IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版)   作:ピーナ

35 / 51
おかしい……僕は虚さんのデート回やら夏休みの事件やらを考えてたはずだったんだけど、どうしてこうなったんだ?


と、茶番はこの辺としてナンバリングを超えた特別編をお送りします。今回のお話は本シリーズのメインヒロインさんのご登場です。


第三十二話 特別編 私の想い HtoY ~届かない言葉、届いた想い~

私と言う人間の人生は10年にも満たない物やったし、その大半が大変な物やったと言える。

だけど、私がもしも『あなたの人生が幸せでしたか?』と聞かれたら絶対に幸せでしたと答える。だって、最後の短い少しの間だけど大切な家族が出来たし、私は異性を好きになるって経験も出来たから。

その私が好きな人、霧島八雲君は私がこの世を去る事となった闇の書事件の後、加害者側、守護騎士側でたった一人生き残ってしまったからその事で自分で自分を責め続けて、ただひたすら自分の命を燃やして贖罪をしながら死に場所を探し続けていた。

それをあの世からずっと見ていた私は辛かった。

いくら私がその生き方を傷付く事を止めて欲しくて、見ているのが辛くて泣き叫んでも、その声は絶対に彼には届かない。私はそれを耐えるしかなかった。

毎日毎日傷付いて行く八雲君から目をそらす事も出来た。だけど私はそれをしなかった。いや出来なかった。私以上に苦しんで辛い思いをしているのは他ならぬ八雲君なのだから、私が出来る事は自己満足でも見守り続ける事をし続けようと思ったから。

私も知っているすずかちゃんやアリサちゃんを含む八雲君の幼馴染達は自分から傷付きに行こうとする彼を止めようと色々していた。……八雲君の事をちゃんと考えて助けようと手を伸ばしてくれる人たちが居たけど、八雲君は頑なにその手を取らなかった。

そんな事を六年間続けた八雲君だったけど、ようやく転機が訪れた。

私達が小学校に進学する年齢位の頃に発表された、女性しか動かせないとされるISを八雲君が動かした事で彼がIS学園に行かないといけなくなったのが切っ掛けだった。

最初はやっぱり八雲君は他の皆と壁を作っていた。それを壊そうと動いたのは八雲君とルームメイトになった更識楯無さんとクラスで唯一積極的に話しかけていた布仏本音ちゃん。それに本音ちゃんのお姉さんの布仏虚さんも加わった三人が八雲君を気にしてくれて、八雲君の作っていた壁を少し削ってくれたと思う。

基本的に意志が強い八雲君が作った壁が本来ならたった三人だけで崩れるとは思えない。

……これはあくまで私の予想だけど、精神的にも肉体的にもあの時の八雲君は限界に近かったんじゃないかと思う。だから、普段より少し脆かった。

でも、それは危険な状態だったことの裏返しで、もし、IS学園に行ってなくて今まで通りの生活を続けていたら、最悪の未来がすぐに訪れていたと思う。

 

 

 

それである時、八雲君は本当に死にかけた。だけど、そのおかげで私と八雲君はもう一回会う事が出来た。

あの時八雲君に私の想いだけを伝える事も出来た。多分、そうすれば八雲君はすぐにでも私の元にやってきてそれこそ永遠に一緒に入れたと思う。

でも、私はそんな事出来なかった。だって、こんなん誰も幸せにならへんから。

すずかちゃんもアリサちゃんも、IS学園で知り合ったばかりの人達も泣くだろうし、優しい八雲君は後悔するし、私も罪悪感に苛まれる。

だから私は彼の背中を押して、八雲君の作っていた壁を壊す事を選んだ。それが彼の心の中を大きく占め続けて、想われ続けた私に出来る事だと思ったから。

けじめのつもりだったんだけど、やっぱり八雲君を想う気持ちは吹っ切れなくて、何かもやもやしたものが心に残った。

 

 

 

少しずつ昔を取り戻していく八雲君に元々好きになってたすずかちゃんやアリサちゃんは当然だけど、IS学園で知り合った楯無さんや本音ちゃん、虚さん、楯無さんの妹さんの簪ちゃんが惹かれていくのは当たり前の事だと私は思う。

……まさか、ISを動かしたから自由国籍を取得して一夫多妻制が認められて、全員と付き合うとは思わなかったけどなあ。

でも、彼女達の八雲君への想いは私に負けない物だと思うし、彼女達なら強いけど弱さも持っている八雲君を支えていって幸せになれると思う。

だけど……その時私はどうしてあそこに自分が入れないんだろうって思ってしまった。そういう運命だって割り切ったはずなのに。八雲君の幸せを願ったはずなのに。

……ああ、そっか。私は嫉妬しているんだ。そばに居れない私と違って、生きて幸せな未来を八雲君と歩ける皆に。

 

 

そこから少しの間私は日課だった八雲君を見守る事をしなくなった。もう、私が見守らなくても八雲君は大丈夫だと思ったからという建前と、幸せそうな皆を見るのが嫌と言う本音から。

こういう時八雲君が好きになった人が凄く嫌な人だっりしたらまだ良かったかもしれないけど、皆が皆女子の私から見ても魅力的で素敵な人だったから、一緒の時間を過ごしてみたかったなあと思ってしまったから、その女の子達を嫌いになる事も出来なかった。

 

 

もう、頭の中がぐちゃぐちゃでどうすれば良いか分からなくなった時、八雲君は私の最期の場所、海鳴市に面した海に一人でいた。

 

『どこで言うべきか迷ったけど、やっぱり君の最期の場所が一番良いと思ったから、ここで言うよ。あの日から二か月くらい経っただけで色々僕の周りは変わって、君の言う通り僕は新しい恋を見つけたよ。……まあ、複数人いる奇妙な展開で僕自身驚いているけど。でも、やっぱり君が好きな気持ちは、愛しているって気持ちは変わらなかったよ。いや、変えられなかったよ。こんな事を言ったら君はあきれるかもしれない。けど、僕は意地でも変えない。誰が何と言おうと僕の気持ちは僕の物だから。皆を愛し続ける。君も愛し続ける。これが僕の決めた物だよ。だからさ、変わった変わらない僕をずっと見ててくれ、はやて』

 

届くはずの無い言葉を一人で喋っている八雲君。そして、届くはずの無い言葉を聞いている私。

 

「馬鹿やよ八雲君……。吹っ切って送り出したのに一人で勝手に嫉妬してる私を、死んじゃった私をずっと想い続けるなんて……。私の事なんて忘れてしまえばええのに……」

 

口ではこんな言葉しか出てこない。

だけど心は正直で、どうしようもなく嬉しかったから涙が止まらない。拭いても拭いてもどんどん出てくる。

私がたった一人愛した人は不器用で弱くて無茶をする、そんな人。

何人もの女の子を惚れさせて許されたからと言う理由で全員と付き合っちゃう酷い人。

だけど、一本芯の通った強い意志と、大切な人を想い続ける優しい心を兼ね備えたこの世界で一番素敵な人。

そんな人に何年経っても、傍に居なくても想い続けられる私は幸せ者だと思う。

 

『はやてー! 大! 好きだーーーーー!!!!!』

「うん、私も大好きやよ! 今までも! これからもずっと!」

 

これは届かない言葉。そんな事は分かっているけど、私も声に出さないといけないと思った。これからずっと次に八雲君と会うずーっと未来まで見守っていくためにやらないといけない事だから。

そして、神様という存在はそんな私を見かねたようで、目の前は光ったと思ったら八雲君がついさっき投げた物、つまり私の為に用意してくれた指輪を私の目の前に出してくれた。

私はそれを自分の左手の薬指に嵌める。

八雲君、私は君が心の底から大好きだと想ってくれる、それだけで十分です。だから、今は目の前に居る君を心から想ってくれる、傍で支えてくれる、素敵な女の子達を幸せにしてあげてください。それがきっと君自身の幸せに繋がっていると思うから。

その代わり、君がここに来たら目一杯くっ付いて甘えさせてもらうよ。その時間を楽しみに待ってるから。

あっ、でもあんまり早く来るのは許さんで。髪の毛が真っ白になって、顔も皺くちゃになって、沢山の子供や孫達に囲まれながらじゃないと認めへんからな。




このお話を書いたのはどうもIFルートのはやてを綺麗に書きすぎたと思ったからです。
だから、八雲の見ていなかった時の彼女を書こうと思いました。
この作品で自分は死んだ人と割り切っているように書いたんですけど、彼女だって女の子、嫉妬だってするし、羨ましくも思う。迷いもします。


と、いろいろ書きましたけど、こういう告白とかは答えがあって初めて綺麗な形だと思うので、たとえ八雲には届いていなくても一つの形にしたかったと僕が思ったからですけどね。



さて、いよいよ艦これの夏イベの開始の日が発表されました。とりあえず、それまでにこの作品の夏休みを終わらせたいなと思います。


次回はIS学園に戻った時のお話です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。