一瞬の躊躇。眉間の皺が伸び、潔癖な眉が、灰色の目が本来の形を取り戻す。すぐに皮肉っぽい笑みの形に変じたが。
「サーヴァントの真名を尋ねるのはルール違反だろう。アーチャーのマスターよ」
「ああ、ごめんなさい。愚問だったわね」
凛はにっこりと微笑むと、テーブル越しにアサシンに歩み寄った。
「訊くんじゃなくて、こう言えばよかったわ。
何やってんの、……士郎?」
「何を言うのかと思えば……馬鹿馬鹿しい。人違いだ」
「あら、そういう時はこう言わなくちゃ駄目じゃない。
『そんな人間は知らない』って」
アサシンは表情を消した。いや、姿も消したかったが叶わなかった。遠坂家の堅固な結界は、自らのサーヴァント以外の霊体を拒む。瞬きするほどの逡巡を、凛は繊手を伸ばして掴み取る。
「な、なにをするの!?」
神代の魔女が仰天するのも無理はない。華奢な美少女が、筋骨隆々たる偉丈夫を、右手一本で椅子から引き剥がしたのだ。八極拳に身体強化の魔術を上乗せした、現代の魔女ならではの荒業である。二人の膝がテーブルにぶつかり、ティーカップが受け皿に転がった。
凛の鼻先に、白い短刀が突きつけられた。
「手を離してもらおうか。招待主にあるまじき無作法だろう」
しかし、この異端の投影魔術に触れていた凛にとって、最悪の手段であった。
「弟子の分際で、わたしを誤魔化せるとでも思ってんの!」
胸郭を殴りつけるような一喝に、アサシンは気を呑まれた。ああ、これも忘れてはいない。激しくも美しい、錬鉄を鍛えた炎の魔女。
左手の魔術刻印が青白い光を放ち、奔騰した魔力が長い黒髪を激しく揺らめかせた。紫の視線が赤いセーターと外套を忙しなく行き来し、おろおろと手を上げる。
「ちょ、ちょっと、落ち着きなさいな! まさか、これがあの坊やだと言うの?」
凛はアサシンの襟元を締め上げながら頷いた。
「ええ、そうよ。大人の顔から、子ども時代の写真を探すのは難しい。
でも逆は簡単なのよ!」
右手でアサシンの顔を引き寄せ、魔力を纏った左手を秀でた額の上、かきあげられた銀髪に突っ込む。クラススキルによる対魔力の恩恵を持たぬアサシンに、抗う術はなかった。
キャスターは目を丸くし、口許を手で覆った。
「まあ……」
髪が額に落ちて呆然とした顔は、肌も髪も瞳すら色合いを異にしていたけれど、少年の頃の面影を色濃く残していた。
「名もなき守護者とは聞いたけれど、お前も未来の英雄だったのね」
アサシン、いやエミヤシロウは奥歯を噛み締めた。磨耗しかけた記憶の中の遠坂凛と、赤い外套のアーチャーは、息のあった主従であった。いや、あるいは分霊の記録なのかもしれないが、その境界は曖昧模糊としている。『彼女』は、リタイヤした従者の真名を聞けずじまいだった。
この世界も同じだろうと思い込んでいたのは過ちだった。赤きアーチャーを召喚した遠坂凛は、従者と先に触れあい、衛宮士郎とは紆余曲折を経て同盟を結んだ。だから気付かなかった。
黒きアーチャーを召喚した遠坂凛は、衛宮士郎とすぐに同盟を結んだ。何度も語らい、その喜怒哀楽に、表情の変化に触れた。だから気付いた。衛宮士郎とエミヤシロウの二人に。
「守護者、ですって……!?」
それは人間の集合意識体、アラヤの尖兵。世界を滅ぼす事象を、全てを殲滅することで消し去るのだ。百のために一を切り捨てる存在と言えよう。
全てを救う正義の味方になりたいという、衛宮士郎の理想から最も遠いものではないか。
高い功績をもつ英雄が、守護者となることはない。英雄には足りぬ者に、世界が伸ばす誘惑の手。握り返した者は英雄となり、死後には世界を守るために
「この馬鹿! こんな姿になって、何やってんのよ……!」
凛の問いにエミヤは吹き出しかけた。翡翠の瞳に険が籠もる。
「なにがおかしいのかしら?」
エミヤの胸元を握り締めた左手が、再び剣呑な光を帯び始める。
「いや、……まさに賢者の言だと思ったまでさ。
私が、いや、俺が馬鹿だったからだ」
凛は項垂れ、逞しい胸板に力なく額を寄せた。
「愚行でも、行動にはその人なりの理由があるって、アーチャーが言ったわ。
あんたの人生なんだし、それももう終わってるんでしょう。
ここにサーヴァントとしているってことは」
「遠坂……」
「わたしには、あんたを非難する権利はないけれどね。
あんたは衛宮士郎だけど、わたしが知ってる士郎とは違うんだもの」
「どうして、そう言い切れる!?」
「だって、ここの士郎は家族問題で手一杯よ。
イリヤのこと、おとうさんのこと、本当の家族のこと。
あんたのようになれるとは思えないわ」
エミヤは目を瞠った。彼はひたすらに養父の理想を追った。忘れてしまった実の家族のことに蓋をしたまま。
「あれが、実の家族を、だと……」
「というより、イリヤを認知させるための副産物なんだけどね……」
逞しい上体がよろめいた。言うに事欠いて『認知』。身に覚えのないことのない男にとって、ざくりとくる単語である。
「あんたのおとうさんの過去を、イリヤと一緒に追ってみなさいって、
アーチャーが勧めたのよ。今はもう、けっこう仲のいい兄妹よ」
アサシンの顎が落ちた。やっぱり士郎だ。凛は悲しみを込めて、遥かに位置が高くなった顔を見上げた。魔術による変色。目だけではなく、髪も、肌も。こんな姿になるまで、限界を超えて魔術を行使したに違いない。
「ここの士郎はイリヤを置いて、限界を超えるような戦いにはきっと行けない。
あんたは、なくしてしまったの?」
エミヤは視線を逸らし、口を引き結んだ。これが、ヤン・ウェンリーの弟子になるということなのか。
「ねえ、並行世界の衛宮士郎。そういうことなんでしょう?」
キャスターが右手の擬似令呪に目をやり、凛の言葉に頷く。
「なるほど、筋が通っているわね。
英霊の座は世界の外、時の輪から切り離されている。
千六百年後の英雄が呼べたのなら、数十年先の英雄が来ても不思議はないわ。
真名を名乗らず、聖杯に問うてもこの男のような英雄はいない。
いないのも道理だわ」
そして溜め息を吐いた。
「山門が触媒では、精々サーヴァントを擬した亡霊が呼べるぐらいなのに、
存外に格のある、英霊といっていい者が来たと思ったら……。
あの赤毛の坊やが、どうやったらこんなにむくつけき男に育つのかしら?」
エミヤには、キャスターの慨嘆に反応する余裕などなかった。
「俺は、自らの世界には召喚されないと?
俺が経験した聖杯戦争では、遠坂のアーチャーはヤン提督ではなかった。
赤い外套に、褐色の肌、銀髪の大男。俺自身だった!」
「その一回が、最初で最後の奇蹟だったのかもね」
ずっと高い位置になった瞳を見上げて、凛は静かに言った。
「それだって、あんたの異能を世界が欲し、最初に伸ばした手なのかもしれない。
あんたの投影は、魔法に近いものだもの」
「そんな、馬鹿な……」
「もっとも、確かめようもないことね。
あんたの世界のわたしが、何をやっていたのかと思うと悔しいわ」
「いや……君は、違うな、俺の知ってる遠坂も、俺を止めてくれようとしたよ。
聞かなかったのは俺だ。じいさんの理想に進むことしか考えなかった」
凛はむすりとした。
「わたしだって、アーチャーに言われなかったらそうなっていたと思うわよ。
でも、誰かに言われたぐらいで、簡単に考えを変えられるなら
苦労なんてしないのよね。
あいつだってそうだもの」
夢で見る黒髪のアーチャーの人生は、不本意と後悔の連続だった。父を亡くし、家を失い、学費目当てで入った軍で、思いもかけない活躍をした。ごく平凡で善良な青年の中に、稀世の戦争の才が眠っていたのだ。人を殺すたびに、高まっていく名将としての声望。平和を願う心と反するその矛盾。
しかし凛には、彼の生を愚かだとは思えなかった。間違っていたとも。歴史の大河に流されながら、生を閉じるまで抗った。このエミヤシロウも同じだ。世界が契約するほどの高みへと至ったのだから。近代兵器のせいで、英雄が生まれにくい現代とその先のどこかで。
エミヤは面食らった。やけに理性的だ。ヤン・ウェンリーの影響だろうか。彼の知る遠坂凛ならば、詰問から糾弾、宝石強化の八極拳というコースだっただろう。
「と、遠坂?」
「あんたもそうなんでしょう。
譲れぬ思いに、必死に努力をしたんでしょう。
そんな姿になるまで、理想を追ったんでしょう」
「それが間違いだったんだ。
世界を救うということは、君が言ったとおりのことだった」
「それはどっちの遠坂凛?」
エミヤは言葉に詰まった。深い翠が灰色を包み込む。
「あんたは聖杯への望みはないと言ったわね。
でも、召喚に応じたのは、聖杯戦争には望みがあったということじゃないの?
教えてちょうだい。士郎が本当に望んでいることを」
*****
アーチャーとランサーは、少し遠回りをして衛宮家に到着した。呼び鈴を鳴らすと、出てきたのはセラだった。藤村大河が夕食に来ないのは、彼女が防波堤になっていたからだろう。
アーチャーはぺこりと頭を下げた。
「こんばんは。夕食時にお邪魔して、申し訳ありません。
士郎君に頼んでおいた本を借りに来たんですが……」
「あの、それが……。皆様は土蔵にいらっしゃいまして」
「え?」
二人の青年は顔を見合わせた。
「なかなか調べ物が進まないのだそうです。
セイバーの触媒を探して、お考えになるとおっしゃいまして」
「ああ、士郎君の怪我が治ったのも、セイバーが召喚されたのも土蔵でしたからね」
「アーチャー様たちも、どうかお知恵を貸してくださいませ」
セラに促されて、二人は土蔵に回ることにした。
「失礼するよ……うわぁっ!?」
土蔵を覗き込んで、後ずさったアーチャーの後頭部が、ランサーの肩口に当たった。歴戦のクー・フーリンは、アーチャーの頭突きぐらいでは小揺るぎもしなかったが、不平の呟きをを漏らす。
「なんだよ……うおっ!」
だが、続いて頭を巡らせたランサーも、似たような叫びを上げることになった。バーサーカーが斧剣を振りかぶり、今しも振り下ろそうとしているところだったのだ。
「よ、よかった!
た、頼む、アーチャーとランサー、イリヤを止めてくれ!」
腰を抜かしかけて懇願するのは、家主の衛宮士郎だった。
「おいおいおい! これは何の騒ぎだ!?」
膨れっ面で返答したのは、バーサーカーのマスターだ。
「だって、セイバーの触媒がどこにもないんだもん!
あとは床下しかないの」
アーチャーはイリヤをなだめにかかった。
「まあまあ、ちょっと待ちなさい。小さなものかも知れないだろう」
「そんなことないわ。触媒は、セイバーの剣のサヤよ。
キリツグがセイバーを呼んだときに、お爺さまが用意したんだもの」
「でも、割れたり、壊れたりした破片かもしれないよ。
もしも、完全な形で床下にあるとしても、
バーサーカーが床を壊したら同じことになってしまう」
金の髪が左右に振られた。
「私の鞘は不壊のものです。天井にもないということはやはり……。
バーサーカーが壊すのがいけないならば、私が斬ります」
青い光の靄が立ち上り、眦を決したセイバーが、武装を編もうとした。
「ああっ! セイバーまで! お、落ち着け、落ち着いてくれ!
俺はこの家にずっと住んでるけど、土蔵の床を掘ったことなんてないぞ」
士郎はようよう反論を思いついた。
「この床下に鞘を埋めるのは、重機なんかを入れないと無理だ。
俺、そんな覚えはないんだ!」
「君が学校に言っている間はどうなんだい?」
「それも無理だ。うちの門は車も入れない」
士郎の言うとおりで、イリヤのリムジンは塀の外の駐車場に置いてある。
「手作業だと、俺が学校に行ってる間ぐらいじゃ終わらないぞ。
……じいさんが隠したなら、俺が小学生の時だからさ」
「シロウ……」
その言葉に含まれた哀切に、セイバーを包んだ光が立ち消えた。だが、衛宮家の事情に詳しくないがゆえに、冷静な判断ができる者がいた。
「鞘だと? それだと、このぐらいの長さか?」
首を捻ったランサーが、両手を軽く広げて見せた。セイバーは無言で頷くしかなかった。白兵戦の名手は、見えざる剣の長さをほぼ正確に把握していたからだ。
「ところでな、ちっこい嬢ちゃんの親父さんとお袋さんは、
どのくらいの背格好なんだ?」
セイバーとイリヤは顔を見合わせ、記憶が鮮明なほうが答えた。
「キリツグは、ちょうどアーチャーぐらいの体格でした。
アイリスフィールの背は、だいたいリズぐらいで、
体つきはもう少し細身でしたか……」
「リズ? ああ、メイドの胸のでかい方か。
ってこたあ、アーチャーよりは背が低くて細いってことだな。
アーチャーよ、ちょいと前に出ろ」
首を傾げたアーチャーが、輪の中心に足を進める。
「こいつぐらいの体格の男が、この長さの鞘を持つとする」
ランサーの開いた手は、上が肩に置かれ、下が腰の下まで届いた。
「で、腰からさげるとこうなる」
腰の上から膝を越え、上下が体の厚みから斜めに突き出す。
「女なら余計に目立つぜ。もっと身幅が狭くて、背が低いんだからな。
服によっては隠せるかも知れんが、肩から吊ると座れねえ。
いくらなんでも、セイバーに隠してはおけまい」
実物大のモデルで示したことで、新たな疑問が沸き起こった。一同は当惑した顔を見合わせた。
「あ、そっか。じいさんとイリヤの母さん、両方が持ち歩いてたんだっけ」
士郎はランサーの手の間隔をじっと見た。
「長傘ぐらいあるな。どうやって隠してたんだろ?」
セイバーは首を振った。
「私は、失った鞘が触媒とは知りませんでしたから……。
それに、アイリスフィールは優れた魔術師でした。
治癒魔術だと説明されて、不審にも思いませんでした」
アーチャーは髪をかき回した。
「ああ、それじゃあ無理もないか」
彼自身は目撃していないが、凛の蘇生の大魔術は、己がサーヴァントから聞いている。
「家捜しするからには違うと思うが、
ひょっとして、セイバーの鞘も見えないものなのかい?
あるいは、衛宮夫妻がそういう魔術を鞘に施したのかもしれないが」
再び振られる、結い上げられた黄金の髪。
「いいえ、私の剣が見えぬのは、失くした鞘の代わりの魔術なのです。
我が剣の鞘は、あらゆるものから身を守る最高の守護。
たとえ魔法でも、見えなくすることはできません」
少年少女と青年達の若々しい眉間に皺が増えた。変わらないのはバーサーカーぐらいだ。イリヤの忠実な従者は、斧剣を同じ角度で保持して待機中である。
「もう、どういうことなの!?」
今にもやっちゃえと叫びそうなイリヤに、ランサーが手を上げた。
「あのよ、この土蔵で嬢ちゃんの捜し物を手伝ったが、
ここでは俺のルーンが反応しなかったよな」
「ここでは?」
傾げられる黒髪をよそに、蒼と金と銀が赤毛へと向きを変えた。
「坊主に反応したんだ。こいつの荷物ではなく、服でもねえ。
坊主の身体にくっついた」
「ま、まさか、シロウの体の中に……」
目を瞠るセイバーに、士郎とアーチャーの目と口はぽかりと開いた。
「いっ、いや、ちょっと待ってくれよ。
俺、レントゲンを何度も撮ってるけど、そんなの写ってたことないから!」
「それ以前に、一メートルもある異物を体内に入れたら、人間生きていけないよ。
七歳の子じゃ、首から足先までの長さじゃないか」
アーチャーの冷静な反論に、士郎はその図を想像してしまった。
「それじゃ俺、ひらきになっちまう……」
「きゃー、いやーっ! シロウのばか!」
具体的過ぎる比喩に、先日の食卓で既知のイリヤは抗議し、サーヴァントの青年らは目を逸らして顔に手をやった。聖杯の加護あるいは悪意により、『ひらき』の知識が送られてきたからだ。
「士郎君、その表現はやめてくれないかな。
まあ、普通ならそのとおりになるだろうけどねぇ……」
「アーチャーもよ!」
イリヤは憤然として胸元で拳を握り締めた。ランサーは首を振る。
「ああ、そうなっちゃいねえぜ。
坊主の身体には、でかい傷跡どころか火傷の痕一つねえ。
なあ、セイバー。貴様の鞘とやらは、どんな代物なんだ?」
「私の鞘は……絶対の守護と癒しをもたらす不壊の鞘。
余人には使えないはず……」
ヤンは手を打った。
「おそらく、それだ」
セイバーは瞳に疑問符を浮かべ、アーチャーを仰ぎ見た。
「なにがです!?」
「私たちが人ではないからだよ。
サーヴァントは、マスターの魔力で維持された存在だ。
私たちを使えるんだから、宝具を使えたって不思議じゃない。
だって、我々の武器とは違って、君の鞘には実体があるんだから」
宝具の担い手たるサーヴァントの上位存在がマスター。実物がある彼女の鞘を、限定的に使用できるかもしれない。
「絶対の守護は無理でも、治癒の機能は動いているんじゃないだろうか」
「……ならば、ありうることです。
私の鞘は魔力で展開し、光の粒子の防壁となる。だから……」
アーチャーは眉を下げ、士郎は寄せて顔を見合わせた。
「じゃあ、士郎君の体内に、粒子化した鞘があるのかな?」
「だったらどうしよう……。セイバーの時代に持ち帰れないぞ……」
アーチャーとランサーの瞳が瞬いた。
「持ち帰る?」
「セイバーの時代って、なんだそりゃ?」
小柄な美少女は躊躇いがちに顔を上げ、青年達に視線を合わせた。
「私の真名は、アルトリア・ペンドラゴン。
カムランの丘で死に瀕し、聖杯の入手を条件に世界と契約した者です。
……私はまだ生きている」
「はぁっ!? 生きているだと!?」
「……ペンドラゴン? アルトリア……男性名だとアルトリウス。
ま、まさか、セイバー、君はアーサー王なのかい!?」
槍と弓の騎士からの問いに、剣の騎士は口を閉ざして頷いた。後者の知識と鋭さに、慄然としながら。
アーチャーは、へたへたとしゃがみ込んで頭を抱えた。
「……わからないわけだ……」