IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版) 作:ピーナ
デート回だけで一万字近く使いました。頑張りました。
一通り買い物を終えた僕達は良い時間にもなったからお昼ご飯としておしゃれなイタリア料理店に入った。おしゃれだからなのかカップルもちらほら見えるけど女性客が多い。
頼んだものは虚さんがカルボナーラ、僕がジェノベーゼとペスカトーレの二皿を頼んだ。偶然だけど緑(ジェノベーゼ)、白(カルボナーラ)、赤(ペスカトーレ)でイタリアの国旗になってるな。
「うん、美味い」
「美味しいですね。……こうなると他のも試したくなります」
「じゃあ、とりあえずこの二つ試してみます?」
僕はジェノベーゼの方をフォークに巻きつけて目の前の虚さんの前に持っていく。
「はい、あーん」
「あ、あーん」
少し頬を赤くした虚さんが僕のフォークに巻きついたものを食べる。これは……アリだな!
「どうですか?」
「は、恥ずかしかったです……」
それは見たら分かる。素で間違えてる虚さんも可愛いなあ。
「あはは、そっちじゃなくて味の方ですよ」
「そ、そうでしたね! ジェノベーゼって初めて食べたんですけど、美味しいですね」
僕が間違えを指摘したらさっき以上に顔が赤くなった虚さん。
「日本じゃカルボナーラとかより知名度低い感じがしますからね。学園にもないですし」
IS学園のメニューは豊富でパスタもかなり種類があるけど、ジェノベーゼは無い。パスタソースのレトルトでもあんまり見た事無いし、どうしても知名度は有名どころよりも落ちる気がする。
「それじゃあ……」
同じ要領でペスカトーレも食べさせてあげる。
「トマトソースはお肉のイメージがありましたど、魚介系も合いますね。そう言えば八雲さんは料理色々作りますし、それこそ皆さんにパスタも振る舞いましたけど、どうして今日はその二品を?」
「両方自分で作るのは面倒ですからね。後、材料もそろえるの難しいですし」
まあ、僕の場合食堂に行って食材を分けてもらって、作ろうと思えば作れるけどね。
時間があれば作っても良いけど、学生の身。やりたい事はいっぱいある。料理をするのは好きだけど、それよりも皆と一緒に居たい方が楽しい。
「ジェノベーゼは……バジルや松の実がそこそこ大きいスーパーじゃないと買えなさそうですからね。ペスカトーレだと魚介の下準備が面倒ですよね」
「その通りです。まあ、皆に頼まれたら作りますけどね」
「じゃあ、今度頼むかもですね。……そ、それでですね」
そう言って虚さんはフォークにカルボナーラを巻きつけた物を僕の口の前に差し出してくる。これは……今になって虚さんの恥ずかしいって気持ちも分かる。よくやれたな、さっきの僕。
「はい、あーん」
「あーん」
美味い。……のは分かるんだけど、それよりも恥ずかしさ、照れくささの方が勝って味が細かく分からない。
「どうでしたか?」
「美味しいですね。今度学園のも食べてみようかなって思います」
この後も料理を楽しんだんだけど、良く考えると虚さんと間接キスしてたと気付いて味がよく分からなくなった。
ご飯を食べて少しした現在、私達はとあるお店に居ます。そして私の目の前には
「どうですかね、虚さん」
着流し姿の八雲さん。そう私達が居るのは和装の専門店です。流石は何でもあると言われるレゾナンスと言った所でしょうか。
元々八雲さんは和装に興味があったらしく、先代様が送られた紋付き袴を貰ってかなり喜んでいました。今回偶然とはいえ専門のお店を見つけたので立ち寄る事にしたのです。それで和装に袖を通した八雲さん。非常に似合っていて、現在進行形で見惚れています。今着ているのは群青色の物で、洋服のカジュアルな物だったさっきまでの服とまた違った印象を与えてくれます。言うなら、さっきまでの八雲さんは年相応の感じで今の服は大人っぽさが醸し出されている感じです。
「……ほさん! 虚さん! 聞いてます?」
「はっ、す、すみません! 見惚れてました!」
思わず本音が漏れてしまう。恥ずかしいです……。
「良かった~あまりに似合ってなくて答えに困ってたのかと思いましたよ」
どうも八雲さんは自分の見た目に自信がありません。自分の事を「普通」と言いますけど、十分カッコいい部類に入ると私は思います。なんだかんだ学園内での織斑君との人気の割合は6:4まで拮抗してきていると薫子さんが言ってましたし。ちなみにこの差は一年生の差と言っても良いでしょう。八雲さんは同じクラス以外の評判があまり良くない様なので。上級生はほぼ五分五分です。ちなみに八雲さん派の大半が私達が所構わずイチャイチャしていて、その時の優しく包み込んでくれる八雲さんの姿を見て、私達を見てあんな彼氏が欲しいという物らしいです。
「なら確かめてみますか?」
「えっ? どうやって?」
「それ、買いますよね?」
「気に入ったので、もちろん。他にもいくつか買おうと思ってます」
決める時は即断即決ですね。八雲さんらしいです。
私達の事で誰かを選べなかった事で八雲さんには優柔不断と言う印象を与えるかもしれませんが、むしろ八雲さんはこうと決めたらすぐ動くタイプです。
「では」
そう言って私はスマホのカメラを起動させて写真を撮り、それを添付して五人にメールを送った。文面は『感想は帰ったら直接言ってあげてください』として。
「着てる写真を皆さんに送りました。結果は帰りをお楽しみに」
「はあ……。で、どういう物が良いと思いますか?」
「今着てる感じのような、落ち着いた色合いのシンプルな物がお似合いだと思いますよ」
「ありがとうございます」
八雲さんは私の意見を参考に着流しや作務衣、甚平などを選んでいきます。どうやらこれから毎日和装の八雲さんが見れそうですね。楽しみです。
レゾナンスの買い物を終えた僕達は寮に帰る前にレゾナンス近くの公園に寄る事にした。これは虚さんの、と言うより黛先輩を始めとした新聞部の調査が目的だったりする。
「えーっとここにあるクレープの屋台でいつも売り切れのミックスベリーをカップルで食べるとそのカップルは幸せになれる。って話でしたっけ?」
「そうです。しかし、いつも売り切れの物をどうやって食べるんでしょうか?」
「確かに」
普通に考えていつも売り切れって事は売ってないって事なんじゃないかと思う。それか大穴でお店の裏メニュー的な感じか。
しかし、その屋台の傍に立てられたメニューの書かれた看板を見てもそれらしい文字は見当たらない。
ここで少し考えてみよう。事件の調査なども仕事の一部の管理局員の能力を使って。
まず、「いつも売り切れ」。これはメニューを見れば分かるけど、そもそも売っていないからミックスベリーという商品はここに無い事になる。
次に「カップルで食べると幸せになれる」。ただ食べるだけじゃなくてカップルで食べる事が大事らしい。という事は「カップルがしそうな事をすればそのカップルは幸せになれる」という事か? ……なんとなく、答えが見えた気がする。
「虚さん噂の真相が分かったんで、ちょっと待っててくれますか?」
「あ、はい」
虚さんにそう言って僕はクレープ屋の店員さん(見た感じ僕より一回り位年上。中々のイケメンで近くの女子中高生がほっとかなさそうだなと思った)に注文を伝える。話を聞いていたらしい店員さんは作りながら小声で
「噂に気付くとは中々だねえ、少年」
と話しかけてきた。
「ゆっくり考えたら誰でも気付きますよ、多分。でも、何でミックスベリーを置かないんですか?」
「最初はメニューに書き忘れてただけだったんだよ。だけど、いつの間にかそういう噂が広がったから、置かなくても良いかってなったんだ」
ミスが生んだ噂だったのか。しかし、上手く行ってるならそれでいいのかもね。
「しかし、君の顔何処かで見た事があるような……」
僕の事あまり大々的に報道されてないから大丈夫だと思ったけど、ピンとくる人は居るみたいだね。だけど、今後来るかもしれないしヒントだけでも言いますか。
「そうですね……半年くらい前の新聞を見れば分かると思いますよ」
「気が向いたら調べてみるよ。今後もご贔屓に」
そう言って店員さんはできたてのクレープを僕に渡す。お金は先払いだったから僕はお礼を言って虚さんの元に戻った。
「はい、虚さん。食べてください」
僕は右手に持っていたクレープを虚さんに渡す。虚さんはそれを食べて
「これは、ブルーベリーですね。甘味と酸味が良い感じです」
「で、次はこっちです。あーん」
お昼の時より周りの目が無いから、虚さんはすぐに僕が持っている方を食べる。
「そっちは苺ですか。これも美味しいですね」
「そうです。それで、これでミックスベリーの完成です」
「あっ、なるほど」
そう、答えは「ベリー系の物を二人で一つずつ頼んでお互い食べさせ合う」という事。つまり、イチャイチャして食べればハッピーだよねって事だ。
しかし、このクレープ美味いな。今度気が向いたら部屋で作ってみよう。
「八雲さんもこっち食べますか?」
「いただきます」
と食べようとしたんだけど、クレープを引っ込めて自分で食べてしまう虚さん。
定番の動きだなあ、と思っていると虚さんはいきなり僕にキスをした。そしてさっき食べたクレープを僕の口に押し込む。口の中にはクレープの味が広がっているはずなんだけど、よく分かんない。
「……どうですか?」
いつもと違ってかなり積極的な虚さんに驚かされつつも、こういう一面もあるんだと思って新しく知れて嬉しい気持ちで一杯になった。
「お、美味しかったです。多分、普通に食べるより何倍も。……試してみます?」
こう言ってみたものの多分僕の顔は今、ごまかしきれない位真っ赤だろう。それ位さっきの虚さんの言葉にドキドキしてる。
「えっと、八雲さんがよろしければ……お願いします」
虚さんの答えを聞いてから僕はクレープを食べてそのまま口づけをかわす。その口づけはクレープ、いやどんなに甘くて美味しいスイーツよりも甘いと思う。
あー……皆ともこうやってみたいなって思ってる僕は馬鹿だねえ。ベクトルが同じ方向向いてたらバカップル一直線だよ。まあ、悪くは無いけどね。
「どうでした?」
「美味しいですね。それと凄く甘く感じました。……また、お願いしますね?」
「機会が有れば。……さて、そろそろ帰りましょうかね」
「そう……ですね」
残念そうな虚さん。僕ももう少しデートして居たかったけど……門限破るのはちょっとね。反省文書くのも嫌だし、皆も待ってるから。
「大丈夫ですよ。これからいくらでも遊びに行けますし、ずっと一緒に居ますから」
もうデートが終わるのは少し寂しいけど、僕達はこれからずっと一緒に居れる。だから寂しく思うことも無い。
「ですね。じゃあ、帰りましょうか。でも、帰るまではデートですよ?」
「分かってますよ」
と、ここで僕は一つ考えてた事を言ってみた。
「それじゃ、帰ろうか、虚」
「そうね。帰りましょう、八雲さん」
この後、帰りのモノレールで虚さんに僕が呼び捨て+敬語抜きで呼んだ事について聞いてみると「学校はちょっと問題があるかもしれないですけど、私達だけの時はお願いします。すごく嬉しかったですから」と言われたのでこれから虚と呼ぶ事にした。それに合わせて刀奈さんも刀奈って呼んで敬語も抜く方が良いか聞いてみよう。
ちなみに、帰って早々、部屋に居た五人に「和装に着替えて!」と言われた。どうやら、虚の見立ては正しかったらしい。着心地も良いからこれからの部屋服はこれになりそうだ。
もしかしたら三十六、五話みたいな形で第三者から見たデートの様子を書くかもしれません。まだ未定ですけど。
次回は三十三話で書いた事が起こります。夏休みはまだ終わりません。