IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版)   作:ピーナ

31 / 51
連日投稿三日目。待っていた方はお待たせしました。


第二十九話 僕の気持ち YtoH ~幸せのレシピ~

ふう、これで後二人。もう少しだから頑張ろう。

 

「はっちー、来たよ~」

 

三人目が本音。って事は最後が虚さんか。

 

「鍵かかってないから、どうぞ」

「は~い」

 

入って来た本音はいつもの部屋着、つまりは一見着ぐるみにしか見えない服である。ちなみに今日は犬。垂れた犬耳が本音の雰囲気にマッチしてとても似合ってる。

 

「本音、それ熱くないの?」

 

冬場ならこんな事は聞かない。だけど、今は夏休み。つまり一年で最も暑い時期なのだ。いくら日が落ちた時間と言ってもここ数日は熱帯夜で暑い事には変わりない。

 

「だいじょ~ぶ。これ通気性良い素材だから~」

 

いや、そういう問題じゃない気がするんだけど……。まあ、本人が良いなら良いか。熱中症だけは気を付けて欲しいけどね。

 

「そうだ! はっちー、今日の夕飯どうだった?」

「美味しかったよ。薄味で僕の好みだったし」

 

基本的に食べ物の好き嫌いは無い(ミッドを含めた次元世界にもイナゴの佃煮みたいなゲテモノが存在するけど、それも案外平気だ)。ただ、個人的には濃いめの味付けよりも薄味の方が好みってだけだ。

 

「良かった~。実はね、今日の夕飯は私とお母さんの合作だったんだ~。お母さんには量を作るから手伝ってもらっただけで、味付けなんかは全部私なんだよ~」

 

実は、僕の彼女達の中で一番の料理上手は本音。皆比較的料理上手な部類に入ると思うけど、その中でもだ。ちなみに、本音のお姉さんできっちりした性格の虚さんは料理よりもお菓子作りが得意で(もちろん料理も上手ではある)、僕達の部屋や生徒会室にあるお菓子は僕と虚さんの二人で作っている。

 

「そっか。美味しいご飯をありがとうね、本音」

「いえいえ~。はっちーは笑顔が好きって言うからさ~、私の出来るやり方で皆の笑顔をプレゼントしたんだよ~」

 

美味しいご飯を食べると人は自然と笑顔になると思う。それでその笑顔が作った側としては何よりも嬉しいんだよね。その笑顔が親しい人のならなおさら。

 

「笑顔は幸せの素だしね~」

「だね。それじゃもっと本音には喜んでもらおうかな」

 

そう言って僕は今日渡したい物を差し出す。彼女への指輪はガーネット。

 

「はっちー、これ……」

「本音がもっと笑顔で居れるように用意したんだ。……これからもずっと僕の横に居てくれますか?」

「もちろん! それは臨海学校の時に言ったでしょ? 『はっちーの傍でならいつでも笑顔で居れる』って。私は、ううん、私達は絶対にはっちーを一人ぼっちにしないよ。もう、あんなに暗い顔もさせないよ」

 

……多分、僕は彼女の明るい性格とそれを体現した最高の笑顔に気付かない内に救われていたんだと思う。それはきっとこの先何度も何度も感じる事だろう。それに、彼女の笑顔を独り占めできるしね。そう考えるだけで幸せ者だよ、僕は。

僕は彼女の左手の薬指に指輪をはめる。

 

「どうかな?」

「すっごく気に入ったよ~。大切にするよ。これからずっと」

「喜んでもらえて何よりです」

「それとね~、これからお姉ちゃんに会うきーりんにお願いしたい事があるんだ~」

「何? よっぽど、無茶な事じゃ無ければ聞くよ」

「それはね~……」

 

本音のお願いを聞き、それをどう叶えるかを考える。骨子はある程度思いついた。それ以外はアドリブで。

 

「よし! この八雲さんに任せなさいな!」

「任せたよ、はっちー!」

 

まあ、全力でやりますか。僕の為に、本音の為に、そしてこの後来る彼女の為に。

 

 

 

「えへへ~、指輪貰っちゃった~♪」

 

はっちーの部屋を出て、ついさっき貰った指輪を見てルンルン気分な私。この反応は当然な物だと思う。だって大好きな彼からの初めてのプレゼントなんだから。

しかもただのプレゼントじゃなくて私の彼の関係、それと私達の未来を決めてくれるものだったから喜びも大きい。

この気分のまま私はかんちゃんとなっちゃんがいるなっちゃんの部屋に向かった。

 

 

私が入学した頃、つまりはっちーに出会って、まだきーりんって呼んでた頃ははっちーは暖簾に腕押し、糠に釘状態で、仲良くなったクラスメイトにも「何で話しかけているの?」とか「趣味悪い」とか言われた。

結構最初の頃から気になっていた私としてはむっと来たけど、それは堪えて、前者の質問には「ん~なんとなく~」と家の仕事であることを誤魔化した答えを、後者の質問は「そ~かな~? そりゃ~おりむーと比べるのは酷だけど、きーりんもじゅ~ぶんかっこい~と思うよ~」と適当に返していた。

それが少し変わったのは実習が本格的に始まった頃、実習の班を組む時に何人かの生徒が私と一緒にはっちーの班になった事だった。

何回目かの実習が終わった後、皆でご飯を食べる機会が有った。その日のお昼、はっちーはお姉ちゃんに呼ばれてお嬢様が国家代表関係で忙しくて溜まっていた仕事の処理をしに行っていた。

私はふと気になって、どうしてみんな避けていたはっちーの班に自主的に入ったのか聞いた。

細かく言うと皆それぞれ理由が違ってたけど、大きく括れば実力があって、真面目に取り組んでいるし(偶然、はっちーの後ろの子もいて、その子がはっちーのIS関連の小テストで毎回9割以上の高得点を取っていると言っていて、他の子にも教えていた)、努力家である(はっちーの日課である朝のトレーニングを皆一度は見た事があるらしい)からと言っていた。

 

 

これは上級生であるお姉ちゃんやお嬢様から見た意見なんだけど、どうも今年は学園全体が浮付いているらしい。もちろん、理由はおりむーというとびきりの男子が入って来たから。

基本的に出会いの無いIS学園。男性は今まで用務員のおじさん(轡木十蔵さん。実は学園長でお父さんとも知り合い。それでもって既婚)しかいなかったし、出会いがあったとしてもIS=女尊男卑の権化っていう世間一般の認識でそれを学んでいる生徒(教員もだけど)は中々そういう関係にほとんど発展しない。もちろん、IS学園内でも恋人がいる子がいないわけではないけど、それは入学前からの付き合いって場合ばかりらしい。

そんな状態でフリーの男子、しかもイケメンで織斑先生の弟。浮付く事は明白だと思う。

浮付いている証拠としてお姉ちゃんは「例年よりISの予約が若干ですけど減ってるわ。2、3年は誤差の範囲だけど、1年生は結構分かりやすく。だから、ある意味今年の生徒はラッキーなのよ?」と教えてくれた。

さらにその後の実習ではっちーの班のメンバーが実力を伸ばしていて、織斑先生も山田先生もはっちー自身も驚いていた。私がお姉ちゃんから聞いた話を皆に話したというとはっちーと山田先生は苦笑い、織斑先生は苦虫をかみつぶしたような顔で頭を押さえていた。

 

 

2度の負傷を経た今、はっちーのクラス内の評価は「優しいし頼りになる男友達ポジション」に落ち着いた。それ以上の感情を持つ人がいないのは私やかんちゃん、りさりさにすずーが所構わずいちゃいちゃしてるから。おりむーの周りはピリピリしていて若干近寄りがたいらしく、最近ははっちーに話しかける子も多くなった。クラスの子と話してる時ちょっと嫉妬しちゃうけど、これはきっとはっちーにとって良い事だと思うから、そこは抑えるようにしている。ちなみにそう思った日は寮に戻った時に目一杯甘えてる。

 

 

なっちゃんの部屋の前に着いたので部屋のドアをノックする。親しき仲にも礼儀ありだ。

 

「なっちゃん、かんちゃん入るよ~」

『どうぞ、本音ちゃん』

 

部屋に入ると談笑しているかんちゃんとなっちゃん。

小さい頃は当たり前で、ちょっと前までは見たくても見れなかった物。私とお姉ちゃんだけじゃどうしようも出来なかった物。はっちーのお蔭でまた見れるようになって本当に嬉しい。

これからは私達7人が笑顔で一緒に居るのが当たり前になる。何も知らない人が見たら歪かもしれない。だけど、その当たり前の事が私達の選んだ幸せの形だから。




本音回をお送りしました。

本音の料理上手について

原作でそれどうなのと思う物を食べてらっしゃる本音さん。
しかし、僕の友人にココイチの10辛が大好物で苦丁茶を一日一リットル飲む変人がいます。そいつが一人暮らししている家に遊びに行った時、夕食をご馳走になったのですが料理上手と言うだけあって普通に美味しかったです。食べる前は『……絶対、僕の口に合わないだろう』と思っていたんですけどね。
という訳で個人の好みと料理の上手さは関係ないと知ったのでこういう形になりました。
後は普段従者っぽくない本音にぽさを付けたかったって言うのもあります。

さて、いよいよ更識家でのお話も次回で最後となります。また、明日会いましょう!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。