IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版)   作:ピーナ

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まあ、後始末回ですね。

E-3クリア記念。……今回は掘り(実益)か全部甲(プライド、満足感)を天秤にかけないといけないと思います。


第三十五話 事件勃発(後編)

三人より先に管制室に行ったら、織斑先生に山田先生、簪に本音、薫子先輩、後何故か残りの一年生の専用機持ちが居た。

 

『何で皆いるの?』

 

僕は簪と本音に念話で尋ねる。

 

『今回の件結構騒ぎになってるんだよ~』

『それで皆で来て、鈴とシャルロットとラウラは私達が倒した子を回収していたみたい』

 

なるほど、あの三人よりは冷静だったと。流石に僕でも6対1だと……なんとかなるか。そういう時はそういう時の戦い方があるし。

 

「霧島、今回の一件ご苦労だった。事情は黛や更識、布仏に聞いている。……が、最後の私闘に関しては夏休みが終わるまでに反省文を書いてもらう」

 

まあ、これ位は予想通りだったし問題無い。むしろ、夏休みが終わるまでというまだ期間に余裕がある上に枚数の指定も無いからかなり優しい部類に入るだろう。

 

「了解です」

「やけに素直に受けるな」

「だってそれを覚悟の上で挑発してましたし。自分に素直に動いた分の代償と考えてますよ」

 

厳格な織斑先生の事だ。当事者たちや目撃者、ここに残ってるであろう映像データなどから今回の件をちゃんと確認した上でで既に他の人にも処分を言い渡しているんだろう。

そんな事を考えていると僕と戦っていた三人が入って来た。途端に空気が悪くなる。三人が敵対心をこめた眼で僕を見てるから。

 

「さて、お前達の処分だが……私闘に関しては反省文の提出。しかし、その前の霧島への攻撃の件で貴様らは夏休みが終わるまでISの起動を禁止する」

「なんでだよ千冬姉!」

 

織斑君が織斑先生に食って掛かるけど、それを有無を言わさず出席簿で鎮圧する織斑先生。

 

「織斑先生だ。……では聞くがお前達は何故霧島に攻撃を仕掛けた?」

「それは、あまりにも酷い事をやっていたからで……」

「ならば何故霧島がそんな事をやっていたかは理解しているのか?」

 

織斑先生にそれを聞かれて答えられない三人。織斑先生は溜め息を一つ吐いてから、

 

「霧島があれをやったのはそこに居る更識が20人から攻撃されていたからだ。理由は逆怨み的な嫉妬。霧島はそれを鎮圧しただけだ。が、それだけが理由ではない。お前達は、その前の攻撃した20人もそうだが、更識の後ろに生身の布仏が居たのを気付いていたのか? そして、それを分かった上で攻撃をしていたのか?」

「「「えっ⁉」」」

 

……やっぱり気付いていなかったよな。気付いてたらもうちょっと考えて攻撃するだろうし。

 

「……その反応は気付いていなかったみたいだな。今回、霧島は一見やり過ぎな攻撃をしたかもしれんが、その実攻撃された人間も何人か気を失っただけで怪我はないし、ISも損傷レベルは最低限だ。最後の私闘の部分を除けば、霧島は生徒会の人間として最適な手を打ったと言える。が、お前達は本来気付かなかったでは済まない事をしている。客観的に見れば日本の代表候補生への集団暴行に加わった形だからな。特にオルコットは他国の代表候補生へのだ。外に漏れれば本国で待ってるのは牢屋だぞ。まあ、更識、布仏両人が何もなかったから気にしないと言っているので最低限の処分で済ませるが、しっかり反省して二度とこんな事態を起こさない様にしろ」

 

織斑先生の厳しい言葉に三人はうなだれる。

ある意味殺人未遂なのに処分が軽いと思ったら被害者本人がそう言ってたらしい。後で部屋で帰って来た本音に聞いてみたんだけど、『良い物が見れたから~』と言ってた。良い物ってなんだろ?

その時に残った三人が何故加勢しなかったのかを知ってるか聞いたら「三人ともかんちゃんの後ろに居る私に気付いたのと、はっちーとかんちゃんがSEを削りきっているだけだと分かったかららしいよ~」と教えてくれた。

 

「織斑先生、もう寮の部屋に戻っていいですか?」

「ああ、構わん。ちゃんと反省文を期限までに出せよ」

「分かりました。では失礼しました」

 

さて、部屋で一休みしますか。今日戻って来るために連日3時間睡眠だったからねえ。

 

 

 

生徒会の仕事を終えた私は薫子ちゃんが駆け込んだ時に、持って来た八雲君のお土産の翠屋のシュークリームを持って部屋に戻った。

一緒に仕事をしていた虚ちゃんは今日起こった一件でダメージを負ったISの整備の手伝いに駆り出され、簪ちゃんと本音ちゃんは当初の予定通り紫雲のテストをしているとメールがあった。アリサとすずかちゃんは夕飯前に着くと昨日言っていたから後、3時間位は帰ってこないかな?

……ん? 簪ちゃんからのメールで八雲君は部屋に戻ってると言っていたから八雲君と二人っきり? 突然やって来たチャンスにテンパる私。そうこうしている内に部屋に着いた。二人っきりの嬉しさ半分、二人っきりだから何が起こるかのドキドキ半分な状態で部屋のドアノブに手をかける。

 

「ただいまー」

 

そう言って部屋に入るけど返事は無い。……なにか作業でもしてるのかな?

だけど、その予想は外れる。どうやら八雲君はベットに腰掛けて、部屋着に着替えてすぐに寝落ちしたらしく下半身は座っているけど、上半身は後ろに倒れて眠っている。八雲君が仮眠を取るのって珍しいから、多分かなりお疲れだったらしい。でも、これじゃ疲れとれなさそう。そう考えた私は足を持ってベットの上に乗せてちゃんとした体勢にする。

 

「これで良し。……いや」

 

ちょっと恥ずかしいけど思いついた事をやってみようかな。私はベットの上の八雲君の傍に座り、自分の太ももに八雲君の頭を載せる。短めの彼の後ろ髪が少しくすぐったい。

 

「う、うん……あれ? 刀奈さん?」

 

どうやら、私が色々やったから目が覚めたらしい。

 

「起こしちゃった? ゴメンね」

「ってか僕、寝てました? ってかこの状態って……」

 

今の自分の状態に気付いたらしい八雲君の顔は一瞬で赤くなる。

 

「膝枕だよ。どうかな?」

「……最高です」

「そっか、良かった」

 

恥ずかしがる八雲君なんてそうは見れないからね~。しかし、有頂天になっていた私は忘れていた。八雲君は実はSだという事を。

 

「よいしょっと」

 

そう言いながら起きあがる八雲君。ちょっと惜しいなあと思っていると、

 

「刀奈さんも生徒会のお仕事でお疲れでしょ? だから……」

 

私を抱きしめてそのまま倒れ込む。

 

「えっ⁉ えええっ⁉」

 

ビックリしすぎて理解が追いついていかない。今、私八雲君に抱きしめられてる⁉ 何で⁉

 

「刀奈さんの膝枕で僕だけ楽しむより、刀奈さんを抱き枕にして一緒に休みましょうよ」

 

私の耳元でそう囁く八雲君。……ズルいなあ。何日も会えなかった君にそんな甘いお誘いを言われたら断れないよ。

 

「……うん」

 

私は右腕と脚を八雲君の体に絡ませ、彼の体に近寄る。季節は夏。連日真夏日を記録しているから帰って来た八雲君からはシャワーは浴びただろうけど少し汗の匂い。だけど、それは全然嫌な匂いじゃない、だって八雲君の匂いなんだもん。落ち着くなあ。

 

「あ、そうだ」

 

八雲君は何かを思い出したらしい。なんだろ?

 

「どうしたの?」

「いや、大した事じゃ無いんです。ただ言い忘れてた事があると思って。……ただいま、刀奈さん」

「うん、おかえり八雲君」

 

「ただいま」と「おかえり」。ホント何気ない言葉だし、それこそここで一緒に過ごすようになってから当たり前の様に交わしてきた言葉だけど、想いが通じ合って今の関係になってからはこれだけでとっても嬉しい。八雲君や皆のいる所が私の帰る場所で、私達の元が八雲君の帰ってくる場所だと感じれるから。

結局この後私達は夕食前に皆が帰ってくるまでずっと眠っていた。まあ、私達の状態を見て冷やかされたんだけど。




簪、本音の両人的には「怪我も無かったし、八雲のカッコいい所見れたから気にしない」と言った感じです。

一応、一夏側の擁護も少し。
一夏達が最初に見たのは八雲と簪が盛大に攻撃して次々と行動不能にしている所からです。
つまり、規模の違いがあれど、鈴&セシリアVSラウラの焼き直しだと捉えたんですね。
そこで取った行動は八雲への攻撃(一夏、箒、セシリア)と行動不能になった人の救出(鈴、シャルロット、ラウラ)に分かれます。
その差は頭に血が上ったか、冷静に場を見てたか、そして霧島八雲をどう捉えているかの差です。
攻撃した三人は本作序盤の八雲に何かしらやられているため、自分達と同じ感じでやられているという先入観を持って見てしまっています。
残りの三人は偏見を持つほど関わっていない転校生二人と、八雲の恋人達と仲が良い鈴なので三人より冷静に場を見たという訳です。

処分なのですが、全員に箝口令を敷いた上で襲撃してきた人達は、厳重注意の上、反省文提出と二か月間の停学、一夏達が厳重注意と反省文の提出、約10日の謹慎、八雲は反省文の提出となりました。
本来ならもっと厳しくなるはずでしたが、被害者である簪と本音が最初に書いた心境なのであまり厳しくしなくてもと織斑先生に進言したのでこの程度に落ち着きました。
まあ、恐らく襲撃した人たちはその後寮と言う密室空間でマッハでうわさが広がるでしょうからほぼ、自主退学すると思いますが。

次回はようやく虚さんとのデート回。特別編等を挟んでようやくです。

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