東方陰陽録~The medium disappeared in fantasy~   作:Closterium

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第十三話 風化した最先端の道具

 

晩秋。秋の終わりに相応しい寒さが幻想郷を覆った。

色付いた葉は散り始め、山や森の地面は今頃色彩豊かな季節の絨毯に模様替えしている頃だろう。

師走を目前に控え、何でも屋・猫の手の書き入れ時は近い。だからこそと言っていい問題に二人は直面しようとしていた。

 

「うちはお急ぎの依頼受注に弱すぎる!」

 

夕食の居間。黄菜子は焼き魚を噛み砕きながら唐突に言った。

黄菜子の急提案や思いつきは珍しくない。永一はいつも通り彼女の話に耳を傾けた。

 

「冬はもう目前。里の人はみんな揃って新年に向けて大掃除とか始めたりするわけだよ。」

 

「と言うと?」

 

「いつもの仕事に加えてその手の仕事が増えるってこと。つまり書き入れ時だよ!それなのにあたしたちの依頼は前日以前の指定時間しか受け持てないんだよ!」

 

「でも、空き時間には黄菜子の仲間の玄光くんがリサーチしてきた人に売り込みに行くじゃん。」

 

「それがそうも行かないんだよねー。この時期から先はこっち(猫界隈)も書き入れ時なんだ。この時期を逃すと獲物がみんな冬眠しちゃうんだ。頼めばいつも通り仕事を持ってきてくれるだろうけど、これからの時期、玄光にはこっちの仕事を手伝わせない。これはあたしの意向ね。」

 

と言うと黄菜子は土間の方を見た。直後、草が揺れる音が遠くに向かって行った。

 

「つまり、誰でも直ぐに依頼を入れられるような案が欲しいって事だよな?電話とかどう?」

 

永一は台帳の横に置いてあるスマートフォンを指差した。

すると黄菜子は呆れた表情で言った。

 

「やっぱり永一は現し世の人間だよね……幻想郷の人間の間に固定電話がどれくらい普及してると思う?」

 

「……じゃあ、固定電話がある家に頼んでさぁ──」

 

「それは無能な高機能算盤《スマートフォン》の『圏外』を圏内に出来ればの話。そもそも幻想郷の電話が現し世のオーバーテクノロジーに繋がるの?」

 

「そればっかりはどうにもならないな

……」

 

結局、この日は有用な案は出ずに終わった。

 

 

──紫の異界

 

その日、永一はは朝も早くから紫の異界に引きずり込まれた。

本日は数百の札を一度に操りながら紫の猛攻をひたすらに受け流し避ける、紫が「レッスン」と呼ぶ弱いもの虐めである。何故彼が虐めと呼ぶのか。彼女は彼が苦しむ様を楽しんでいるからである。ちなみに、逆に上手く立ち回ると悔しがる。

 

「今日はこのぐらいかしら。」

 

「紫さん……どうか朝から半殺しにするのはやめてください……」

 

「半殺しが嫌なんて貪欲ねぇ。じゃあ明日からは朝から全殺しね。」

 

「……せめて夜にしてください。」

 

永一に選択の余地はなかった。

 

「まあいいじゃない。今日は午前中いっぱいで午後の仕事は無いんでしょう?」

 

「予定だけです。依頼が無ければ売り込むんですよ。」

 

「あ、そうなの。じゃあこれ。魔法の森入り口の『香霖堂』という古道具屋まで持って行ってくれるかしら?」

 

永一は何が「じゃあ」なのかわからなかった。

紫がどこからともなく取り出したのは、幻想郷らしからぬ警告色を放つ真っ赤なポリタンクだった。

久々に見る現し世の物体に思わず目を奪われる。

 

「……灯油ですか?」

 

「ご名答。最近冷えてきたからねぇ。」

 

「幻想郷には灯油を使う暖房器具があるんですか?」

 

「貴方と同じように現し世から流れてきた物よ。外来品を知り、使用を望む者にはそのエネルギーを授けますわ。勿論対価を頂きますけれど。」

 

永一のスマートフォンの充電は基本的にモバイルバッテリーで行われる。そのモバイルバッテリーの充電は数日に一回紫に頼んでいるのである。

しかし、彼は対価など払った覚えはない。少々身に覚えがあるのは気のせいということにした。

 

「現し世の道具が使える上に紫さんと知り合いの人間。一体何者なんだろう……」

 

「フフフ。それだけかしらね。」

 

「?」

 

紫の言葉には時折理解に苦しい点がある。そういう所が彼女の胡散臭さを生んでいるのだが、当の本人はそれを知ってか知らずか改善する気は無いらしい。

 

「そうそう、灯油の対価も忘れずにね。」

 

「対価って言われましても、何を貰えばいいんですか?」

 

「そうねぇ……店の中で貴方にとって一番価値が無さそうな物を貰ってきなさい。」

 

「……?」

 

彼は気が付くと自宅の居間にいた。レッスン後は基本的に心身共に疲れているのだが、毎回帰宅した実感が湧かないのがまた疲れるのだ。

 

「お帰り。今日はお土産付き?」

 

黄菜子を見た瞬間、仕事があることを思い出し、今日彼は三度疲れるのであった。

 

朝から散々疲れたが仕事は極めて円滑に進んだ為か、午前も半ばで完全に終えることができた。

それからは昼食の準備である。彼にとって料理は苦ではない。むしろ心の平安の礎たる行動であると言える。つまり、時間があるということは、それだけ品数が増える事を意味する。

数時間後、黄菜子が帰る頃には昼食とは思えない量の品々が食卓に並ぶことになる。

彼女が歓喜に震える姿は想像に苦しくない。

 

 

──数時間後

 

「時に永一、設備投資をすると生産量が増えるって言うじゃない?」

 

「そうだな。」

 

「あたしの場合、生産量の増加量は異次元。よく覚えておいてね。」

 

そう言うと黄菜子はこれまでに無い勢いで家を飛び出していった。永一も思う存分料理が楽しめたのは久々だったのでいいリフレッシュになった。ただ、その分だけ食費がかさむのは珠に傷である。

 

その甲斐があってなのか、今日は午後を完全に空きにして貰えたのだ。仕事において黄菜子の温情は珍しい事だ。

しかし永一の視界に無駄に目立つポリタンクが映った。これで紫のお使いが無ければどれだけ良かったことか。

面倒ではあるが、さっさと配達を済ませるのが吉だ。

 

 

──香霖堂

 

魔法の森の東部。永一の自宅から見ると森を挟んで対角に当たる位置にその店はあった。

魔法の森の中ではないだけに、森特有の嫌な湿度や瘴気は無く、比較的過ごしやすい場所である。ただし、近寄り難さは凄まじいものだ。建物には古ぼけたポスターや看板が至るところに貼り付けられ、周辺には錆びきった道路の標識や用途不明のパイプなどが転がっている。

紫の話を踏まえれば現し世の道具コレクターという事がわかるが、現し世の人間視点ではどう考えてもゴミ捨て場である。

本当に人がいるのかすらも怪しくなってきた。

 

重いポリタンクを持ちながら人間の里を越え、鬱蒼とした神社周辺を抜けてきたのだ。せめて店主がまともな人間である事を祈りながら扉を開けた。

店の中の散らかり具合は想定内である。

最奥の席に長身の痩せた男がいた。

 

「いらっしゃいませ。何かお探しで?」

 

「あ、いえ。自分は八雲紫のお使いで、灯油を持ってきました。」

 

男は席を立ち永一に近寄ると、少し驚いた表情で彼を見つめ、急に悲哀な目になった。

 

「どうもありがとう。しかし八雲紫、まさか人間まで式神に……」

 

「違います。自分は八雲紫の弟子です。普段は猫の手という、所謂何でも屋を経営してます。」

 

「猫の手!?って事は君が土御門永一君かい?」

 

男は目を輝かせて彼に詰め寄った。永一は無言で頷いた。

 

しばらく話しているうちに、永一は男と打ち解けていった。

男の名前は森近霖之助。幻想郷では数少ない、現し世の道具を取り扱った古道具屋を経営している。

永一は見た瞬間から気づいていたが、霖之助は妖怪である。正確には妖怪と人間のハーフ、いわゆる半人半妖という種族である。彼に曰く、見た目や力は人間と大差無いが、寿命は妖怪と同じく長寿なのだという。

霖之助は種族についてこれ以上話さなかったが、彼が何故こんな辺境で店を経営しているのか、彼には何となく理解出来る気がした。

 

「しかし今日は良い偶然が重なるようだ。もう少し後、君の妹さんが来る予定なんだ。」

 

「黄菜子に会ったんですか?」

 

「うん。今朝、里に出向いた時、偶然にも妹さんに声を掛けられてね。うちの仕入れの手伝いをしてもらう事になったんだ。香霖堂もこの時期は書き入れ時でね。」

 

この瞬間、永一の休暇返上が決定した。

 

「店の商品を見ての通り、僕は外の世界に興味があってね。妹さんの黄菜子ちゃんもそうだけど、君にも会ってみたかったんだよ。」

 

永一にはどれが店の商品なのかわからなかった。

どこを見ても「それを売るなんてとんでもない」商品ばかりである。

 

「そうそう!君に一度見て貰いたかった物があるんだよ!」

 

霖之助は目を輝かせながら机の引き出しから何か取り出した。

その

 

「最近手に入れた物でね。一見奇妙な板に見えるが、実はこれ、『携帯電話』なんだ!」

 

「実は」も何も、永一から見れば一昔前のガラパゴスケータイである。

 

「携帯電話が流れ着く事は珍しくないけど、開閉するものは非常に貴重なんだ。幻想郷に流れ着かないということは、外の世界でもきっと最先端に違いないと思うんだ!しかもこれ──」

 

霖之助は携帯電話を開閉すると永一に見せつけた。誇らしげなその表情は携帯電話の液晶に匹敵する輝きに満ちていた。

 

「ちゃんと作動するんだ!作動するということは、つい最近まで使われていた動かぬ証拠。古道具屋をやっていて良かった。これを見る度に僕は思うよ。」

 

永一は完全に言葉に詰まった。何故なら、彼の着物のポケットには、開閉機能はおろかボタンすらない、猫の手御用達の超高機能算盤《スマートフォン》が存在しているからである。料理でタイマーとして使い、そのまま持ち出してしまったのだ。

霖之助は彼に意見を求めている。腿に触れる四角い感触が無ければどれ程良かったことか。

 

「遠距離の相手との通話や文書のやり取りが出来る。現し世の人々の便利道具の三種神器の一つとも言われる程の必需品です。」

 

「つ、つまり……外でも最先端ってことかい!?」

 

霖之助は緊張を表情に出しながら永一に問いかけた。

 

「そ、そりゃあもう。電池が残ってる《漏電しなかった》んですから……」

 

永一は優しい嘘を吐いた。霖之助は大いに喜びを表した。その様子を見れば見るほど彼は申し訳なくなった。

しかし、これで良かったのだ。ガラケーが幻想入りしたように、いつの日か彼の手にスマートフォンが握られる時が来ることだろう。

オーバーテクノロジーは追々で良い。文明のネタバレほどつまらないものは無いのだから。

 

「折角の機会だから、その他にも道具を見て欲しいんだ。あそこに積んである『パーソナルコンピューター』なんだけど……」

 

それから霖之助による宝の山の御披露目大会が始まった。彼の外来品についての解釈は、いかにも幻想郷的で夢があり聴いている方も何となく楽しかった。

 

「それにしても、幻想郷では外来品は普及していないのに、よく名前が判りましたね。調べるのは苦労したんでしょう?」

 

「それがね、実はあまり苦労していないんだ。僕は道具をみれば、その『道具の名前と用途が判る』んだ。例えばさっき君が持ってきた灯油入りの『ポリタンク』。僕はそれを初めて見たけど、液体を運搬、保存するための道具だと判るんだ。」

 

永一はスマートフォンを見せなかった自分を心から称賛した。

 

「古道具屋の為に生まれてきたような能力ですね。」

 

「ただ、名前と用途が判っても使い方までは判らないんだ。能力の有無を問わず、君のように外の世界の知識を持った人の話は貴重なんだ。」

 

永一は相槌をしながら店を見回した。確かに使えるかはさておき、用途だけ見れば物凄く便利な道具が多い。

その時、ふと見つけたとある物が彼の興味を引いた。

 

「霖之助さん。あれって売り物ですか?」

 

「これかい?これは売り……非売品なんだけど。どうかしたのかい?」

 

霖之助は一瞬肯定仕掛けてから言葉を濁した。その時、永一は紫の言葉を理解した。

灯油の対価に店で一番価値がないと思えるものを持ってくること。言い換えれば現代の現し世基準で価値の無い物を選別しろという事で、裏を返せば店主に道具の価値を悟られるなということである。

つまり今、永一は霖之助にとある道具への関心を悟られかけているのである。

 

「いや、俺が産まれるずっと昔のものだったので気になって。携帯電話よりずっと前進の道具なんですよ。」

 

永一の言い分に霖之助は少し懐疑的な目をした。しかし、彼の言っていることは紛れもない事実である。

その時、店のドアが開いた。いつの間にか黄菜子が来る時間になっていたらしい。

ただ、予想に反して人影は二つ並んでいた。

 

「こんにちはー!猫の手でーす……永一?なんでここにいるの?」

 

「ポリタンクの配達だよ。んで、隣の妖怪さんは黄菜子の知り合い?」

 

「ここに向かう途中で会ったんだよ。」

 

華やかな着物の黄菜子とは対照的に灰色の頭巾を被った少女は少し驚いたようだった。

 

「む、人間に化けていたつもりだったが。流石は噂の猫の手の陰陽師って所か。」

 

少女は頭巾を脱ぐと、グレーの髪と一緒に丸く大きな耳が顔を出した。

 

「僕から紹介しよう。彼女はナズーリン。『商品の仕入れ』を手伝って貰おうと思って前もって呼んでいたんだ。」

 

「それにしても随分と面白い展開だね。私以外にも助っ人が二人、それも外来人なんてね。」

 

「いやいや、少し知識があるだけですよ。」

 

「そうじゃない。期待はしていないが足手まといにはならないだろうと踏んでの言葉だよ。君たちは精々私の手足になってくれればいい。」

 

霖之助は慌てて注意するも、ナズーリンの挑戦的な言葉は二人の闘争心を引き立てた。

 

 

──無縁塚

 

幻想郷の境界にして始まりと終わり土地。

 

鬱蒼とした森を越え、辿り着いた場所は永一にとっては紛れもなく全ての始まりの土地であった。

しかし、あの時とは一変、浮遊霊の姿は無く、地を真っ赤に染めていた彼岸花は儚く萎れ、見とれるほど美しかった紫桜は葉の一枚すら付けていなかった。

その代わりに枯れた彼岸花の隙間から墓石代わりの石板が見えた。

立ち並ぶ石板には名前の書かれた物は一つとしてない。縁の無い物が眠る墓が無縁塚なら、忘れ去られた屍が行き着く先が幻想郷の無縁塚なのである。

 

ただ、永一はこの無縁塚と霖之助の依頼に何の関連性があるのかわからなかった。

一行は台車を止めた。

 

「霖之助さん。俺らはここで何を……まさか、墓荒らしじゃないですよね?」

 

「まさか。いくら外来人が葬られているとは言えそんな事はしないよ。外の世界からやって来た君たちがまずここに辿り着いたように、外の世界の道具もここに流れ着くのさ。」

 

「つまり霖之助さんは拾い物を売っているんですね……」

 

「山菜だって野原から収穫するだろう?外来品だって同じさ。」

 

永一と霖之助が話している間、ナズーリンは胸元のペンダントを弄っていた。ペンダントを地面と垂直に吊るし何やらぶつぶつと呟いていた。不規則に揺れるペンダントを暫く見つめると、妙に長いダウジングロッドを突き立てた。

 

「さて、準備は完了した。私はペンデュラムに専念する。君たちはペンデュラムが指す方向を探してひたすらに道具を持ってきてくれればいい。」

 

その時、永一と黄菜子が案に噛みついた。

 

「こんなんじゃあ非効率だよ。当たる保証もない石ころの動きであたしたちを動かすだけなんて時間の無駄。依頼の時間報酬をネズミさんが払ってくれるなら別だけど。」

 

「俺も黄菜子に同意だな。現し世の言葉で言うとダウジングはあくまでも『科学的に証明されていない』しな。」

 

するとナズーリンは地面に刺したロッドを引き抜くと永一に近づいた。

 

「上着……いや、着物か。この周辺で一番価値のある物が入っているね?合っているなら是非とも拝見したいものだね。」

 

「なんだって!?永一君、外から持ってきた道具を持っているのかい!?」

 

ダウジングは苦しくも痛いところを突いてきた。そこを霖之助の期待の眼差しが刺さる。確かにダウジングは科学的に証明できないが、迷信ではなかったのだ。

ただし、迷信には迷信。永一の眼はダウジングロッドの「流れ」を見逃さなかった。

 

「やっぱり、ダウジングは『科学的に証明されない』な。」

 

「おや、シラを切る気かな?」

 

「いや、一つ謝らなければいけないみたいだ。君のダウジングロッドは俺の霊力を絡んでしまうらしい。」

 

永一は自身の霊力でロッドに流れる霊力をかき混ぜてみた。ロッドの片方はそれに合わせてぐるぐると奇妙な挙動を見せた。

 

「俺の眼は『科学的に証明されない』ものまで見える。そのダウジングロッドは道具に憑く微小な霊力、今回の場合は外来人の霊力に反応しているんだろ?ご存知の通り俺らは外来人。多分その首飾り(ペンデュラム)も機能しないだろうよ。」

 

霖之助は納得しながらも心底残念そうだ。

その時、黄菜子が一つ提案した。

 

「なら一つ提案。ここはあたしと永一、霖之助お兄さんの二手に別れてどちらが多く外来品を集められるか競うってのはどうかな?これならネズミさんの邪魔にもならないし、ゲーム性があって面白いよ。」

 

「ふむ、面白そうではあるが……ただ競うだけではつまらないとは思わないか?」

 

「そうだなぁ……じゃあ、あたしたちが負けたらあたしたちが集めた外来品を全てネズミさんにあげる!」

 

それを聞いた霖之助は仰天した顔で抵抗した。

 

「き、黄菜子ちゃん!それは困るよ!?もし僕たちが勝ったら僕が君たちを呼んだ意味が無くなるんじゃないか!?」

 

「その場合はネズミさんの手伝いをしたって事になるね。当然霖之助さんからお金は貰えない。つまり、あたしたちは猫の手の信頼と時間を賭けるよ!その代わり、ネズミさんたちが負けたら……」

 

「霖之助さんの店にある商品を一つ、俺らにプレゼントしてもらう。」

 

永一は黄菜子の言葉を遮って言った。ナズーリンは呆然として幾らか瞬きをした。

 

「……そんなのでいいのか?」

 

「勿論。ただし、値段は霖之助さんの言い値。霖之助さんは外来人が欲しがるような道具って事をお忘れなく。」

 

霖之助は少し苦い表情になった。彼にも本気になって貰わないとフェアじゃない。

ナズーリンは少し考える素振りを見せると直ぐに頷いた。

 

「ルールはどうする?」

 

「無いよ。何でもありじゃないと面白いでしょ?あっ、でも相手の収集物を盗むのは無しね。」

 

「面白い。では早速私の実力を行使させてもらおう。」

 

その時、彼女の肩に一匹のネズミが登ってきた。

 

「捜索命令。ターゲットは『宝』。管轄内の全ネズミに伝えなさい。」

 

すると、ネズミは彼女から飛び降りると森の奥へと走り去って行った。

 

「じゃああたしも。玄光!」

 

──我が君。お呼びでございますか?──

 

「無縁塚周辺に落ちている外来品を集めて。」

 

──人員は如何致しましょう?──

 

「今動けるありったけで。そうそう。『狩り』は厳禁ね。」

 

──承知致しました。──

 

玄光もまた、藪を越えて何処かへ消えた。

 

「さて、準備は済んだ事だし、宝探し対決、スタート!」

 

黄菜子の掛け声と共に二つの台車が別れて進んだ。名も無き墓標の並ぶ殺風景な場所には似付かない、少々熱の込められた宝探しが始まった。

 

 

──永一&黄菜子グループ

 

無縁塚は一般的には森の中にぽっかりと空いた紫桜を中心とした空間を指すが、結界が綻ぶ部分を指すのならここだけに限る場所ではない。周辺に広がる森や近くにそびえる妖怪の山の一部までが外来品が落ちている範囲内となる。

永一には土地勘が無い上に、相手は外来品収集に慣れている為不利である。しかし、黄菜子の人脈改め「猫脈」と永一の知識は強力な武器である。

まだ空の台車を引きながら黄菜子は永一に問う。

 

「賭け金の条件の話なんだけどさ。何であたしを遮って言ったの?」

 

「猫の手は急な依頼に弱いって話したじゃん?その解決の糸口を香霖堂で見つけたんだ。」

 

「本当!?幻想郷で使える外来品って事でしょ!?携帯電話とか?」

 

「惜しい。携帯電話ほど最先端な道具じゃない。時代遅れだからこそ『最先端』になれる道具なのさ。」

 

その時、二人の行く先から一匹の猫が此方へやって来た。

 

「外来品をみつけたって!……なるほど。ネズミが集まっていたから追い払ったらいっぱいあったと。」

 

「ナズーリンからは奪ってないから一応ルール違反ではないのか。ちょっとズルい気もするけど。」

 

「所詮は猫の前の鼠だったって事だね。更に二手に別れよう。永一は引き続きこの辺を探してて。あたしは猫の指揮を取りに行くね。」

 

黄菜子は猫の行く先へと急いだ。

 

 

──ナズーリン&霖之助グループ

 

ナズーリンは帰ってきたネズミに耳を傾けると苦虫を噛んだ表情になった。

 

「……やられた。」

 

「どうしたんだい?」

 

「部下のネズミたちが殆ど逃げてしまったらしい。なんでも猫がそこらじゅうで群れているらしい。土御門黄菜子、少し甘く見ていたな……」

 

「君が諦めたらまず負ける。僕は道具を判別できても探すのは人並みなんだ。」

 

「補助が無くなっただけさ。私はダウザー。宝探しの真髄はダウジングなのは霖之助も知っているだろう?」

 

ナズーリンは懐から乾燥した葉を取り出し火を点けた。

濃く立ち上る煙にペンデュラムをかざしながら彼女は言った。

 

「相手がどれだけガラクタを持ってこようと、たった一つの宝を見つければいいのだよ。窮鼠猫を噛む。霖之助、とっておきのお宝を見つけ出してやろう。」

 

 

──数時間後・香霖堂

 

日暮れ。美しい橙が秋の空を支配する頃、別れた二台の台車が合流した。

永一と黄菜子の猫脈を使った収集は極めて効果的で、台車には外来品が山のように乗っていた。

一方でナズーリンと霖之助の台車は軽かった。しかし、相手の台車を目の当たりにした今も変わらず、表情は自信で満ちていた。

 

「さて、集めた外来品のお披露目と行こうか。……それにしても、随分と集めたね……」

 

霖之助は永一と黄菜子の山盛りの台車を見るなりがっくりと肩を落とした。かなりの大漁だった為、全員で作業しても全て下ろすのには難儀した。

テレビ、冷蔵庫、洗濯機を初めとした古い大型家電からフロッピーディスクやカセットテープ等の小物周辺機器まで大小様々、どれも現し世ではなかなか見られないほど懐かしい道具が並んだ。

道具を並べ終える頃、永一と黄菜子は勝利を確信していた。しかし、ナズーリンが台車から下ろしたとある物によって戦況はひっくり返った。

 

「これは……!」

 

「これかい?『家庭用掃除機』だよ。箱から管が生えている物はよく見るんだけど、これは不思議な形だろう?こんな形は初めて見た。」

 

その怪奇なる円盤を見るなり永一の心拍数が跳ね上がった。何故なら、香霖堂に置いている商品の何よりも最先端であるばかりか、現し世にある彼の実家にあるどんな家電よりも最先端だったからである。

 

「これだけじゃない。私がダウジングで見つけた時、その円盤は動いていたんだ。地を這う生き物のようにね。……傍らにいた霖之助は見逃したようだが、私は確信している。この円盤は現し世にある道具の中でも最先端さ。」

 

不運にまた不運、霖之助の携帯電話のように電池が残っていたのである。しかし円盤は携帯電話のように長時間使用を想定していない。つまり、霖之助が片落ち携帯電話に述べた説が正しく、円盤はどこかで稼働中に幻想入りしてしまったのである。

万事休すと思われたその時、ナズーリンはぽつりと一言呟いた。

 

「あくまでも仮説だがね」

 

そこで永一はピンと来た。現し世の正しい情報を知っているのは自分だけで、現し世に関する言及の信憑性が高いことを。

少し相手には申し訳ないが、ナズーリンを見返してやりたい手前、負ける事だけは絶対に避けたかった。

 

「現し世にはエアコンという道具があるのは知ってます?」

 

永一の問いに霖之助が答えた。

 

「『エア・コンディショナー』の事かい?空間の温度を司る道具だね。時折見つけるけど、それがどうかしたのかい?」

 

「部屋の温度を変える機能。暑い夏には冷風を送り、寒い冬には温風を送る。現し世の人間の生活必需品の一つと言えるでしょう。」

 

「素晴らしい道具だね……ただ今は『家庭用掃除機』の話だろう?」

 

「もちろん掃除機の話も忘れてませんよ。今、俺がしたのは『幻想入りし得るエアコン』の話。しかし、現し世で使われているエアコンにはそれに加えて──」

 

「ま、まさか……!!」

 

「『自動お掃除機能』という能力が備わっているのです!」

 

「「「な、なんと!!」」」

 

永一の言葉にその場にいる全員が驚いた。そして彼は心の中で「黄菜子、お前まで驚いてどうする」と突っ込みを入れた。

言うまでもないがエアコンの自動お掃除機能とはあくまでもフィルターの掃除である。嘘は言っていないものの卑怯ではある。

 

「エアコンで掃除が出来るなら、この掃除機は一体何の為に作られたんだい?」

 

「霖之助さんの能力は『家庭用掃除機』として処理したんですよね。実際、その用途で販売されました。しかし、客の反応は「便利」ではなく「かわいい」だった。掃除機はたちまち愛玩用ペットのような流行を広げ、名前をつける人が現れる程でした。」

 

「なるほど。つまり、この掃除機は流行とエアコンの登場によって『掃除機としての存在意義』が幻想の物となってしまったのか……ある意味、忘れ去られるよりも悲惨かも知れないね。」

 

結局、霖之助を上手いことはぐらかす事に成功し、圧倒的物量の差で猫の手は勝利を収めたのであった。

 

そして約束通りナズーリンの奢りで香霖堂の商品を買うことになった。

散らかった店内に転がるダイヤの原石。永一がそれを手に取って霖之助に見せる。

 

「キャ──────!!!!」

 

店の奥から黄菜子の叫び声が聞こえた。永一は驚いて店の奥へ走った。何せ圧倒的な力の前にも動じない肝の持ち主である土御門黄菜子の叫び声である。尋常ではない。

 

「どうした!!」

 

「永一!これっ!これ買って貰おう!!絶っ対これ!!」

 

どうやら歓喜の叫びのようで永一は安堵したが、同時に彼女の手に握られた物に腰を抜かせた。

それは一振りの刀。しかもかなりの曰く付きで、おぞましい程の霊力量が刀に合わせて動く様が永一の眼には映っていた。

 

「馬鹿!!こんな物騒な物持つんじゃない!!」

 

「うわぁああああ!!黄菜子ちゃん!何やってるんだい!!」

 

黄菜子は抜刀すると刀身をくるくると踊らせるように振るとすぐに納刀した。

唖然とした永一と霖之助に対してナズーリンは盛大な拍手を送った。

 

「初めて持った筈なのにこの手に馴染む感覚……素晴らしい。あたしが握るに相応しい刀に違いない。東洋のエクスカリバー、『叢雲の剣』と名付けよう!」

 

その時、美しい西日が影を見せた。雨粒が屋根や葉を叩く。パラパラと静かな雨音が店内に響いた。

 

「霖之助さん。この刀はいくらなの?」

 

「……非売品だよ。」

 

「えー……」

 

黄菜子はごねているが、この剣に関して霖之助は折れるつもりは無いらしい。

 

それよりも永一は、黄菜子の「叢雲の剣」という単語に表情を歪めた霖之助の方が気になった。

彼の能力から察すると……流石に考え過ぎか。

 

「黄菜子、買って貰うものは決まってるだろ。これ下さい。」

 

「これかい。『トランシーバー』だね。離れた相手と交信する道具。本当は非売品にしたい所だが……ナズーリン君、50銭でどうかな?」

 

「むう……相変わらずだな。丁度50銭だ。」

 

ナズーリンは泣く泣く蝦蟇口から50銭分の硬貨を手渡した。

 

永一の見つけた道具、それはトランシーバーだった。携帯電話とは違って、電波は子機対子機の間でやり取りされる。電力を紫から手に入れ、周波数を合わせれば遠距離通信が実現するのだ。

外来技術の使用は便利な上に猫の手の宣伝にもなる。一石二鳥で正真正銘の幻想郷最先端技術である。

 

「さて、猫の手の二人には報酬を払わないとね。」

 

「基本料金+時間料金が二刻(四時間)×二人。ざっと……84銭です。」

 

「84銭!?これは高すぎないかい!?」

 

「うちは短時間に回転率高く『猫の手を貸す』依頼なので、長時間となると相応の時間料金が発生します。それに二人分ですから。」

 

「もう少し安くならないかい?」

 

「勘定奉行、如何でしょうか?」

 

永一は黄菜子に問い掛けた。

 

「じゃあ、特別に大出血のおまけ!50銭にしてあげる!その代わり……」

 

黄菜子は外来品の山からもう一つトランシーバーを掘り当てると天井に掲げた。

 

「これも付けて貰うね!」

 

霖之助は頭を抱えている。

 

「はあ……君たちには負けたよ。持っていきな。」

 

霖之助はナズーリンから受け取った小銭をそのまま永一に支払った。

 

「さて、私は報酬としてこの円盤を頂くとしよう。」

 

「今度は君か……掃除機数知れず見てきたが、この掃除機はあまり手放したくないんだけど。」

 

「ネズミさん、その言葉に二言は無いよね?」

 

その時、黄菜子が口を挟んだ。

 

「あ、ああ。嘘は言ってないがね……?」

 

「霖之助さん、報酬がそれだけで済むなら安上がりだよ。掃除機としても、ペットとしても中途半端だしね。」

 

「それもそうなのか……?なら構わないよ。」

 

「……!この泥棒猫め!!」

 

黄菜子はニヤリと悪い笑みを浮かべた。

 

報酬の支払いも終えて、後は帰るだけになった。薄暗い部屋の中で永一はあることを思い出した。

 

「あ、そういえば、紫さんから灯油代に何か持ってくるように言われたんですけど。」

 

「む、覚えていたか。まったく、そういう抜け目がない所、君たちの家の前の住人を思い出すよ。」

 

「前の住人って確か占い師さんだったよね?」

 

黄菜子が話に食いついた。

前の住人、それは彼女の30年前の飼い主である。彼女は知らん振りしているが、彼の事はこの中の誰よりも知っている。

 

「そうそう。仕事にもお金にも抜け目のない。僕の数少ない友人だったんだよ。未知の金属を探し当てたり、マジックアイテムを作ったり……あの頃は楽しかったなぁ。」

 

玄関から出た時、いつの間にか雨は止み空には星が光っていた。

 

「噂で聞く君たちのように彼は勇ましくはなかったけど、最後までいい人間だったよ。僕のエゴを押し付ける訳じゃないけど、君たちも彼みたくなって欲しいな。」

 

「勿論!じゃあ、その人が帰ってきても恥ずかしくないように頑張らないとだね!」

 

永一は心が少し締め付けられる感覚を覚えた。黄菜子は今もなお「お父さん」の帰りを待ち続けているのだ。

霖之助の口振りだと、彼はもう……

 

「じゃあ霖之助さん、また依頼してね!今度こそあの刀が欲しいな。」

 

「……次は今日の教訓を生かすよ。ナズーリン君はまた近いうちに呼ぶかも知れない。そのときは宜しく頼むよ。みんな夜道には気を付けるんだよ。」

 

永一は改めて香霖堂を見た。記憶の底に眠っていた道具や見たこともないアンティークグッズまでバリエーション様々な道具があった。最初こそガラクタと一蹴していた道具たちだが、現し世で役目を終えた後にこうも大事にされるのなら本望だろう。

目の前の道具たちと同じように、幻想入りしてきた永一。自分が世界から忘れ去られて幻想入りしたのなら、と思うと、道具たちに少しだけ親近感が湧いた。

 

三人は香霖堂を後にした。帰り道、ナズーリンの視線が刺してくるが、黄菜子は気にしていないようだった。

 

 

──魔法の森

 

「もうそろそろ大丈夫かな?」

 

「ん?何が?」

 

「うむ、大丈夫だろう。」

 

謎の問い掛けに応答したのはナズーリンだった。

 

「今日はいい仕事だったよ。なかなかの演技派だね。」

 

「あれー?これは皮肉の意味?」

 

「皮肉など無意味だ。何せお芝居は終わったんだから。」

 

ナズーリンが手を差し出すと黄菜子もそれに答えて握手をした。

 

「じゃあ約束通り30銭は家(猫の手)の報酬ね。20銭と円盤はナズーリンさんの物だよ。」

 

「ちょっと待ってくれ!話が全く見えないんだが……」

 

「依頼だよ。霖之助さんに話しかける前にナズーリンさんから依頼を受けていたの。『森近霖之助にちょっとした仕返しがしたい』ってね。」

 

ナズーリンの話によると、彼女が切羽詰まった状況である事を盾に、元々は彼女の持ち物である道具を法外にぼったくられたのだという。

 

「永一が香霖堂にいたのは誤算だったけど、それ以外は全て計画通りに進んだよ。」

 

「全てってどこからが全てなんだ?」

 

「ナズーリンさんがあたしたちを煽る所からだよ。」

 

「本当は仮のガラクタを宝に仕立てて香霖堂のいい商品を貰って帰るつもりだったが、まさか正真正銘のお宝が見つかってしまうとはね。」

 

永一は萎れた雑草のようにへなへなと崩れた。

 

「じゃあ俺は、二人の手の平の上で踊らされてたって事か……」

 

「とんでもない。円盤を見つけてしまった時は焦ったんだ。もし永一君のハッタリが無ければ計画は破綻していたかもしれないからね。」

 

高らかに笑う黄菜子とナズーリンに対し、

こうして、永一の疲れに疲れまくる一日はやっと幕を閉じたのである。

しかし、予想だにしない悲劇はこれだけでは終わらなかった。

それは翌日、紫に霖之助の灯油代の道具を渡しがてら無線機の充電をして貰おうと話をした時だった。

 

 

──紫の異界

 

「電力なら問題ないけど、出来ないわよ。通信。」

 

永一は紫の言葉を疑った。

 

「……なんでですか?」

 

「この二つの無線機は周波数帯域が違うのよ。こっちがVHFでこっちはUHF。」

 

VHFとUHFとは、簡単に言うと無線機(トランシーバー)が受け取れる周波数の領域である。VHFは30MHz~300MHz、UHFは300MHz~3000MHzの周波数を受け取ることができる。

つまり、二つの無線機は発信出来ても受信出来ないのである。

 

「じゃ、じゃあ、俺は何のために苦労して無線機を手に入れたんです……?」

 

「何の為かしら?」

 

永一はとうとう崩れてしまった。死体のように転がる彼を見て、紫はニヤリと笑って手を差し伸べた。

 

「倒れるには早いでしょう。私が貴方の願いを叶えて差し上げましょう。」

 

永一は哀れな小動物の目で紫を見た。

 

「本当ですか?」

 

「ええ。貴方は私の弟子で幻想郷の住民でしょう?幻想郷らしく、『幻想的な』方法を取ればいいのです。」

 

「ま、まさか!?」

 

「特別に遠距離通信の術を指導して差し上げましょう。」

 

永一は紫の手を握るとよろよろと立ち上がった。

 

「最初から紫さんに相談すれば良かったのか……」

 

「元気がないわね。」

 

「当たり前です。こんなに苦労して答えが『幸せの青い鳥』だったんですから。」

 

「もし『幸せの青い鳥』なら鳥を見つけて目出度し目出度しね。」

 

その時、永一に悪寒が走った。

 

「な、何でもないです!!夢、志半ばで果たせずです!世の中厳しいなぁ~~!!」

 

その時、超高速のレーザーが首筋を掠めて過ぎ去った。

 

「諦めたらそこで試合終了よ?それに、再び旅立てば青い鳥も手に入れがいがあるでしょう?レッスン(暇潰し)外の指導には受講料(暇潰し)が付き物よ?」

 

無線機は箱になってしまったが、結果的に猫の手の遠距離通信計画は実現した。一人の犠牲により効率的に利益を生む事が叶ったのである。

効率化の決定打となった遠距離通信術は札一枚で可能なのだが、犠牲者は自身の無念を少しでも減らそうと、幾つか作った通信術の一部を無線機に施した。

しかしその計らいが大当たりで、「猫の手の兄妹は外来品を操る」と注目を浴び、一部では外来品ブームが巻き起こる事になった。

無線機の一つは依頼ポストに続き蕎麦屋の据え置きとなった為、無線機を見る為に興味本意で来店する客もいるのだとか。

一方で、外来品を多く取り扱う香霖堂にもブームの波は来るのだが、品物の非売品率の高さに客は呆れ、相変わらずの閑古鳥が鳴いていた。

 

「ね?幸せの青い鳥探しは旅立つからこそ美味しいでしょう?」

 

「喰われた鳥が上手いこと転生しただけですよ。」

 

 

──To be continued……

 




あとがき

どうも、ミカヅキモです。時が進むのも早いものでとうとう12月。季節は一気に巡り冬がやってきました。寒いですね(小並感)。
そんな中でこの間は日本各所で最高気温25℃を記録する異常気象。東方ファンとしては天空璋を彷彿とさせ、奇妙な妄想に浸っていた訳でございます。

今回は香霖堂を取り巻く話。霖之助というキャラクターは昔から大好きだったので、今回の話もずっと書きたかったものの一つでした。そして一緒に登場したナズーリン。東方星蓮船の際に、霖之助に宝塔を吹っ掛けられた仕返しをするべく黄菜子と共謀するズル賢さを見せました(黄菜子も大概である)。
ただ人によっては、何故ここでナズーリンが出したのか疑問に思うかもしれません。その理由というのも、外来異変にて定義された「霖之助の助手」の存在です。
その正体は魔理沙説、第三者説etc.の様々な意見が飛び交っていますが、私はナズーリンじゃないかと思っています。
とは言え、神主の明言がない以上は断言できないので、「助手」という表現は避けたつもりではあります。
ただ、もしナズーリンが霖之助の助手なのだとすれば、「前後にこんなことがあったんだなー」と思って頂けると創作者としてはこの上なく嬉しいです。

今回は補足説明はありませんが、追記として無線機についてです。
作中の説明にあるように、トランシーバーにはVHFとUHFの周波数域があります。頑張って二つの無線機を手に入れた永一でしたが、周波数域の違いで残念な結果になってしまいました。
しめしめいい落ちだと思い作品を書き上げた所で、私は一つ疑問に思いました。
VHFの最高周波とUHFの最低周波ならどちらも300MHzとなり、交信が出来てしまうのでは?と。
私は無線に関しては詳しくありません。外部の電波が遮断され、安定した電波の送受信が実現しそうな幻想郷です。もし繋がってしまったら落ちが破綻してしまいます。
そこで、皆様にお願いがあります。作中の無線機は、どう頑張っても300MHzにならない無線機ということにしてください!
お願いします!なんでもしますから(なんでもするとは言ってない)

では、今回はこの辺で。また次回お会いしましょう!

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