承太郎メイン。
前提として、一回目の承太郎は花京院と恋仲だったので花京院を殺したDIOを滅茶苦茶怨んでます。
「ディオ、ディオ、起きなよ。と言うか助けて欲しいんだけど…」
現実と夢の合間、心地よい微睡みに身を任せているとおれを呼ぶ声が聞こえ体を揺すられる。
この声は花京院か。
穏やかな声と中々に眠気を誘う振動に意識は夢へと傾きそうになるが、辛うじて理解した言葉により意識を現実へと戻す。
目を閉じたままでもこの男のどのパーツがどこにあるかなど分かりきっているために、首に腕をかけなるべく力をかけないよう引き寄せて頬に唇を寄せ…ようとした時、勢いよく部屋の扉が開き数人中になだれ込んできた。
驚いて目を開き思わず入ってきた人物を見るが人数がおかしい。
「てめーDIO!花京院から離れやがれッ!」
「てめーこそディオに近づくな。何かしたらぶちのめすぞ」
お互いガンの飛ばしあいをしている承太郎×2。
「助けて下さいディオさんッ!」
「ちょっシーザー!何でそんなやつの後ろに!?」
「おいこらシーザーが怯えてんだろ!」
おれの後ろに半泣きで隠れるシーザー(若)…を追いかけようとするジョセフ(若)とそれを羽交い締めにして止めるジョセフ(若)。
「ああもうだからみんな落ち着いて!」
「そうだよ、ディオだって寝起きなんだから騒がしくしない!」
何とかして場をおさめようと奮闘するオカン、もといジョジョ×2。
……、何なんだこの混沌ぶりは。スタンドを使っていないだけましなんだろうか。スタンド…ああそうだ、これはデス13の夢の中か。そうに違いない、そうであってくれ。
おれの気持ちを汲み取ったらしい花京院が酷く悲しそうな顔をして首を横に振る。
そうか、これは現実か…。
「…で?」
「てめーが仕切ってんじゃ」
「きみは黙ってろよ承太郎」
とりあえず全員部屋から追い出し身支度を済ませリビングに向かう。ソファに座る前にジョジョから輸血用パックを受け取り、最低の気分のままソファに腰掛けた。
早速片方の承太郎が突っかかってきたが花京院の冷たい声と視線に撃沈する。ザマァ、と思いながら血をすするとジョセフ、ジョジョの一人ずつが顔を歪めた。
「えーと、起きたらいつの間にか二人になってて凄く驚いて…」
「そうそう。しかもおれとシーザーなんか若返っちゃってるしィ~」
「ディオに相談すりゃあ解決とまではいかなくとも落ち着くかと思った。余計なもんがついてきたがな」
「ぼくは承太郎にやたらくっつかれて気持ち悪かったからディオに助けて欲しくて」
「右に同じです」
上からジョジョ、ジョセフ、承太郎、花京院、シーザーだ。
なぜこいつらが一緒に、と思いかけて昨日の事を思い出す。そういえば酒盛りをしていたな、馬鹿騒ぎが嫌でおれは早々に切り上げたが。
ここは完全に日光を防げるようになっている、昼夜関係なく飲んでいたのだろう。ちなみに今は夜になったばかりだ。
「つーか、DIOになんか頼れるわけねーじゃん。同じ顔のよしみで言ってやるけど、やめとけって」
「はぁ?ディオはすっげー頼りになんだよ!おたく何言っちゃってんのォ?」
「貴様がディオさんにそんな事を言うとは…がっかりだ。二度と近づくな」
嫌そうな顔で虫でも払うように手を振るジョセフ。こいつは二人がかりで沈められていた。いや、どちらかと言えばシーザーの冷たい声での「近づくな」にか。
「うーん、ぼくとしてはディオと仲良くできるなら、その方がいいけど…」
「あ、そうだよね!ぼくとディオは結婚するくらい仲がいいんだよ」
「えっ!?」
かたや嬉しそうに報告し、かたやその報告に固まり若干顔色を悪くしている。
こいつはノーマルか。
中身が空になったパックを放り投げてゴミ箱に捨てる。
原因は何だ、頭が痛い。スタンドだったと仮定した場合、こいつらが揃いも揃って攻撃を受けるようには思えんが…。
「花京院、お前また肉の芽でも埋められてるんじゃあねえのか?」
「また?そんな物知らないね」
復活した承太郎にがっしりと肩を掴まれ問い詰められる花京院。花京院は実に不快そうだがもう一人の承太郎は更に不快そうだ。眉間にえらくシワが寄っている、今にもスタンドで殴りかかりそうだな。
「シーザー!まじでお前どうしたんだよツンデレじゃなくてツンしか感じねーよッ!」
「うるさいスカタン!近づくな話しかけるな!」
大げさな身振り手振りでシーザーの気を引こうと必死なジョセフ。もう一人はいたたまれないのか顔を両手で覆いうずくまっている。
ジョジョにいたってはにこやかに話しているがもう一人に着々とダメージを与えているようだ。
ああ…こいつら『前』と『今』なのか、と、分かりたくはなかったが理解した。
まずは放っておいたら一番まずそうな承太郎を引き剥がすとしよう。冷静にみえて中々に喧嘩っ早いからな、下手をしたら部屋の中が滅茶苦茶になる。
「承太郎、もしかしたら酒が原因かもしれん。空瓶を持ってこい」
「わかった」
「何でてめーに命令されなきゃならねえ」
お互いがお互いの言葉が不愉快だったようで思い切り眉を寄せ視線をかち合わせる。その瞬間、火花が散ったような気がした。
ガンの飛ばしあいと言うよりメンチを切りあうとでも言うのだろうか、お前らどこの不良…いや、そういえば不良だったな。
「承太郎」
意識してゆっくりと名を呼ぶと、二人同時に振り返る。
自分の隣を指差すと片方は意味が分かったらしく舌打ちをしてからおれの隣に座った。素直に従った方が学帽を目深に被り直し腕を組んでソファに身を預けるのを見届けてからもう一人を見ると、驚きに目を見開いていてそれなりに珍しい表情をしていた。
その隙に花京院を捕まえていた手が弛んだらしく、花京院はその手を乱暴に払い承太郎とは反対側に腰をおろす。
「正直、ぼくは偽物じゃあないかと疑っている。イエローテンパランスなんてやつもいたしね」
「っ…DIO、花京院に何をしやがった」
冷ややかな花京院の声に息を飲む承太郎。唸るように問われるが、今のおれに対しては全くの言いがかりだ。
肩をすくめてから深く深く息を吐き出す。
「何もしていない、と言っても貴様は信じないだろう」
「当たり前だ」
「ならば会話するだけ無駄だ」
最後の一言で完全に頭にきたらしい。
スタープラチナが現れると隣の承太郎もスタープラチナを出し争い始めた。それに花京院も加わる。
シーザーとジョセフ×2、ジョジョ×2もそれに加わり始める。
どんどんボロボロに破壊されていく部屋の中を見ながら思う。
もう一度寝たら元に戻らないだろうか、と。
夜だから壁に穴が空いても大丈夫。
建物が崩壊しないといいね!