IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版)   作:ピーナ

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更識家編はこの話を含めて五話編成になっています。


第二十六話 霧島八雲IN更識家

すずかの家での二度目の一世一代の勝負から二日後、僕は人生三度目の一世一代の勝負に来ていた。……ここ数日の僕の疲労が半端じゃないんですけど。まあ、僕が選んだ道だから、それは甘んじて受けよう。

しかし、今回は前二つと訳が違う。

まず、刀奈さんと簪の更識家と虚さんと本音の布仏家は代々主と従者という家柄で、四人の曽祖父母の代が兄弟なので、親戚でもある。そして、両家は同じ家に住んでいる。つまり僕は、一気に両家の両親に四人と結婚を前提に付き合ってると言う前代未聞の報告をしないといけない事になる。……代々、国を裏から守護してきた家(告白された時、四人から教えてもらった)だという事を考えると、僕は今日、生きて帰れるか分からない。

それと、アリサの家とすずかの家は僕という人間を知っていて、ある程度信頼があったというのも大きい。が、両家の人には面識が当然ながら無い。

気分はまるで、ルビコン川を南下する直前のジュリアス・シーザーだ。しかしもう、賽は投げられた。後は最後まで進むのみ。

 

「なんか、はっちーに悲壮感が漂ってるよ~」

「確かに。まあ、仕方ない事だと思うけどね~」

「……私達も援護するから、頑張って」

「さながら、ローマ内戦のユリウス・カエサルといった所でしょうか」

 

虚さんと発想が同じだった。まあ、賽は投げられたは有名な故事成語ではあるか。

 

「虚さんの言う通り、ここまで来たら最後まで進むだけですよ」

「だね。それじゃ、我が家にご案内~」

 

大きな門から入ると、いきなり強面の黒服の集団に襲われた。ご丁寧に刀奈さんたち四人を避けて僕だけ。

 

「ちょっ、何事⁉」

「ど、どうなってるの?」

「これはひょっとして……」

「お父さんと先代様の挑戦かな~?」

 

……一方的にやられる趣味は無いし、やるしかないか。かといって、一撃で相手の動きを止めないと囲まれて終わりだし……。仕方ない。

僕は手に雷を纏わせた掌底を当てて、一人一人の意識を刈り取っていく。擬似スタンガンみたいなものだ。拳じゃないのは痛める可能性があるから。

五分で、来た黒服さん(大体40人)の行動を止めて、一息つく。準備運動なしでのいきなりだったから疲れた。

 

「お疲れ、八雲君。それじゃ、行きましょうか。OHANASHIしに」

「あのー、刀奈さん?」

「だね、お姉ちゃん。OHANASHIしないと」

「か、簪?」

「私も一緒にOHANASHIしないとね~」

「もちろん、私もOHANASHIに参加しますよ」

「本音? 虚さん?」

「「「「何? (ですか?)、八雲君(さん)(はっちー)」」」」

「イエナンデモナイデス」

 

……凄い怖いんですけど! 四人の後ろに何かが見える気がするし! 誰か助けて~。

怒りモードの四人に付いて行って屋敷の中に入るとそこには、両姉妹を大人にした感じの女性二人が腕組みをし、その前に正座をさせられている男性が二人いた。……どういう状況?

 

「えーっと、お母さん、真実さんどういう状況?」

「あら、刀奈、簪、虚ちゃん、本音ちゃんお帰りなさい。ちょっと鋼太郎(こうたろう)さんと為人(ためひと)さんにOHANASHIをね。ね? 真実(まみ)

「ええ、ちょっと櫛奈(くしな)と二人でOHANASHIしているだけよ」

 

……凄い怖い。逃げ出したい。

 

「まったく! 娘達が選んだ男の子を試すと言って、ウチの部隊で襲撃するとか何を考えているんですか! 貴方、鋼太郎さん!」

「い、いやしかし……」

「言い訳など、聞きたくありません。実力は士郎さんの折り紙付きでしょう。人柄だって、士郎さんと桃子ちゃんのお墨付き。何より四人が好いているんです。貴方達は娘達の目を信じられないんですか?」

「「………」」

 

完全にたじたじの、両家の父親。……ってか、聞き捨てならない事が聞こえたんだけど。

 

「あのー、一つ良いですか?」

「良いわよ、霧島八雲君」

「さっきお話の中に出て来た士郎さんと桃子さんというのは、高町士郎さんと桃子さんの事で?」

「そうよ。海鳴で喫茶店『翠屋』やってる高町夫妻の事よ」

 

……世間って案外狭いねえ。まさか、こんな所で名前を聞くなんて。そういや士郎さん喫茶店に本腰を入れる前はボディーガードみたいな事やってたって言ってたし小太刀二刀流も士郎さんの家の家伝らしいから、それ関係かな?

 

「桃子ちゃんと私達は中学高校と同じ学校の同じクラスでね。大人になってこの家の仕事の関係で再会した時はビックリしたわ」

「まあ、立ち話もなんだし、上がって」

「はあ、お邪魔します」

 

……なんか、のっけから色々あり過ぎて疲れたよ。

 

 

 

衝撃的な光景の後、僕はスーツから袴に着替えて、道場に居た。認めさせるために戦えとの事。なので……僕の前には両家の父親、更識鋼太郎さんと布仏為人さんが立っている。

 

「「………」」

 

お二人の無言が怖い。目線も怖い。

 

「はあ、霧島君。やってしまいなさい」

「私達が許可します」

 

そうおっしゃる両家の母親、更識櫛奈さんと布仏真実さん。ある意味、こっちも怖い。……しかしどうなんだろうな、これ。ま、でも僕がどうやって戦うのは決まってるんだけど。

 

 

 

戦いが始まって約20分、まだ決着が着いていない。所か全員一撃も食らっていない。僕は体力を温存しながらひたすら攻撃を防ぎ続ける。

 

「……どうして君は反撃をしないのだね?」

 

一旦攻撃の手を止めて、更識さんが尋ねる。刀奈さん曰く「生身の格闘戦なら織斑先生を超える。布仏のおじさんもほぼ同レベル」な人らしいから、僕の実力も察せているんだろう。

 

「それは、反撃したくないからです」

「反撃したくない……と?」

「ええ。ここで勝って認められるのも大事かもしれません。だけど、僕にとってはそれよりも彼女達の悲しむ顔を見る方が辛いですから」

 

肉親が目の前で傷付くのはたとえどんな理由があっても嫌な事だと思う。彼女達を傷付けてしまうかもしれない。間接的にでもそんな事をする位なら、僕は今は認められなくてもいいと思う。最悪、僕が結婚できる年齢になるまで待てばいいし。

 

「「はっはっはっはっ」」

 

突然笑い出す二人。何事?

 

「今時珍しい、性根の真っ直ぐな青年じゃないか! これでは私達が大人げない感じだな」

「ええ。私達の娘ながら見る目がありますね。済まなかったね、霧島君」

 

……これは、受け入れられたっぽい?

 

「刀奈」

「はい」

「今日、この時間を持って、お前の十七代目楯無の名を返上させる。これからは一人の更識刀奈として生きなさい。もちろん簪もだ」

「虚、本音。二人も自由に生きなさい」

「良かったわね、刀奈、簪」

「虚と本音もね。彼ほどの人は居ないわよ?」

 

なんとか一件落着だね。ふぅ……。

 

「あ、それと……」

 

そう思っていたら、両家の母親達が

 

「「孫は皆が卒業してからにしなさいよ」」

 

と特大の爆弾を落とした。……ご忠告は嬉しいんですけど、本気でお宅の娘さん達次第です。ただ、恥ずかしそうに頬を染める彼女達は格別に可愛かったと言っておく。

 

 

 

戦いがあった後、僕は変わらず道場に居る。といってもここには今、僕と両家の父親、更識鋼太郎さんと布仏為人さんしかいない。……緊張感が半端ない。

 

「霧島君、君の事は士郎とロイから聞いたよ」

「はあ、そう言えば玄関での会話の中で言ってましたね」

 

アリサと刀奈さんが昔からの友人って言ってたけど、少なくとも刀奈さんと出会ったのは学校ではない。ならば自然と親の仕事の関係だったのだろうと推測できる。

仕事関係でロイさんとも付き合いがあったと考えるのが自然かな?

 

「それに護衛の為に君の事は調べさせてもらった。だから、君の過去の事も知っている」

「……はい」

「さっき立ち会って、君が誠実な人間だとは分かっている。だが、それを踏まえて聞きたい。君は娘達を君の思い人の代わりと置き換えていないかね?」

 

……はやての代わりか。

 

「無い……とは言い切れないと思います。やっぱり僕の中で凄く大きなものでしたから。だけど、彼女の代わりなんて居る訳ないんですよ。当然、皆の代わりも居る訳ありませんし」

「なら、何故言い切れないのだね」

「ここ数年の僕は糸の切れた凧のようなものだったんですよ。大事な物を失って、何もかもを流れに任せてしまっていた。僕の命さえも。だけど、皆のお蔭で色々取り戻せたんです。僕は違うと思いたいですけど、心の何処かでは取り戻せた『護りたい大切な人』として置き換えているのかもしれません」

 

この辺は自分でも分かっていない。

僕の皆に対する気持ちは本物だと言い切れる。だけど、その後ろにはやての幻影を見ていないかと聞かれると自信が無くなる。

 

「ふむ……私から言わせてもらえればそれ位は構わないのではないかね?」

「そうだな。過去を振り返るなとは言えない。それは君を形作って来たものだから。それを踏まえて娘達を愛し、護っていく。それで良いと思うよ」

 

本当にそれでいいのか? 答えは今すぐ出るものじゃない。これはこれからの課題としてゆっくり考えよう。困ったら今の僕には頼りになる人が沢山いるんだ、その人達に頼れば良い。

 

「……ありがとうございます。少し楽になりました」

 

ホント、今年は色んな人に出会って、色々助けてもらってばっかりだよ。少しでも恩返ししたいなあ。

 

「にしても、お二人もロイさんもどうして僕に親身にしてくれるんですか? 自分で言って悲しくなりますけど、やってる事ってかなり酷いと思うんですよ」

 

だって、現代でハーレムだよ? 中世の支配者階級じゃないんだから。

 

「まあ、娘達が望んだ事だからね。それに、話して君の人柄もある程度把握できたからね」

「後は、ロイもそうだと思うが単純に息子が欲しかったのだよ。まさか二人の娘と娘同然の二人の四人が全員同じ男を好きになるとは思ってみなかったがな」

 

そう言ってお二人は笑い出した。……正直、こんなに立派な人達から息子と呼ばれるのはこそばゆい物がある。

いつか、自信をもってお義父さんと呼べるようになりたいなあ。そうなれるように頑張ろう。うん。




色々盛り込んだ回になりました。それでもってご都合主義回でもありますねえ。
後書きでいくつかの説明を。

更識家、布仏家の両親の下の名前の命名法則

父親が姉、母親が妹を連想させる名前になっています。

鋼太郎 刀の材料である玉鋼から。太郎はザ・日本人って感じでいいかなと思いました。
櫛奈  簪と同じく髪の毛に関する櫛から。二次界隈で良く使われている名前だと思います。

為人  虚からの発想で偽りから『人偏(人)+為』。これは偶然八話の中でも出てました。
真実  本音からの発想で『真実(しんじつ)』から。女性っぽい名前でもあったので。


更識家の長老衆について

構成しているのは更識家に関わる家のご隠居など、経験豊富な人達の総称。次代の楯無はここの総意で決まる。

各家の繋がり

更識家・布仏家 
言わずと知れた主従の家柄。本作独自としてヒロイン達の三代前に婚姻関係にあるので親戚でもある。
以降の更識家には布仏家も含む。

更識家・バニングス家
裏では暗部、防諜組織である更識家だが、表向きの家業は護衛でSPやシークレットサービスの教育にも行くほどレベルが高い。大企業のバニングス社とも付き合いがあり、同年代の娘もいる事で話が弾み、家族ぐるみの付き合いとなった。

バニングス家・月村家
高町家、テスタロッサ家を含めたなのは組は子供同士が幼馴染な事からの家族ぐるみの付き合いである。

更識家・高町家
士郎は実家である不破が更識と深い関係のある家柄で古くから知り、桃子は両家の母親とは中学からの友人。

……こう見ると八雲と高町家で繋がりが説明できるって事になってる。


戦闘の強さ

本作の戦闘を表すと以下のようになります。(生身の格闘戦。魔法無し。見方は「>」ははっきりした差、「≧」はほとんど差がないと考えてください)

八雲=士郎=鋼太郎≧為人=恭也>千冬≧束>>>越えられない壁(人外)>>>刀奈>ラウラ>専用機持ち>一般生徒

という感じです。
ついでに主要キャラのIS戦での強さを作中時間の現在で表すと

千冬≧八雲>束(もし乗ったら)>刀奈>簪>>>越えられない壁(人外)>>>ラウラ=真耶>シャルロット≧鈴>セシリア>箒≧一夏

となります。
IS戦で更識姉妹が人外認定されたのは現在進行形で魔改造(魔法の練習によるマルチタスクの習得)が進んでいるからです。なので、八雲のハレームメンバーは全員越えられない壁を越えてくる可能性が大です。


次回からは甘いお話が続きます。まだ、半分も仕上がってもせんけど……。出来るだけ早く上げたいと思います。

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