、皆の分の紅茶を頼むよ」

「お任せください」

 

そう言って虚は流れるような動きで紅茶を用意していく。見慣れた物のはずなんだけど、こういう所作一つ一つが綺麗なんだよなあ。

 

「八雲さん、今日のお菓子はオレンジのタルトですか?」

「うん。自分でもなんで思いついたかよく分かんないんだけど、アリサを見てたら思いついたんだ。タルトの作り方とかは翠屋で教えてもらってたから、中のクリームとかをアレンジして作ってみたんだよ」

「分からなくもない気がします。なんとなくですけど、アリサさんはさっぱりした柑橘系のイメージですね」

 

そういうイメージから来たのかな? 

虚と話しながらも僕達は準備を済ませ、紅茶とタルトを皆の所に持っていく。元々の住人が多いから食器類やお盆なんかも豊富。普通の部屋ならてんやわんやになってるだろうな。

タルトは虚に任せて紅茶は僕が運ぶ。

 

「お茶とお菓子持って来たよ」

「おおー待ってました!」

 

そう言いながら本音は普段からは想像できない素早い動きで並べていく。こういう時と整備の時に見せるので見慣れた僕達や簪の専用機のテストの時に見せたであろう黛先輩は驚かないけど、普段を良く見ている、凰さん達三人はとても驚いている。

 

「準備かんりょー! いっただっきまーす」

 

準備をし終わって早速食べ出す本音。それに釣られるように他の皆も食べ始める。僕も食べてみるか。……うん、中々の出来じゃないかな。今度、翠屋で作ってみて桃子さんに判定してもらおう。

 

「うん、美味しいね! たっちゃんが旦那自慢をしたくなるのも分かるよ」

 

そんな感想を言う黛先輩。……ちょっと気になる事を言われた気がする。

 

「薫子先輩、なんですかその旦那自慢って」

 

僕と同じところが気になったらしい簪が黛先輩に尋ねる。

 

「別名、飯テロってウチのクラスの皆が呼んでいる、たっちゃんが霧島君や本音ちゃん、虚先輩の作った物の感想をいう事だよ」

 

この関係になってから朝と夜は基本的にここで作って食べている。お昼はお弁当の時もあるし、食堂で食べる時もあるって感じ。

 

「まあ、分からなくはないわね」

「三人の料理美味しいもんね」

「私達も手伝うけど、手際とかが違う」

 

うーん、皆手際も良いし、料理も上手なんだけどなあ。正直、僕が料理が上手い最大の理由って、一人の時間が多すぎた事が理由なんだよね。その時間を使って色々作ってたらレパートリーが増えて、料理の技術も上がってっただけだし。

 

「霧島って料理できるの?」

「まあ、人並みには」

「人並みの人がカレールーを一からは作ったり、昆布や鰹の出汁を一からはとらないよ~」

「それに、思いつきでこんなに美味しいタルトを作れません」

 

ある程度の土台があって、それを少しアレンジしているレベルだから、そこまでじゃないと思うんだけどなあ。

 

「……って、ちょっと待って! このタルト霧島君が作ったの⁉」

 

驚きの声を上げたのはデュノアさん。黛先輩と凰さんは目を丸くしている。

 

「そうだよ。オレンジは初めて使ったけど、僕的には上手く行ったと思うよ」

 

僕の言葉を聞いてへこむ、黛先輩と凰さんとデュノアさん。……なんで?

 

「なんで、女子も裸足で逃げ出すぐらい女子力が高いのよ~!」

 

そう叫ぶ凰さん。へこんでいた二人も頷いているので同じ理由らしい。まあ、そもそも僕には女子力なるものの定義がさっぱり分かってないんだけどね。

 

「りんりん、こんな事でへこんでいたら駄目だよ~」

「そうそう、コイツはそこいらのお母さんより家事が出来るから」

「……世間一般に女子力とされる事は大概できる」

「ほうほう、それはどれくらいだい?」

 

興味津々に聞く黛先輩。

 

「そうねえ……まず料理が凄く上手ね。多分、今ここに居る子達の国の料理は余裕よ」

「お菓子作りも得意ですね。和洋問わず」

「綺麗好きで掃除も良くしてるわね」

「手先が器用だから、裁縫なんかも楽勝だよ」

「最近、編み物してる」

「それでもって、それの一つ一つの手際が抜群なんだよ~」

「おおう……最初の三つまでは予想通りだったけど、後の二つは予想外だあ。なんで、裁縫に編み物?」

「裁縫は必要に駆られて、編み物は節約です」

 

裁縫をしてみた切っ掛けは仕事中にワイシャツの腕の所を引っかけて破った時の事だった。暑い時期ならともかく、寒い時期ならその上に何かを着ている事ばかりだから直せばいいと思ってしたのが切っ掛けだった。

編み物の方はマフラーやらセーターが案外するのでそれなら自分で作るかと思ったから。……それと、クリスマスプレゼントや冬生まれが多いから誕生日プレゼントも作れるなあっていうのもある。

 

「ふむふむ、『自分好みのコスプレを着せるため』と……」

「ちょっと待て!」

 

なんてねつ造しやがるんだ、この人は!

 

「コスプレ衣装買うのにお金がかかるからじゃないの?」

「違います! 内側に着る物が破れた時に直すためです!」

「編み物はボディーラインの出るセーターを贈って冬でも皆のナイスバディを拝むためじゃないの?」

「そんな下心満載じゃありません! 買うより作る方が安いと思ったからです! プレゼントを作って贈るかもしれませんけど、そんな下心ではなくて真心込めてです!」

「ふむ、良い事聞けたねえ」

 

……嵌められた。コミュニケーションを一時期断ってた僕に黛先輩の相手は無理だ。ここは……逃げる!

 

「とりあえず、夕飯作ってきます!」

 

 

 

夕飯を作る大義名分を振りかざし八雲君は逃げ出した。まあ、仕方ないわね。あんまり聞かれたくない事も聞かれそうだったし。

 

「逃がしたか~。霧島君のパーソナルの部分も大事なんだけど、IS関係の事も聞きたかったんだよね」

「そりゃまたどうして?」

「だってさたっちゃん、いくら訓練機と専用機だったと言っても、20対2だよ? ありえないって」

 

まあ、普通ならそうなるわよね。だけど、

 

「しかし、霧島は全然本気ではないと思う」

 

それに気付いていたのはボーデヴィッヒちゃん。まあ、これは少し考えれば分かる事なんだけどね。

 

「そうなの?」

「良く考えてみてください、薫子さん。日本の男子が普通銃器を触る機会ってありますか?」

「それはないと思います……あっ、ひょっとして霧島君は接近戦の方が得意?」

「その通りです」

 

まあ、八雲君は普通の男子かどうかはともかく、これは八雲君だけでなく、ISに乗る前から武術を習っていた候補生なんかによく見られる傾向だったりする。私も家で棒術を習っていたのが今のIS戦の接近戦の大元だし。まあ、八雲君の場合は若干事情が違うけど、少なくともIS戦では本領を発揮できるのは接近戦だ。

実際模擬戦で私は八雲君と接近戦をやったけど、SEを半分も削れなかった。ある程度魔導師のスキルを身に着けた今ならもうちょっと良い勝負できると思うけど、それでも勝てない。

しかも、八雲君の本来の実力と言うのは剣術と魔法を全て合わせた距離、相手を選ばない戦い方。IS戦では決して本気を出す事が出来ない。

 

「という事は、得意じゃない戦い方で多数の訓練機を相手取ったり、三機の専用機を相手取ったって事?」

「そういう事ね」

「開発元のご令嬢で同僚のアリサちゃんと同じくテストパイロットのすずかちゃんはどう?」

「基本的にアイツの本質はオールラウンダーだから、得意じゃない戦い方ってのは正確じゃないと思うわ」

「だね。だから正しいのは『どんな戦い方も出来るけど、一番得意なのは接近戦』ですかね」

 

八雲君の強みがどんな戦い方も出来る事。普通じゃ考えられない人生を送って来たからこその手札の多さ、その一つ一つが武器になっている。

 

「ちょっと、夕食の材料、食堂貰ってきますね~。あっ、皆さんも食べてきます?」

「食べたい!」

 

即決の薫子ちゃん。他の三人も首を縦に振っている。今日はいつにもまして賑やかになりそうね。

 

「了解です」

 

そう言って入口のドアに向かう八雲君。

 

「そだ、八雲君、強さの秘密は?」

 

ドアを開けようとした八雲君を薫子ちゃんの質問が止めた。

 

「そうですね……今まで普通じゃ考えられない経験をして来たとか、色々戦い方を知っているとか、理由はいくつかありますけど、そんな事よりも、僕を大切に想ってくれる人達を護りたいって気持ちですかね」

「おお、言うねー。でも一人に選ばないの?」

「選ぶんじゃなくてもう選んだんですよ。だから僕は自分で決めた選択通り生きていくだけです。それじゃ」

 

そう言い残して出ていく八雲君。言ってくれるのは嬉しいけどさ……時間と場所はわきまえてよ! お客さんのいる前であそこまで言わなくても良いじゃない!

 

「はいはい、ご馳走様。八雲君がどんだけ皆を大切にしてるかと、皆が八雲君の事がどんだけ大好きなのかは分かったから。んじゃ、次は織斑君が好きな三人がここに居るリア充共に聞きたい事聞いちゃえ! その為に来たんだから!」

 

薫子ちゃんに煽られて顔を真っ赤にして俯く三人。ここからは三人の質問に私達がどんどん答えていく時間が続いた。凄く話に熱中していたから気付かなかったけどいつの間にか八雲君が帰ってきて夕食を完成させていた。今日のメニューは八雲君の得意なマーボーカレー。私達はいつも通り美味しく食べたんだけど、始めて食べた四人の内、ラウラちゃん以外は撃沈していた。

まあ、これを食べたら自信失くすわよねえ。

 




という訳で、小さな伏線を回収しつつ、テイルズ1の人気キャラのセリフを言わせる回になりました。
「(誰かを)選ぶんじゃなくて、(皆を愛する事を)選んだんですよ」ハーレムルートに突入させた時にいつか言わせたいと思ってました。


次回で夏休み回最後になると思います。……夏休み長かったなあ。

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