――士官学校に入学したのは、無料で戦史を学ぶためだったのに、国の財政難で『彼』のいた戦史研究科は廃科になってしまった。金髪の友二人と、反対運動をしても実らなかった。当時の校長が与えた罰は、科の資料図書の目録作りという粋なもの。人生で思い切り本を読めた日々。
書庫の鍵の貸し借りをするうちに、若い事務局次官と交流するようになり、門限破りを見逃した下級生に、慕われるようになった。薄茶色の髪と目を持つ事務官は六歳年上の先輩、鉄灰色の髪に青灰色の目の後輩は二歳下。金髪の同級生と、事務長の娘と並んで、『彼』の終生の友となった。
実技が苦手な『彼』は必死の思いで卒業試験に取組み、なんとかパスして軍に入った。一年目は戦史統計室で、少ない仕事をそっちのけで資料を読み漁る日々。
不真面目さが祟って、二年目の配属先は敵国に近い辺境の警備隊。そこで転機が訪れる。敵国との武力衝突が起こり、劣勢となった『彼』の部隊は、惑星へと逃げ込んだものの、包囲をされてしまった。そんな時に警備隊の司令官に、民間人三百万人の避難を命じられたのだった。
目まぐるしい場面の転換が続く。多忙と緊張で、記憶が定かではないのだろうか。数多の断片の中に、金褐色の髪とヘイゼルの瞳がちらりと浮かんだような気がした。
視界が落ち着くのは、背景の漆黒の中を惑星が遠ざかっていく姿。『彼』は、民間人を置き去りにして逃亡した上官を囮に、まんまと脱出に成功したのである。
そして、『彼』はエル・ファシルの英雄と呼ばれた。なんのことはない、民間人を見捨てようとした軍の汚点隠しに過ぎないのだが。
その自己分析は正しく、しかし誤っている。救われた人にとって『彼』は紛れもない英雄だった――。
凛は、ふっと目を覚ました。己が工房で休めたせいか、ずいぶん体が軽くなった。昨日までの魔力の吸い取られ方が嘘のようだ。時計を見ると八時。十一時に柳洞寺門前で待ち合わせの約束だから、二度寝をするほど余裕はない。
「うー、仕方ない、起きよ」
もぞもぞと身支度をする。墓参りに行くなら、お気に入りの私服というわけにもいかない。身に着けるのは、学生の礼服、制服である。とりあえず、ブラウスとスカートにカーディガンを引っ掛ける。髪を結うのは、食後でいいだろう。別室のアーチャーに声を掛けようとして、彼が居間にいることに気がついた。
「あら、てっきり寝てるか、霊体化してると思ってたのに……」
呟くと凛は階段を下りて、居間に向かう。拙いドイツ語が聞こえてきた。ちょうど、終わりの挨拶をしているところだった。
「アウフ・ヴィーダーゼン」
「あら、誰に電話してたの?」
「セラさんにだよ。今日は車じゃなくて、街を歩いてもらおうと思ってね」
アーチャーは公開することによって他者の目に触れ、記憶を残すことの重要性を強調した。
「藤村先生が同行すれば、余計に目立つはずだ。安全対策だよ」
凛は、脳裏にその一団を思い浮かべた。士郎と藤村大河、イリヤと金銀の髪のメイドが三人。
「わたしたちの前途もだけど、士郎、大丈夫かしら……」
墓参りする前に、墓穴を掘らないといいんだけれど。アーチャーは衛宮切嗣への関係者を集め、交流を推進させる気のようだ。個性の豊か過ぎる面々だ。キャスターとの対面より不安になってくる。
「物事は、複数の視点から見ることが大事なんだよ。
歪みのない視線を持つ人間はいないけれど、複数の目で見ることによって、
その歪みが、立体へと形を変えるんだ。
ありのままの衛宮切嗣を知ることが、あの子たちには必要なことだと思うよ」
「そうね。でも、お墓参りの準備もしなくちゃ。先に朝食にしましょう」
アーチャーの影響は少なくなかった。凛には、すっかり補給の重要性が身についていた。
*****
遠坂凛よりも、更に多忙なのが衛宮士郎だ。墓参りの前に、イリヤと藤村雷画を訪ね、養父の遺品や戸籍の件について聞かなくてはならない。
もっとも、士郎は早起きが苦ではないし、ここに逗留している女性たちの半分は家事のプロ。台所も占拠されかけている。ドイツ育ちのイリヤは、日本食を食べ慣れていないからだ。
本日の士郎とセイバーの朝食は、白いご飯にみそ汁、焼鮭と納豆、小松菜のお浸しにたくわんと焼き海苔。
一方、アインツベルン組は、ライブレットにハムとチーズ、野菜スープとコーヒー。こちらの女性たちは少食だ。三人で姉貴分一人といい勝負といったところだ。セイバーが割った食器は、イリヤが弁償してくれて、一緒にナイフやフォークも補充された。いずれも世界的に有名なメーカーの品だった。皿の一枚、カップの一客が五桁に届く。魔術師ってみんな金持ちなのかと、士郎を唸らせたものだ。
「ねえ、シロウ。その気持ち悪いの、本当に食べても大丈夫なの?」
赤い瞳が、ねばねばと糸を引く、茶色の粒を気味悪げに凝視した。
「これは納豆っていうんだ。大豆って豆でできてる。
俺は好きだぞ。でも、セイバーが平気だとは思わなかったなあ」
「においと味は独特ですが、大変に美味です。
豆が、これほど栄養豊かなものだとは……」
日本では古くから食べられているが、大豆がヨーロッパへ伝播したのは十七世紀。
そんな知識までよこす聖杯が、ちょっと恨めしいセイバーだ。
「この鮭もです。
我が国と同じく、保存のための塩漬けだというのに、なんという差か……」
セイバーは、ご飯と鮭と一緒に悔恨も奥歯で噛み締めた。彼女の故郷では、鱈や鱒を塩漬けにした。そのままでは塩辛すぎる。水に晒して塩抜きをして食べるのだが、塩分とともに旨みも逃げてしまい、パサパサになっていた。似たような調理法なのに、この差はいったい何なのだ。
「あはは、でも納豆はこのへんじゃあんまり食べないんだ。
日本の東の方で生まれた食べ物だからな。
慣れないと見た目や味が変わってるし、じいさんも食べなかったなあ」
「でもシロウは平気なのね」
「ああ、よく覚えてないけど、俺の実の親は納豆が食える人だったのかも……」
これは、アーチャーとの会話をきっかけに、気がついたことだった。
「じいさんは、ハンバーガーみたいなジャンクフードが好きだったけど、
イリヤの家で暮らしてたから、パンが中心だったのかな。
カレーや牛丼みたいな食べ物じゃないと、ご飯ばっかり残すんだよ」
おかずの味で白いご飯を食べるのが、日本人特有の口中調味だ。学校給食でも三角食べを指導される。だが、パン食中心だと身につきにくい。
「でも、セイバーは上手に食べてるよな。箸も綺麗に持つしさ」
「聖杯の賜物です」
セイバーの言葉に、無表情に呟く者がいた。
「……お皿は割るくせに、無駄遣い」
「リズ、食事中にそんなことを言うものではありません」
「だって、ほんとのこと」
「だからです」
セラに咎められて、リズは無言で頷いた。しかし、不服そうだ。不出来な後輩に、一言なかりせんという気なのかもしれない。
「先様のご都合もありますから、とにかくいただいてしまいましょう」
怜悧な口調で言い切られ、反論の間もなくセイバー主従は食事を再開した。士郎は本気で、遠坂主従に常駐してもらいたくなってきた。
そりゃ士郎だって男だ。美人に囲まれる夢を見ていなかったといえば嘘になる。いや、だった。人の夢と書いて儚いって本当なんだ……。
現実はかくも厳しい。女の子たちに『ちやほや』ではなく『つんけん』されると、とってもきつい。男一人の孤独をひしひしと感じる。とはいえ、バーサーカーに出現されても困るわけで。
なあ、じいさん、女の子に優しくしないと損するって言ってたよな。この状況はなんなのさ!? ほんとに優しくしてたら、こうなってなくないか?
そう思うと、むくむくと疑問の雲が湧いてくる。士郎に巡ってきた遅い反抗期だった。
思春期は、絶対の存在である親から、自己を確立していく重要な成長プロセスだ。衛宮切嗣を崇拝する養子に、恨んでいる実子をぶつけることで、幼い日の理想に疑問を抱かせる。最優と最強のサーヴァントのマスターに、最弱のアーチャーが仕掛けたのは一種の心理戦だった。
毒は量を加減すれば、妙薬ともなる。心理戦は心理学の粋であり、薄めれば心理療法になる。ヤンは荒療治を選択した。遠慮なくぶつかり合えばいい。ぶつかるうちに角が取れて丸くなっていくし、ぶつからない方法も学ぶだろう。
こう表現すると大仰だが、ありふれた小学校高・低学年の姉弟関係の再現である。
聖杯戦争という異常な状況下で、精神年齢が幼い二人に必要なのは、平凡な人間関係の構築だ。きょうだいが仲良くし、周囲の大人と信頼関係を築き、友人たちと交流を深めていく。
精神の支柱が一点だと、過大な重みがかかってしまう。ならば、柱と支点を増やすべきだ。そして、士郎とイリヤが、父から心理的に自立できる契機となればしめたものだ。士郎の理想にしても、自律と自尊のうえで果たさなければ、彼をきっと不幸にする。
そして、成功しつつあった。
……優しくしろって言っても、こういう時、どうすりゃいいのさ。『女の子』じゃない、『女の子たち』への方法は!? それも教えといてくれよ……。
セイバーに優しくしたらイリヤに睨まれ、イリヤに優しくすると、メイドの二人に睨まれる。かといって、メイド相手の話題がない。
味見の時より味噌汁がしょっぱい士郎は、遠い目になった。
こんな調子で、雷画じいちゃんのところに行って、大丈夫だろうか……?
士郎の懸念は大あたりだった。人間の予想は外れて欲しいことが的中する。豪放磊落な雷画老は、士郎の連れに相好を崩し、胡坐の膝を打って大いに笑った。被後見人の、まだまだ小さな背中を力任せに何回も叩き、耳元で囁いた。
「坊主、いつの間に引っ掛けたんだ? おまえも隅に置けんじゃねえか。
氏よりも育ち、蛙の子は蛙ってな。で、本命はどの娘だ? んんー?」
ちっとも囁きになってない音量だった。三対の赤い瞳の温度が、一気に氷点下に突入した。
「ちょっ……、雷画じい、そういうんじゃないから、洒落になってないから!
いまはやめてくれ。親父の戸籍とか、遺言状とか、そういうのが見たいんだ」
真っ赤になって両手を振る士郎に、雷画は灰色の薄い眉を撥ね上げた。角刈りに黒目の小さい目と相まって、さらに凶相になった。士郎は慣れたものだが、セイバーを除く良家の子女らは身を固くするほどの迫力だ。
「どうした、ずいぶんな心境の変化じゃねえか。
ま、無理もあんめぇ。こんなに可愛い嬢ちゃんがいたとはねえ。
士郎にとっちゃ、血はつながってないが、義理の妹か。
いやいや、あいつも罪作りなこった。
うちの大河も随分と熱を上げとったが、女受けする奴だったからな」
お願い、もうやめて。じいさんの信用度もゼロを突き破って、マイナスだ!
「え、ええーと、ごめん、時間もないから」
「おう、戸籍はあるが、遺言状みたいなもんは預ってねえ。
あの時に世話になった弁護士に聞いといたが、やっぱり知らんとさ」
「そ、そうか。藤ねえは?」
「大河は寒稽古に行った。てか、俺が行かせた。あれがいると話が進まねえからな。
墓参りに間に合うように戻ってこいとは言っといた。
大河は遺言状は知らんってことだが、嘘じゃねえと思うよ。
あれが預ってたら、その嬢ちゃんが来たのに隠しちゃおけん」
夕日色の頭が頷いた。がさつで無駄に明るいぶん、大河はその手の陰湿さと無縁である。というより、言動が怪しくなって、すぐにぼろを出すに決まっている。
「その弁護士の話じゃ、遺言状は思わぬところから出てくるんだとよ。
本の間とか、蔵の中とか」
「本とか、蔵?」
「そうさ、お嬢ちゃん。本棚の本に挟んどいたり、蔵の箱に入れといたり。
どうしようかと思うようなことほど、そうしちまうって言うんだよな」
もしも、聖杯戦争が通常の周期で発生していたら、イリヤが日本に来るのはあと五十年先だった。士郎は七十歳近くになる。その時に、この家に住んでいるかはわからない。
「……ええ、わかる気がするわ」
皺のある無骨な手が、白銀の頭を撫でた。
「そっか、偉いなあ。鳶が鷹を産んだかね。
でなきゃ、お袋さんが、よっぽどできた美人だったんだろう」
「そうよ、とっても綺麗で優しかった……」
セイバーは静かに瞑目した。彼女の感覚では、アイリスフィールが誘拐されたのは、一週間ほどの前。しかし十年の時が流れ、前回のマスターは死去し、彼の娘は外見はあまり変わらぬものの、中身は淑女となっている。
「おう、そうだろうよ。士郎の家にゃ、道場や土蔵があるから、家捜しも骨だぜ。
先に戸籍を見てみるかい?
ただなあ、素人が見ても、よくわからんぜ。
嬢ちゃんたちは、日本語は読めるかね」
「はい、わたくしは多少ならばですが」
しかし、雷画はセラの答えに気遣わしげな面持ちになった。
「これなあ、日本人だって、すらすら読めるもんでもないぞ。士郎、見てみな」
促されるまま、黒い表紙の冊子を開く。最初は横書きのすっきりした戸籍が出てきた。衛宮切嗣の死亡年月日が載っている戸籍。その下に養子の士郎。士郎の名前の下には、確かに実父母の名前が載っていた。
「なんだ、調べようと思ったら、こんなに簡単にわかったんだ……。
俺の本当の両親も……」
一枚めくると、戸籍は縦書きになり、更に詳しい情報が載っていた。士郎が衛宮となる前の戸籍の本籍地。筆頭者である実父の名前。こちらの戸籍を調べれば、士郎の実父母と血縁を辿っていける。
更にもう一枚。筆頭者は切嗣から矩賢に変わる。
「この人が、じいさんの父さんなんだ。
難しい字の名前だよな。なんて読むんだろ?
イリヤからだと、この人もお祖父さんになるんだな」
「うん……」
切嗣の母にあたる妻はバツで消されているが、父の方は消えていない。
「じいさんの父さんは生きてるのか!?」
これに雷画は顎をさすり、塩辛声で唸るように言った。
「いいや、そいつがわからんかったのよ。
その戸籍は、あいつが士郎を養子にする前のもんだ。
後のも取ってはみた。五年前の話だがな。次を見てみな」
「……消えてない。じゃあ!」
表情を明るくする士郎と対照的に、雷画の表情は渋いままだった。
「あのな、戸籍ってやつには住所がわかるなんたらいう書類があるそうだ。
そいつもくっつけてあるんだがよ」
促されるままに更にページをめくってみる。
「○○国アリマゴ島? 外国にいるのか……」
「なんでもな、外国は日本みたいに役所に住所の登録をしないっちゅうのさ。
調べてもらったが、そこは絶海の孤島ってやつでよ。
電話もねえっていうんだぜ。
死んでても、死亡届が出されていないかも知れんのだと」
衛宮切嗣の娘と養子は、異口同音に驚きの声を上げた。
「ええっ!?」
「もっとも、あいつは一人っ子だし、士郎がいたから遺産相続には問題ねぇ。
親子が絶縁なんざ、俺ら極道にも珍しいこっちゃないし、
奴さんが連絡してないのは、相応の理由があるんだろうと思ったんでな。
それ以上は手をつけてねえのさ。
士郎の親戚のほうも、下手な相手だと、財産を食い物にされちまうからな。
おまえがしっかりしてから、探すようにしたほうがいいと思ったのよ」
決まり悪げにそう言って、雷画はイリヤに頭を下げた。
「だが、嬢ちゃんには済まねぇことをしちまったな」
「いいえ、教えてくださって、ありがとうございます。
これでわかったわ。シロウが悪くないって。
お爺さま、キリツグのこと許してなかったから……」
「そうかい。だが、びっくりしただろう。
あいつもまだ若かったのに、こんなに可愛い娘もいて、無念だったろうに……。
でも、知らないまんまなら、墓参りもしてもらえなかったんだ。
嬢ちゃんには気の毒だったが……」
雷画は太い溜息を吐くと、士郎に向き直った。
「だが、士郎よ、遺言探しはするだけはしてみな。どっかにあるかもしれん。
弁護士に聞いたら、遺言による認知ってのがあるんだと。
もし見つかったら、裁判やるより楽だとさ」
琥珀とルビー、エメラルドも大きく瞠られた。
「えっ、じゃあなんで、じいさんは預けとかなかったのさ!?」
「士郎よ、おまえとその子、どっちが金持ちだ?」
「へっ!?」
二人は顔を見合わせた。バイトをしながら高校に通っている士郎と、メイドを連れて、ドイツから日本まで旅行ができるイリヤ。比較にもならない。
「そういうこった。
ドイツで何不自由なくお嬢様として暮らしているなら、
無理に日本に連れてくるってのも考えちまうもんさ。
ましてや、なさぬ仲の男の子まで遺してるんだからよぉ」
「ははは……」
士郎は力ない笑いを零した。それがこの現状をもたらしているのだが。
「しかし、おめぇ、誰に教わった?
隠し子が来たってぇ時に、落ち着いて調べにくるなんざ、
言っちゃ悪いが、おまえの知恵じゃあるめぇ」
助け舟を出したのはセラだった。
「実は、遠坂様のお力をお借りいたしました」
「ははぁ、やっぱりなあ。士郎、あっちが本命か?
お袋さんもそりゃ別嬪だったが、あの子のが華があるからなぁ。
すらっと柳腰でよぅ、小股の切れあがった女になるぜ。
そいじゃぁよ、毎朝来てたボインの嬢ちゃんはどうすんだ?
ああいう大和撫子の安産型のほうが、おまえにゃ合ってると思うんだがなぁ……」
真紅と聖緑がドライアイスの剣と化し、士郎を串刺しにする。
だからやめて、俺の信用も駄々下がりだ!
「だから、だから、そういうんじゃないって!
遠坂の親類も、ちょうど不幸があって、それでだよ!」
「やっぱり間桐の嬢ちゃんが本命か?
――まさか、ひょっとして、……ウチのか?」
「だぁーっ! もう、違うって言ってるだろ!
イリヤのこと、しっかりさせるのが一番大事なんだから」
士郎は真っ赤になって力説した。その時、帰宅を告げる大河の声が。
「とりあえず、みんなで墓参りに行って来る!」
宣言すると、士郎はほうほうのていで雷画の前から辞去した。背後に、美女と美少女たちを引き連れて。そこに孫娘も加わるわけだ。雷画は四角い顎をさすった。
「やっぱよう、氏より育ちが強いよなあ……」