IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版)   作:ピーナ

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二話連続投稿です。ここから見た人は一つ戻って、前のお話からどうぞ。


第十八話 繋がる想い

僕が目を覚ますと、目に入ったのは蛍光灯の光と見知らぬ白い天井。あの怪我だから、どこかの病院だろう。体中に痛みがあるって事は僕の体は五体満足らしい。……我ながら呆れるほどしぶといよ。自分の生命力に感心するね。

 

「「「「「「八雲(君)!」」」」」」

 

僕の視界の中に入って来たのはアリサとすずかと楯無さんと簪と本音と虚さん。皆一様に心配そうな顔。……やっちまったなあ。

とりあえず、喋りやすいように体を起こす。

 

「アタタタ……、皆心配かけてゴメン」

「ゴメン、じゃないよ! ここまでボロボロになって!」

「ホントだよ。こんな無茶しないでよ。私達がどれだけ心配だと思ってるの!」

「……見てて、心臓が止まるかと思った」

「いきなり画面からいなくなっちゃうんだもん」

「私もそうですが、皆さんそれだけ心配されてたのですよ」

「……ごめんなさい」

 

五人にそう言われて僕は謝る事しか出来ない。それに怒ってくれるって事は本当に僕の事を心配してくれたって事の裏返しだから。それに何人か目が赤いし。

でも、さっきからアリサが一言も喋らないな。……それほど、怒ってんのかな?

 

「えっと……、アリ」

 

僕が喋ろうとした時、アリサは僕の着ていた衣服の胸元を引っ張って、自分の方に近付けて……僕にキスをした。

………………えっ? ええっ⁉

 

「「「「「んな⁉」」」」」

 

驚きの声を上げたのは見ている他の五人。そりゃそうだろう。でも、僕が一番大きく驚いてる。

長いキスの後、離れたアリサは、

 

「私はねボロボロのアンタなんて見たくないのよ。でも、私が好きな八雲はなによりも自分の意志を貫く八雲よ。アンタが自分の生きる意味が見つからないって言うなら、迷ってるって言うなら、私がその意味になるわ! だから八雲、アンタは意地でも生き抜きなさい!」

 

そう言った。

答えようとした時、また襟元を引っ張られた。次はすずか。アリサと同じくらい長いキスの後、

 

「私もね、八雲君にこんな危ない事して欲しくないよ。でも、それを無くしたら、私の好きな八雲君じゃなくなるって言うのも分かってるんだ。だから、私がこれからの八雲君の帰ってくる場所になるから。それが私の気持ちで、私の出来る事で、私がしたい事だから」

 

……僕の脳はオーバーヒート寸前ですよ。そう思ってると三度引っ張られる。三人目は楯無さん。またまた長いキスの後、

 

「私は二人ほど長い時間八雲君と居たわけじゃないけど、それでも、こんな体になるまで無茶をして欲しくないのよ。でも、だからと言ってそれで八雲君の意志を否定するつもりもないし、それがらしさなんだから良いと思うし、そのらしさに惹かれたんだと思うの。だから、私は君を支えたい。これからずっと」

 

いっぱいいっぱいだけど、まだまだ終わらない。続いては本音。

 

「私は~ここに居る皆ほど何かが出来る訳じゃないけど、それでもきーりんの横にいる事は出来るよ。きーりんの横でならいつも笑顔でいれるよ」

 

この展開じゃ、まだ続くよね。その次は虚さん。

 

「私も言いたい事は皆さんと同じです。八雲さんの背負っている色々な物を少しでもお手伝いできるように、いえ、貴方の横で貴方のこれからをお手伝いさせてください」

 

そして、最後は簪。

 

「……私は皆ほど、八雲君を知っている訳じゃないけど、君への想いは本物だよ。だから、これから君と一緒に色々見ていきたいし、君の事知っていきたいな」

 

色々あり過ぎて一周回って冷静になれた。

……これは、皆それぞれ、僕への告白紛いのプロポーズって受け取ってもいいのかな? 良いよね? でも……

 

「……どうして僕なのさ。僕は過去を引きずって、迷って、何かに縋らないと生きれない、弱くて女々しい人間だよ」

 

今の僕は自分自身に自信が無い。皆の気持ちを受け止めれるほど強くない。

 

「過去を引きずったり、迷ったり、何かに縋る事がそんなに悪い事? 人なんだから、弱い所があるのは当たり前だよ」

「私は、ううん、私達はそんな八雲君も受け止めるよ」

「そうですね、むしろ私達にそういう姿を見せてもらえるのは信頼されているって事でしょうから、嬉しい事ですし」

「確かに。ていうか、自分を過小評価するのは止めなさい。アンタは誰よりもまっすぐで一途で、やり抜くと決めたらそれを貫き通す強さを持った人間よ」

 

……はやて、僕にもまた人を好きになるって気持ちは残ってたみたいだよ。あの時ああは言ったけど、僕には貴女くらい好きになれる人が出来るとは思わなかったんだ。

貴女を合わせて7人もの女性が僕の強い所も弱い所も纏めて受け止めて好きでいてくれる人がいる。それだけで僕は凄い幸せ者だと思う。

 

「皆、ありがとうございます。ちゃんと皆の気持ちを受け止めて、自分の納得出来る答えを必ず出します。……それまで待っててくれますか?」

「「「「「うん(ええ)」」」」」

 

五人は返事をくれたけど、切っ掛けを作ったアリサ本人だけ返事が無い。……やっぱり、優柔不断は駄目なのかねえ。

 

「……ねえ、八雲。私がなんであんな強硬手段に出たと思う?」

「自分で言うのもなんだけど僕を見かねてじゃないの?」

「そうなんだけど、告白ならこの二人が居ない所で出し抜く事も出来たでしょ?」

「まあ、確かに」

 

と言うか、そっちの方が普通か。この場で切り出したアリサの気持ちは少し分からない。……なんでだ?

 

「その答えがこの封筒の中に有るんだけど」

 

そう言って、持っていた封筒を手渡す。

 

「何これ?」

「政府、ひいてはIS委員会や国連からのアンタに関する書類。ウチの会社に来たのをパパに渡されたのよ。中身は私とパパしか知らないわ。そこにこの手段に出た大きな理由があるのよ」

 

なんだろ? 気になったので、僕は封筒を開けた。そこには一枚の紙にワープロで出力された文字が。

内容があまりにも信じられなかったので、何度も読み直す。……それで内容が変わる訳ではないけどさ。

 

「アリサ、これは正気なのか? これ、要約すると、一夫多妻制OKって事だろ」

「「「「「ええっ⁉」」」」」

 

皆の反応は正しい。僕だって内心すげー驚いてるし。

内容を簡単に言うと、「男性操縦者の搭乗は遺伝と関係あるのかの調査のために多数のサンプルの為に、自由国籍と一夫多妻制を認める」との事。

 

「正気みたいよ。……私は八雲が好き。でも、ここに居る皆を裏切って付き合う気も無いわ。だからアンタが誰かを選んだら、それで良いと思ってた。だけど、アンタが無茶して、こんな状態になったって聞いて、この知らせを受けた時に悠長な事をやってるヒマは無いって思ったの。世間的にも私達的にもね。だから……」

「告白したって事?」

「そう。それに、アンタは今まで沢山苦しんできたのよ。だから人の何倍も幸せになる権利があるの。だから、私達がその何倍もの幸せをアンタにあげる。絶対に子供や孫に囲まれて良い人生だったって言えるような人生にしてやるわ」

「えっと……展開が突然過ぎて混乱してるけど、八雲君はずっと自分を殺して来たんだから、わがままになっても良いよ? 私としても皆一緒に見てくれるのは嬉しいよ。これでぎくしゃくしたくないって気持ちもあるもん」

「アリサほどは言えないけど、私達を好きでいてくれるなら、それで八雲君が幸せになれると思えるなら、それで良いと思うわ」

「皆が仲良くならそれで良いんじゃないかな~」

「だね。世界が認めたのなら、それに甘えれば良いんじゃない?」

「ですね。苦労は皆で分け合って等分、幸せは皆一緒で等倍にきっとなりますよ」

 

……何で、皆はこんなにも僕を甘やかしてくれるのかな。

 

「その気持ちにもたれかかりたくなっちゃうよ……」

「良いわよそれくらい。今まで一人で色々やって来たんだから、これからは私達に頼りなさい。私達はそれが嬉しいんだから」

「何時まで経ってもずっとはやてを想い続けるよ?」

「それも良いわよ。アンタがどれだけはやてを想っていたかなんて、この数年のアンタを見れば一目瞭然なんだから。……それに、そんな八雲だから私達は好きになったのよ。ねっ?」

 

アリサの言葉に皆は頷く。

 

「そっか。……僕は貴女達の笑顔を護るためにこれからを生きます。貴女達の笑顔の為に僕は必ず生き続けます。だから、ずっと僕のそばで笑顔で居てください。それと、一方的な幸せは要りません。僕達が皆で幸せにならなきゃ意味がないんです。僕は僕を含めて皆が幸せになるために頑張りますよ。だからそんな僕の生きる理由になってください。帰る場所になってください。僕をずっと見守っていてください」

「「「「「「もちろん、喜んで!」」」」」」

 

真っ暗で先に何も見えなかった僕の人生はIS学園に入った事で大きく変わった。後で振り返ると多分こういうのを人生の転機だったと思うのだろう。

とりあえず、まずは怪我の治療からだな。身体能力強化の応用で治癒能力の促進も出来るし。その代わり、ずっと魔力を消耗し続けるけど、彼女達にいつまでも心配かける訳にはいかないからね。桁外れの魔力量を持ってるからこれ位は何とかなる。

これからは……どうしようか? その辺も皆と話し合ってゆっくり決めよう。最終的に決めるのは僕かもしれないけど、それまでの過程で相談が出来る。もう何もかもを背負い込む必要はない。僕には支えてくれる人たちが居るのだから。

 

 

 

 

はやて、自分で選んだ道だけど、どうやら僕は傍から見たらかなり面白おかしい人生を歩みそうだよ。まあ、それを空の上から楽しんで見守っておいてくれると嬉しい。常識から考えたら結構酷い事だから今度そっちに行った時にちゃんと謝る。だから今は勘弁してくれ。

 




今週はこの後、色々あって更新できそうにないので急いで上げました。

この後も何話かは大体出来ています。なので、そう間を置かず更新できるとは思います。



この二話は特に変わらず、前と同じ感じです。もうここまで来ると、今の八雲はただの幸せ物で爆発しろとしか言えません。
ただ、世にも珍しい「娘さんを僕にください」を四回ほどやらないといけないとか、他の幼馴染への説明とか、デートとかネタはあります。事件も解決してませんしね。亡国メンバー、特に原作であまり書かれていないので自由度の高いスコールは本編のままで行く予定です。しかし、事件の展開は変えるつもりです。具体的には……前倒しですね。その辺はまだ構想止まりなのでどうなるか分かりませんけどね。
ある程度書ききったら、外伝として、このIFルートのSTSを書いても面白いかもですね。まあ、これらは予定は未定という事で。



最近、ISの新作案がまた湧いてきました。ライトノベル「紅」の世界観を混ぜ込んでみようという物です。といっても、残酷な描写が出来ないので設定を少し使う感じになりそうですけど。
オリ主物で主人公は「紅」の主人公が修める流派、「崩月流」の直流の人間であり、一夏とは同い年。
ISを動かせるのは一夏、弾、オリ主の三人。
一夏、弾の二人は共に崩月流に弟子入りしかなりの強化済み。
ヒロインはオリ主が簪(もしかしたら更識姉妹)、一夏が鈴、弾が虚(もしかしたら布仏姉妹)。
アンチ・ヘイトがあるかも。
と、こんな感じです。
これを考えたのは最近、簪ヒロイン書きたいなと思ったのと、鈴は可愛いから一夏のヒロインにしたいなと思ったのと、6年ぶりに紅の新作が出たからです。
まあ、どうなるか分かりませんけどね。


次回は日常パート、八雲と彼女達の新たな生活のお話になります。

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