ルピナスの花   作:良樹ススム

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 主人公の容姿。
 髪色:青みがかった黒。
 瞳の色:オレンジ。
 身長:165センチ。
 瞳の形:つり目ぎみ

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 イメージの参考程度にお使いください。


第一章 ヨモギ 
第二話 変化


 

 ――――微睡みの中、意識が浮上していく感覚が広がる。

 懐かしい夢を見た。生まれたばかりで純粋であった頃の自分そのものだった。あの頃は、本当になにも考えてなかった。もう戻れない、自分は知ってしまったのだ。

 勇者の全てを――――。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 草薙真生、現在讃州中学校に通っている一年生。個人的には、周りからの信頼もそこそこにあると自負している。

 

「おはよー! 今日もいい朝だね、真生くん!」

 

「おはよう。今日も朝から元気だな、友奈」

 

 今、元気な挨拶をして来た彼女の名前は、結城友奈。

 小学六年生の終わりごろに知り合い、今もよい付き合いをさせてもらっている。もちろん同級生。

 父親からは武術、母親からは押し花を教えられている。とても正義感が強く、困った人を放ってはおけない困った性格。ここまで天真爛漫という言葉が似合う子はなかなか居ないだろう。

 

「おはよう、真生くん。今日もわざわざ迎えに来てくれてありがとう」

 

「俺が好きでやってるんだ。お礼を言われることじゃないよ。むしろ最近は迷惑なんじゃないかと心配なくらいだ」

 

 彼女は東郷美森。見た目は清楚可憐。性格は、たまにおかしくなるが基本的にはいい子だ 。同じく同級生。

 彼女を友奈のように言葉で表現するのなら、大和撫子が妥当な言葉だろう。器量も良く、料理もできて頭もいい。しかし、少し性格的に重いところもあるので、浮気などは絶対に許さないだろう。受け売りではあるが、彼女の旦那になる人は果報者だが色々と大変そうである。

 彼女は、友奈のお隣さんで春に引っ越してきたが、友奈の生来の性格のおかげか既にかなり仲は良さそうだ。少し不安なところもあったがこれなら安心だろう。

 

「それじゃあ、そろそろ学校にいこうか。……ところで、本当に俺が車イスを引かなくてもいいのか?」

 

「うん! だってここは私の特等席だもん。真生くんにだって譲らないよ!」

 

「友奈ちゃん……」

 

 ……仲が良すぎるのも少し問題かもしれないな。

 

 

 

 

 何はともあれ、学校へと到着した。俺と彼女達は残念ながらクラスは違うが、放課後にはどうせ部活動で会うことになるのだから関係ないだろう。俺達は勇者部という不思議な部活に入っている。その部長と俺は色々あって知り合いなんだが、まあそれはまた今度でいいだろう。

 俺の学校での過ごし方は大抵決まっている。基本的には本を読むか、会話するかの二択である。たまに友奈辺りがこっちのクラスまで現れて、友達の相談などに同行する羽目になることもあるが、滅多なことでは来ないので、今日も静かなものだ。

 

「真生く~ん! ちょっといい?」

 

 ……前言撤回しなければならないようだ。

 

「で、今回はなんだ?」

 

「えっとね、この人、沢口さんっていうんだけどね、好きな人の好きな人が知りたいんだって。それで真生くんにちょっと手伝ってもらおうかなって」

 

 恋愛相談か。沢口は物静かで恥ずかしがりやな美少女である。彼女に好意を寄せられる男、か。知り合いにいるかね?

 

「なるほど。まあ、自分が恋愛対象になっているかどうかは気になるもんか。今更だけど、そこの沢口さんは俺が協力することに納得してるのか?」

 

「うん。それは大丈夫! 前にその事聞かないで相談したら、解決できたとはいえすっごく怒られたもん」

 

「二度の失敗は犯さないか。まあ、それならいいや。それじゃあ後でそれとなく聞いとく。他に要望は?」

 

「特にないって。それじゃ、よろしくね!」

 

 この手の恋愛相談もたまには来る。まあ、俺たちは揃いも揃って恋愛経験は少ないからあまり力になれないことも多いんだが。

 告白されたことは、あるにはある。しかし、全て断っているから結局恋愛経験はないのだ。相談を受けたからには完遂しようと思うが、この手の話であまり期待されるとこちらが困るのだ。恋愛というものは結局相手の気持ち次第なのだから。

 

 

「えっと、あの、ありがとうございました!」

 

 結果から言えば、大成功である。彼女に好意を寄せられていたのは、友達の山野だった。

 好きになった理由は、入学式の日の通学中に足をくじいて遅刻しそうなところを、彼が通り掛かり助けてもらったこと、らしい。ひとつ言わせてもらうのならば、

 

 ラブコメか。

 

 この一言に尽きる。彼自身も彼女に好意を抱いていたらしく、くっつくのは時間の問題だったらしいが、今回の件で速攻でくっついたらしい。山野自身も悪いやつではないし、祝福するべきなんだろうが何となく解せぬ。

 

「いやあ~良かったね~。二人の喜んだ顔見たら、こっちもなんだか嬉しくなっちゃった!」

 

 隣の友奈は相変わらずの純粋さを発揮していて、なんだかなんとも言えなくなってくる。

 

「私も、苦労した甲斐あってよかったわ。彼女、元が良かったからなかなかやりがいもあったし」

 

 東郷は、俺が山野に聞いている間に沢口を説得し、告白の準備をさせたらしい。俺に山野を足止めするようにいって、わざわざ一旦沢口を家に帰らせ、服を選び、軽く化粧までさせて山野に告白させたのだ。この執念は一体どこから来たのか。いささか疑問である。

 

「ところで、勇者部の方に顔出さなくていいのか? かなり遅くなったけど」

 

「「あ」」

 

 忘れてたんかい。

 

 

 

 

「あんた達……。たった一人で部室で待ち続けたアタシの気持ちわかる? アタシ一応先輩よ? 先輩泣かせていいの? 泣いちゃうよ? いや、むしろ泣くわ、うわあああああぁぁん!!」

 

 このうそ泣きしてる先輩は、犬吠埼風。勇者部の部長であり、俺たちのひとつ上の先輩。年下の妹がおり、たまに自慢したりするような見事なシスコンっぷりを見せつけている。自分の事を女子力が高いとよくいうが本当に女子力がそこそこ高いので困る。しかし、その大雑把な性格で台無しにしている。

 おろおろしている友奈と困ったような顔をしている東郷、これを見るに東郷はうそ泣きに気づいているのだろう。しかし、仮にも年上が恥ずかしげもなく堂々とうそ泣きをしているので、反応に困っているのだろう。気持ちは分かる、友奈も気がつく様子はないし、そろそろ助け船を出そうか。

 

「犬吠埼先輩、そんな堂々とうそ泣きしないでください。まじで泣かせたくなるじゃないですか」

 

「なにそれ怖い。……え? まじなの? 真生ってドSなの?」

 

「犬吠埼先輩がもとに戻ったところで、ちょっと遅れたけど、活動始めようか。東郷、なんか依頼ある?」

 

「ちょっと待ってて。すぐに見てしまうから」

 

「え、無視なの? さんざん待たせといて無視しちゃうの?」

 

 犬吠埼先輩が少しうるさいが、おおむねいつも通りの勇者部である。少し経つと、東郷が少し残念そうにしながら、こちらを見て口を開いた。

 

「残念だけど、今回はなかったわ。やっぱり、まだ実績が少ないから頼りにしてもらえないのね」

 

「そうか。犬吠埼先輩、それじゃあ今日はどうします?」

 

「よくぞ聞いてくれた! あ、そんなドン引きしたような態度やめて。傷つくから。……コホン。今回はまあいつも通り、ボランティアでゴミ拾いね。千里の道も一歩から! 何事も小さいことからコツコツやることが大切なのよ、それじゃ、皆の衆。いくぞ~!」

 

「「「おお~」」」

 

 犬吠埼先輩の掛け声に友奈は元気良く、東郷は静かに、俺は若干やる気なさげに、三者三様の反応を見せた勇者部の活動が始まるのである。

 

 

「やっぱり、ゴミ拾いをした後はすっきりするよね! やりきったって感じが特に!」

 

「そうよね~。やっぱり、友奈は良くわかってるわ~。それに比べて、真生! 何であんた、道行く人々と会話してんのよ! ゴミ拾いしなさいよ、ゴミ拾い!」

 

「してるでしょうに。後、会話云々は主に勇者部の広報活動ですから。あんまり依頼ないとモチベも上がりませんし、こういうことはコツコツやんないと」

 

「あ、はい」

 

 突然お怒りになられた犬吠埼先輩を速攻で沈めながら、ゴミ拾いを済ませるとこっちに人影が近づいてくる。

 

「……お姉ちゃん? 何でこんなところで変な格好してるの?」

 

「!? い、樹!? 何でここに!?」

 

「何でもなにもないよ。だってここ通学路だよ?」

 

「そうだった! そっか、じゃあ今帰りなんだ。お帰り樹~」

 

「あ、うん。ただいま。えっと、お姉ちゃん、そこの人たちは誰……なの?」

 

 樹、と犬吠埼先輩に呼ばれた少女が少し怯えるように俺たちの事を犬吠埼先輩に聞く。察するに怯えている原因は主に俺だろう。今もチラチラと見てきているし、あまり異性に耐性無さそうだし。

 

「ああ、この子達はね、アタシの部活の部員なのよ。あっちの元気良さそうな子が友奈で、あっちの胸の大きい子が東郷で、あっちの意地悪そうな顔してるのが真生」

 

「初めまして! 結城友奈って言います。よろしくね、樹ちゃん!」

 

「初めまして、私は東郷美森。不本意な紹介のされ方だったけれど、これからもよろしくお願いするわ。樹ちゃん」

 

「初めまして、俺は草薙真生。まあ、意地悪そうってのは否定しないが、あんまり怯えられると俺も困るからな。少しづつでいいから慣れていってくれ」

 

 俺たちのそれぞれの自己紹介を聞いて、犬吠埼妹は警戒を緩めてくれたようだ。俺はまあいいが、二人にまで怯えられたらどうしようかと思ったが杞憂だったようだ。

 

「ん~。そろそろキリも良くなってきたし、今日はこれで終わろうか! 各自ゴミは分別して捨てるように! 解散!」

 

 犬吠埼先輩が部活動の終わりを告げたことで、それぞれ解散ムードになる。友奈達もそれぞれ体を伸ばしたりしているようだ。友奈達の分のゴミもさっさと持っていき、分別して捨てる。もとの場所に戻ると、友奈達が手を降っている。

 

「ありがと、真生くんっ! 帰ろ~!」

 

 大きな声で呼んでくる友奈に手を振り返しながら、駆け足で彼女達のもとへ向かう。

 犬吠埼姉妹が揃って帰っていく。俺たちも談笑しながら、家へと向かう。途中で友奈達と別れ、マンションへ帰宅する。

 

 これが俺達、勇者部の日常である。




 どうも、良樹ススムです。鷲尾須美は勇者である(小説版)を買いました。これで多少は設定を理解できるはず! ……できるといいなあ。

 気になった点、誤字等があったらお伝えください。もちろん、普通の感想でも歓迎します。
 では、最後に


 変化:エゾギクの花言葉

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