IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版) 作:ピーナ
僕の彼女6人と同じ部屋で暮らし始めて数日、夏休みを翌日に控えた日の放課後、僕は織斑先生に呼び出される事になった。
まあ、事情は大体察している。臨海学校の時の福音事件の事だろう。呼び出された所に着いたので部屋をノックする。
「霧島です」
「入れ」
了承を得たからドアを開ける。そこには、織斑先生と何故か臨海学校にいた篠ノ之博士が居た。
「えーっと、何故篠ノ之博士もいらっしゃるのでしょうか?」
「それは、君の力に興味があるからだよ、やっくん」
「や、やっくん⁉」
「霧島、束はこういう奴なんだ」
「そ、そうなんですか……」
なんていうか想像していた篠ノ之博士とは全然違った。というよりどんな感じか想像もつかなかったんだけど。だって、篠ノ之博士は世紀の大天才で誰でも名前を知っていて何年か後に教科書に載るような人だもん。いや、織斑先生も同じ感じなんだけどさ。
「えーっと、それで僕はなんで呼ばれたんでしょうか?」
分かっているけど一応聞く。
「臨海学校の事だ」
「やっくんがモニターから突然消えた事、この前ここであった暴走と福音の暴走と君から出る私の知らないエネルギーの共通する事を聞きたいんだよね~」
「分かりました。最初に言っておきますけど、今から僕がいう事はぶっ飛んでますけど全て本当の事です。まず、篠ノ之博士のおっしゃった未知のエネルギーは、僕らの中で『魔法』と呼ばれている物です」
「「……はあっ⁉」」
おお、二人とも凄い驚いた表情と反応だ。ある意味レアじゃないかな?
「僕の場合だと、こんな事が出来たり」
そう言って右手の上に火の玉を出す。
「こんな事が出来たり」
火の玉を握りつぶした後、次は水の円盤を発生させる。
「こんな事も出来たり」
水の円盤を握りつぶして、親指と人差し指の間に稲妻を走らせる。
「まあ、こんな感じです。まあ、これは技術として体系化されているので武道と同じ感じですね。もっとも生まれつきの適性が必要ですけど」
それ以外の武道の違いは魔法は色んなものに取り入れられている事かな? 技術系の分野もそうだし、魔法を使用したスポーツも沢山ある。管理外世界の僕達から見るとそれは『魔法文化』と言えるものだ。
「それで、この魔法は地球じゃない世界、平行世界、別次元の世界発祥のもので、そこでは当たり前の技術です。そこで僕は何年も前から次元世界の平和を護る組織に所属しています」
「お前が妙に戦い慣れしていたのは……」
「それが理由ですね。魔法で空も飛べますし。それで、暴走体や今年度最初の事件の時もそうですけど、そこに失われた古代の魔法文明の解析不能の超技術の物品『ロストロギア』が使われていました。襲撃前に気付けたのはその反応のお蔭です」
「……そうか」
「ほへえ~、私がこの世に知らない事はまだまだたくさんあるんだあ。ねね、その魔法を使える適性って言うのは?」
「ちょっと、待ってくださいね」
僕は集中して自分のリンカーコアを具現化させる。
「これが魔法を扱う為に必要なリンカーコアと呼ばれるものです。基本的には遺伝されるものですけど、極稀に突然変異というか、自然発生する事もあります」
はやてとなのはがこれに当たる。一説にはこの自然発生した人間は軒並み極めて高い能力を持っている場合が多いと言われている。実際なのはは15、6で管理局のエースオブエースとまで言われているし、割と信憑性もある。
「といっても、この学園には居ないですよ。魔法を知っていない限り絶対にリンカーコアから微量の魔力が自然と流れ出ていて、それを僕が気付きますから」
それだけ言ってからリンカーコアを元に戻す。
「そうなんだー。少し残念」
「でも、こんなの個性の範疇ですよ。管理局の発祥の世界ミッドチルダの人口は約100億って言われてますけど、リンカーコアを持っているのは内4割位ですし、あってもそれを活かした職業についている人ってその4割の中で1割にも満たないと思います」
「個性の範疇か……そう思えれば女尊男卑など生まれなかっただろうな」
「それは違うと思いますよ。僕的にはそれ以前から女性専用車両やらレディースデイやらがあったから少なからず女性を優遇していたのはあったと思います。それがISが登場したので顕著になっただけだと思います。たまに行き過ぎたものも見かけますけど」
「私としてはそんな気さらさらないんだけどね~。むしろ、ISを発表して食いついてきた人は男の人が多いし、著名なISの研究者、技術者も男の人の方が多いし、男性も乗れるようにって研究してるから意欲高いもん」
多分、宇宙や空を飛ぶ事、パワードスーツにロマンを感じ、自分で使いたい大人子供が一杯いるんだろう。
「この状況を当たり前だと思わせない事が今後のISを発信した私達がやる事だな。っと、話が脱線していたな」
「ですね。で、ロストロギアは魔法でしか止める事が出来ません」
「なるほどー、だから、あの時怪我を押してでも一人残ったんだね」
「そうです。あの時あそこで何とか出来るのは僕だけでしたから」
ロストロギア絡みだから、あれは僕の仕事だ。と、ちょっと前の僕なら言ってただろう。でも、あの時の僕の意志は、「今の僕を形作る人たちを護りたい」だけだった。
管理局員とか二番目の男性操縦者とかの肩書もなにも関係無い。ただの霧島八雲としての選択だった。
「お前しか止められないのならそれを咎められないが……死んでくれるなよ? 寝覚めが悪いからな」
「分かってます。彼女達を泣かせたくありませんし」
僕と同じ気持ちを彼女達に味わせたくない。だから、僕は必ず生きて帰ってくる。彼女たちの為に。なにより自分の為に。
「ああ、IS委員会からの通達でお前と一夏は世界的に一夫多妻制を認められたのだったな。それで、バニングス社から学園にお前がバニングス、月村、更識姉妹、布仏姉妹と付き合っているから同じ部屋にしてやってくれと連絡があった」
「……マジっすか?」
織斑先生から話されたまさかの真実。ってことは社長は、アリサのお父さんのロイ・バニングスさんも多分お母さんの杏奈・バニングスさんも知ってるって事だよなあ。会社に行かないって事は出来ないけど、行きたくねえ……。
でも、僕が選んだ事だし、覚悟決めるか。
と、僕が着々と夏休みの覚悟を決めていたら、部屋に何処からかの通信が入った。
『織斑先生! 学園の海上約30キロの地点に未確認の飛行物体を発見。こちらに近づいてきます!』
山田先生はよっぽど慌てていたのか、オープン回線でその連絡を入れた。
「山田先生、霧島です。その飛行物体の数って分かりますか?」
『き、霧島君⁉ えっと……、4機ですね』
「ありがとうございます。それじゃ、僕が迎撃してきます」
そう言って僕は立ち上がり、部屋を出ようとする。
「待て、霧島」
「待ちませんよ。どれくらいの速さかは分かりませんけど、残された時間はほとんどありません。教師部隊を編成するにしても、専用機持ちを招集するにしてもね。こういう時は行ける人間は行かないと。では」
それだけ言って、部屋を後にした。
八雲が去った後の学園の一室。
「仕方ないよ、ちーちゃん。やっくんはこういう非常事態に関してはプロなんだから、自分がどう動くべきなのか良く知ってるんだし」
「それは理解しているつもりだ。だがな、教師として大人として不甲斐なさを感じてしまうんだよ」
「流石の束さんも未知の物に対しては何も出来ないからね~。でも、高校生にもなるとほぼ大人だからねえ。特にやっくんはそれが顕著だよ。だから、妙に干渉するより自主性に任す方が良いんじゃないかな。本当にバカをやった時だけ怒れば良いよ」
予想外の束の発言に千冬は
「……お前、本当に束か?」
とかなり酷い言葉を発した。
「酷いよ、ちーちゃん! まあ、色々あって、今一人の子供と一緒に暮らしているからね~。考える事も多いんだよ」
「って、ちょっと待て! 子供だと!」
「そだよ~。事情とかは今度ゆっくり話すよ。それより、やっくんの戦いを見ようよ。いざという時に動けるようにさ」
ここからはIFルートオリジナルで進んで行きます。
今回は説明回だったのですが、本編では原作の主要メンバーに話した所を、本作では最低限の人間にしか話していません。理由として現在の八雲の人間関係があります。
次回は今回のお話の流れでの戦闘回です。1つ、このIFルートだから出来るサプライズを考えているので、楽しみにしていただけると嬉しいです。
出来れば今日中、遅くても明日には上げると思います。