バカとテストとクロガネカチューシャ   作:おーり

7 / 13
冗談で投稿したネギまが一番お気に入り登録数が多いという現実にちょっと泣いた
世の中なにが起こるかわからないものですね

それはともかく
第一巻分最終話
短いですが、どぞ


『決着をつけよう』

「試獣召喚≪サモン≫! 教科は科学! 姫路瑞希にダイレクトアタック!」

 

「試獣召喚≪サモン≫、すみません得意分野です」

 

 

 勢いに任せて攻撃表示を示してみたようであるがあっさりと返り討ちにされ、自称モブ少女佐藤はがっくうと膝から崩れ落ちた。

 世の中そんなに甘くは無い。というよりも、わかりきっていた結果に泣き崩れる。

 

 

「勝てるわけが無いのよぉぉぉ……!」

 

 

 きっと、いいことあるさ。

 

 

  『第6話

   決着をつけよう』

 

 

「って、あれ!? 私の出番これで終わりですか!?」

 

 

 なんだか驚愕の表情でメタな台詞を叫んだ姫路嬢であるが、それに付き合っている暇は無い。

 雄二がそして霧島翔子が、大将戦を行うべく舞台の中央にて向き合っていた。

 

 此処にたどり着くまでいろいろあった。

 Dクラスを圧倒し、Bクラスを脅迫し、明久はメイドになり、土屋は鼻血の海に沈んだ。

 思い起こせばろくなことが起こっていないが、少しずれた世界線ではもっと酷い被害も起こっているのだろう。それと比べれば、そう大した痛手でもない。そう思うことにしておく。そう思わないとやってられないから。

 感慨にそう耽り、雄二は自身の幼なじみと相対する。

 

 

「さて、とうとう大将戦だ。教科はこっちが指定してもいいな?」

 

 

 順番通りなら自陣の番でもある。

 確認の意味で聞けば、霧島はこくりと静かに頷いた。

 

 

「教科は日本史。レベルは小学生クラス、上限は百点だ」

 

 

 雄二のその発言に、Aクラス勢が一斉にざわついた。

 これは予めFクラスには通達しておいた内容だった。それを説明したときの話を、雄二は思い起こす。

 

 

   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

「その条件じゃあ100%勝つことはできなくない? 雄二にしてみれば珍しいね?」

 

「そうか?」

 

「うん。勝つためならド汚い手段を容赦なく使って勝とうとするじゃないか、Bクラス戦みたいに」

 

「まあ、ほめ言葉として受け取っておいてやる」

 

 

 明久の言うことも尤もではあると自覚しているのか、使い慣れたカッターで攻撃することもなく話を続けることにする。

 

 

「まず、俺たちの学力じゃあ試召戦争であってもAクラスには勝てない。たとえば、戦域を拡大し一対多で個人攻撃しても、より強力な個をそれぞれが保有しているAクラス相手じゃ押し切れるかわからんし、そもそも俺たちも経験が足りない。連携なんぞできるか」

 

「うん、それはわかる」

 

「だから、下手に戦火を広げずに代表同士の一騎打ちで決める。3戦または5戦となっても、うちにはAクラスに匹敵する戦力がいる。代表≪俺≫にお鉢が回らなくっても勝つ可能性が出てくるわけだ」

 

「肝心の雄二の勝利がないのう。どうやって勝つつもりじゃ?」

 

 

 結局他人任せな策であることに若干の呆れを見せつつ、秀吉がそう尋ねた。

 

 

「勝機ならある。俺は翔子の弱点を知っているからな」

 

 

   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

「(記憶力が異常に良い翔子は一度覚えたことを忘れない。もっと正確に言うなら忘れられないってことだ。そこを嘘で覚えたのならば、それが絶対の弱点にもなるってことだ)」

 

 

 高橋教諭が想定にしていなかった準備を進める中、雄二は一人思考する。それは絶対に勝てる手段。そしてその思考も既にFクラス勢には教えてある。Fクラスの面々もまた、ここまで来たという局面に至って確実な勝利をものにできると確信し、余裕の表情で代表の帰りを待っていた。

 そして、その余裕っぷりにAクラスの者たちはざわめき出す。

 

 

「上限百だって……!?」

 

「しかも小学生クラス……」

 

「集中力の勝負になるぞ……!」

 

 

 結果も出ていないのに『計画通り』と三日天下の神のような表情でにやりとほくそ笑む。

 Aクラスは雄二の思惑通りの予想をしてくれているらしいので、確信がより深まったのだろう。

 更なる思惑が雄二にあるということなど誰も気づいていないし、対策も練れない。すべて気づいたときには戦局は終わっているのである。

 

 

「お待たせしました。こちらが問題用紙となります」

 

 

 高橋教諭が二人の前に問題用紙を配る。改めて、問題の内容は小学生用の歴史。簡単な年表を埋める程度のものだ。

 そして、その中に霧島翔子の弱点が隠れている。

 

 

「(翔子の弱点は『大化の改新』。俺が幼いころに教えた間違いの年表をアイツは覚えているはず。その問題が出れば……)」

 

 

 互いに何も口にしない。

 準備は万端であると、その無言が物語っていた。

 それを見て、高橋教諭は幕を開く。

 

 

「それでは――始めてください」

 

 

   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 問題の内容はスクリーンに映り、教室内の誰にでも見えるように配慮が為されていた。

 Fクラス勢が想定したとおりの問題の羅列。それをスクロールしてゆけば似たような問題ばかりが目に映る。

 

 明久もまた、雄二に言われた問題を探した。

 が、

 

 

「……あれ、なくない?」

 

 

 言われて見れば、年号の穴埋め問題は順繰りに下へ向かうごとに現代へ近づいてきているのだが、よりにもよって『大化の改新』に関する問題は用意されていないようであった。

 

 

「くそ、次の問題にお預けか」

 

「運がいいな、あいつら」

 

「だが次になれば……」

 

「ああ――」

 

『システムデスクだ!』

 

 

 そうして最初の大将戦が終了し、

 

 

Aクラス 霧島翔子 100点

 

Fクラス 坂本雄二  46点

 

 

――決着がついていた。

 

 

『あっれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』

 

 

   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

「どういうことかな雄二? あんな中途半端な点数ってことは……」

 

「いかにも。俺の全力だ」

 

「歯を食いしばれこの馬鹿!」

 

 

 引き上げてきた代表に詰め寄る明久。妙に誇らしげな雄二。小学生クラスの問題で半分も取れなかったのに、何故胸を張れるのか。

 

 

「落ち着いてください吉井くん! 釘バッドはまずいですってば!」

 

「放して姫路さん! 秀吉! この馬鹿に引導を渡してやらないと!」

 

「それは普通に死ぬのじゃ! 落ち着くのじゃ明久ぁ!」

 

 

 クラスの美少女に二人がかりで身を押さえられている明久。

 本来ならば嫉妬ものであるのだろうが、AクラスからしてみればメイドVerで冷静だった彼の姿を見ているので、この怒髪天を見せられて彼もまた普通の少年であったのだなぁ、と何処か安心していた。上手い具合にみょんなキャラクタが跳梁跋扈していた五戦であったので、常識という名のネジが少々緩んでいるのかもしれない。

 

 

「…………雄二」

 

「………………殺せ」

 

 

 勝者≪Aクラス代表≫が敗者≪Fクラス代表≫に近づけば、己の命運を覚悟した逆毛の少年が苦虫を噛み殺したように呻いた。

 しかし、霧島翔子の求めるものはそんなものではない。

 

 

「…………条件を呑むなら、クラスのランクを下げなくてもいい」

 

「なん……だと?」

 

 

 その言葉に驚いたのは雄二だけではなかった。

 いつのまにか落ち着いていた明久も、勝利の余韻に酔っていたAクラスも、敗北の苦汁に打ちひしがれていたFクラスの面々も、皆が彼女の言葉に耳を傾ける。

 

 

「…………雄二が私と付き合うなら、」

「さあて、負けたんだし撤収するかー」

「…………最後まで聞いて」

 

 

 聞く耳持たぬ、と云わんばかりに立ち上がり教室から去ってゆこうとする雄二。

 

 ――で、あったのだが。

 

 次の瞬間には床に組み伏せられ縄で雁字搦めに縛り付けられ、四肢を封印した状態で『粗品』と描かれた札が額に貼り付けられ霧島翔子の前に突き出されていた。

 

 

『こんなのでよければどうぞ』

 

 

 これが、Fクラスの総意である。

 

 

「くそっ! てめえら! やるなら俺は助けろ!」

 

「最低だよその台詞! あ、霧島さん、暴れるようならこれも持っていって」

 

 

 と、オプションでスタンガンまで手渡す。どうでもいいが明久の私物なのだろうか。

 

 

「…………ありがとう、吉井はいい人」

 

「いやいやそんな、これぐらいで済むなら誰だってこうするよ」

 

「くそぉふざけんじゃねえ! 俺は認めてねえぞぉぉ……!」

 

 

 ずるずるとどこかへ引き摺られて逝く雄二。

 悪は、滅びた。

 

 

「さて、それじゃあこの辺で撤収しようか。お疲れ様でしたー」

 

「ちょおっとまった、ボクは納得してないよ?」

 

 

 と、イイハナシダナーで終わろうとしたところで声を上げたのは工藤愛子。

 他のAの面子が状況についてゆけていない状態だというのに、いち早くに復活して明久の行く手を遮る。

 

 

「……えー、勝った人ならともかく、愛子ちゃんは負けたじゃん」

 

「う、うるさいなっ、それ以前にFクラスの対価が代表の首だけですむと思っているのっ?」

 

 

 うぐ、と言いよどむ。

 確かにあれだけ二年生を引っ掻き回したのだから、相応に対価を支払うべきなのかもしれない。

 が、それがこの場でAのみに支払って終われるのならば、おそらくは安い話なのである。

 

 そのことを考えて、明久は承諾する。

 

 

「……了解、じゃあ僕が前のバイト先にヘルプ時に顔を出すっていう条件でどう?」

「おっけいだね! いうことは何もないよ!」

 

 

 簡単に交渉は済んだ。

 明久一人の犠牲で済むなら安い話だ。元より彼は負けているので、この場で対価を支払っておかないと他にどんな要求をされるかわからない、ということも考えているのかもしれない。

 

 

「うっふふ~、お姉さまと一緒にバイト~」

 

「……ご機嫌だね、いいけどさ。

 あとお姉さまはやめてよ、ここは学校だし。そうそうメイド姿にはならないし。

 あ、絶対居場所はばらさないでよ!?」

 

「え、なんかいいました?」

 

「いや聞こえてるでしょ!?」

 

 

 と、相も変わらず仲の良さ気な関係に、ふと気になったことを姫路が尋ねる。

 

 

「あのぅ、吉井くんはどうしてそのお店に戻りたくないんですか……?」

 

 

 空気が凍る。

 少なくとも明久の時間が止まる。

 

 わずかに重そうに、しばらく経ってから彼の口は開かれた。

 

 

「………………店長に、ミニスカメイドを着させられそうでさ……」

 

 

 哀愁漂う表情であった。

 

 

   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

「………………すみません工藤さん、お二人のバイト先はどこなんでしょうか?」

 

「えっ、ちょ、姫路さん?」

 

「お願いです教えてください! 毎週通いますから!」

 

「姫路さん!? 正気に戻って!?」

 




第一部、完!
つーかやっとおわった

これでやっと本領に移行できる。
なんかグダグダな終わり方な気もするけどこれはこれでいいことだと思うようにする

あとツッコミ募集中
皆さんセルフでよろしく

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。