DIO様が小さな子供になっているので幼児化が苦手な方は見ないようお気をつけ下さい。中身はあまり変わりません。
今回DIO様宅に遊びにきていた面子は仗助、ジョルノ、徐倫。ナチュラルに混部です。
「ジョジョ、おれはもう一度あの遺物をぶちのめしに行く!」
「おはようディオ、今度は小さくなったんだね」
扉を勢いよく開けて割と本気の涙目で言い放った言葉への返事は何とも気の抜けたようなものだった。表情ものほほんとしておりいつも以上に腹が立つ。
夜、目が覚めると今度は小さな子供になっていた。精神が体に引きずられているのかかなり動揺してジョジョの部屋まで特攻をかましてしまったが、そこはまだいい。
問題はその後だ。
「ぼくは今から論文を書くから、子供組に遊んで貰ってね」
とか笑顔でぬかしたジョジョはおれを脇にかかえ、リビングに移動したかと思うと仗助、ジョルノ、徐倫に向かっておれを投げたのだ。物理的に投げやがった。
呆気にとられた顔をしつつもしっかり抱き止めた仗助は褒めてやる。そしてジョジョは絶対後で殴るからな!
「えーと…パードレ、ですか?」
「うっそ!ふわふわの金髪に青い目とか天使じゃん!」
「あ、ほんとだ。ディオさんの目、青いっスね~」
躊躇いがちに聞いてきたジョルノ、目を輝かせる徐倫、おれの脇の下に手をやり顔を覗き込む仗助。…徐倫が一番厄介そうだ。
「起きたらこうなっていた。ジョルノ、着る物を貸せ、さすがにぶかぶか過ぎる」
「ならあたしの上着貸したげる。今のお父さんなら丁度いいと思うし」
今のおれの姿は袖も裾も余りまくりのパジャマを着る子供そのものだ。ジョルノに請求すると思わぬところからの言葉に顔が引きつる。
「おいおい、ディオさん男だぜ?さすがに嫌なんじゃねーの?」
「着られるのないんだからしょうがないじゃない」
仗助の言葉に頷いているとあっさり徐倫の言葉に仗助は流された。使えんやつめ!
女物は嫌だ、こうなったら背に腹はかえられん。仗助の腕の中から飛び出すと自分の部屋へと戻り携帯でジョニィの名前を探す、確か今日はこの辺にいた筈だ。
メールにて事情を説明し男児の服を用意するよう頼む。からかう言葉が返ってきたがうるさいと一言だけ送り溜め息を吐いた。
「本当に縮んでるし!やばっ、写メジャイロに送っ…」
「やったらお前の醜聞をばらす」
「…容姿だけは天使なのに」
ジョニィの出迎えはジョルノにさせて真っ直ぐ部屋まで来させた。徐倫のオモチャになどなりたくなかったため部屋に引っ込んでいたのだ。
服の入った紙袋をおれに渡しながら笑うジョニィに冷たく返すと、肩をすくめて片手に用意していた携帯をしまったのでよしとする。
服を着替えていると、今の自分の姿もあり昔の事を思い出してしまった。くそ忌々しい記憶に顔が歪む。
「よし!着替え終わったなら遊ぼう、たまにはオレ達に付き合って欲しいな」
「……、…仕方がないから付き合ってやる」
やけに明るい声と共に足が宙に浮く。
おれの気持ちでも察したつもりか?…嫌ではない、まぁいいだろう。
「かーわーいーいー!」
ナチュラルに抱っこされたまま(こういう時の「ジョナサン」に何か言うだけ無駄だ)リビングに戻ると例の口調でおれをガン見する徐倫。嫌なところで承太郎の血縁だと実感させるな。
徐倫に携帯を構えられたところで思考する。
仗助は徐倫に流される。
ジョルノは基本傍観者だ。
ジョニィは…微妙だな。
逃げ場はないと体を固くすると意外にもジョルノが動いた。
徐倫の手を押さえカメラがこちらを向かないようにしている。
「写真が欲しい気持ちは痛いほど分かりますが、パードレは嫌がっているでしょう。小さな子をいじめないで下さい」
「…そっか、うん。ごめんお父さん、ちょっとはしゃぎ過ぎた」
小さな子…確かに今は小さいが…子供…。思い切り落ち込むおれにジョニィは苦笑いし仗助は無言で背中を撫でてきた。ジョルノよ、おれに何か恨みでもあるのか。
「せっかくだから遊ぼうぜ!と言っても今は夜だしゲーム…みんなでやるならカードゲームとか?」
「それいいっスね!トランプとか探してきます」
場の空気を変えるようにジョニィが声を出す。それに仗助が乗り、ジョルノも徐倫も異論はないようだ。
完全に小さな子供扱いをされている。中身は変わらんのだぞ?屈辱に癇癪でもおこしたらそれこそクソガキなので我慢するが!
「ウノがあったぜ、これなら全員で出来んじゃね?」
仗助がウノの箱を持って戻ってきた。
ゲームをするためにソファに座れ、とジョニィを促そうとしたところでおれに伸びてきた手が三本。仗助、ジョルノ、徐倫が笑顔でおれに手を差し出している。
「あたしと一緒に組もうよ、膝の上に乗せたげる」
「たまには親子で組むのもいいですよね、パードレと触れ合いたいんです」
「ディオさんいると被害減るんでお願いします」
仗助だけ切実な願いだ…笑顔も微妙に引きつっている。
「えー、ディオはオレとだろ。今抱っこしてるし一番に頼られたし」
ジョニィの言葉に視線を鋭くしたジョルノと徐倫。仗助はさっさと逃げる事を選択した。おれも逃げたいがジョニィががっちり抱いているので逃げられない。
「たまの親子の触れ合いを邪魔しないで下さい」
「ならあたしだってそうよ!」
「お前違うやつ父親だろ?」
「あんなの父親じゃない。お父さんはディオ、これ絶対!」
ぎゃんぎゃんと言い争いを始めた三人。内容は果てしなくどうでもいい上にうるさい。おまけにジョルノも徐倫もおれの服をしっかり掴んでいる。
…ここは一つ、かつてジョジョを騙した技を使ってやろうじゃあないか。あの時スピードワゴンさえいなければ騙せたはずだ。
意識してぐすりと鼻をすすり涙をぼろぼろこぼす。完全に嘘泣きなのだが子供の涙というものに三人は面白いくらい固まった。
「かっ、可愛…違う、えーと…喧嘩、そうこれは喧嘩じゃないのよ!」
「そうですよ!ぼく達ちゃんと仲良しなんですよ?」
「びっ、ビックリしたんだよな!大きい声出してごめん」
扱いが更に子供になったが大人しくなったのならば、などと思っていると太くてごつい腕にひょいと抱き上げられた。
「小さい子そっちのけで喧嘩した挙げ句泣かせるってどういう事かな?」
腕の正体はジョジョで、声は穏やかだが殺気に似た気配を醸し出している。
ジョジョの肩越しに扉の方を見ると仗助がほっとした様子で胸を押さえていた。先ほどの使えない、は撤回してやろう。よくやった。後日褒美もくれてやらねば。
三回の振動と共に頭蓋骨でも叩いたような音と三人の声が聞こえた。等しく拳骨を貰ったようだ。
「うーん、子供組と遊んでディオが楽しくなればと思ったんだけど…仗助くんには悪い事しちゃったね」
「お前は相変わらずぶっとんだ発想だな」
結局おれはジョジョの部屋で過ごす事になった。自分の部屋でいいというのに側に置きたがるとは…何度も言うが子供なのは見た目だけなのだが。
一人用のソファに座り論文を書き始めたジョジョの背中を何となく眺める。こいつとの時間は…そうだな、かなり気に入っている。
ならばこうやってぼんやり背中を眺めているのも、たまにはいいだろう。
DIO様が小さいとシリアスにいきそうになって大変でした。
だって絶対いい思い出なさそう。