IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版)   作:ピーナ

17 / 51
福音戦です。


第十五話 イベント、それは事件のフラグ

さて、学園的には臨海学校のメインイベント(生徒的には初日の自由時間がメインイベントだろう)、一日通しての装備のテスト、楯無さんや虚さんに言わせる所の『デスレース』の始まりだ。

『デスレース』の所以はこのテスト朝の9時に始まり、日が沈んで夜の8時までほぼノンストップで行われる。全員が休憩するのはお昼ご飯の為の30分ほど。後は分かれた班ごとに休憩を合間合間に取る。大体9時間は動かないといけない。終了後、大浴場に行く体力も無く、泥のように眠る生徒が続出するらしい。……どんだけ過酷か想像も出来ないなあ。ってかしたくない。

専用機持ちは機体、というよりその国家事の開発事情によるらしいけど、今年は多いので、その分他の企業も力を入れていて、送られてきたものも多いらしく、そっちのもしないといけないから、例年より大変だろうと予測していたのは虚さん。

まあ、管理局の装備のテストをやった事も一応あるし、長時間の休みなし労働も得意ではあるから、そこまで問題も無いだろう。

ちなみに、労働の方は言われたからでなく、自主的にだ。

生き方を切り替える事を選んでから、とりあえず、なのはやフェイト、ユーノやクロノなど魔法関係の友人や知人には連絡だけしておいた。その時、リンディ提督に「貴方を連れてきたのは私だったから、『有給を取るように』とか『働き過ぎだから休ませろ』ってせっつかれたわよ。合計で250日くらいは取ってないもの」と小言を頂いた。

普通の休日すら満足には取ってなかったし、色々迷惑かけて居たんだなあと再認識した。その節は本当にすみませんでした。今度、士郎さんと桃子さんにお酒を見繕ってもらおう。お詫びの品として。

 

 

 

 

なんかよく分からないけど、緊急事態が起こったので、装備のテストは中止になった。

専用機持ち―僕、織斑君、オルコットさん、凰さん、デュノアさん、ボーデヴィッヒさんについさっきISの生みの親篠ノ之束博士に専用機を貰った篠ノ之さん―と先生方のサポートとして生徒会役員の本音と代表候補生の簪は昨日の夕食の場所になった大宴会場に他の教師陣と共に集まり説明を受ける事になった。

纏めると、数時間前ハワイ沖で稼働試験をしていたアメリカ・イスラエル共同開発の軍用IS『銀の福音』が暴走。監視衛星などを駆使して航路を予測、残り一時間ほどでこの付近の海上を通過するらしい。

僕達にはそれの捕獲、もしくは撃墜が命じられた。

……いくつか言いたい事があるんだけど。まず、これを収集するのは在日アメリカ軍だろ。次点は自衛隊。少なくとも学生である僕等のやる事じゃ無い。しかも、日本には被害が無いのに、それをわざわざやらせるなんて意味が分からない。どんだけ、自分のメンツが大事なんだよ。

それと、今の作戦会議。これは必要なのか? やらないといけないのは捕獲か撃墜。時間は一時間も無い。そんな中で悠長に作戦会議をしている暇があるのか甚だ疑問だ。こんなものは指揮官が適性を見極めてスパッと指示をだすものだろう。

まあ、教師である織斑先生にそれを求めるのは酷か。

僕がそんな事を思っている間にも、出撃メンバーやら何やらが決まっていく。

作戦は超高速下での一撃必殺を当てる、一撃離脱。メンバーは……どうやら、織斑君になりそうだ。

ただ、福音は超音速飛行中。織斑君の足になるものが必要だ。

大体のISの最高速度は所謂遷音速、旅客機の飛行速度位の速さで飛行する。音速に少し届かない程度だ。僕達の専用機もそうなっている。

対する福音は現在マッハ2に近い速度で飛行中。単純に倍以上の速度で飛んでいる。この速度差を埋めるのはかなり難しい。

僕はやろうと思えばできるけど、出撃するのは織斑君で、彼は素人だから、無理だろう。

結局、篠ノ之博士の推薦もあって、織斑君の足の役割は篠ノ之さんが担う事になった。……大丈夫かなあ? 篠ノ之さんどう見ても浮かれてるし、ヘマしなきゃいいけど。

 

「万全を期すためだ、霧島、お前も普通の速度で良い。付いて行け」

「了解」

 

もし、第一陣で出るんだったら確実に断っていた。だって、何の利もないのにケンカ売りに行くなんて、絶対に嫌だし、しかも命の危険もあるんだから、断るに決まってる。これは強制じゃないわけだし。たとえなんと言われようとも今の僕は理由がない限り命を賭けるつもりは無い。

後詰を引き受けたのは、ここで断って、何かがあると寝覚めが悪いから。ただそれだけだ。二人で決着が着いたらそれはそれで良しだしね。

 

 

 

「ちーちゃん」

 

織斑、篠ノ之、霧島の三人が海岸で出撃の準備をしている間に私達は指揮のための準備を進めている。その時に、まだ部屋に居た束が私に話しかけてきた。

 

「何だ、束」

「あの二人目の子そんなに強いの? 単独戦力としていっくんと箒ちゃんに付いて行かせるんだから、よっぽどでしょ?」

「強い。明日モンドグロッソを開いたらブリュンヒルデになる位にはな」

 

仕事上、世界のIS業界の情報は自然と入って来るし、現役時代に戦った人間も何人も居る。その者たちと比べても霧島は比べものにならない程高い腕を持っている。技術だけでなく、戦いが上手い。それこそ、この点では私より上だ。これは想像ではなく確信だ。

 

「ちーちゃんの目を信用しないわけじゃないけど、それは流石に嘘だ~」

 

束の言葉も最もだ。いくら束にとって信用できる私の言葉でも、私が言ったのはISに乗り出してたった三か月の男性操縦者が現在世界最強だと言っているのだから。

 

「それは、見てみればお前も分かるさ。とにかく、現在ここに居る中で最も信頼のおける戦力であることには違いない」

 

戦闘能力だけではない。この前の無人機の一件で見た、判断力の高さ。後方からの私達の指示よりも霧島の方が的確かつ素早く判断を下せるだろう。この非常事態を任せるだけの力は持っている奴だ。……教師として、大人として生徒、子供に任せるしかないとは不甲斐ないな、私は。

 

 

 

海岸を出発してすぐ、篠ノ之さんは一気に加速して空域に急行した。なんていうか……浮かれてる? 継戦時間を考えなければ速度をあげられるんだけど、それをやると戦えないから、このままで行くしかない。

僕が現場に到着すると、負傷して意識を失ってる織斑君がいた。……ていうか、篠ノ之さんはまだ福音が健在で何をしてるんだよ! ここは試合会場じゃなくて実戦の場なのに!

 

『織斑先生、織斑君が負傷していて、篠ノ之さんも戦意喪失。誰か回収に回してください。福音は僕が引き付けます』

 

まずは報告と意見具申。映像は見えているはずだから、この場は最低限の物で良い。

 

『分かった。残った専用機持ちに出撃させる』

『お願いします』

『この時点で作戦は失敗だ。織斑、篠ノ之両名の退却完了後、頃合いを見て退却しろ』

『了解です』

 

って、そんな間にも攻撃されそうだし。

 

「カートリッジロード。Nバレット、ファイア」

 

誘導弾を今僕が扱えるギリギリの数出して二人への福音の攻撃を迎撃する。

福音の攻撃の第一波をしのいだら、そのまま一気に加速して、押し込み二人から福音を引き離す。とりあえず、攻撃の対象を僕にして、二人から引き離して、時間を稼げばいい。多分、かなり無茶をすれば勝てない事は無いと思うけど、そんな指示は出ていない。情報も少ないし、ここは偵察に専念しよう。使えるかどうかは分かんないけどね。

その後、福音は僕が積極的に仕掛けてこない事に気付いたのか退いて行った。なので僕も織斑先生の指示に従って旅館に戻った。




福音戦はそう簡単には終わらないんですよ!
という訳で福音戦前編をお送りしました。戦闘は凄く短かったですけどね。

今回の話の変更点は織斑先生目線の部分を作った所。原作と違って、ただ、束の意見を入れるだけでなく、必要だと思う手段を取りました。
責任者として、教師として、大人としての思う所もありつつって感じですね。


次の話も大体、仕上がっているので早めに上げようと思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。