エミヤが目にした使い魔を、イリヤも見ていた。寒さのせいではない冷たさが、指先に訪れた。コートの袖の陰で、拳を握り締める。
戦いが再開される。それも、最後の戦いが。
英雄王の存在を知るまで、イリヤは亡き父を知ることに日々を費やしていた。士郎とセイバーを学校に送り出して、お隣の藤村家で父の話を聞いたり、はたまた衛宮家の家捜しをしたり。
執事に扮したエミヤが合流してからは、セラとリズも連れて商店街に繰り出し、数少ない切嗣の馴染みの店を探すこともあった。
さらさらの銀の髪、長い睫毛のルビーの瞳に雪の肌。妖精のような美少女と、よく似たメイドの二人の一団は人目を引いた。
ここにエミヤが加わっても、認知騒動に新たな端役が加わった程度の扱いである。彼の執事ぶりがまた、セラも驚くほど堂に入ったもので、 執事服を見事に着こなし、イリヤをエスコートしていた。その立ち居振る舞いには、非の打ち所というものがない。商店街で女性客の注目を浴びたが、褐色の肌に白い髪、灰銀の目という異相はカバーされることになった。
エミヤの存在は、意外な恩恵をイリヤにもたらした。イリヤや士郎ではどうしたって得られない、大人の男性による安心感である。イリヤの問い掛けに、彼が二言三言添えることで、話し手の口が解れる。
「まあまあ、衛宮さんにこんなに可愛いお嬢ちゃんがいたのねぇ……」
煙草屋の老婦人は、皺に囲まれた目を瞬かせたものだ。
「うちでも時々煙草を買ってくれたけれど、
無口な人で、特に話をした覚えがないわねぇ。ごめんなさいねぇ。
他に馴染みのお店と言うと、さてさて、どこで見かけたかしら……」
士郎によると、切嗣の好物はジャンクフードだったそうだが、その手の店は従業員の入れ替わりが激しいし、接客時間は短いし、店舗がなくなっていることさえある。
「キリツグのことを知っている人って、
シロウとタイガとタイガのおじいちゃんぐらいなのかしら……」
落胆して家に帰ってきたイリヤは、エミヤに愚痴をこぼした。
「キリツグのお父さん、コセキにはのってるけど、
今どうしてるのかはわかんないんだもの」
イリヤは小さな手の指を順に折り曲げた。
「……でも、会えても、子どもの頃のキリツグしか知らないよね。
キリツグは五年前に死んじゃって、その前はアインツベルンにいたから」
それだけでも、衛宮切嗣は父親と十五年以上離れて暮らしている。さらに、魔術師殺しとして名を馳せた期間がある。彼の享年から逆算すると、暗殺者になったのは十代半ばだ。尋常ではない。イリヤの祖父にあたる、切嗣の父が健在とは考えにくかった。
「アハトおじいさまは、なんにも教えてくれなかったわ。
ねえ、大きいシロウはなにか知らない?」
褐色の額に縦皺が生じた。
「いや……、はっきり覚えてはいないが、爺さんの過去は調べなかったと思う。
あの頃の私には、そんな発想さえなかっただろう」
「ふうん……」
別の世界のおとうとは、切嗣の遺言をひたむきに追い、英霊へと至ったのかもしれない。視野を集中させ、一心にゴールを目指す競走馬のように。
そして、その速さで人生を駆け抜けた。間桐慎二がこっそりと教えてくれた。エミヤシロウの外見は享年と等しいのだと。アーチャーの歴史の、四半世紀後の核戦争までエミヤシロウは生きていない。
イリヤは、ずっと距離の離れた瞳を見上げた。琥珀から鋼に色を変え、鋭さを増しても、本質は変っていない眼差しを。
「じゃ、これが終わったら、わたしシロウと一緒に調べるね」
「……ああ、私のぶんまで頼むよ」
エミヤはそっと頭を下げた。それにイリヤはむっとした。ちょうど手の届く位置になったのを幸い、エミヤの頭を抱え込み、撫で付けられた髪を思い切りくちゃくちゃにしてやった。
「い、イリヤ!?」
驚きにやや高くなった声と、丸くなった瞳、額に落ちた前髪。大人になり、色さえ変じても、やっぱり士郎だ。イリヤは彼の額に、自分の額をくっつけ、囁きかける。
「もう、あなたもわたしと一緒にやらなくちゃいけないのに!
……でも、仕方がないね。
わたしはおねえちゃんだから、あなたのぶんまでやってあげる」
交わされる、小さな重い約束。それを果たすには、この戦争に勝つことだ。そして、イリヤが生き延びる方法を見つけることだ。
――強くならなくちゃ。バーサーカーだけが強くてもだめ。わたしは最強のマスターだけど、最強の魔術師じゃないんだもの。
寝付けぬまま寝返りを打ちながら、イリヤは考え続けた。
バーサーカーが、お話しできたらよかったのに。アーチャーが言うように、ヘラクレスはギリシャ神話で最強で、とても賢い英雄なのだから。きっと、イリヤの助言者になってくれただろう。リンにとってのアーチャーのように。
そう思った時、買ったきりで放置していた携帯電話が伸びていた。コール音が十回を超え、朝になってから掛けなおそう思い始めた頃、電話がつながった。
『……もしもし……』
「もしもし、リン? あのね、アーチャーに話したいことがあるの」
『ん……イリヤぁ? どうしたのよ、こんな時間に……』
凛の声はいかにも眠そうだった。欠伸交じりに断りの文句が続く。
『あいつ、今霊体化してるのよ。
多分寝てると思うんだけど、起こすのにものすごく手間取るの。
明日、こっちから掛け直すわ』
非力なのに、魔力を馬鹿食いするアーチャー。召喚した当初から、凛は疑問に思っていたのだが、多数の部下を使役する宝具の仕業であった。それを使っての連戦で、凛もアーチャーも消耗した。凛が倒れないようにするなら、アーチャーが引っ込まざるを得ないわけだ。
だからといって、イリヤも引き下がるわけにはいかない。必死で食い下がった。
「待って、リン、切らないで!
もぅ、残りの宝石も食べさせちゃったら?」
『勘弁してよ。この先、何があるかわからないんだからね。
わたしの切り札としても、節約しなくちゃならないの』
「そんなこと言って、使う前に死んじゃったら意味ないじゃない。
リンもアーチャーも。宝石ぐらいなら、わたしが買ってあげるから」
『言ってくれるわね……、このブルジョワめ』
凛は形のいい唇の端を引き攣らせた。もちろんイリヤには見えなかったが。
『単に宝石だけの問題じゃないのよ。
惜しいには惜しいけど、命あっての物種だってことぐらい承知してるわ』
「じゃあ……」
言いかけたイリヤに、凛はきっぱりと答えた。
『アーチャーに残りの宝石を食べさせても、大して足しにはならないわ。
わたしの武器にしたほうが、まだ生存確率が上がる。
アーチャー本人がそう言ってるの』
非情なほどの戦力算定を告げた口から、小さな欠伸が漏れた。
『ぁふ、魔力の回復は、結局わたしとあいつが休まなくちゃならないんだから、
もう寝させてよ……。あ、アーチャーが起きた。
え、生存確率が下がるのは、窒息死の危険があるから?
死ぬかと思ったですって!? 大袈裟ね、あれぐらいじゃ死なないわよ!』
イリヤとしては物申さずにいられない。
「ううん、ホントに死んじゃうよ!
魔力のこもった物なら、サーヴァントを傷つけられるんだから」
『わたしの魔力を篭めた宝石よ。自己血輸血みたいなものでしょ?』
「でもそれって、リンがライダーを凍らせた魔力の素だったよね!?」
サーヴァントの急所は頭に心臓だ。頭に繋がっている気管だって、立派な急所ではあるまいか。
『――あ。そういうものなの? ごめんごめん』
『やれやれ、宝石の件は忘れてくれないかな。
敵と戦う前に、マスターのうっかりで死ぬのはごめんだよ』
そこで、ようやく相手が代わった。不穏な会話で、完全に目を覚ましたアーチャーことヤン・ウェンリーである。マスターとの感覚共有能力が高い彼は、イリヤの声も聞こえていたようだ。
「むー、わかったわ。でも、リンはオーボーなマスターね。
やっぱり、わたしのサーヴァントにならない?」
『そいつはバーサーカーに申し訳ないよ。
ところでイリヤ君、こんな時間に私に何の用かな?』
夜は魔術師の時間だが、他人に電話するのにふさわしい時間ではない。
「……あの、あのね。わたしにも金ピカとの戦い方を教えて」
イリヤのバーサーカーは、第五次最強のサーヴァントだ。だが、英雄王の戦いぶりを目の当たりにして、歴代最強と豪語することはできない。
その英雄王を、アーチャーの献策と少々の小道具で、身一つで切り抜けたのがライダーだ。力のみで勝てない相手にもやりようはある。イリヤが衝撃を受けるには充分だった。強いバーサーカーがもっと強くなれば、イリヤがみんなを守れるかもしれない。
『私は構わないが……、ちょうど君に聞きたいこともあったしね』
「なあに?」
『この世すべての悪のことさ』
イリヤは息を呑み込んだ。
「え……」
『正確には、アインツベルンが第三次聖杯戦争に参加した時の記録が欲しいんだよ。
ここで即答してくれとは言わないが、なるべく早く知りたいんだ』
「どうして?」
『彼もサーヴァントだった。つまりは人間だ。
生前の私や、今の君と同じ人間なんだ。
そして、何らかの望みを持って、聖杯戦争の召喚に応じている。
それが分かれば、交渉の余地があるかもしれない』
思いもかけない言葉だった。
「で、でも、アレは……」
『もちろん、無理かもしれない。
でも、彼も人間だったんだ。根本は私たちと大差ないと思うんだよ』
イリヤは答えられなかった。沈黙を破ったのはアーチャーだった
『まあ、こいつは君のおじいさんに聞いておいてくれればいい。
さてさて、金ピカとの戦い方か……。
あっさり言ってくれるなあ。とても難しいことだよ』
洞窟を席巻した剣の嵐が目裏に蘇る。イリヤは携帯電話を握り締め、声を絞り出した。
「うん、わかってる。よく、わかってるわ」
今度はアーチャーが無言になった。ややあって、穏やかな声が耳朶を打った。
『では、君に頼みがある。
これからたぶん、イリヤ君が重要な役割を担うことになる。
重要なだけじゃなく、大変危険な役割でもある。
そのために必要なんだ』
「なあに?」
『失礼だとは思うが、バーサーカーの宝具を教えてほしい。
彼の戦力が分からなければ、私も戦術が立てられない』
彼の質問に、イリヤは長い睫毛を瞬いた。バーサーカーの宝具は、これまでアーチャーが目にする機会はなかった。核心に迫るような推測を口にされたことはあったが、彼は同盟者としてのルールを守り、それ以上の詮索はしなかった。
情報が武器になることを知っているからだ。公開し、あるいは秘匿する。それがこれまで剣となり、盾ともなってきた。
イリヤは逡巡した。アーチャーは信じられるのか? のんびりで穏和な態度で、実は悲観的な毒舌家。味方には公正で優しく、時に厳しく、敵には常に冷徹で、陰謀を駆使する矛盾の塊。
どうしよう。でも、それは短い間だった。このアーチャーは、簡単に方針を替えないだろう。子どもをできるだけ戦わせない、他人の血で汚したくないという願いには、とても頑固なのだから。
「……うん、あのね、バーサーカーの宝具はね……」
***
しんと冷え切った夜の土蔵で、赤毛と白髪が向かい合う。
「――まだだな。骨子の想定が甘い」
打ち合わされた亀甲紋の黒い短刀は、一方が一方をやすやすと砕いた。褐色の手が握った短刀は無傷。肌色の手からは、刃のみならず柄まで消えた。
「っつ!」
顔を顰めて、痺れた手首を擦る少年に、偉丈夫は刃を突きつけて言い放った。
「もう一度だ。それにしても、見本を前にさっぱり上達せんとは……」
「うぐぐ……」
未来の自分の嫌味に、衛宮士郎は歯噛みした。過去の自分の様子に、エミヤシロウは嘆息した。
「まあ仕方がない。言っただろう、衛宮士郎に才能などないのだと。
私と同様にな」
「お、おまえが……? じゃ、どうやってできるようになったのさ」
「出来るまでやったに決まっている」
士郎は褐色の面をまじまじと見返した。このエミヤシロウは、高いバーに延々と挑み続けたのだろう。そして、努力の果てに到達したのだ。それはたしかに凄いと思う。
「でも、この剣で俺があいつらに勝てるのかな……?」
「なにをたわけたことを……。無理に決まっているだろう」
「んな!?」
エミヤの左手に、白い短刀も現れた。右手にあった黒い短刀とあわせて、士郎に向けて構えをとる。
「これは、私の能力を最大限に運用する戦法のための剣だ。
言っておくが、今の貴様ではなく今の私だぞ」
身長で二十センチ、体重は二十キロも士郎を上回る偉丈夫のための剣だ。体格だけではなく、腕力や握力も当然違う。
「この投影魔術を極めれば、使い手の技量さえも再現できる。
いや、そうでなくては真に迫る剣は再現できんといったほうがいい」
「む、無茶苦茶難しくないか……」
たじたじとなる士郎に、エミヤは眼光を鋭くした。
「当然だ。私が生涯を掛けて至った魔術だぞ。
二三日修行をつけただけの貴様に出来てたまるか」
「じゃあ、なんで……」
「この剣のみでは、私でも英雄王には勝てん。
だが、次の一手を打つまでのつなぎになるかもしれん。
衛宮士郎、おまえが目指すべきは戦いに勝つことではない。
大事なものを守ることだ。そのためには、おまえ自身が弱点とならないことだ。
長い話になる。座れ」
士郎に促すと、自分も床に胡座をかく。
「私も聖杯戦争を体験した。今の貴様よりもお荷物だったことは否めん。
もっと力があれば、いや、もっと様々な道を模索していたら、
友人を、家族を失わずにすんでいたのではと思ってな」
琥珀が大きさを増す。
「かぞく……って、まさか、イリヤが!?」
白い髪が無言で上下に振られた。
「イリヤは器の担い手だ。
これほど状況が膠着すれば、連中が狙ってくるのは自明の理だ。
前回もそれで成功しているのだからな」
「成功体験に拠っているって、アーチャーが言っていたようにか」
「そうだ。柳の下に二匹目のドジョウが出てきたようなものだ。
アインツベルンが、十年一日の戦法を選んでしまったからな。
平常どおりの六十年周期ならいざしらず、
今回は前回のマスターが参加するのもあり得ることなのに、だ」
「あ!」
「少なくとも二人は警戒すべきだろう。
ライダーとアサシンのマスターは生存が明らかだ。
もっと言うなら、キャスターとバーサーカーのマスターの身元や死亡を、
アインツベルンは確認していないはずだぞ」
士郎は、アーチャーの言葉を反芻した。
「一般論で考えないといけないって、こういうことなんだな……」
千年の孤独を選んだアインツベルンは、明らかに思考が硬直化していた。彼方にある魔法を探し続けるあまりに、足元がお留守になっている。
士郎は、ようやく、アインツベルンの異常性に気付いた。前回の聖杯戦争に切嗣が関わっていたこと、父にこだわるイリヤに目を眩まされていたのだ。迂闊だった。
「だ、駄目じゃないか……。
いくらバーサーカーが強くたって、イリヤはまだあんなに小さいのに。
……まともじゃない」
「バーサーカーの必勝にそれだけ自信があるのだろうが、
前回有利だったサーヴァントを、再び召喚することも考慮していないな。
英雄王は遠坂陣営のサーヴァントだったと推測できるだろうに」
「あ、触媒か! 俺とセイバーもそういうことになるんだもんな」
サーヴァントの触媒が、召喚によって消滅するわけではない。セイバーの鞘しかり、斧剣になったヘラクレス神殿の柱しかり。ギルガメッシュの触媒となりうるなら、更に古く貴重な遺物のはずだ。いくらなんでも、遠坂時臣が捨ててしまうことはないだろう。
「遠坂は家探ししたけど、いい物がなかったって言ってたぞ。
言峰のヤツが隠したのかな」
「まあ、遠坂のことだ。うっかり捨てていても不思議はないが」
二人の士郎は顔を見合わせた。後者のほうが説得力があるような気がする。
「じゃ、遠坂のアーチャーはあいつだったかもしれないのか。
うわぁ……最悪だ」
顔を顰める士郎に、エミヤはもうひとつの可能性に触れないでおいてやった。自分が遠坂のアーチャーだったかもしれないことを。エミヤの救い手は終生それを明かさず、真紅の宝玉は今も彼の胸で眠っている。
「確かにな。悪いことに、件のアーチャーのマスターは遠坂ではなく言峰だ。
前回、イリヤの母を攫った連中だ」
士郎の喉仏が動いた。危険性を思い知らせておいて、エミヤは続ける。
「バーサーカーは最強のサーヴァントで、イリヤは最強のマスター。
それは間違いないが、イリヤは最強の魔術師というわけではない」
「たしか、アインツベルンの魔術は戦闘向きじゃないって言ってたっけ。
だからじいさんが婿養子になったって」
思い返せば、これまでイリヤが使った魔術は、姿隠しに人避けだった。凛のように、魔術そのもので攻撃はしていない。
「それになんといっても、肉体的には外見相応だからな」
イリヤには、小学校高学年の華奢な少女並みの身体機能しかない。エミヤは士郎に顔を寄せると、声を低めて囁いた。
「いいか、遠坂を基準にするなよ」
士郎は無言で頷いた。黒髪の師匠は色々とおかしい。魔術だけじゃなく、腕力とか腕力とか腕力とか。
「おまえがイリヤを守れ。
この剣は、おまえが目指すべき魔術の入り口だ」
士郎は黒白の短刀を見詰めた。作り手の意志を感じさせる、鉈にも似た質実剛健な形。黒に赤い亀甲模様の干将、滑らかに白い莫邪。鍔元に、円に収まった黒白の二つの勾玉の紋がある。華麗ではなく、無骨な、だからこそ美しい剣だった。
「これが入り口なのか……」
双剣を携えた遠い背中を思い返す。到達点はあの剣の連なる丘なのだろうか。
「それは貴様次第だな。固有結界は術者の心象風景の具現化だ。
貴様の歩む道がどうなるかはわからんが、
私と同じ場所に到達するとは限るまい。
――おまえは守るべきものを失うな。俺のように」
「……わかった。あ、ありがとな」
士郎は再び心に誓った。こんな捻くれて嫌味な大人にはなるまい。最初から、最後の一言を言えばいいじゃないか。
「ふん、さて、おしゃべりはここまでだ。さっさとやれ」
「……うん。――投影、開始」
そして、やっぱり男のツンデレは可愛くない。この剣は、衛宮士郎がそうなる過程も見てきたのだろうか。
――創造の理念を鑑定し、基本となる骨子を想定し、構成された材質を複製し、 制作に及ぶ技術を模倣し、……成長に至る経験に共感し――。
――こ、これはイリヤを守るためなんだからな。おまえのためを思ってるんじゃないんだから!――