もしよかったら感想宜しくお願いします。
こうして、比企谷八幡は仮想世界に旅立つ。
十一月六日月曜日。
千葉の自宅のベットにヘルメットのようなものをかぶって寝ている青年がいた。
青年の名前は比企谷八幡。学校ではもはやボッチを極めている程の筋金入りのボッチだ。
ヘルメットのようなものの名前は《ナーヴギア》。
八幡はマイエンジェルと思っている妹の比企谷小町が福引きで当てたナーヴギアSAO同梱版を受験生だからという理由で譲り受けたのである。
(さすがマイエンジェル小町だぜ)
そして今日いよいよ多くのゲーマーを虜にした《Sword・Art・Online》の正式サービス開始日なのだ。
一時まで
五…
四…
三…
二…
一…
零!
さあ、準備は整った。
後は完全(フル)ダイブする魔法の言葉を口にするだけだ。
「リンク・チュタート!」
……緊張しすぎた…。
ダイブした後にカラフルな円柱みたいなものが飛んでくる場所を通り過ぎ、《Welcome to Sword Art Online!》という文字が浮かび上がって、予め作っておいたアバターの姿に。青い光に包まれ次に目を開けた瞬間……
街が広がっていた。
それは比喩でも何でもなく、
文字通りに広がっていた。
これまでのゲームまでとは格が違う…いや、比べることすらおこがましかった。
(これが…SAO)
とはいえ何時までも呆けてはいられない。
早速武器屋に行こうとしたら、
(ヤベェ、今の感動で武器屋の場所忘れちまった)
仕方なく、誰かに教えて貰おうと思うと迷いなく路地裏に入っていく人影を見つけ、恐らくβテスターだろうな、とあたりをつけて話しかけようとした。
「す、すいましぇ「その迷いない走り、お前さんβテスターだろ!」…」
(誰だよ、人が折角話しかけようとしたところに)
振り替えると赤色のバンダナで髪を逆立てているイケメンがいた。
因みにβテスターの方は、青い髪をした勇者みたいな格好だ。
八幡はリアルの髪型を少し伸ばした感じだ。眼は腐っている。八幡曰く、「眼が腐っていない俺とか違和感がありすぎる」らしい。
βテスターの男(?)が
「う、うん。そうだけど何か用?」
?何か変だな。まあいいか。
「おう!もしβテスターなら序盤のレクチャーを頼みたくてな!」
バンダナの奴うるさいしコミュ力高いな。
「わかった。いいよ。じゃあ武器屋行こう」
あ、あれ?俺は?くっ、頼むならここしかない!
「あ、あの僕もいいでしゅか?」
噛んだぁぁぁ!やっちまった…とか思ってたら二人とも驚いてた。
「すっげぇ!いつからいたんだ?」
「たしかにすごいね。隠蔽あげてるの?」
あ、あのそんなに驚かれると…
「えーっと、まずお前が声をかけるまえにいた。俺もレクチャー頼もうと思ってな。あと隠蔽って何だ?」
「あ、君もビギナー?わかった。レクチャーさせてもらうね。わ…俺はキリト。よろしく」
「お前さんもか!俺はクライン!よろしくな!」
「あ、ああ。俺はエイトだ」
あのあと武器屋で武器を買った俺達は、草原にきていた。武器はキリトが片手直剣、クラインが曲刀、俺も片手直剣だ。
「フッ!、っとこんなもんかな」
俺は片手剣基本スキル《スラント》でフレンジーボアを倒した。
「グッジョブ。エイト上手いな」
「こんなもん説明書読めば誰でも出来る」
「クッソォ!俺も説明書読んどきゃ良かった!」
おい、言ってる間に突進されて来てるぞ。あ、そのままクラインの股関に痛そうだな。
ん?キリトが平然としてる男として思う所はないのか?それとも…。ま、言う必要はないか。
「クライン、ゲームに痛覚はないぞ」
「あ、そうだった」
ないんだ…。まあ当然か。
「まだ倒せないのか?」
「だってよう、エイト!あいつ、動くし」
当たり前だろ…。
「あはは、動くのは当たり前だよ。大事なのはモーションだ。後は勝手にシステムが当ててくれるよ」
クラインが「モーション、モーション」と呟いている。そろそろ助け船を出すか。
「居合いの溜めがモーションで斬るのはシステムみたいな感じか?」
「成る程!キリトOKだ!」
キリトが剣で防いでいたフレンジーボアをクラインの方へ蹴ると、フレンジーボアはクラインの方へ突進した。
「フーッ、フーッ」
クラインは深呼吸をして腰を落とし、曲刀を構え、ソードスキルを発動しようとする。そして、フレンジーボアがクラインに当たる瞬間――
「りゃあっ!」
クラインがソードスキルを放った。
そのソードスキル《リーバー》は見事にフレンジーボアにヒットし、フレンジーボアのHPを全損させた。
「うおっしゃぁぁぁ!」
ガッツポーズするクラインにキリトは剣を鞘に収めて近づき、
「スライムレベルの初勝利おめでとう」
「おう!って、は?スライムレベル?俺はてっきり中ボス位かと…」
何言ってるんだこいつは。どんなクソゲーだ。
「そんな訳ねぇだろ…」
といったらまた二人に驚かれた。……泣いていい?
「し、しっかし本当にスゲェな!完全ダイブ技術は!俺はこの時代に生まれてよかったぜ!」
「大袈裟だなぁ」
苦笑しながら言うキリトもそうは見えない。きっと生粋のゲーマーなのだろう。
「まあ、そうだな」
俺もこの技術は凄いと思うので素直に答えた。
「我ながら運がいいよな!SAOが買えてナーヴギアまで揃えたかいがあったぜ!」
「じゃあクラインはこのゲームが初めてのナーヴギア用ソフトなの?…か?」
「ああ、寧ろSAO買えたからナーヴギアギアも揃えたって感じかな」
「でも運ならキリトの方が単純計算で十倍いいぞ」
「ホントだよなこの幸せ者!」
クラインがバンッ!とキリトの背中を叩く。しかもちょっと意味違くないか。
キリトは「そうかなぁ」という言葉と共に苦笑する。
「さて、勘を掴むためにまだ狩るのか?」
と俺が言うと
「ったりめぇよ!…といいたいところなんだが一回落ちて飯食わねぇとなんだよな。五時半にピザの宅配頼んでっから」
用意周到だな…。キリトも同じことを思ったのか
「用意周到だな…」
と言っていた。
そこで思い出したかのよ
うにクラインが
「あ、俺飯食った後他のゲームで知り合いだった奴らと《はじまりの街》で落ち合う約束してっからお前らもどうだ?紹介すっからフレンド登録でもどうだ?いつでもメールできるし」
「断る」
いや、無理にきまってるだろ。ボッチには難易度高過ぎです。
「そ、そうか。キリトはどうだ?」
「わた…俺もいいよ」
ほほう…キリトも弱ボッチとみた。
「そうか…いや、無理にゃ言わねぇよ。紹介する機会もあるだろうしな」
そんな機会無いに越したことはない。
「ほんじゃ、俺一回落ちるわ。ありがとうなキリト、色々レクチャー。エイトも楽しかったぜ!」
そういって手を差し出してくるクライン。………何これ?
「握手だよ、握手」
ああ、握手か。やっぱこいつコミュ力高いな。キリト、俺の順番でクラインの右手を握る。そして、俺逹は手を離した。
―――思えばこの時から異変は起きてきたのだろう。
手を離したクラインが右手の人差し指と中指を下に振る。《メインメニュー・ウインドウ》を呼び出す動作だった気がする。 俺は手頃な岩でアイテムの整理をしようとしたとき、
「あれっ」
というクラインの声が聞こえた。
「どうしたんだ?」
と声をかけると、
「いや…ログアウトボタンがねぇんだよ」
無い?そんな訳無い。メインメニュー・ウインドウを開いて確認するとログアウトボタンが……無い?
「な?無いだろ?」
「うん、無いね」
「ああ、確かに無い」
----おかしい。ログアウトボタンが無いなんて致命的なバグなはずだ。それなのに運営から何の連絡が無いなんて……。
「ま、サービス初日だかんな、今頃GMコールが殺到して運営は半泣きだろうな」
「余裕かましてるけど良いの?ピザ」
俺のアンチョビピッツァとジンジャーエールがーとクラインが嘆いている間に俺はキリトに聞いた。
「なあ、キリト。他にログアウトする方法ってなかったか?」
「えっ?うーん、確かなかった…と思う」
その言葉にクラインが反論する。
「んなバカな!ぜってぇなんかあるって!」
クラインが戻れ!ログアウト!脱出!とか言ってアホやっている間に俺はさらにキリトに聞く。
「じゃあログアウトするにはバグが直るのを待つか、リアルでナーヴギアを外してもらうしかないってことか?」
「うん。そうなるな」
ようやく落ち着いたのかクラインが息をきらしながら言ってきた。
……ってどんだけ叫んだんだ?
「でも、オレ、一人暮らしだぜ。おめぇらは?」
「わ…俺は母親と妹と三人暮らし…エイトは?」
話をふられたので答える。
「両親と妹と四人暮らしだ」
クラインがものすごい勢いで食い付いてくる。
「おおっ!キリトとエイトの妹っていく「お前に俺の妹はやらん!」」
「…」
「…」
あれ?スルーされた?
「…それはそうと、この状況で余裕だな。お前…言っとくけど妹はゲーム嫌いだし、俺らみたいな人種とは接点皆無だぞ……そんなことより、おかしいと思わない?この状況」
「ああ、思う」
「当然だろ?バグなんだってんだから」
まあ、そりゃそう思うだろうけどそういうことじゃ無い。
「ただのバグじゃない、《ログアウト不能》なんてゲーム運営に関わる大問題だし、お前のピザみたいに現実での金銭的損害をした奴だっているだろう」
「………冷めたピッツァなんてネバらない納豆以下だぜ………」
キリトの言葉に俺は続ける。
「この状況なら、運営は何であれ一度プレイヤーを強制ログアウトさせるのが当然の措置だ……しかも俺逹がバグに気付いてから十五分は経っているのに、切断どころか運営のアナウンスすらないのは奇妙すぎる」
「む、言われてみりゃそうだな」
言うとクラインは手で顎の髭をジョリジョリして眼を鋭くした。……普段からその顔してれば良いのにと思ったのは内緒だ。
「SAOの開発運営元の《アーガス》といやぁ、ユーザー重視で名前を売ってきたゲーム会社だろ?その信用があっから、初めてリリースするネトゲでもあんな争奪戦になったのに初日にこんなでけぇポカやっちゃ意味ねぇぜ」
「ああ、そうだな」
「うん、そうだね」
言いながら俺はフィールドを見渡す。
リアルでは見ることができないような夕暮れの空と草原。
遥か彼方にある二層に続く迷宮区。
そんな仮想空間だけど確かにここにある景色が、何処からか聞こえてきた鐘の音と共に、
---------変わった。
指摘、キャラ崩壊している、こうしたほうがいいなどアドバイスや感想宜しくお願いします。