IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版)   作:ピーナ

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この作品初の出来事が起こります。


第十四話 私のこれから

私が彼、二番目の男性操縦者、霧島八雲に興味を持ち始めたのは、数週間前、学年別トーナメントが中止になった頃だ。切っ掛けは私の幼馴染である本音が良く話すようになったからだった。

それまでも噂で「強い」だの「怖い」だの「気味悪い」だの悪い事は耳に入って来てはいた。でも、本音から聞くのは真逆の「真面目で優しい」という物だった。強いだけは一緒だったけど。その強さを目の当たりにしたのは関係者以外立ち入り禁止になっていた霧島君のトーナメントの再試合だった。

私はその試合を本音に頼んで立ち会わせてもらった。理由は私の姉であり、学園の生徒会長でロシア代表の更識楯無との戦いだったからだ。

その試合、霧島君は圧勝とまではいかないけど、苦戦せずに勝った。お姉ちゃんが弱かったわけじゃない。少なくとも私なんかより遥かに強い。でも、霧島君はそれを超えた。霧島君の事を知らない人が怖いというのも分かる気がする。力だけを判断材料にするのなら。でも、私は本音はそんな事で嘘を言う子じゃない事を知っているから、きっとその強さに彼なりの理由があるのだと思った。

そして、臨海学校の初日、一人で専用機開発のための作業をしようと思っていた私は本音に捕まり、偶然見つけた霧島君に預けられた。

彼の部屋に行って、自分の息抜きついでに、何をしているか、何でしているかを彼に話した。

今思うと私は誰かに話して楽になりたかったのだと思う。でも、私は引っ込み思案で人付き合いが上手い方じゃないからずっと、抱え込んでた。本音やそのお姉さんの虚さんも居たけど、お姉ちゃんにも近しい人だから、言い出せなかった。霧島君も近いけど二人よりは遠いだろうし、何より、彼の雰囲気なのか、話し易かった。

話してみて本音の言っていた優しいの意味がよく分かった。

多分、こういう時に一番簡単なのは慰める事。次は答えを提示する事だと思う。でも、霧島君がしたのは上手く話を持っていって、私に答えを出させる事だった。

他人に出された答えと自分で出した答え。どっちが納得できるかといえば後者に決まっている。そこまで上手く導いてくれた事と、自分で自分を追い込んで視野狭窄になってた私を目覚めさせれくれた事。それだけで感謝の気持ちでいっぱいだ。

彼の優しさに触れた事で私には二つ気持ちが生まれた。

1つは一度お姉ちゃんとちゃんと話し合ってみようという事。私はここ数年意図的にお姉ちゃんに壁を作っていた。切っ掛けはお姉ちゃんの言葉からだったけど、私はそれで生まれた自分の気持ちを押し殺して壁を作った。

でも、そんな事をしても、やっぱり私はお姉ちゃんが大好きで、尊敬している事には変わらない。それに気付けたから言わないで悩み続けるより思い切ってぶつかってみようと思った。

もう一つは……私が霧島君の事を好きになったって事。自分の事ながら優しくされただけで惚れちゃうなんて単純だなあと思うけど、そうなっちゃったんだから、仕方ない。

でも、一発でそう思っちゃうくらい、霧島君のううん、八雲君の横は居心地が良い。同い年とは思えない位の落ち着き具合が私の心までを落ち着けさせてくれるのだと思う。

少し話して一緒に居ただけの私がこうなんだから、お姉ちゃんや本音、虚さんもそうだろうし、八雲君の昔からの友達でそういう人もいるだろう。負けたくないとは思う。でも、これで仲直りしようとしているお姉ちゃんや、幼馴染で親友の本音や頼りになるお姉さんの虚さんと仲が悪くなるのも嫌だ。……とりあえず、本音に相談してみよう。

 

 

 

夕食を食べた後、私は本音と二人でロビーの談話スペースに居た。皆はほとんどどこかの部屋で集まってお話をしているみたいだけど、二人で話したいからここにした。丁度、ロビーには人がほとんどいないし。

 

「それで、かんちゃん。お話って何~?」

「えっとね、今日八雲君にいろいろ話して、やっぱり、私はお姉ちゃんの事が大好きだって気付いたから、仲直りしようと思ったの。それで、本音にも手伝ってほしいなって思って……」

「良いよ~。むしろ、私とお姉ちゃんはかんちゃんとなっちゃんには仲直りしてほしいって前から思ってたもん」

 

……駄目な姉妹でゴメンね、本音。後、おねえちゃんの呼び方が昔に戻ってる。素が出てるのかな?

 

「帰ったらお姉ちゃんにも連絡して、早く仲直りしちゃお? おじさん、おばさんも心配していたし、仲直りした姿見せた方が良いよ~」

「……そうだよね」

 

お父さんもお母さんも心配してくれてたのは分かってた。だけど、それすら今までの私は遮断していた。気付いていたのに気付かないふりをしてた。それだけ自分の事に一生懸命だったと言えば聞こえはいいけど、それだけ自分の事しか見えてなかった。

 

「良かった~。きーりんに任せて正解だったよ~」

「やっぱり、あそこで八雲君に任せたのは狙ってたの?」

「うん! きーりんをかんちゃんに紹介したかったし、きーりん、優しいから親身に話聞いてくれるかな? って思ってね~」

 

確かに、八雲君は初対面の私にも優しく接してくれたし。話も聞いてくれた。お蔭で迷っていた自分の心に結論を出す事が出来た。

 

「それとね、本音。私……八雲君の事好きになっちゃった」

「そっか~」

 

アレ? 結構あっさり受け入れられた? 反対されると思ってたから意外だった。

 

「……怒らないの?」

「どうして? きーりん優しいし、カッコいいし、強いもん。好きになるの分かるよ。それに人を好きになるのは自由だもん。かんちゃんがきーりんを好きになるのもそれはかんちゃんの自由だよ」

「そっか……」

「後、なっちゃんもお姉ちゃんもきーりんの幼馴染も好きになってるんだから、かんちゃんが惚れちゃうのも予想してたもん」

「やっぱりお姉ちゃんや虚さんもなんだ。なら、なんで告白しないの?」

「それはねー、色々きーりんにあったんだよ。きーりんが暗かった理由が最近ようやく解決して、自分の事で一杯だから、私達の気持ちを押し付ける訳には行かないよ~」

 

皆、八雲君の事を第一に考えての事だったんだね。私も見習おう。でも、まずは八雲君を知る事から始めよう。

 

「本音。私、もっと八雲君の事、知りたいな」

「良いよ~。あっ、でも私は説明上手じゃないし、もうすぐ消灯時間だから、帰ってからお姉ちゃんやなっちゃん、きーりんの幼馴染達を交えてゆっくり話す機会を作るよ~。だから、それまでになっちゃんと仲直りしちゃお? 私達も協力するからさ~」

「分かった。頑張る」

 

もう私の心は決まった。

お姉ちゃんと仲直りして、専用機も色んな人に協力してもらって作って、自分の腕も磨いて、胸を張ってお姉ちゃんの妹だと言えるようになる。それと同時に『更識楯無の妹』じゃなくて『更識簪』だと周りに認めさせる。そのために全力で進んで行こう。

八雲君にももちろん手伝ってもらおう。力を貸してくれるって言ってたし。その間にお互いがお互いの事を知っていければいいと思う。

 

「ありがとう、本音」

「ほえ? どうしたの、かんちゃん?」

「私の為に色々してくれた本音にちゃんとお礼が言いたかったの。今、すっごくすっきりしてるのも、こうやって八雲君の事を好きになれたのも本音のお蔭だから」

「なんか、恥ずかしいな~」

 

少し顔の赤い本音。

幼馴染だからこそ、面と向かってお礼を言う機会って減ってた気がするし、成長していくにつれて主と従者の関係が出てきちゃってたからね。

だけどやっぱりそんな関係より、本音には幼馴染の親友で居て欲しい。……うん、今度から弱い所、家族に相談しにくい事、色んな事を本音に打ち明けていこう。

私の自慢の親友は受け止めて包み込んでくれる優しさを持った最高の幼馴染だから。




艦これE-3突破できたのでアップします。このノリでE-4、E-5が突破出来たらその都度更新していこうかなと思ってます。今回は出撃6回で甲作戦クリア。割とスムーズに行きました。
これを読んでいる提督さんはメッセージに攻略のコツやお勧めの編成とか送ってくれると嬉しいです。



本編の方ですけど、完全新作です。
そして、初めての全編一人の目線で進みました。多分、まだ、八雲すらやってないはずです。
簪もヒロインに! 修正前の更識姉妹の仲直り回を書いていて、ワンチャンアリかなと思い、こうなりました。

次回は福音戦。頑張って書きます!

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