IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版) 作:ピーナ
僕が校舎の外に出る直前、
「どうしたの、八雲?」
「何かあったの、八雲君?」
アリサとすずかに出会った。慌てて出て来た僕を見て、二人はそう問いかけた。
「ちょっと、未確認の何かが来ててこっち関連かもしれないから出撃するんだよ」
「アンタ、ちょっと前に怪我したばかりじゃない! それでも行くって言うの!」
アリサは強い口調で僕にそう問いただす。そりゃ、心配だよな。アリサはいつも僕の事気にかけててくれたもんな。だけど、これは譲れない。
「うん。だってさ、ここには僕の大切な人達が居る。僕が戦う理由はそれだけで十分だよ。だいじょーぶ。絶対に帰って来るから」
そう言って駆け出そうとしたら、手を掴まれた。掴んでいたのはすずか。
「どうしたのさ、すず……」
理由を聞こうとしたけど、それをすずか自身の唇に防がれて、止められる。
「私もアリサちゃんと同じで止めたいけど、八雲君を信じるよ。これは絶対に帰ってくるっていうおまじない。どう? 効きそう?」
いつものすずかとは違う、小悪魔めいた表情を見せながらそう言う。普段見せないその表情はこんな時に思う事じゃ無いかもしれないけど、新しい彼女の魅力を知れた。
「……効果」
抜群と続けようとしたけど、それをアリサにキスで止められる。
「すずかが帰って来るっておまじないなら、私のは怪我しないっておまじないよ! とっとと行って、さっさと終わらせて帰ってきなさい!」
顔を赤くしながらそういうアリサ。ホント、最高の女の子達だよ。僕は幸せ者だね。
「りょーかい。こんな可愛い彼女のお願いだから絶対に護るよ」
それだけ言って走り出す。……帰りを待ってくれる人がいるって良いなあ。つくづくそう思う。
さて、自分の為に、皆の為に、全力で行きますか!
「あーあ、行っちゃった」
走っていく八雲君の後ろ姿を見ながら、アリサちゃんはそう呟く。私からはアリサちゃんの後ろ姿しか見えないから、どんな表情をしているのかが分からないけど、声色からは不安を感じる。
「やっぱり、心配? アリサちゃん」
「当たり前でしょ。でも、アイツなら大丈夫。絶対に私達との約束を守る奴だから」
そう言いながら、振り向いたアリサちゃんは笑顔だった。こういう状況で笑顔を作れるアリサちゃんは本当に強いと思う。
「だね。だから、私達が出来るのは皆で帰りを待って笑顔で出迎える事だよね」
八雲君はよく私達の笑顔が好きだと言ってくれる。だから、疲れた彼の為に私達が出来る事は笑顔で出迎えてあげる事だ。
「……そうね。アイツが帰ってきたら私達が笑顔でお帰りって言うだけで、アイツは笑顔でただいまって言ってくれるもんね。ただ、それだけだけど、それがどうしようもなく嬉しいのよね」
今の時間は私とアリサちゃんが何年も望み続けてきた時間。少し形は予想外の物になったけど、今は凄く満足している。何より、大好きな人の笑顔を見れるようになったから。
「そうだね。……とりあえず、生徒会室に行こうよ。皆そこに居るだろうし、この事、伝えとかないと」
そこで八雲君の無事を祈りながら帰りを待とう。きっと無事に帰って来てくれるとは思うけど、それと祈る事は別問題。信じていても辛い物は辛い。
もしこんな時、私達になのはちゃんやフェイトちゃんみたいに魔力があれば一緒に戦えたのに……。こんな思いしなくても済んだのかもしれないのに……。
ISを装備して、IS学園から約15キロの地点で接敵した。
「マスター、相手はやはり無人機です」
叢雲からの報告は予想通りだった。
「やっぱり。さて、頑張りますか」
「そこでマスター、朗報が一つ」
「何?」
このタイミングで朗報も何もないと思うんだけどな。
「夜天の魔道書のかけらがデバイスになりました」
「……はあっ⁉」
朗報というより驚きの出来事なんだけど! 僕の持ってるかけらはあくまでかけらでしかないはずだ。最後の夜天の魔道書の主だったはやての最期で、その能力の全てを失った。はやてと守護騎士の皆が全てを使って破壊した。皆の願いで今僕の手元にある。僕の罪の証だったもので、僕が紡いだ絆の証。
それがデバイスになったってどういう事?
「解析していて、報告が遅れました。……性能を表示しますが、驚かないでくださいよ」
そう言って、叢雲がそのデバイスのスペックを見せていく。これは……。
「神様って言うのはとんでもないサプライズを用意してるんだなあ……」
だけど、このかけらに相応しい性能だね。
「ですね。名前はどうしますか?」
「スノーレイン、かな。あの日を思い出す言葉で、皆の力が絆が僕に融けたみたいで、良い感じだと思う。皆の力なら言語的にはちょっと違うと思うけどね」
一生忘れられない、雨から雪に変わっていって、一面が白の世界になった日。皆がしんしんふる雪の様に母なる海に融けた日。
今、皆との絆が僕の力になってくれる。
「それでよいかと」
「じゃあ、お披露目と行きますか! まずは、スノーレイン、リンゲモード!」
僕の左手の人差し指と薬指に指輪が装着される。
「まずは目を潰す! クラールゲホイル!」
強烈な閃光炸裂弾が辺り一帯を光で覆う。これほど強力であればハイパーセンサーすら誤魔化せる。管理局との戦闘の時、これに助けられたっけ。
誰より皆を心配していて、後ろから力強く支えてくれた人。
「スノーレイン、モードチェンジ! ハンマーモード!」
指輪はハンマーに切り替わる。
「カートリッジロード!」
ハンマーのヘッドの根元の部分にある薬室に装弾されるとともにヘッドの後ろ半分が推進器に変わる。
一気に加速して一体の無人機に近寄り、ハンマーを振り抜く。
硬い皮膚を持つ魔法生物のその皮膚や固いはずのなのはの防御すら打ち破ってたんだから、この程度の装甲は簡単にぶち抜ける。
あの時の僕とそんなに変わらない見た目だったのに、凄く頼りになった、一途でまっすぐな女の子
「ぶっ飛べ!」
吹き飛ばしながら、4機の無人機が一か所に固まる。
「次、モードチェンジ! ガントレットモード!」
ハンマーは僕の両腕に装着された手甲に変化した。
「動きを止める! 鋼の軛!」
海上に発生した巨大な圧縮魔力のスパイクが相手を貫き、動きを止める。
100メートル級の魔法生物の動きすら止めれるんだから、これ位は造作もなく止められる。
護る事、それを誇りを持って遂行し続けた守護獣。
「これで最後だ! モードチェンジ! ボーゲンモード!」
手甲が消え、僕の身の丈よりも大きな弓が現れた。
「この一撃で決める! シュツルムファルケン!」
弓から発射された魔力は命中と共に大爆発と超高温の炎を発生させ、相手を沈黙させた。
弓の一撃はベルカの騎士の奥義、だったっけな。その威力、確かめさせてもらったよ。
僕の剣の師匠で、不器用だけど、常に先頭に立って僕達を引っ張り続けてくれた人。
「ふう……。ありがとう、皆」
僕は剣十字のペンダントを見ながらそう呟いた。僕に力を貸してくれた、あの雪の日の夜に海鳴の海に融けていった僕の大切な仲間への感謝の言葉を。
だから僕は、皆の分までちゃんと生きないと。それが生きている僕に出来る事。だよね、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ。それと、会った事の無い管制人格も。はやてと一緒にそっちで見守っててくれると嬉しいな。……僕の頬を流れた何かは僕と皆だけの秘密だよ。
はい、このIFルートだから出来るサプライズ、「守護騎士の武器が八雲のもう一つのデバイスになる」です。
これ自体はIFルートをリメイクするに当たって新たに盛り込もうと思っていた事の一つです。そのために小さな伏線も用意しました。
使用しませんでしたがレバンティンのシュベルトフォルムとシュランゲフォルムも存在します。使用するか分かりませんけどね。これで、使える技が増えたますね~。
次回は……まだ、書ききれていません。もう一話挟んで夏休みに行く予定です。