ソロアート・オフライン   作:I love ?

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三日連続だぜ、やっほー!
いやぁ、十六巻読んだら早くアリシゼーション行きたい! ってなって……やはり原作は素晴らしいですなぁ。
さて、作者の近況は最近ゴッドイーターのアニメを観てることくらいですかね。ロリッ娘が極東支部に入れてもらえなかったところを観たときはなんか泣きそうになりました。ディアウスとの戦闘は今までで一番グロかったんじゃないでしょうか? ま、どうでもいいですよね。
さて、遂に九十話以上になっても未だにSAO編という駄作ですが、これからもよろしくお願いします!!
あ、あと活動報告にSAOキャラからみた八幡の印象を書きました。是非見てください。


かくして、彼と彼女はようやくボスを倒す。

とある漫画の台詞にある、「一時のテンションに身を任せるやつは身を滅ぼす」この台詞は言い得て妙だと思う。

一時のテンションとは、その時自分がしたかったこと、成したかったことを後先考えずすること。それには必ず何かしら代償が伴う。

今回のハイテンションな時に失われていたのは、最もポピュラーで馴染み深い感情……羞恥。

 

うぉおおぁぁぁぁぉぁぁっ! 恥ずかしい! 何? 約束って? 一国傾城しちゃうのん? 直ぐに討ち取られるわ! 今日は絶対に宿屋のベッドで絶叫してやるぅぅぅぅぅぅ!! 王様の耳はロバの耳ィィィィィッ!

……はぁ。

怒りが振りきれると逆に冷静になるように、羞恥も振りきれると逆に冷静になるらしい。

羞恥の度合いで言うなら、部室で自分の本音を暴露するくらいの恥ずかしさだ。

 

「「はぁ……」」

 

こいつも同じ思いなのか、無意識のうちに口から出てしまった溜め息が被る。

もうやだ。あんだけ大見得切っといてなんだけど、帰りたい。帰って思いっきり叫んで寝たい。

火山灰に足が埋もれて歩きにくいのもあり、足取りは重い。精神的にも肉体的にもこれは辛い。

本日三度の頂上の景色を見た感想は飽きた、だ。いくらスペクタクルなシーンでも、一日のうちに三回も見たらそりゃ飽きるわ。

 

「グギュウァァァアアアァッ!」

 

こちらは今回で……何回目だ? まぁ、それほど印象に残らないということなのだろう。俺みたいに。で、龍が咆哮を上げ、何時間か前の状況をリプレイする。

リズベットは先程の戦闘を踏まえ、さっきよりも更に遠くに待機させているから問題ない。

攻略組の一番槍、特攻兵、死兵とまで言われた灰色と紺色の剣士、《犠牲(サクリファス)》。その全力(双剣スキル)を見たものは、中堅プレイヤーの鍛冶屋が初めてだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side リズベット

 

選ばれた……って訳じゃないけど、それでも全SAOプレイヤーのほんの一握りしか属していない、属せない攻略組の実力はあたしたちミドルプレイヤーとは一線を画すものがあった。

剣を二本持っているアイツ……エイトにとって、そのアドバンテージは大きい。両方の剣で防御するもよし、バランスを取って一本で攻撃し、もう一本で防御するのもいい。

通常、アインクラッドでは攻撃力よりも防御力が優先されがちだ。なにせHP全損=死という等式が成り立つのだから。火力が足りないならパーティーを組めば充分補えるし、大きなダメージを与えられるプレイヤーなんて、極論を言ってしまえば必要ない。ダメージが一でも通るのなら、バトルヒーリングスキルなどのスキルを持つやつなどの例外を除いて――他にも集中力の問題とかはあるけど――安全を第一にして長い時間をかければ倒せない敵はいないのだから。一撃死しない防御力が前提だけど。

でも、あたしの中の結論が昨日今日と出会った黒と灰色の剣士によって覆されそうになっていた。

漆黒の剣士は猪突猛進。多分あれは自分が一番やり易い戦闘スタイルを突き詰めた型なのだろう……が、目の前の男の戦闘スタイルはいまいちよく掴めない。

このデスゲームで洗練されたのか、現実世界から研磨されてきたのかは判らないがとにかく巧いのだ。《閃光》と呼ばれ、最強と名高いヒースクリフに一対一で食い下がることのできる数少ないプレイヤーだと言われている友と同じくらい。

 

「グルルウァアァアアッッッ!!」

 

「おっと」

 

今も急降下して剛腕を振るってくるドラゴンの真下に潜り込み、攻撃を回避。さらにソードスキルで火山灰を撒き散らして視界をゼロにする。あれもだ。

紙一重の回避のみならず、相手が巨体で隠れようがないと瞬時に判断し、お互いの視界を奪う攻撃をする。メリットデメリットの換算も早い。ああいうこともできなければ最前線では戦えないのだろうか?

さっきは判らなかった一面。

アイツはさっきの戦いは慢心していて惨敗をしたと言った。でも今は逆に圧倒している。人は、気持ちの持ち方一つで強くも弱くもなれる。それをエイト(・・・)は証明していた。

心。想い。強さ。

形作られるものじゃないし、眼にも見えない。でも……デジタルコードで作られたものじゃない、唯一無二のモノ。

温かい。

数字の羅列。プログラミングされたポリゴン。ただのデジタルデータ。

ほんの数日前までそう思っていたはずの、今触れている岩が、灰が、山が、世界が偽物だなんて、どうしても思えなくなっていた。

 

 

 

side out

 

 

 

今回の戦闘は、今までのように防御という俺にとって無駄なことはしない。

今まで軽装備でありながら死の恐怖には打ち勝てず、中途半端な防御となまじな回避が主な防御手段だったが、今回ばかりはそういう訳にもいかなかった。

今の戦いは俺だけの命が懸かっている訳じゃない。なまじ恐怖心のせいで真価を発揮できず死んじゃいました〜なんて笑い話にもならん。

俺の思いに呼応するように剣が一際強く、神々しく光り、最初に右の剣、次に左の剣がドラゴンの胴体を真一文字に斬り裂く。

 

「グァ……ア……」

 

体に張り付いていた? 岩はぼろぼろと剥がれ、醜悪な、ヘドロのようにドロドロとしているような中身がちらほら見える。怒りと憎悪に満ちた瞳は、とても作られたそれとは思えない。

 

「グ……グルワァオオオオオオウウウッッッッッ!」

 

HPは二本あるゲージのうち、二本目のレッドゾーン。今までで一番強力な攻撃が来てもなんらおかしくない。

無惨に切り刻まれている翼をはためかせ、先程と同じかそれ以上の強風。だが今回は少し違う攻撃も混じってくる。上体を仰け反らせ、肺を膨らます。口からは赤々とした灼熱の炎。

 

「ガアアァァァァァアア!」

 

突風と火炎。現実世界の法則に則るなら、これが組み合わさったらより大きな爆炎が生み出されるだろう。

 

「チッ……」

 

あまり手の内を晒すのは好きじゃないが……仕方ない。

右の剣は横に倒し、左の剣を十字になるように重ねる。まるで弓を横向きに倒し、矢を引いているようなモーション。

二本の剣がライトエフェクトに包まれ、体がシステムの力に後押しされる。

投剣と双剣の複合スキル《ソード・アロー》。ライトエフェクトで形作られた弦を引き、思いっきり引き絞る。筋力値に比例する上位スキルだ。

ソード・アローという名前はしているが、そのまま剣が射出される訳じゃない。剣が纏ったライトエフェクトが発射されるのだ。射程はアローといえども本当の弓ほどはなく、――剣の世界だから当然だが――三〜七メートルほどだ。それでも驚異的な射程なのだが……。

目には目を歯には歯を。遠距離攻撃には遠距離攻撃を。

シャイニングアローとかに改名した方がいいんじゃないの? と常々思っている光の矢……大きさで言うなら槍と炎の嵐が激突。一瞬の静寂の後、爆発する。敏捷極振りとはいえ俺の方がレベルは二十近くも上。さらに単発ダメージがデカイ上位双剣スキルということもあって、ドラゴン渾身の爆炎は掻き消された。

爆風で多少のダメージを負うのを省みず、片手剣重単発攻撃《ヴォーパルストライク》のモーションに入る。

巨体ゆえに隠れることができないという不利を背負っている巨龍の影は、視界が不明瞭な中でもしっかりと捉えている。クリムゾンレッドに輝く剣は、さっきの暴風と火炎の組み合わせ攻撃の赤よりもどす黒かった。

爆発の際に起こった嵐が原因か、それ以外の理由があるのかは知らないが……なんにせよ、地に降り立ち屹立する岩龍はこれ以上ない的だった。

光が増し、赤というより黒に近くなった剣を捉えたものは誰もいない。気付いたときには剣は深々と龍に刺さっている。

 

「や、やった……の?」

 

微動もしない龍を見て、リズベットが心の内から漏れたのであろう疑問を呟く。しかし――――

 

「グガ……ギュ、ギュアアァァァァッ!」

 

グリンッ、と長い首が曲がり、嬉々とした表情――見た感じだが――で俺の頭にかぶりつこうとしている。だが、甘い。

 

「二撃、目ッ!」

 

ヴォーパルストライクと途中まで全く同じ動きの双剣上位スキル《ツイン・ヴォーパルストライク》。

またシステムが体を動かし、左腕が稼働可能限界まできつく引き絞られる。左手の剣には憎悪と怒りが混じった色みたいな炎のようなライトエフェクトが纏われている。

剣の先端が龍に触れたとき――その場に太陽が現れたかのような光に目がやられ、視界が白一色になる。

網膜を焼く光がなくなって、目を開けたとき――ダイヤモンドダストのようにキラキラと光るポリゴン片だけが俺達の勝利を告げていた。




そろそろ他の作品も投稿したいなぁ……。

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