IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版)   作:ピーナ

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題名通り、この話から夏休み編をお送りします。


第二十三話 今日から楽しい夏休み!

夏休み初日。僕は一人で街に出ていた。ちょっと買いたい物を買いに。皆には秘密にしたい買い物なので一人だ。

何件かのお店に回って、買いたい物を買って、お昼を済ませようと、良い雰囲気の喫茶店に入った。

サンドイッチとコーヒーを頼んだけど、中々美味しかった。まあ、味の基準が翠屋だから、結構高いんだよね。

コーヒーをおかわりして、この後どうしようかと考えていたら、

 

「そこのアナタ、支払っておいてくれる」

 

と言って、伝票を置いて行く女性。……折角いい買い物出来たのに最悪の気分だよ。

 

「嫌です。自分の食べた物のお金位自分で払ってください。普通の高校生に支払いを任せるなんて、大人としてどうなんですか?」

 

まあ、僕が『普通の高校生』かどうかは微妙な所だけど、それは置いておいて、知り合いとかならともかく見ず知らずの人に払わせるなんて、大人とか云々言う前に、人としてどうなのさ? こんなんじゃ、いくら見た目良くても駄目だよね。その見た目もそこそこって所だけど。まあ、僕の基準が僕の彼女達になっているから萌あるとは思う。

女尊男卑の社会になってこういう、男性に難題を押し付ける女性を時々見かける。いや、大多数の女性はそんな事ないし、僕もこんな目にあったのは初めてだ。

実は女尊男卑になってそうなIS業界に近いほど、そうではないという逆転現象が起こっている。以前束さんが言った通り、IS業界で有名な人ほど男性が多く、乗り手や関わる女性も、ISという物に興味を持ち、自ら道を選んだ人が多いので、性別より能力で見る人が大多数だかららしい。

バニングス社のIS関係の人で僕にISの知識を教えてくれた人は女性だったけど、全然普通で親身に教えてくれたし。

しかし……面倒なことになりそうだなあ。そう思っていた時、

 

「そこの男の子の言う通りね。見ず知らずの人に、しかも年下の子に払わせるなんてどうかしていると思うわ」

 

何処からか手助けが来た。

声の方を見ると、長身で金髪ロングの女の人が立っていた。……良いなあ、身長高いの。正直、ヒール抜きで僕以上の身長って凄く羨ましいし。

 

「な、なによ! 男の味方をするつもり⁉」

「そういう問題じゃなくて、自分の受けたサービスにお金を払うのは当然の対価でしょ? 知り合いに借りるとかなら兎も角、いきなり、払えって言うのは常識的に考えて無いと思うわ」

 

周りのお客さんもその女性の言葉に頷いている。……男性だけでなく、他の女性も頷いている時点で、最初いちゃもんをつけてきた女性に味方はいない。

しかし、その女性は結局、お金を払わずにヒステリックに喚き散らしながら、出ていった。……はあ、と溜め息を一つ着いた後、少し冷めてきたコーヒーを飲み干してから、僕は財布から福沢先生を二枚取り出し、お店の人に渡した。

 

「お、お客様?」

「えーっと、僕もここのお店の人や他のお客さんに迷惑かけたと思うので、これは迷惑料として貰っておいてください。さっきの人結局お金払ってませんし」

「しかしですね……」

「なら、今いるお客さんの分の支払いにでもしておいてください。それくらいしないと僕の気が済みませんから」

「……ありがとうございます。またのご来店お待ちしています」

「近くに寄ったら来ますよ」

 

色々やってしまったから来にくいとは思うけど、お店の雰囲気や店員さんも良い感じだから、機会が有ればまた来たいな。

あ、そうだ。帰りに本屋さんによって福沢先生の本でも買ってこうかな。色々お世話になってるし。

 

 

 

喫茶店を後にした僕は近くにあった公園によってベンチに座った。喫茶店で出来なかった今日のこの後の予定を考える。のではなく、

 

「そろそろ出てきたらどうですか?」

 

今日、学園を出て来たころから感じた視線の正体を確かめるためだ。いや、正体自体はもう気付いている。

 

「……何時から気付いてたのかしら?」

 

そう言って僕の前に姿を現したのはさっき僕を助けてくれた女性。気付いた理由はこの女性が僕をフォローしてくれた時に感じた視線が減ったから。後はさっきの喫茶店を出た時にセンサーとサーチャーを用意して確認した。

 

「付けられてた事は学園出てすぐ位ですね。確信を持ったのはついさっきですけど」

「……参ったわね」

「んで、何の用ですか? 正直、付けられる理由があり過ぎてどの理由なのか見当が逆に付かないんですよ」

 

殺気が感じられないから、僕の暗殺や誘拐を狙う女尊男卑主義の団体や研究所って感じじゃないし、となると何なんだろってなるし。護衛なら、たとえこう言われても出てこない気もするし。

 

「うーん……降参宣言かしら?」

「降参宣言? 全然理由が分かんないんですけど」

「私が今所属している組織がここ数か月でIS学園で起こった事件を裏から糸を引いてるのよ。私はそこの実働隊の隊長って訳」

「なるほど。……でも、それならもう少し殺気立つって思うんですけど」

「まあ、三件の事件を見て、貴方に勝ち目は無いって理解したわ。私的にもそろそろこういう稼業から手を引こうと思ってたし、最後に一度この目で見て見たかっただけよ」

「はあ。まあ、相当な実力者である人に言ってもらって、光栄です」

 

さっきの喫茶店で見た歩き方とか雰囲気で織斑先生と同レベルの実力者だと僕は感じた。

 

「それで、見たし、顔も見せちゃったけど、さっきの喫茶店での行動で今時中々出来ない事をしたから、ちょっとだけ、私の知っている事を話してあげようと思ってね」

「と言っても、僕は組織に興味は無いですよ? 僕やその関係者に火の粉が降りかからない限りはね」

「でも、無人機やレーゲン、福音の改造コアの出どころは気になるでしょ?」

 

そう言うって事は、この人……

 

「時空管理局本局運用部第一遊撃部隊、通称『一人部隊』の霧島八雲一尉?」

「……やっぱり、次元犯罪者からの横流し品だったんですね」

「ええ。……しかし、一人部隊って無茶苦茶よねえ」

「馬鹿なガキが何も考えず死に場所と死に方を探して迷い続けた結果ですよ。褒められた物じゃないです」

 

まともになって思う。良くあんな真似して死なずに何年も生きれてたなと。

 

「そう。それで、その改造コアの事なんだけど、やったのはジェイル・スカリエッティ。私の所属する組織の偉いさんに接触してきたみたいよ。それで、実働部隊の隊長だった私に紹介されたって訳。その関係で何度か話す事もあったわ。無人機の時に貴方の戦いを見て、貴方の正体と、来歴なんかを教えられたわ。警戒されてたわよ」

「……局内ならともかく、世間一般にはあんまり名前を知られてないんですけどねえ。やっぱり、超一流の犯罪者は厄介ですねえ」

「こっちにも仁義があるから、喋れる事は、改造コアはもう無い事と、ISを使った襲撃は無い事ね。人を使った方も、私や私を慕ってくれる子達が抜けるから、私の組織からは無いと思うわ」

「そうですか。信用は出来ないですけど、そういう情報もあるって頭の中には入れときます」

「それが正しいわね。私もそうするもの」

「……一つ良いですか?」

「何かしら?」

「スカリエッティがあなた達に協力した理由って分かります?」

「それ位は良いかしらね。本人曰く『大きな祭りの前座』らしいわ」

 

……という事は近い内に管理世界を舞台にした大きな何かをスカリエッティが起こすって事か。いつになるか分かんないし、そもそも本当の事かも分からない。まあ、これも頭に入れておこう。

 

「あー、面倒が続きそうだなあ……」

「でも、貴方には帰る場所があるでしょ?」

「……そういう情報って流れてるんですか?」

「学園内に私個人の情報提供者がいるのよ。ちょっとした縁で知り合った子がね。その人に教えてもらっちゃった。大事にするんでしょ?」

「もちろん。たとえ、どれだけ傷付いても必ず皆の元に戻りますよ。っと、もう帰ろうかな」

「それじゃあね、もう会うことも無いでしょうけど」

「人生何があるか分かりませんし、それは分かりませんよ。あっ、そういや、名前聞いてませんでした」

「スコール・ミューゼルよ」

「スコールさんですか。では、スコールさん機会が有ればまた何処かで会いましょう。それと、あなたといた他の二人の方にもよろしくと」

 

そう言って、僕は学園への帰路を歩いて行った。さて、ゆっくり夏休みの計画を立てますか。

 

 

八雲が去った後、スコールに近付く二つの影。スコールと同じくらいの女性と二人よりもやや低いがそれでも平均よりやや高い少女だ。

 

「スコール、最後何を言われたんだ? その様子だと結構ビックリする事の様だが」

 

少女の方がスコールに尋ねた。

 

「あの子、貴女達にも気付いていたみたいだわ。『二人にもよろしく』って」

 

その言葉に近付いてきた二人―スコールとマドカ―は目を見開く。

 

「あの、いけすかねえドクターの戯言かと思ってたけどよ、かなりの化け物だったんだな」

「そうね。能力、経験、どれを取っても超一流。彼がいる限り、IS学園への襲撃なんて成功しないわ。手を引いて正解よ。さて、私達も帰りましょうか」

 

そう言って三人も公園を後にした。

この後、三人の行方は知れない。ただ、良く似た三人組は世界中の様々な所で見られているので、充実した生活をしているのは間違いない。




という訳で、事件は終わりました。

こういう形にしたのは管理局最後の一年が確実に激動の一年になるので、高校生活位、恋人たちと思いっきり楽しんでもらおうと思ったからです。

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