ソロアート・オフライン   作:I love ?

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地味に双剣スキル登場。
キリト(原作)遂に次巻で復活するのか!? 楽しみです!
無音のシェータは男だと思ったら女の人だったし(可愛い)、見た目で女の人だと思ってたレンリは男の娘だったし(可愛い)……エルドリエ(泣)だったし……。整合騎士団ェ……


最弱を自称する比企谷八幡でも、油断や慢心は少なくともある。

バーサク状態になった赤龍(ドライグさんではない)との第二ラウンドを告げる鐘は、相手の鋭利な剛爪と俺の薙ぎ払いが衝突した甲高い金属音だった。

お互いに攻撃できるのは片腕だけで、連続性には欠けるものの一撃一撃の衝撃や轟音は攻略組とボスの戦いだからこそ起こりうる規模だろう。後ろでリズベットが悲鳴をあげているのを聞くともう少し巧く攻撃を捌いた方がいいかもしれない。

受け止めるのではなく、受け流す。受け流すのではなく、紙一重で躱す。そうすれば、おのずと反撃の機会も増える。

 

「グギュウァァァアアアァッッ!」

 

「ッ!」

 

だが、そんな俺の策略など知ったことかと言わんばかりに禍々しくも神々しい双翼を広げ、力のあらんかぎり突風をぶつけてくる。現実で体験した台風など比にならないくらいの強風。剣を地面に突き刺し、両手でしっかり握ってどこかに飛ばされないようにする。リズベットは岩のオブジェクトの陰に隠れているから無事なはずだ。だが……ただ単に風を吹かせるだけってのは、ボスにしてはお粗末すぎやしないか……?

まだなにかあるのではないかという杞憂は見事に的中し、顔の横を何かが通り過ぎた。

 

「……は?」

 

左頬に軽い痺れを感じ、それを認識した途端、痺れの原因を察した。

――斬られている。

何かが通り過ぎた。それは解る。だが、まるで攻撃方法の識別をすることができなかった。まずい。

 

「リズベット! すぐに転移結晶で離脱しろ!」

 

返事はなく、耳は風が吹き荒れる音しか捉えていない。この爆音で声が掻き消され、指示が通らない。願わくはリズベットが自分の判断で離脱してくれているといいが……。

 

「いや、それ以前に俺もヤベェな……」

 

荒れ狂う嵐は俺に一歩の歩を進めるどころか、自らの体を支えるため地面に刺さった剣から手を離すことすら許してくれない。

と、その時。悪いことは重なるもので、無理をさせ過ぎた愛剣が遂に半ばから折れた。

バキィィンッ! と鳴った音は、この轟音と轟風の中でもよく耳に残る、剣の断末魔だった。

手から心強い相棒の姿がガラス片となって消えゆくのを見ながら、俺は遥か遠くに謎の攻撃に斬り刻まれながら吹き飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……生きてる、な」

 

体全体がダメージエフェクトだらけでも、左肘から下が斬り飛ばされてなくても、生きている。

HPは残り403。実に三十分の一以下だ。山のどこまで落ちたのかは判らないが、俺の下にある火山灰がなければきっと死んでいた。つくづく悪運が強いらしい。

右手でポーチをまさぐりポーションを出す。そのまま飲み干そうと思ったが、ゴトン、と瓶を落としてしまう。別に怒りに震えているわけでも、武者震いでもない。純粋な死の恐怖からくる手の震えを無理矢理押さえつけ、口から液体を垂らしながらも一気飲みした。

 

「はぁ……」

 

裾でポーションを拭い、改めて状況を確認した。武器は折れ、パーティーのリズベットとははぐれた。確認したところ、どうやらここはこの火山の五合目らしい。……最悪だ。

リズベットとコンタクトするべくインスタント・メッセージを送るが……結果は送信失敗。

 

「……は?」

 

もう一度何処にいるかの旨を書いたメールを送るが、送った文と同じように返された文も同じ、『送信失敗(Sending failed)』。

可能性としては、ボスと俺が戦っていたときに転移結晶で逃げて、転移した街からそのまま転移門を使って他の層に行ったか、ダンジョンにいるか、もしくは……

 

「いや、落ち着け。パーティーの解除がされてないならあいつはまだ生きているはずだ……」

 

そう、早合点する必要性はどこにもないと三回心のなかで唱え、平静さを取り戻す。鈍い銀色の長剣を装備し、深呼吸を数回。

 

――こんな事態になったのは、俺があのボスを侮り油断し慢心したせいだ。そのせいで俺が被害を被るならまだしも、他人(リズベット)を巻き込んではならない。

 

――故に、俺にはリズベットを生かして帰す義務があり、それを放棄することは決して許されない。

 

もう、慢心はしない。最弱の俺にはそんなゆとりも余裕もない。

右腰に新たな重み。人前で使うのは初めての双剣スキルを使うことも決意し、火山灰が積もっている一帯から全力で走り去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

索敵スキルを使ってできるだけ戦闘を避けながら山を駆け、それでも避けられない戦闘になったら双剣スキルで一撃で屠った。双剣スキルは既存のスキルで例えるなら刀スキルに近く、一言で言うなら《一撃必殺》だ。

師範が一度だけ見せた双剣スキル……《クロスブレード》であらゆるMobを一撃死させ、頂上までひた走る。

 

「ハッ、ハッ……」

 

肉体的苦痛や疲労がないアインクラッドでも、精神的疲労とは別の、錯覚による擬似的な肉体的疲労はある。今回は山を駆けるという現実では果てしなく疲れる作業という認識が擬似的な肉体的疲労を与えているのだ。だが、今はそんなこと関係ない。

もっと速く。ただひたすら、早く着かねばならない。

NPCの老人の家があった八合目からリズベットと行動して約十分で頂上に着いたことを考えると、俺が単騎で五合から頂上まで行ったら……いや、計算するだけ無駄だ。

ただ、走れ。頂上に。

太宰作の小説じゃないが、ただ一つの義務を果たすため、疾走する。

踏み込んだ足からは尋常じゃない衝撃波が発生し、足許の火山灰が爆散、煙が上がる。

六合目、七合目、八合目、九合目……ついさっき通った道をさっきとは比べ物にならないスピードで駆け抜ける。

攻略組も比企谷八幡の全力の速さというのは見たことがない。なぜなら全力を出す相手は一部の例外を除きボスだけであって、ダンジョン内にいるフロアボスはボス部屋にいるため速度が多少なりとも制限される。ゆえに、これが今比企谷八幡に出しうる正真正銘の全力。

めくるめく変わっていく景色を尻目に、遂にたどり着いた天辺。

 

「いねぇ……」

 

この場合、危険な場所にはぐれたパーティーメンバーがいないことに安堵するべきか、いると思っていた場所にいなかったことを嘆くべきか……多分前者だろう。

だが……あの忌々しい龍は出てくるはずだ。今倒しても別に問題はないが、リズベットの安否が完全に確認していない以上戦っている暇はない。

そういえば、あのNPCの爺さんが少し気になることを言ってたような気がする。

曰く、この山の北方向には火山灰に隠された洞窟がある、と。

年寄りの武勇伝は聞くに耐えないと思いながらも全然本題に入ってくれなかったからな……。

街に帰ってるならメッセージを送ってくるはず……はずだよね? 一般常識だよね? 俺だから送らないとか、そういうことじゃないよね? ……うん、送ってくるはずだからいるとしたら近場のダンジョンのはずだから、爺さんが言ってた洞窟が確率的には高いが……本当に俺が連絡を入れられないだけじゃないよね?

不安に心が圧し潰されそうになったが、赤龍が出ないうちに反対側の北方向に行こうとまた足に力を込める。

遥か彼方から聞こえた龍の雄叫びが「あれ? 誰もいない……」みたいな声音だったことは……うん、俺知ーらない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮想世界とはいえ、汗を掻いたらスポーツドリンクが恋しくなる。ポ○リでもアク○リアスでもなんでもいい。

そう考えると、葉山とかマジリア充。女子マネージャーに「タオルとスポドリです♪」って差し入れされてたし。なんだっけ、あの女子マネージャーの名前……確か名字には色が入ってたような……七色だっけ? あと、名前は天然水みたいな……いろはす? 七色いろはすって……絶対違うな、うん。そもそもいろはす透明だし。名前変だし。比企谷八幡なんて名前の俺が言えたことじゃないけどね!

 

「クソッ、見つからねぇ……」

 

火山灰を両手で掻き分け、ダンジョンを探しているが……これ下手な隠れダンジョンより見つけんの難しくない? サイゼリヤの間違い探しと同じくらい難しい。あれ未だに十個見つけたことないんだよなぁ……なんか店員さんに聞いたら負けのような気がするし。

荒い方法だが、ソードスキルでここらの火山灰を全部吹き飛ばしてやろうかな……。

 

「おら……よっ!」

 

諸手を挙げているような姿勢から、一気に両手を斜め下に斬り下ろすという実にシンプルな剣技《クロスブレード》。連撃数的に言うのなら一撃……いや、正確には二撃だが、双剣スキルの中でもクロスブレードは上位にカテゴリーされる。

そもそも、双剣最上位スキルは本当に一撃必殺……なんだが、使いどころを見極めるのは困難だ。即死攻撃というわけでもないから、当たれば反撃を喰らわないなんてこともない。あくまで一撃の威力がデカイというだけだ。

さて、ここでクエスチョン! 周りは一面に火山灰。そんな環境で威力のある必殺技(ソードスキル)を使ったらどうなるでしょうか?

答え、こうなります。

 

「げほっ! げほっ! おぇっ! 咳し過ぎて気持ちわりぃ……」

 

顔面唾だらけ。視界は皆無。「粉塵爆発ッて知ッてるかァ?」状態だ。

 

「「うぇっほ! げほっ! げぇ……」」

 

ん? 今俺より高い声が聞こえたんだけど……。

 

「うぇっ……ダメ、もう、吐きそう……」

 

女子らしからぬ台詞を吐く、今は灰のせいで若干くすんでいる桃色髪をしている少女は……俺以上に凄い、うん、凄い顔でした。

 

……なんか、すいませんでした。

 

 

 




七色いろはす(笑)登場。

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