この超ポジティブまぬけがっ!番外編   作:甚三紅

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ジョナサンたちが二人いる世界でDIO様も増えた!
ジョニィもいる混部です。
不憫なDIO様を書きたかった。


一日限りのディオ×3

「……」

「……」

「……」

「何なんですか、この状況は…」

 

いつもは何かと賑やかなリビングは今、ひどく重い雰囲気に包まれている。タイミング悪くも訪ねてきたジョルノが小さく呟いたが答える者は誰もいない。

重い空気の原因は分かりきっている。おれ「たち」だ。そう、複数形なのだ。

一人は当然おれであり、輸血用のパックを片手に本を読んでいた。ジョルノの声に反応して顔を上げたのもおれだけだ。

一人はある意味黒歴史とも言える一回目の自分。ソファに座り腕を組んで目を閉じている。しかし、冷静になって見てみるとその服のセンスはどうなのだ?…まぁ、百年あんな場所に独りでいれば仕方のない事だと思う。

そして最後の一人はおれではなかったディエゴだろう。あの顔は見覚えがある。こちらには視線の一つも向けずに紅茶を飲みながら何日分もの新聞を読んでいる。

 

「パードレ?」

「起きたら増えていた。恐らく明日には戻るだろう、気にするな」

 

真っ直ぐおれの元へと来たジョルノに答えてやると、このやりとりに一回目の自分が鼻を鳴らして笑った。

おれがノーリアクションな事もありジョルノもポーカフェイスを貫く。こういう時は「ジョジョたち」の中で一番マシな反応をするので面倒がなくていい。

 

「では後日改め「ディオー、遊びに来たぜ!」」

 

折角ジョルノが穏便に済ませようとしたのに阿呆…もといジョニィの声がジョルノの気づかいをぶち壊した。

 

「そこで承太郎とも会って…うっわ何これ、ディオ×3?」

「何でてめーまで増えてやがる」

 

おまけに厄介事を連れてきたらしい。

勝手知ったる、といった風に遠慮のない足音が二つ聞こえそのままリビングを覗き込んだ二人に一回目の自分とディエゴの雰囲気が尖り出した。

 

「貴様ッ、ジョニィ・ジョースター!」

「ほう、どの面下げてこのDIOの前に現れた」

 

多分に怒りを含む声を聞きながら、また家が解体されるのだろうか…と何とも言えない気持ちになり顔を手で覆っているとジョルノに肩を叩かれた。顔を上げるとジョルノはいざとなったら実力行使で、と覚悟を決めた目をしている。

その場合、おそらくジョルノを含めた全員を止めるはめになる気がするのはなぜだろうか。

 

「その2たちと一緒で『もし敵対していたら』といったところか」

「なる程、だからボクたちを目の敵にしてるのか。ディオってバリエーション豊富なんだね」

 

のん気に会話をする二人に一回目とディエゴが僅かに目を細めた。年の差かディエゴの方が感情が顔に出ているな。

 

「このDioを前に随分と余裕じゃあないか」

「わたしの事など眼中にないとでも言いたげだな?」

 

ディエゴは分かり易くジョニィに突っかかり、一回目は不愉快そうに顔を歪める。その様子にジョニィと承太郎は顔を見合わせこちらに視線を向けてきた。更にジョルノまでおれを見たせいで一回目とディエゴまでこちらに目を向ける。こらお前たち、なんだその「だってディオがいるし」とでも言いたげな顔は。

そもそもここの承太郎は一回目の出来事なんぞ知らんのだ、状況はよく分からないだろう。ディエゴに至ってはおれの方こそ全くと言っていい程情報がない。

おれが考え事をしている間に一回目はどうするのか決めたらしく承太郎に向かって口を開いた。

 

「ならば貴様の目にDIOという存在を刻みつけてやろう!」

 

なるべく冷静であろうとして最後には結局頭に血をのぼらせていたな、と一回目の台詞と姿を見ていて恥ずかしくなったが今はそれどころではない。

ソファから立ち上がりスタンドを出しかけた一回目の腕を掴む。まさか自分に止められるとは思っていなかったようで思い切り馬鹿にするように嘲笑ってきた。

 

「なぜ止める。腑抜けでついでに腰抜けにでもなったか?わたしともあろう者が」

 

一回目の言葉に承太郎が眉を寄せる(1コンボ)

 

「敵と仲良くなるなど、まさにまぬけだな」

 

おれたちのやり取りにやれやれと肩をすくめたディエゴの言葉にジョニィが不快そうに目を細めた(2コンボ)

 

「己が醜態をさらすのを見ていられんな。せめてもの慈悲にわたし自らの手で葬ってやろう」

 

更に馬鹿にしにかかった一回目にジョルノが無表情で二度、銃の引き金を引いた(3コンボ)

 

銃が撃たれようと気にするやつはここにはいないが近所に聞こえたら警察を呼ばれ…いや、重要なのはそこではない。それに解体する事態になれば警察どころではなくなる。

二人で的確に3コンボ決めやがった一回目とディエゴは突然の攻撃に殺気を膨らませる。完全に売られた喧嘩を買った承太郎、ジョニィ、ジョルノも同様だ。特にジョルノはこれでも我慢している方だな、スタンドではなくあまり効果のなさそうな銃を使った辺りが。

いっその事一番面倒な一回目に色々と言いたいが、ことごとくブーメランで返ってくる上完全に自爆になるのでなるべく口を開きたくない。黒歴史をこうも突きつけられると目から汗が出てきそうだ。

この酷い仕打ちの数々…そうか、神はおれが嫌いか。おれも大嫌いだ。

 

「ここはおれの家だ、勝手は許さん。お前たちもだ、大人しくしていろ」

 

おれは至って普通に正論を吐いたはずだ、現に承太郎たちは落ち着きかけた。

 

「ほう、よく躾ているではないか。とはいえ、見境なく噛みつく駄犬が好みとはな」

「ふんっ、馬じゃなくて貴様が調教でもされたのか?お似合いじゃあないか」

 

だがこの二人にとっては良い燃料投下になっただけだった。二人の言葉にあっさり煽られるジョースター一族の二人。

何なんだこいつら、恨みでもあるのか?むしろ恨みしかないから承太郎とジョニィに突っかかるのか?

おれはもはや一回目の手を掴んではいない。そのため承太郎と一回目、ジョニィとディエゴは互いにメンチを切り合っている。ジョルノは頭の痛そうなおれを見て若干落ち着いたようで一歩引いた。それがいつまで保つか分からんがな。

 

暫く睨み合っていた四人は、まるで示し合わせたかのようにスタンドの拳を繰り出した。まぁ、ディエゴだけは恐竜化による生身の攻撃だが。

ジョルノとさっさと遠くに避難していると呟く声が聞こえてきた。

 

「あんなのが自分だと?あんなのは姿形だけがそっくりな偽物だッ!」

 

と。

それをしっかり拾ったジョルノはすぐさまスタンドを出し乱闘の中へと飛び込んでいく。相変わらず行動が早い。

本来ならばおれ自身が激昂していただろう。その前に三人が噴火したので逆に冷静になってしまった。

こういう時は冷静になった者が一番損をする。時止めのために出したザ・ワールドも心なしか疲れている様子だった。

 

結果から言えば家は半壊、三人にずたぼろにされた一回目とディエゴは翌日になるといなくなった。一日でいなくなる、など完全な勘だったのだが的中してくれて何よりだ。

予想よりマシだったとはいえ慌ててホテルをとるはめになり酷く疲れた…貴様ら全員ジョジョの説教でも食らってしまえ。

 

「そういえばお前たちは一言も言い返さなかったな、何故だ」

「そりゃあ大事な親友の事あれだけ馬鹿にされたら言い返したかったけど…」

「てめーがなるべく穏便に済まそうとしていたから我慢しただけだ。身内コケにされてぶち切れそうになったがな」

「むしろパードレこそ激しく怒って良かったんですよ、敵に情けをかけすぎです」

 

お前ら…あれだけボコボコにしておいて我慢したのか?殺してないだけ我慢したという事なのか?

本当に、心の底からやつらが帰って良かったと思う。おれを大好き過ぎる阿呆はまだいるのだ、三人で済んで命拾いしたな。




ディエゴは恐竜化の方が軸となる世界なので恐竜化です。一人だけ圧倒的に不利な気がしなくもない。仮に時止めができる方でもDIO様がいる時点で…。
ディエゴは短い間とはいえ母親と暮らしていたので、父親と暮らしていたDIO様よりは「邪悪な波動!」はないイメージです。

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